クリエイティブRPG

ヒロイックソングス!

異世界アイドルプロジェクト!

リアクション公開中!

 156

異世界アイドルプロジェクト!
リアクション
First Prev  1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9  Next Last

【1-3】

 次のライブは、邑垣 舞花ノーン・スカイフラワー
空花 凛菜の三人がイクスピナの広場で位置についたところから始まった。
 【令嬢の嗜み】の動きで、【メイクピース】姿の凛菜はゆっくりと歩き始める。【Grace】を着こなした舞花も凛菜と少しペースを開けて立ち上がる。腕や足を動かすその様には【気品】があり、これこそが舞台人として必要なスキルそのものだ。
 ノーンは【スタースチューデント】を着て【マイオリジン】が浮かび上がった首に手を当てると、

「皆さん、こんにちは!」

 【スターオービットspec-2】がちょうどいい位置で凛菜の声を拾った。

「久しぶりのイクスピナでのライブ、ホームに戻ってきたような安心感で、とてもほっこりしています。今日は観客の皆さんと一緒に、素敵なライブステージを体験できたらって思います。よろしくお願いします!」

 舞花が凛菜の持ち曲である【チャレンジ☆スピリット!】を【オールドソリッドギター】で奏で始めた。
 凛菜はダンスミュージック仕立ての演奏に乗って【キラキラオーラ】をまとい、何事にもチャレンジするという精神を体現すべく、朗らかに、意気揚々と歌う。ノーンの歌声も重なって、二人の声のハーモニーは辺り一帯までよく響き渡っている。

「お二人とも、出だしからとてもいい感じです……!」

 そこへ【シーケンスブースト】のバックコーラスを加えることで曲に厚みを加える舞花。星獣のトランペットイヌも現れ、トランペットの音色で“ウタ”を響かせてくれている。
 会場にいた星川鍔姫も含めて誰もが思わず踊り出したくなるような楽しさ満点のリズムは、いつまでも聴いていられる心地良さが感じられる。
 【#うちで歌おう】を発動し、会場以外の場所や自宅でライブを鑑賞している人たちの力を借りて曲を大いに盛り上げる。
 【ビーボーイズ&ガールズ】でバックダンサーを召喚した舞花は、【メイクダンスフロア】を発動して一帯をミラーボールの光が飛び交うダンス会場に変えた。
 ノーンも【ライトアップダンス】を使って【ホップタンバリン】を光らせ次々とダンスを披露していく。
 クライマックスでは凛菜が【フュージョン・メロディリウム】を発動して、人々と曲をリンクさせて一体感を生み出していった。

「こんな高いテンションを、どうやってずっとキープしてるの……?」

 歌い終えても疲れを全く見せない凛菜とノーンを見て、鍔姫は思わず感嘆の声を上げる。
 心地良いダンスムーブを醸すこの場所で、気がつけば鍔姫もリズムに合わせて体を動かしていることに気づいたのだった。

「鍔姫ちゃんっ、皆さんも……一緒に歌って踊ろーっ♪」

 ノーンが鍔姫や数人の観客たちをステージに上げて、皆で一緒にダンスを楽しむ。
 歌とダンスはステージから広がりを見せ、やがて大きな流れとなっていった。

「ライブって、本当に楽しいものね」

「そう思っていただけたのでしたら、今日のライブは大成功ということになりますね」

 凛菜がパチンとウインクをする。

「ノーン様も舞花お姉様も、いつにも増して気合いが入っていたようです。あんな楽しそうな顔、久しぶりに見たかも知れません」

 ノーンと舞花も、恐らく凛菜と同じことを思っているはずだ。
 ライブの後のアイドルたちの溌剌とした表情──鍔姫は、それを見るのがとても好きだと改めて思ったのだった。

***

 同じくイクスピナ内の別の場所では、ロザンナ・神宮寺のライブが始まろうとしていた。開始前だというのに、すでに多くの特異者たちが集まってきている。ロザンナは【魔鎧】を装着しているが、実はリゼクシー・リエンダがその正体だ。

「やほー、ロザンナですよっ☆ よろしくお願いしまーす♪」

(ていうか……ステージで初対面の方々の前でパフォーマンスとかアイドルですかー!?
 人見知りの私には到底できないことですよぉ……)
 
 リゼクシーがそんなことを思っているとは露知らず、ロザンナは愛想よく人々たちの相手をしている。
 ふと、ロザンナの前に現れたのは星川鍔姫だった。にこやかな表情でロザンナが差し出した【名刺】を受け取り、これからどんなパフォーマンスを見せてくれるのだろうと鍔姫の期待値が高まる。

「かわいいね、この【名刺】」

 シールやラメで丁寧に装飾された【名刺】は、それだけでもロザンナらしさがよく表れていた。一枚一枚、デザインが異なっており、受け取った誰もが「オンリーワン」だと思うことができるはずだ。
 大勢の中でそれに気づいたのは鍔姫だけだったかも知れないが、【名刺】一枚に対してもこういう細やかな心配りができるアイドルが果たして何人存在するだろうか?
 初対面で鍔姫の心をギュっと掴んだロザンナは、早速、本番に臨む。
 リゼクシーが【ハイカラさん】を使ったおかげで、ロザンナのファッションはイクスピナのどこを歩いてもその場にフィットしたものになっていた。
 オーソドックスなアイドルのPVのオープニングさながら、ロザンナがモール中を歩くところからライブはスタートした。【曲:さんぜんねこのうた】が流れ始めるとロザンナは軽快にリズムを取りつつ、リゼクシーの【天使のリュート】を奏でてから元気よく【振起の咆哮】の雄たけびを上げる。
 ライブを観ている人々の反応は上々、モールのあちこちに散らばる「カワイイ」をロザンナの感性で探しながら、アイドルらしいパフォーマンスを披露していった。
 本来は【魔鎧】を着ているが【瀟洒なメイド服】で自分たちを鼓舞してくれたリゼクシー。磨き抜かれた武装メイドよろしく【ウォーターガン】を腰に下げて歩いていたロザンナは、フラッグや看板、壁などに向かってカワイイものを目立たせるよう【ショットアシストユニット】を使った。

「さすがにちょっとカワイさが足りませんね……」

 リゼクシーが【連携】女王の神域を使った後、【オーロラカーテン】を何もない広場が発動した。【ウォーターガン】の水しぶきと共にキラキラとした光の演出は、多くの人たちの目を楽しませている。

 ライブはPVそのもののように、ロザンナだけでなく鍔姫、そして特異者たちをも巻き込んで【写真栄え】でカメラ構図を意識しつつ周囲全体が一つのフレームに収まるのをイメージして進めていった。
 後半に差しかかったところで、

「【レッツパーティ!】」

 この一言て盛り上がりは更に大きくなり、まるでイクスピナ全体がロザンナのライブの一部に組み込まれたかのような演出でいつまでも賑わいを見せていたのだった。

「ステージの上じゃなくても、こんなに楽しくて素敵なライブができるものなんだね。
 ……ふふ、後で潤也にも報告してあげなくちゃ」

 ロザンナと一緒に、ライブだがパレードを楽しんでいる、子供みたいにわくわくした気持ちをおさえられない鍔姫。
 ライブの後にリゼクシーが【メイドインヘブン】を使ってくれたおかげもあって、ロザンナの緊張と披露はどこかへ吹き飛んでしまっていた。

「お疲れっ☆」

 ジュースを差し入れてくれたリゼクシーに、ロザンナはまぶしいくらいの笑顔を見せた。
 心の赴くままに──今、この瞬間を作り出してくれたロザンナとリゼクシーに、鍔姫は心から感謝を伝えたいと思ったのだった。

「……ありがとう」

「ん? それはボクのせりふだよ~最後まで観てくれてありがとっ!」

「とっても楽しい時間だった。今度は──」

「うん」

「是非、みんなと一緒に同じステージに立ってみたい」

 思いがけない鍔姫の一言にロザンナは目をぱちくりさせたが、「じゃあ約束ねっ♪」と言って、お互いに指切りをした。
 少しでも誰かの何かの役に立てるのなら、そのために努力は惜しまない。アイドルとはきっとそういうもの──鍔姫は、改めてアイドルの在り方について思いを馳せた。

First Prev  1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9  Next Last