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異世界アイドルプロジェクト!

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異世界アイドルプロジェクト!
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【1-2】

 ステージサイドでは、【羽搏き出す少女の夢現】を着用した【スタイル】クローステールの風華・S・エルデノヴァが鍔姫に挨拶をしているところだった。

「お会いでき大変嬉しいです。はじめましてが舞台と、不思議で素敵な偶然に感謝の思いです。
お似合いのその衣装……よければ、飾りを添えさせていただいても?」

 風華が鍔姫の衣装に幻の装飾を提案すると、鍔姫は素直にそれを受け入れた。
 ステージ用の衣装に着替えた鍔姫の姿を見た星川 潤也
 見慣れているようで見慣れていない艶やかな姿に、思わず照れてしまう。

「あ、えっと……その衣装、すごく似合ってるよ。
風華さんが仕立ててくれたコーデも様になってるし、その……すごく可愛い」

 面と向かって言われたのが予想以上に照れたのだろう、鍔姫も恥ずかしそうに笑っている。

「はじめまして、藍屋あみかです。今日はよろしくお願いします」

 神獣ファーブラを連れた藍屋 あみかが鍔姫に挨拶をすると、

「こちらこそ! 共演できてうれしいわ」

 快く答える鍔姫。

「えと、潤也さんにはホライゾンに来てからお世話になっていて……あっ、鍔姫さんとすごくお似合いです。それと、私も、その、既婚者で……」

「そっか、ライブが終わったら色々話そ!」

 あみかと鍔姫はお互いに笑い合い、握手をする。
 
「はじめまして。藍屋 むくです。きょうは、ライブには出ないですけど観客さんにっておもいます。このこといっしょに【応援】してますね」

 自己紹介をしながら、むくは星獣のウェスペルのことも鍔姫に紹介する。
 【素人魂】は緊張しないためのおまじないの役割も果たしてくれるだろう。

「あの……その服、とてもかわいいわね?」

 着ていた【歩み出す少女の恍惚C】のことを鍔姫に誉めてもらえたむくは思わず、

「これっ、イクスピナにもお店がある風華おねえさんの「SilkySeason」のおようふくなのです!」

 【良い子のオーラ】を放って、自分もメンバーの一人であるという認識を改めて強くしたのだった。

「鍔姫ちゃんのことは潤也くんに聞いてて、会えるの楽しみにしてたんだ。甘味 愛歌です。よろしくね」

 【ドレス・ティラミス】姿の狩屋 恋歌も幼生神獣のティラミスを連れて歩み寄って来る。

「甘味恋歌を芸名に活動しています、狩屋恋歌といいます。この子はお友だちのティラミスです。今日はよろしくお願いします」

「こちらこそ……よろしくね」

 鍔姫はティラミスをそっと撫でてやる。ティラミスは嬉しそうに鍔姫の周囲を飛び回る。
 もしよかったら喉を潤して、と愛歌は【ホライゾンウォーター】を鍔姫に渡した。

「レッスンの疲れも癒せたらと思って」

「ありがとう!」

 愛歌はサムズアップをして見せると、【スタイル】インフルエンサーの力を使ってライブの宣伝に取りかかる。
 空中に【スパークマネージ】で『睡奏楽団 on Stage』と描き、ライブのオープニングを彩った。このライブをできるだけたくさんの人々に見てもらうため【拡散希望】も忘れない。潤也とむくも手伝ってくれたおかげで、あっという間に拡散されたようだった。

「よし。じゃあみんなに歌を届けに行こう!」

 潤也と鍔姫は手をつないでアリーチェ・ビブリオテカリオが【ミーティアステージ】で作り出した光線状のステージへと向かった。ルミマルの姿になった愛歌もその後に続く。むくが応援用のルミマルをぽきっと折って、

「ライブ、たのしも!!」

 と、声を出した。こくんと頷く鍔姫。
 曲がスタートすると、すでにスタンバイしていた世良 延寿の【ソング・オブ・フォース】に合わせて、早速【高潔の夜霧】を展開する潤也。会場内はたちまち夜闇に包まれ、その中で鍔姫の衣装がキラキラと輝いている。

「風華さんが作ってくれた【陽羽のアンジュ】、よく似合ってるよ」

 すれ違いざま、潤也は延寿に声をかける。

「今日は私じゃなくて鍔姫をほめてあげる日!」

 と言いつつも、延寿の顔は嬉しそうだ。
 風華が曲に【紬祇環奏】の伴奏を添え、スタイルの効果で鍔姫の衣装に施された翼がはためき始めた。【明けの明星】を歌った延寿は大きく息を吸い込む。

「私ね、鍔姫さんがアイドルになってくれて、すごく嬉しいんだ。アイドルは大変なこともあるけど、でもすっごく楽しいってこと、鍔姫さんにもっともっと知ってもらえたら嬉しいなって……。だからね、一緒に歌おう、鍔姫さん!」

 鍔姫は深呼吸をする。
 その場に現れた星獣のピッコロフェニックスであるベルカントも、周囲をくるくる飛び回りながら一緒に歌っている。
 恋歌がティラミスと一緒に空を舞い、観ている人々や他の特異者たちにも歌を楽しんでもらおうと【りょーせーるいの合唱】を使った。輪唱が後追いで、パズルのように曲の中へうまくはまっていくのは爽快だ。
 織羽・カルスが【星紡ぎのリュート】を鳴らして【清澄の唄声】で【大いなる翼】を夜空の中で広げた。身に着けている【ハルモニア・ドレス】がこだまとなって織羽の歌をより広範囲に響かせる。

「織羽おねえさんのおうた、すてきなの……」

 静かに歌を聴いていたむく。メロディに合わせてルミマルを振ったりしながら、本人はそこまで意識していないようだが率先したその態度は観客たちの先導係も果たしている。
 恋歌は【ウイッシュフロウ】を歌いやすい位置に浮かべ、プリーストのスタイルを生かした歌唱力を発揮した。
【スターオービットspec-2】を浮かべたあみかも現れ、織羽と一緒に導入部を歌っている。【ノクターナ】の歌声はライブを観ているすべての人々へのリラックス効果につながるよう、ファーブラに周囲をゆったりと舞ってもらう。
 【バックトゥバック】の姿勢で織羽に合わせながら、丁寧に歌を披露するあみか。
 風華がすかさず【BFFミックス】で織羽とあみかの声量のバランスを調節している。
 王剣戦争で紡いだ、“輝ける星の唄”――【ステラ・カデンツァ】。
 「みんなの力になりたい」という願いから生まれたこの曲は、仲間一人一人が、輝ける星であり、一人一人がそれぞれの力を最大限に出せるようにという願いが込められている。
 星の輝きをイメージして、織羽は丁寧に歌い上げる。
 鍔姫のターンでは、観ている人々の反応が伝わりやすい愛歌の【クラリティエール】と合わせて、あみかは【ブライトレスポンス】で呼びかけを行った。鍔姫のデビューを飾るこのライブで、ひとつの星が生まれた日のようにできる限り大勢の人々から祝ってもらいたいと思う思いを込める。愛歌は精一杯の力で体を伸ばし、発光を続けている。
 恋歌は織羽の歌声に【赤き砂漠の歌】を使ったバックコーラスを添えて、織羽たちのみならず鍔姫も歌いやすように引き立てた。緊張している鍔姫が少しでもリラックスできれば、ライブを観ている特異者たちとも打ち解けてますます楽しい雰囲気が作れるかも知れない。
 きょろきょろしていたティラミスも、あみかと一緒にいるファーブラとゆっくり舞いつつ自由に飛び回れるように、うまく導いてやった恋歌。
 そして皆と過ごす限られた時間、歌うことへの思いを乗せた【フワリ・ハート】を浮かべ、
新しい輝きの誕生への喜びとお祝いを演出する。
 それぞれの存在が星のように煌めいて夜を照らし、少しずつ朝空へと変わっていく。
 風華が【メイクランウェイ】を使い、更に鍔姫の魅力を最大限に広めるよう【SSSビューイング】でステージの頭上に展開した。
 ──次の曲は、生命への讃美歌【クララ・アニマ】だ。命を燃やすように歌い、命に命を与えるような儚く、優しい旋律……。光り輝く命を想い、高らかに伸びやかに歌い上げることが今の織羽に表現できる精一杯の癒しの歌。
 風華が【1/fのゆらぎ】で歌と命に通じる広い海と白浜の情景を伴い、皆が深く聴き入るような癒しを添える。そして【紬祇環奏】の光の糸も使って、神獣を含めた全員の髪、腰などに羽根飾りや翼の装飾を施し、鍔姫には黄金の翼と星飾りを着けてやった。
 続いて潤也が【ライティング指示】を出し、スポットライトで織羽、あみか、恋歌たちを照らしてみせた。愛歌も【父なる樹のヴァイオリン】を使って癒しの音色を奏で、皆がこの場でベストを尽くせるよう懸命に支えた。アリーチェの【プラネットギター】も加わることでハーモニーに深みが出る。【ブライトレスポンス】を使うと、更に大きな声援がメンバーと鍔姫に送られた。

「恋歌おねえさん……延寿おねえさんも……みんなキラキラ」

 生き生きとしているのはパフォーマンスを披露しているメンバーだけではない。むくも誰にも負けない熱意と気合いで、精一杯の【応援】と拍手を送り続けた。
 ──星空に浮かぶステージ。それを取り囲む観客たち。【睡奏楽団】が次々と展開する演出は幻想的だった。

「──ほら、見てみなよ。鍔姫たちの歌を聴いて、みんな笑顔になってるだろ」

 見ている人々が笑顔で楽しんでくれているのは、ステージにいるアイドルたち全員が楽しそうに歌っているからだろう。

「笑顔って……連鎖するのね!」

 鍔姫にそう言われて、潤也はより一層やさしい笑顔になった。

「覚えておいて。このたくさんの思いと声援が、アイドルの力になるから……」

 アリーチェが鍔姫の手をぐっと掴む。

「ちなみにあたしは……今、すっごく楽しいわ! ほら、鍔姫ももっと一緒に楽しみましょ」

「うん!」

 クラリティアイドルの光の翼を広げて、織羽、延寿、鍔姫も一緒になって飛び回る。

「どう、鍔姫さん? 鍔姫さんにもライブ、楽しんでもらえてたら嬉しいな」

「とっても──とっても、楽しい……!!」

 スポットライトを浴びて満面の笑みを浮かべる鍔姫。
 潤也は、生涯の伴侶である彼女のこの瞬間を、きっと忘れることはないだろう──。
 あみかと恋歌が、【神獣極光】でファーブラとティラミスを成長させた。あみかはゆっくりと空を舞い、空中で歌っている鍔姫たちにハイタッチをしてゆく。
 拍手さえも演出の一つのように鳴り響き、場内はまさに「ひとつ」。
 

「はふー、つ、疲れた…!
 歌と踊り一緒にできるアイドルさんて、どんな体力してるのぉ……」

 二曲を一気に全力で歌った織羽は、【アルトルークの霊水】を飲んで体力を回復させる。
 
(……ていうか、さっきの唄で変な所で生命が宿ったり……して、ないよね……?)

「ま、まさかね……ははは」

 なんとなく一抹の不安がよぎった織羽だったが、人々の歓声に応えて再びステージへと向かって行った。
 最後は演奏を自動にした風華が、ステージの中心から空へ向かって手を伸ばし、観客の思いを届ける役として衣装の力を開放した。3対の翼でふわりと浮かび上がる。

「今日は楽しんでいただけましたか? 
 よければ今度「SilkySeason」店舗にもいらしてくださいね♪」

 しっかりと宣伝も兼ねて、曲のラストを飾ったのだった。

「またこんな機会があったら嬉しいです」

 恋歌としっかり握手をかわした鍔姫。

「おつかれさまでしたー--とてもとてもすてきでキラキラキラキラのライブ♪」

 むくが【パステルドロップ】をのどあめがわりに一つずつ、鍔姫と織羽に渡す。

「むくさんも応援ありがとう。おかげでみんな盛り上がってた」

「……えへへ」

 むくのあどけない表情が、疲れたアイドルたちを和ませてくれたのは言うまでもない。
 鍔姫は言葉にできないくらいの感謝と敬意を持って、その場で深々とお辞儀をしたのだった。

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