■プロローグ
――蜃気楼の森。
機械化したダークプリースト
ハルトヴィヒは、目の前に鎮座する魔石を見てにんまりと笑った。
「なんだ、案外あっけないではないか」
ハルトヴィヒが石に触れたその瞬間。
彼は頭の奥――残り少ない生身の一部――に、宙に浮きあがるような違和感を覚えた。
そして手にしたはずの魔石は、ごく小さな欠片となっていた。
まるで最初からそうであったかのように。
(なんだこれは。この程度の魔石、ゴミ同然ではないか!
まさか、魔石は森全体に散っているとでも……)
ハルトヴィヒは舌打ちをして、機械部分の開口部を露わにする。
するとそこから鉄塊が排出され、何体もの骨格ばかりの人型となって着地した。
「さぁ、出番だ。我が分身たちよ」
ハルトヴィヒには人型に術をかけ、魔力で覆う。
するとその姿はただのフレームではなく、
ハルトヴィヒと瓜二つとなった。
「幻には幻をだ。魔界の魔法と機導。その両方を使える俺に隙はない!
さて……俺と戦ってると思い込んでる間に、冒険者どもより早く、魔石の欠片を集めなければな」