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クラッシュ★バレンタイン

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クラッシュ★バレンタイン
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――4――

「さ〜て♪ リトルフルールの皆で可愛いジェニーちゃんの恋を応援するよ☆」
 広場に漂っていた、真珠丸の重たい愛が思ったよりしつこい──という空気を打ち壊すように明るく言って進み出たのは、シャーロット・フルールだ。
 その周囲にはリトルフルールの面々がいる。
 シャーロットの隣には特別団員、戦戯 嘘の姿もあった。

「ヤマコロちゃんお手本魅せちゃって!」
 シャーロットの言葉を受け、草薙 大和草薙 コロナが互いに見つめ合い、小さく頷く。
 大和はほんの一瞬、僅かに気恥ずかしそうに見えたが、それもすぐに消える。
 7年前に結婚した愛する妻コロナを絶対に守り抜く。
 そんな強い意思を示すため、グレートウォールで守りに徹する。
 自身の狂化対策も万全に行い、真珠丸への揺さぶりとして誓いの言葉を口にする。
「僕は絶対に最愛の女性であるコロナを守る!」
 それを聞いたコロナも、これに応えなければ女がすたるとばかりに、誓いの言葉で応える。
「愛する大和さんを未来永劫、支え続けます!」
 互いに自分の全てを相手に捧げ合った二人のその様子は、実に堂々としたものだった。
 ジェニーへの手本として、申し分ないものだと言えるだろう。
 コロナの手には牙刀『処怺』が握られているが、いくら特攻があるとは言ってもタイミングは慎重に。
 下手に攻撃して真珠丸が本格的に暴れだしてしまったら大変だから、と他の特異者達と同様に配慮する。
 真珠丸はと言えば、二人の誓いの言葉を聞いてまた動きが鈍っている。
 とは言ってものろのろとだが両手を振り回し始めたので、万が一にもコロナが攻撃を受けてしまうことのないように、大和がコロナの盾となっている。
 その姿はまさに騎士そのもの。
 コロナは真珠丸が弱りきって攻撃が通りやすくなるタイミングを眈々と狙い続ける。
 大和は防御を、コロナは攻撃をと役割分担し、夫婦ならではの息があった連携を見せていた。

 皆の前でこんなにも堂々と互いに愛を宣言し合い、照れる様子もない二人の様子を見ていた虹村 歌音は、ただただ感心していた。
 が、すぐに自分もウィルことウィリアム・ヘルツハフトへの愛を叫ばなければいけないのだと思い出し、気力を奮い立たせようとする。
「うぅ……わたしだけじゃ、やっぱり恥ずかしい……ジェニーちゃんも全力で愛を叫んでほしいな!」
 急に話を振られ、なかなか決心がつかずにまごまごしていたジェニーが硬直する。
 が、歌音のすがるような瞳を見てもうやるしかないと感じたのか、複雑な表情を浮かべながらも頷いた。
 お陰で少しホッとしたのか、小さく息を吐いた歌音の肩にウィルが優しく手を置く。
 自然と見つめ合う2人の雰囲気は、紛れもなくしっかりとした絆を育んできた恋人同士のそれだった。
 バッチリのタイミングで歌音のウィルへの想いを綴った曲、「I Will Love」が流れ始める。
 タイトルどころか歌詞にまで自分の名前が入った、あまりに露骨な自分あてのラブソングを自分も演奏しなければならないというこの状況に恥ずかしくなるが、ウィルには歌音の歌を最高のものに仕上げるというプロデューサーとしての矜持がある。
 それに、歌音が全力で愛を向けてくれるのだから、全力で応えなければ。
 そんな想いでライティング指示やホワイトイルミネーションでバレンタインらしい情景を映し出した。
 バレンタインの歌にピッタリの演出だ。
 歌音もフワリ・ハートで可愛らしいハートをたくさん浮かべ、2人の愛の深さを表現する。
 夫婦である大和とコロナには及ばないとしても、自分もウィルと愛し合っているのだということを真珠丸に教えよう。
 そう思いながら、歌音が歌い始める。
 曲に歌音の想いを込めた歌声が乗り、混ざり合って1つになる。
 これまで「アイドルとプロデューサー」として、恋人として二人三脚でやってきた想い出を胸に、広場にその歌声を響かせる歌音。
 愛しき過日によってその想い出が映し出され、視覚と聴覚の両方からアピールしていく。
 リミックスアプローチでその歌のイメージを最大まで引き出すウィル。
 クライマックスに差し掛かると歌音は青春シャウトでアピールしながら、ウィルのことが好きだという気持ちをオーバーシンクロナイズで真珠丸の心へと直接届ける。
 ウィルもそれにならうようにフレーズトゥユーで歌音への想いを届けた。

 歌音達が真珠丸に愛を見せつけている間、何とか心を決めなければと頭を抱えていたジェニーの様子を見て、シャーロットが声をかける。
 ジェニーの想い人、ウォルフのことをからめて軽くからかい、ジェニーの気持ちをほぐそうとしているようだ。
「ウォルフちゃんってば、あんなこと言うなんて男だよね。うそちゃんもそう思わない?」
 シャーロットに聞かれて嘘が瞳をキラキラさせながらコクコクと何度も首を縦に降る。
「思うのよ。深い愛を感じるのよ!」
 ジェニーは赤面しているが、想い人から自分への愛を感じると言われて嬉しくないはずがなく……。
 よく見れば、嬉しさを隠しきれずに口元が緩んでいた。
「ジェニーちゃんが勇気を振り絞れるよう、ボクも最高のフルールラヴソング☆を魅せたげる♪」
 ダメ押しとばかりに言ったかと思うと、シャーロットが嘘に向かって手を差し出した。
 いつの間にか、歌音達の曲は終わっていた。
 不思議そうに首を傾げる嘘にシャーロットが言う。
「うそちゃん、手…握ってくれるかな?一緒に歌おっ、ボクらのフルールラヴソング☆を!」
「もちろんなのよ!」
 ぱぁっと花が咲くように笑顔になった嘘が、シャーロットの手を握る。
 曲が流れ始めた。
 握られた手をそっと握り返し、幸せそうに笑ってシャーロットがプレイトゥギャザーを歌い始める。
 もちろん嘘も一緒に歌っている。
 2人の歌声が美しいハーモニーを奏でながら広場を流れていく。
「先の見えない闇の中、ただがむしゃらに走って来た。
 愛してくれた家族も今は遠く、願っても時は戻らない。
 走って走って力尽きても、両親に会えるなら構わない。
 そう思ってた時、ボクはキミに抱きしめられたんだ~♪」
 間奏に入るとシャーロットが体ごと嘘に向き直り、じっと見つめて最高の笑顔を見せて言った。
「…うそちゃん大好き! 旦那ちゃんでもお嫁ちゃんでも構わない。ボクと家族になってくれない…かな?えへへ♪」
 嘘はこれを聞いてかなり驚いたようで、頬を赤らめて咄嗟には言葉が浮かばない。
「…いくら真珠丸を揺さぶるためだからって、シャロにそこまで言われたらキュン死が止まらないのよ……!」
 鈍い嘘にはこの状況で言われたシャーロットのその言葉は、真珠丸へのパフォーマンスとして言ったものだと思えたようだ。
 シャーロットがそれに対して何か言おうと口を開きかけた時、間奏が終わってしまった。
 慌てて歌を再開するシャーロット。
 一方、立て続けに愛を見せつけられている上に想いのこもった歌まで聞かされている真珠丸は、いつの間にやら座り込んでしまっている。
 両手で膝を抱え込み小さくなっている様子を見るに、かなり弱ってきたのではないだろうか。

 リトルフルールの残る1人、人見 三美は皆の支援に回っていた。
 自分や他メンバーの精神耐性に気を配り、歌声を聞いた者の混乱を抑えられるようクリスタルハートマイクを用いて歌った。
 さらにS因子のレベルが高い三美がイノセンスブライトをまとって星詩を奏でれば、自分だけでなく周囲を包み込む光によって精神異常をもたらす攻撃を防ぐこともできた。
 各自、真珠丸のオーラへの対策は行っていたが、三美のサポートによってさらに万全の態勢で真珠丸と対峙できていたというわけだ。
 シャーロット達の歌が終わり、三美がふと見るとジェニーがようやく心を決めようとしていた。
 だが、まだ僅かにためらいがあるようだ。
 そんなジェニーの背中を押すため、三美が声をかける。
「ジェニー様、一緒に歌っていただけますか?」
 かなり安心した様子でジェニーが頷いた。
 共鳴音叉を使い、かつてジェニーが三美に教えてくれたラブソング、忍恋詩を一緒に歌い始める。
 恋する乙女の、それも片想いの気持ちを再現したこの曲は、歌う側も聞く側も恥ずかしくなってしまいつつ勇気も与えられる曲となっていて、ある意味この状況にぴったりと言えよう。
 三美はジェニーの恋を応援しようと心を込めて歌い、ジェニーは自らの恋心を歌に乗せる。
 2人の歌声は、座り込んでいる真珠丸の耳へと届き、ダメ押しのダメ押しとばかりに愛を伝えた。

 真珠丸はもはやどこを見ているのかも分からないくらい、意識が遠くなっているようだ。
 今なら──。
 と、これまでずっと真珠丸に攻撃する最高のタイミングを、隙ができるのを待っていたコロナが動いた。
 ただ待っていただけでなく、大和と共に他メンバーのサポートも行っていたが、だからといって最大のチャンスを逃すようなコロナではない。
「うそちゃん、フィニッシュも一緒にお願い!」
 そしてそれは、シャーロットや嘘も同じだった。
 シャーロットもコロナも牙刀『処怺』を握りしめ、真珠丸への攻撃を試みる。
 アイコンタクトでシャーロットが初太刀を譲り、まずはコロナが真珠丸にクインタプルスラッシュで斬りつける。
 その間にシャーロットと嘘がロードフォアミーを使い、2人してチョコで道を作る。
 そのまま作ったばかりの道を一気に駆け抜け、嘘と2人で最後の一撃を狙う。
 ほぼ同時に、コロナもとどめを刺そうとアバターズレイを放つ。
 その姿をずっとコロナの盾となり守り続けていた大和が見守っている。
 もし何かあれば、すぐに動いてコロナを守れるように。

 3人から強烈な一撃をもらい、真珠丸のしつこくて重たい愛もさすがに浄化されたようだった。
 何かが抜けて虚空に消えていくのがぼんやり見える。
 どうにか真珠丸は大人しくなり、広場には平穏が戻ってきた。
 ようやく普通にバレンタインができそうだが、巨大な真珠丸が突き進んできたせいで広場は控えめに言って、かなり散らかっている。
 それでも、皆が歓びの声を上げていた。
 中には、事態が収拾してみると皆の前で愛を叫んだり歌ったりしたことを思い出して恥ずかしくなり、赤面して奇声を上げる者などもいた。
 特にジェニーなどは黒歴史が増えたと頭を抱えているようだったが、まあ……とりあえず、平和だ。
 そして、皆が上げる歓声でダヴィデが目を覚ました。
 真珠丸に埋もれたまま、ずっと眠っていたらしい。
 ここまで落ちることなくずっと埋もれていたのが驚きだが、無傷なのも驚きである。
 皆ができるだけ迂闊な攻撃はしないようにしていたのと、真珠丸が大きくてふわふわで深く埋まっていたお陰で無事だったようだ。
 実際、深く埋まりすぎて真珠丸の身体から抜け出すのに、近くにいた特異者達の手を借りなければならなかったのである。


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