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クラッシュ★バレンタイン

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クラッシュ★バレンタイン
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――2――

 広場の片隅で、葵 司は耐えていた。
 真珠丸のオーラに影響されているのが、自分でもよく分かっていた。
 ここにはいないミツキへの想い。
 フラれてしまった今でも、その想いは変わっていない。
 どんなに一途で強い想いがあっても、相手がこの場にいないのではせっかくのコモン・ド・クールも宝の持ち腐れである。
 互いに譲れないものがあったとは言え、ミツキとの関係は罵倒から始まった。
 幸運にも謝罪を受け入れてくれ、それから紆余曲折あった。
 最終的な結果としては、残念なものになってしまったが、今だってミツキに会いたくない訳がない。
 それでもワールドホライゾンに呼ぶのは我慢している。
 全て覚悟の上でミツキの気持ちを確認したのだから。
 今、司はいつ正気を失うかも分からない。
 だが、せめてその前に。
 司が司としていられるうちに──。
「俺は、ミツキが好きだ!」
 心を決めてミツキへの想いを力いっぱい叫んだ。
 司の記憶はそこまでだった。
 真珠丸のオーラに当てられ、狂化してしまったのだ。
 しかしそれでも、真珠丸の耳に届いた司の愛の叫びは、真珠丸の一方的な恋心を弱らせるのに効果があったようだ。
 真珠丸が眉間にシワを寄せて難しい顔になった。
 何を考えているのかは、さっぱり分からない。

 狂化した司が暴れ出してしまう寸前、火屋守 壱星がその動きを封じた。
 板貯古の呼び符から板チョコを召喚し、液状化させたものを使ったのだ。
 壱星は夏織と合流するべく走りながらも、狂化してしまった人々の動きを封じて回っていた。
 とりあえず清浄化で司を正気に戻したが、真珠丸が今の状態のままではきりがない。
 そう思ってついため息を吐いた時、視界の端に夏織の姿が見えた。
「二階堂先輩、俺も手伝いますよ!」
 急いで後を追い、声をかけて合流した。
 夏織と並んで走りつつ、どうすれば真珠丸を最も効果的に揺さぶれるか考える。
 その結果、照れることなく真っ直ぐに想いを伝えるのがいいだろう、と結論づけた。
 幸いにも壱星が想いを伝えたい相手は、すぐ隣にいる。
 まずはメイクムードで雰囲気づくりをし、真珠丸の気も引く。
 壱星の思惑通り、真珠丸がこちらを見ているようだ。
「夏織先輩、大切な話があります」
 そう言って足を止めると、壱星の改まった態度に夏織も止まって話を聞く態勢に入る。
「俺は夏織先輩のことが──好きですっ!」
 この状況、このタイミングで大切な話があると言われたので、夏織もどこかそれを予測していたところはあるかもしれないのだが、まさか本当にそうだとは思わなかったようで目を丸くしている。
 どことなく、頬も赤いように見える。
 真珠丸はと言うと、ただじっと壱星と夏織の様子を見ている。
 夏織がどう反応するかが気になるのか、かなり真剣な表情に見える。
 真珠丸の視線が気になる様子ではあるが、壱星はそのまま言葉を続ける。
 最初は先輩として純粋に憧れていたこと、共に過ごすうちに夏織のことを目で追うことが段々増えていったこと。
 夏織は壱星にとって、月のように先の見えない暗闇の中で静かに優しく見守ってくれる存在であること。
 それらを真っ直ぐに伝え、持って来ていたチョコレートマカロンを差し出した。
 そしてもう一度、今度は先程よりも大きな声で、夏織を真っ直ぐ見つめて告げる。
「夏織せんぱ――いや、二階堂 夏織 キャロラインさん。あなたの事が世界の誰よりも……大好きです!」
 夏織は突然の告白に戸惑いを隠せない様子ながらも、壱星が差し出したチョコレートマカロンをそっと受け取った。
「真珠丸が大人しくなったら……二人で食べるわよ」
 夏織は大事そうにマカロンをしまいながら、照れくさそうな笑顔を壱星に向けてそう言うと、真珠丸に向き直る。
「──は、はいっ! そうと決まれば、さっさと大人しくさせちゃいましょう!」
 壱星は、夏織が想いを受け入れてくれて小躍りしたい気持ちを抑えつつ、処怺を構えるのだった。

 一方、広場の別の場所では今年も大切な相手である水元 環とバレンタインを楽しく過ごそうと思っていたのに、と桐ヶ谷 遥が苦い顔をしていた。
 環とのことがなくとも今日はバレンタインデーであり、恋する乙女にとって…そしてもしかしたら恋するオトメンにとっても1年に1度しかない大事な日だ。
 そんな日をこんなことで台無しにされてはたまらない。
 問答無用で絶対に真珠丸をぶっ飛ばしてやろうと思っているが、今回は普通に攻撃してしまうと面倒なことになる。
 真珠丸に愛を示すのが絶対条件とも言える、バレンタインらしいと言えなくもない何とも複雑な状況なのだ。
 真珠丸のオーラの影響を受けないようにしっかり対策し、隣に立つ環をじっと見つめて叫ぶ内容を考える。
 考えているうちに赤面してしまうが、こういうのは勢いも大切だ。
 赤面したまま、真珠丸の方を向いて大声で叫ぶ。
 環への想いを乗せ、思いきり。
「わたしは環が大好きなの! ほんとは今日だって恋人らしくデートする予定で、また頭なでなでしてくれたら嬉しいなーとか、考えてたんだからね!」
 隣で聞いている環はと言うと、普通ならこんな大声で自分への想いを叫ばれたら相当照れそうなものだが、表面的にはあまり分からない。
 思いの丈を叫んでいる遥の頭に環の右手が乗り、軽く撫でた。
 真珠丸の動きを鈍らせるには愛を示すことが重要……つまり、いちゃつくのもひとつの手な訳だ。
 合理的な環は、その辺を考えて行動に移したのかもしれない。
 まして、そうして欲しい、そうしてくれたら嬉しいと遥が叫んだばかりなのだ。
 急に頭を撫でられた遥だが、ますます赤面しながらも嬉しそうだ。
 状況が状況なので頬が緩みそうになるのを堪え、更に叫ぶ。
「で…でもね! 環が楽しいと思えるような一日が過ごせたら!! それが一番嬉しいの!!!!」
 それを聞いた環は、一瞬だけ驚いた様子を見せたが、僅かな間だけ微笑んだ。
 遥にだけ向けられた、本当に短い時間だけの笑顔。
「さすがだな」
 短い言葉だが、遥への想いのこもった一言。
 そんな2人を見ていた真珠丸の両手をバタバタと動かしていたのが止まる。
 その隙を逃さず、遥が環に目配せする。
 環が頷き、同時に攻撃を仕掛ける。
 互いに想い合う気持ちがなければできない技。
 物理攻撃としての攻撃というより、真珠丸の負の恋心を打ち消すため、2人の想いをぶつけるための攻撃だ。
 いつか必ず環に追いつき、追い越してみせる。
 環に認められ、隣を歩むために。
 遥の攻撃に込められたのは、そんな想いだった。

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