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クラッシュ★バレンタイン

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クラッシュ★バレンタイン
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◆【1】ヤンデレ真珠丸よ、食らえ! この愛◆
――1――

 そうは言っても、ここには経験の豊富な特異者達もいる。
 それだけでも、かなり心強い。
 すぐにそれぞれがどう動くか決まった。
 まずはカルナ・リシルバスが先頭に立ち、真珠丸を迎え討つ特異者達を援護する。
 皆を先導するような形だ。
 向かう先には、必死の形相で愛を叫ぶ真珠丸。
 あれだけ一方的な好意を受け取っては、自らのみならず周囲も不幸にする。
 人との関わりは薄いが、それはカルナにも分かった。
 それにあの大きさでは軽く当たっただけでもダメージがあるだろう。
 タフさにはある程度の自信を持つ自分が、皆の代わりに攻撃を引き受けよう。
 傷を受けてもトライアルパイで回復できる。
 ちょうどいいことにチェリーではなくチリソースの方だから、正気を保つのにも使えるはず。
 自分を優先した生き方ができれば、もっと楽だったろうが今更だ。
「ふう……」
 考えをまとめて深呼吸すると、自らにマインドリセットをかけた。
 今では少し距離のある広場の方からは愛を歌う声が聞こえる。
 こんな時に、とも思うが逆にこんな時だからこそなのだというのも分かっていた。
 歌声に耳を傾け、自分まで暴走しないよう感情を平静へとリセットする。
 少しは真珠丸への目くらましになるだろうとホールアップを使い、真珠丸からの攻撃に備えてモーメントイリュージョンの準備も忘れない。
 後に続く者達にわかりやすいよう、クラウソラスを掲げる。
 この魔法剣の光があれば、真珠丸の注意も少しは引けるだろう。
「……変に攻撃する奴とか、居らんとええんやけど」
 歩みを進めながらかつて愛した親友を想う。
 この想いは捻じ曲げられたくない、捻じ曲げさせない。
 カルナの想いもまた、強いのだ。

 一方、ダヴィデ・ダウナーは先行した純平や他の特異者達と共にホライゾンフィールへ着き、真珠丸を広場へ誘導する役目を買って出た。
 悪友の火屋守 壱星に何やら真珠丸への対抗策があると広場を出る前に聞いている。
 きっとすごい術式なのだろう。
 狂化対策には光風雲月を。
 攻撃は厳禁だ、と改めて心に留める。
 だが、真珠丸の逆上はきっとそう簡単には止められない。
 恋とはままならないものだ。
 だから自分が囮となろう。
 そんな想いで華やかな仕込み傘、天満奴や衆目の独特な身振りを用いて真珠丸の注意を引く。
 そういえば、自分が乗っているのは真珠丸を作ったのと同じ“三代目”久重 元内製作の霊子自動二輪、鳩である。
 速度を調節し、まるで恋の駆け引きでも演じているかのように付かず離れず、真珠丸を広場のイベントステージへと誘導していく。
 途中、真珠丸の注意を引き誘導している自分と一緒にいた方がやりやすいだろう、と純平に声をかけ鳩に乗せる。
 その際、純平の肩を叩いて祓穢警策による防御強化も怠らない。
 これでダヴィデも純平の援護がしやすくなり、一石二鳥だ。
 持参した神酒で純平の気分も高揚するだろう。
 ステージまで行きさえすれば、悪友であり今日の心の主役の一人、火屋守をはじめとして愛を、想いを伝えようという者達がいる。
 後ろに乗せた純平を援護しながら、ステージにたどり着く。
 鳩から降りて真珠丸へと歩み寄り、愛の重さ比べを行うため衆目の向上を展開する。
 ここまで誘導して来て、目立つ天満奴を手放した自分に真珠丸の目が向いているうちに──。
「真珠丸、俺のいつか帰る場所になってほしい」
 付喪神として身体を授かり、恋の素晴らしさを理解した。
 だが別れもまた経験してきた。
 使命を失うのは避けられず、次に使ってもらえるのはいつか分からない。
 自らの想いを込め、不安で擦り切れそうな人々の帰る場所になって欲しいと真珠丸に語りかける。
「今だけでも、貴方の包容力で僕を溺れさせてください」
 口上が耳に届いたのか、真珠丸の叫ぶ声が途切れた。
 その隙を突くように誰かが愛を叫ぼうとしている気配を察知したダヴィデは、人の告白を聞いていては馬に蹴られてしまうと言わんばかりに真珠丸の身体へダイブし、全力で埋もれに行く。
「……ぁーモチフワダァ。スャルワ」
 真珠丸の身体は想像以上にもちもちふわふわで心地好く、ダヴィデはすぐに眠ってしまった。

 ダヴィデが察知したのは、アイン・ハートビーツが愛を叫ぶため、真珠丸へと近付いてきた気配だった。
 アインの夫はもうワールドホライゾンにはいない。
 今は遠い地で元気に暮らしているはずだ。
 どんなに遠く離れ、言葉を交わすこともかなわなくなっていても、アインの気持ちは二人で過ごしたあの日々と何も変わってなどいない。
 彼のヒーロー姿、風にはためくそのトレードマーク。
 そこに姿はなくても、忘れることなどあるはずもない。
 今もその存在を感じる。
 真珠丸のオーラがどんなに強力だろうと、気持ちが揺らぐことはない。
 それでも念の為にと対策まで行ってあるアインの想いが負けることなど考えにくい。
 レゾナントハーツ──愛しいあの人を強く想えば、どんなに離れていようとも、この言葉だって必ず届く。
 そう信じ、夫と自分がどれほど愛し合い幸せな時を過ごしていたかを、地球まで届かせようとするかのように叫ぶアインの左手には、結婚指輪が光っている。
 真珠丸を作ったのは元だ。
 本当は悪い子ではないはず。
 目が覚めれば、きっと皆を和ませてくれるだろう。
 そんな風に思いながら、えくりぷす☆バクルスで威力を高めたきゅーてぃくる・ラブシャインにより、その溢れんばかりの愛をハート型の光に変え、強い愛に触れてたじろいだ真珠丸に向け叩き込む。
 物理的なダメージはないはずだが、真珠丸の動きが止まった。
 愛を叫ぶ声が小さくなり、広場のステージに向けて歩みを進めていたのが棒立ちになっている。

 そんな真珠丸の様子を見て、ここぞとばかりに信道 正義が前に出た。
 何しろ9年も連れ添った妻がいる。
 真珠丸の放つオーラにも負けることのない愛だという自信もある。
 妻は今、この場にはいない。
 今頃は自分のために愛情たっぷりの美味しいチョコを作ってくれているはずだ。
 そう思うと、自然に正義の脳裏にチョコを作っている妻の姿が思い浮かぶ。
 より力が湧いてくるような気がした。
 そして何より、これまで熟年夫婦と言えるほど妻と過ごした長い時間の中であった、たくさんのできごとが思い出される。
 それを真珠丸に聞かせながら、サイズ差を逆に上手く利用して急所を狙う。
 この場にいないとは言え、妻に格好悪い姿は見せられない。
 聞かされる愛の語りに緩慢な動きになりつつも近づく正義を払いのけようとする真珠丸の手は、セカンドステップで回避する。
 三千界を救い、生まれた時代の違う自分と妻の二人で生きる未来を手に入れる──。
「この愛を受け止められるなら受け止めてみろ!」
 正義が左手にはめた結婚指輪に誓ったその願い、愛を止められる者などいない。
 真珠丸は正義の攻撃を受け、最初こそ何やらブツブツと言っていたが、やがて両手で頭を抱え沈黙した。
 ふわふわした真珠丸の身体には、物理も魔法も攻撃は通りづらい。
 頭を抱えているのは、身体的なダメージがあったからというよりも、特異者達から愛をぶつけられたからだろう。

 動きを止めて沈黙し、頭を抱える白い巨大なふわふわ。
 この姿だけを見ればなんの害もなさそうなのだが、実際にはそうではない。
 沈黙したかに思えた真珠丸だが、突然動き出すかもしれないと様子を見ていた特異者達に向かって、いきなり叫んだ。

 どうして分かってくれないのか。
 こんなに好きなのに。
 愛しているのに。
 こんなにも想っているのに、何故なのか。
 誰よりも自分が一番、深く想っているのに。

 早口でまくし立てられたのは、大体そういった内容だ。
 相変わらず、一方的な言いようである。
 ここまでは、広場に来るまでと同じ。
 だが、その後に続いた言葉は、変化を感じさせるものだった。

 自分の愛は間違っているのか。
 何故、どうして、何が違う?
 こんなに好きなのにどうして伝わらない?
 何で?
 分からない、分からない、分からない──。

 それから真珠丸は、ひたすら分からないと繰り返し始めた。
 そして、ここまではゆっくり歩きながら愛を叫んでいたのが、地団駄を踏み始める。
 まるで駄々っ子だ。
 これを見た春夏秋冬 日向が静かに前へと進み出る。
 日向は元の絡繰が暴走している姿に、これは禍神に憑かれているような状態なのだろうと考えた。
「修祓隊士としては黙っていられねぇ。だよな夏織先輩?」
 夏織のいる方をちらりと見て言い、その返事も待たずに攻撃の準備を始める。
 今は地団駄を踏んでいるだけだが、真珠丸がいつ暴れ出すかは誰にも分からない。
 日向には、恋愛感情という意味では愛を叫ぶ相手がいない。
 それでも、仲間や先輩、師範らへの友愛や敬愛の気持ちならばある。
 その想いを胸に、緒恋霊刀の柄を握りしめる。
 バレンタインの今日、想いの力がピークに達しているこの時だからこそ、真珠丸にも少しは効果があるはずだ。
 自分の攻撃では、真珠丸を止められないかもしれない。
 それでも……いや、だからこそ、目的達成の一助となるべく動く。
 とは言え幽世眼を使っての攻撃は、松笠菊の黒鞘や活霊の面があっても消耗が激しく、どんなに光風霽月を使っていても精神的な負担が大きい。
 開眼と閉眼を使い分け、極力閉眼状態で戦うことで大切な仲間を護る。
 今の自分にできることを力の限りやるしかない。
 真珠丸が地団駄を踏むのを止め、再び動き出す。
 それと同時に日向の足も地を蹴っていた。
 真珠丸の動きを鈍らせ仲間を護るため。
 ここぞというタイミングで攻撃を繰り出すために。

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