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クラッシュ★バレンタイン

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クラッシュ★バレンタイン
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――3――

「いざ〜来たさ〜♪ はるばる〜遠い世界へ〜♪
 思い描いた〜♪ 世界を〜描きに〜♪」
 楽しげにコブシをきかせて歌いながらリズ・ロビィがやって来た。
 その手にはプロティアンキャンディが握られている。
 色彩だけでなく建設のセンスまで試せる機会であり、芸術家を志すリズの胸は躍る。
 普段なら風景画は紙に描いて終わりだが、今回は実際に触れることができる。
 リズにとって、新たな世界を一から創れるというのは、これ以上ないくらい魅力的なことなのだ。
 N界霊を召喚する前に、リズはまず【同盟】イベントに集え!で仲間を集める。
 世界の基礎を考えるため、戦闘は彼らに任せるつもりなのだ。
 集めた仲間達をスキルで強化するところまで終わらせてから、N界霊を召喚する。
 現れたのはキャンディケイン、つまりはステッキ型キャンディだった。
 ただし、大人の人間くらいのサイズだ。
 リズは仲間達が戦うのを少しの間だけ見守り、大丈夫そうなので後を任せることにした。
「皆、後は任せたさー!」
 元気の良い返事が返って来たので、心置きなくイメージを膨らませ始める。
 とりあえず、持ってきたプロティアンキャンディをじっ眺め、その性質に思いを馳せる。
 やがて、リズがここに創りたい世界のテーマが決まった。
 それは、硬質の液体世界。
 そこからはテーマに沿って細かいところまで決めていく。
 大体のことが決まったら、今度はPhantasmagoriaでスケッチを始める。
 これはリズが三千界に召喚された時からずっと持っているお絵描きセットだ。
 地表には柔らかなエメラルドグリーンの波が漂い、海面のようだ。
 水面から生えるヤシの木の彫像や街路灯が設置され、水面から躍動感いっぱいに跳躍するシャンパンゴールド色のクジラの彫像も。
 クジラは壮大さを表現するため、とにかく大きく描く。
 ボートを各所に点在させ、友達を呼んだ時のテーブルと椅子をそこに設置した。812
 スケッチしている間に、仲間たちが界霊を倒していたのだが、夢中になっているリズは仲間の1人が報告に来るまで気付かなかった。
 すごい集中力だ。
 そして描いているうちに、新しく思いついてそれも描き足していく。
 道の両側にカラフルな低木が並び、砂浜には白を基調にマーブル模様のパラソルが立てられる。
 筆が進んで予定よりスケッチに時間をかけていたのだが、それに気付いたのも腹の虫が鳴ったからだった。
 他にもやりたいことがあったのだが、仕方ない。
 リズはプロティアンキャンディを食べながら帰路につくことにした。

 仲良しのお友達、マリナ・アクアノートを誘って張り切っているのはノーン・スカイフラワー だ。
 何かと一緒にスイーツを食べる機会がある2人で、お菓子な土地を創ろうと参加した。
 ノーンが用意してきたのはストロングビスケットで、サクサクなビスケットみたいなN界霊が現れるに違いない、とここへ来る道中もマリナに熱弁していた。
「頑張ろうね、マリナちゃん!」
「……うん。頑張ろう」
 2人でどこか楽しげに召喚の準備を整え、N界霊が現れるのをソワソワしながら待つ。
「出てきたら、マリナちゃんは援護をお願いね」
「……了解。任せて」
 そうするうちに、ジンジャークッキーマンのような界霊が現れた。
 ようは、人の形をしたビスケットだ。
 ご丁寧に顔や服のボタンまで描かれている。
 とは言え、簡略化されているせいか、喋ることはできないようで何やら唸っていた。
「すごい! ほんとにビスケットだー!」
 思わずはしゃいでしまうノーンを見て、マリナがツンツンと人差し指で軽くつつく。
「……集中しないと」
「あ、うん!」
 注意され慌てて救済剣ギリーセイバーを構えるノーン。
 2人に向かって走ってくる界霊に斬りかかっていく。
 界霊が繰り出してきたパンチらしい攻撃をアームディフェンスで防御し、そのまま斬りつける。
 素手のはずだが、界霊の身体はそう簡単には斬れなさそうだった。
 もとより回復もしながら根気強く戦うつもりでいたので、ノーンもマリナも冷静だ。
 ギリーセイバーを扱うノーンが強敵だと思ったのか、界霊がマリナを狙って近寄る。
 しかしマリナは物理演算を駆使して界霊の攻撃を避けた。
 そして再び距離を取ると、DD:バスターライフルで的確に援護射撃するマリナ。
 その際、仲の良いノーンの動きを読み違えて誤射するような可能性はゼロだ。
 ノーンもマリナが攻撃するタイミングは何となく分かる。
 息のあった2人のチームワークにどんどん追い詰められていく界霊。
 隙ができたのを見逃さず、マリナがここぞとばかりにラインケージで攻撃を行う。
 界霊は強力な砲撃を受け、かなりのダメージを受けた。
 そこにノーンがとどめを刺す。

 見事に界霊を倒し、戦闘態勢を解く2人。
「マリナちゃん、お疲れさま!」
「お疲れさま」
「手作りのチョコを持ってきたから一緒に食べよ? 甘酸っぱい苺が入っていて美味しいよ!」
 ノーンがそう言って取り出したのは、手作りストロベリーチョコだった。
 2人で仲良く頬張る。
「……おいしい。ありがとう」
 なかなか感情が表に出ないマリナだが、ノーンにはマリナが喜んでくれているのが分かる。
 ノーンも嬉しくなって満面の笑みをマリナに向けた。
「マリナちゃん、ハッピーバレンタイン! 今年もマリナちゃんと一緒にバレンタインスィーツを満喫できてとっても嬉しいよ♪」
「……わたしも一緒にバレンタインを過ごせて嬉しい」
 そう言ってくれたマリナの口元は僅かにほころんでいるようだ。
 少なくとも、ノーンにはそう見えたのだった──。

 乙町 空が用意したのはプロティアンキャンディだった。
 お菓子の土地を柔軟にしたい時に役立つというプロティアンキャンディを触媒にするのだから、きっと召喚されるN界霊も色々な意味で柔軟だろうと予想し、考えられる備えはして来た。
 黒天秤が台座に添え付けられた黒涙号に騎乗し、鈿女ノ涙を手にして界霊を召喚する。
 近接戦での対応になるのか、射撃になるか──。
 界霊が現れ、タイプを見定めたらすぐに武装を召現しようと身構える。
 現れたのは飴細工ででき、額に角の生えたペガサスのような姿の界霊だ。
 見事な翼が生えた馬である。
 一瞬迷うが、飛び立つ気配がないので近接戦で対応すべく両手に槍を召現し、先手必勝とばかりに攻撃を試みる。
 馬が相手だが、空も人騎一体のお陰で遅れを取ることはない。
 空の攻撃を額の角で器用に受ける界霊。
 だが空の槍は2本で、界霊の角は1本だけ。
 じわじわと体力を削られピンチに陥ると、界霊は空に飛んで逃げようとした。
 そこで今度は射撃で対応するべく召現の弓に切り替える。
 しっかりと急所と思われる箇所に狙いをつけ、とどめの矢を放つ。
 急所を貫かれた界霊は落ちて地面に激突したようだ。
 空がその辺りを確認しに行くと、飴細工がバラバラになって辺りに散乱していた。

 ちょうどそこにミリアムとギリアムが通りかかる。
「うん、皆すごく順調みたいだね」
 2人とも空からプロティアンキャンディを分けてもらい、それぞれ口に放り込む。
 甘さが口の中に広がり、美味しさに自然と笑みがこぼれた。
「これだけやれば、お菓子な土地は十分かニャー?」
「そうね。お腹もいっぱいになっちゃってるし、そろそろ撤収しようか」
 ミリアムもギリアムも、特異者達の様子を見に行ってはそこで触媒として用意されたお菓子をつまみ食いしていたので、気付けばお腹がいっぱいになっていたのだ。
 お菓子な土地が集まってこれからできる新しい世界は、一体どんなものになるだろうか。
 今日この場で思い思いにN界霊と戦い、土地を引っ張ろうと尽力した特異者達の思い描いたような世界になれば、とても素敵だなと思いながらギリアムと一緒に帰路につくミリアムであった。

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