■プロローグ■
――サフル大陸、国都グローリア・ラディア、メタルキャヴァルリィ整備デッキ
「テルスの魔力ドライブ炉は、極端な小型化は難しいね」
「エーデル様に“デュランダル”を見せてもらったけれど、直列5気筒で驚いたよ」
アークからやってきた
クロト・アーマースミスと
マリィは、メタルキャヴァルリィ・プギオの魔力ドライブ炉を前に話し込んでいた。
「ドラグーンアーマーの魔力ドライブ炉だとメタルキャヴァルリィを動かす出力が足りなかったんだよ」
「それを補っているのが因子やアークの力だと思うよ。ただ、ボクたち自身、因子の力を当たり前のように使っているけれど、原理は分かってないからねぇ。感覚的、通例的に分かっているといった方が正しいかな」
「そういう意味ではドラグーンアーマーの構造はキャヴァルリィに似てるんだよね。キャヴァルリィの魔力ドライブ炉も魔力適性を持つサクセサーや、スフィアやエアロシップからエネルギー供給が必要だからね。あたしたちでも造れないのも一緒だし」
「エアロシップって、あの空飛ぶ船だよね。スタンドガレオンより遥かに大きい船が空を飛ぶのは凄いよね! あれ、アークでも造れないかなぁ」
三度の飯よりキャヴァルリィが好きなマリィと、物心付いた時にはドラグーンアーマーの整備道具を玩具代わりに遊んでいたクロト、表裏の同一人物は気が合うのか、話は尽きない様子だ。
(先程わたくしが感じた不快さは、因子とやらが原因かもしれませんわね)
女騎士の亡霊――
マイリア・ラディア第一王女の分霊――は、クロトとマリィから少し離れた場所で、クロトの一挙一動をつぶさに観察していた。公の場でないこともあり、今は素のマイリアの口調となっている。
今すぐ彼女がテルスに害を及ぼす存在でないのは分かっているし、
エーデル・アバルトもドラグナーにアバターチェンジしてアークの地で普通に戦っていたので、因子自体はアークでは問題ないもののはずだ。
しかし、聖女である自分や聖女に近い力を持つ
“宰相”ナティスだけが感じる不快さにも何か理由があるはずだと思っていた。
そうこうしているうちに、ワールドホライゾンから傭兵たちがやってくる。
エーデルが場をセッティングし、“宰相”ナティスが淹れた紅茶と茶請けのクッキーが並べられ、意見会の開始となった。