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ムーンライト・ミステリーツアー

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ムーンライト・ミステリーツアー
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サファリエリア 1


 とあるA機関が管理する個室にて永見 博人ワナビは情報を収集していた。
 ワナビはフレイミングとフェイクスクリーンで東トリスに残されているトリス基地の情報を手に入れるためにハッキングしていく。
 博人の方はゴーストコンピュータでA機関のネットワーク回線に接続し、西トリスに残されているトリス基地の情報に探りを入れていった。
 情報技術を駆使しながらフレイミングを囮にクラックコントロールを行い機器改壊で障害を駆逐。
 持ちうる技術を惜しみなく使い、精密探査で以て西トリスに残されている元オデッサ軍トリス基地、現月光園の配備図、配置図、構造図の類を中心とした情報を入手していく。
 各エリアの位置、エリア内のアトラクション施設の配置位置、サファリエリアならばルートコースと幻獣たちのゾーン関係を集めていくが、博人の知識に照らし合わせ精密に探査できるような常識が月光園には存在しない。
 どういう神話を伝承を集めているか関係性が見えてこない。
 無作為に月にまつわる話をかき集めたような、幻獣という存在を片っ端から寄せ集めたようなそんな印象を抱かせるだけだ。

「ふーん。東トリスに残された西トリスの住人が主に手をかけているエリアはフューチャーエリアなんだ」
「で、やっぱり魔素が濃いのはサファリエリア」
「現サファリエリアでは旧実験施設が多々建設されていた、と。車から出さないことであまり自由に調べさせないようにしているのか」
「裏イベントである狩猟イベントに参加しないとサファリゾーンを歩けない。ルールを破って奥へ行ってしまった場合の保障はなし。決まった範囲内であれば逃げるだけの幻獣を狩れる。なるほどね」

 ワナビの集める月光園の情報と博人自身が精査した西トリスに残された情報を照らし合わせることでどこをカモフラージュしたのか見比べていく。
 その差異こそが重要情報になってくる。
 あとはその不自然な場所を実際に調べに行くだけだ。

「子供ひとりが車を動かしていては目立ってしまうよね。大人に見えない大人のムーンチャイルドもいるけど、僕はそもそも11歳だから免許も表立っては取得できないし……」

 しばらく悩み、サファリゾーンの外側にあるふれあいゾーン周辺ならば徒歩でも行けることを確認すると、博人はそのサファリエリアのふれあいゾーンを目指すために部屋を後にした。



◇          ◇          ◇




 ふれあいゾーン。
 そこにはケット・シーや金華猫を始めとしたネコ科の動物を集めたネコの館や、禍斗(かと)や讙(かん)のような比較的狂暴ではないイヌ科の動物を集めたイヌの館がある。
 イヌ科の犬でも中にはサファリゾーンに放し飼いになっているケルベロスやオルトロスといった存在、クー・シーやブラックドッグのような妖精もそこには存在しており、番犬の伝承がある幻獣がよく集められているようだ。
 安直に考えれば番犬が守る先こそ秘密が隠されているのではないかと怪しんでいもいいだろう。
 火車という存在もいることから、もしかすれば狩猟イベントと称して闇に葬られた遺体は火車が遺体を奪っているために誰も発見されないのかもしれない。
 ケット・シーの着ている服はどれも同じ服はなく、それぞれが己の趣味を全開に着飾った素敵なネコであった。
 周囲に溶け込んだ博人はふれあいゾーンにまでたどり着くと実験施設が今でも稼働していそうな場所、つまり通信回線が生きていそうな場所を探るためにネコの館やイヌの館を調べていく。
 一般客がいるエリアではそんな通信回線が目に見える形で存在する訳もなく、裏のスタッフエリアを調べる必要があった。

「あっ」

 さりげなくスティングボールを取り出しスタッフエリアへ転がすと、慌ててそれを取り戻すように博人はそれを追いかけ中に入ろうとする。
 だが、それよりも早く中にいたスタッフがそれを拾い上げ博人を中には入らせてくれなかった。

「これ、ボクの?」
「う、うん。ごめんなさい、拾ってくれてありがとう」
「いいのよ。今度は落とさないでね」
「はーい」

 スタッフによって阻まれたが、他にも精密探査できそうな場所は多岐にわたって存在する。
 一度で成功しないのなら、二度三度やるまで。
 だがしかし、ことごとくわざと落としたスティングボールはスタッフやその場にいる動物に拾い上げられスタッフエリアに入れない。
 博人は立ち入り禁止区域を調べることは断念した。
 これ以上物を落として取りに行くフリをするのは不自然に見えそうだったからだ。
 やりすぎてスタッフ、保安局員に目を付けられてしまうのでは本末転倒。
 ハッキングで情報を掴み、そこに食い違いを見つけられただけでも仕事をしたといってもいいだろう。

 ホライゾンスクーターで移動しながらババや園内で買った名物の月餅を食べながら園内を回っていた他方 優は怪しげな場所や警備員のいる場所、魔獣が一定時間滞在している場所としてサファリエリアをピックアップした。
 サファリエリアならばどれだけ魔獣が一ヵ所に固まっていても不自然ではない。
 そのエリアに向かう道中、望遠付きカメラで風景やのんびり寝そべっている小型の幻獣を撮影することで月光園の写真撮影を楽しむ一般客を装っておく。

「さすがに剥き出しのホライゾンスクーターじゃ入れないよね」

 サファリエリアは放し飼いにされた動物がいる空間を車で走って楽しむアトラクション。
 ホライゾンスクーターではさすがに入ることは出来ない。
 そこでサファリエリア専用の車の中からナビゲーション付きの車を借りることにする。
 調べたいことをじっくりと調べるにはドライバー付きのバスツアーではいろいろ不具合が生じるためだ。
 東トリスはマイカー文化もあまり浸透していないことから貸し出し用の車はそれなりの数が配備されている。
 運転技術がない者も専属ドライバーがガイドを務めるバスツアーも存在し、両面のみ金網のバスツアープランと天井まで金網仕立てのスーパーバスツアープランの2種類が存在した。
 サファリゾーンに入ればケルベロスやオルトロスといったドックエリアやリンドヴルムやワイバーンといった飛行龍エリア、エントやドライアドが住む森林エリア、セイレンやガンダルヴァのような鳥人のエリアが存在する。
 噂では滅多に見られないレアな存在として、虹蛇とバールー(月男)という存在がいるらしい。

「本当に雑多に集められたみたいだな」

 伝承知識に照らし合わせても統一感というものがこの月光園からは感じ取れない。
 裏で行われている実験から目を逸らすためならば手段を選ばないというった風に、手当たり次第に上書きしてはそれが不自然に感じられないように洗脳しているように見受けられる。
 セイレンの歌声にガンダルヴァの楽器の音色を通り越し、たてがみ一本一本が、そしてしっぽが蛇になっているせっかちな黒い双頭の犬のオルトロスの前を通り越し、気になったのはケルベロスが休む宿舎は厳重な扉。
 望遠付きカメラで撮影しながらファインダーグラスによってより精密になった情報技術で分析しようとするが厳重に閉じ込められた扉は外からでは何もわからない。
 サファリゾーンで車から降りるのはご法度だが、降りなければ調べられる物も調べられない。
 通行の邪魔にならないように端に寄せ、いざ侵入を開始しようとしたとき。
 後ろの方でなにやら揉める声が聴こえてきた。

 七種 薺は少々困っていた。
 家政婦探偵が薺をそこそこ金持ちのちょっと世間知らずな学生に見せるためのお供を名乗り出てくれたまではいい。
 スパイグラスをかけて聞き耳で噂話が聞こえてこないか注意しながら好奇心の赴くままとりあえずサファリエリアのバスツアーに参加した薺。

「ねぇ、知ってる? この月光園って軍の生物兵器が幻獣たちに紛れているらしいよ」
「月光園から帰って来ず行方不明になる人が出てて、その人たちが怪物に変えられてしまっているとか怖くない?」
「“月”に通じる転移門がある。って言うけど、転移門なんて本当にあるのかしら」

 どれも陰謀論や遊園地にまつわる都市伝説のようなありきたりなものがほとんど。
 この噂の信ぴょう性など薺には分からなかった。
 そして本題に戻るが、天井にまで登って来る幻獣たちにおっかなびっくりしながらもサファリゾーンを満喫していた薺のバスの後ろを走っていた車が故障してしまったのだ。

「おーい、待ってくれ! 本当に待ってくれ!! 車が動かなくなってしまったんだ! この場合どうすればいいんだ!?」

 薺のボディーガードとしてノーネーム・ノーフェイスはガードアーツで警戒しつつつかず離れずの距離を保っていた距離を変えるかのように騒ぎ出す。
 パニックになったようで慌てて車から降りて置いて行かれないように騒ぐノーネーム。
 それには薺も驚いた。
 こんな野生動物が野放しになっている中で、車から降りるなど自殺行為でしかない。
 ドライバーも慌てて中に戻るように促すがノーネームはパニックで聞こえていないようでどんどんバスへ近づいていく。
 ノーネームのガードアーツの警戒能力は低いが、それでも何か引っかかるものがあったのだが薺には知る由もない。
 ノーネームの演技など知らない薺は自分のボディーガードが危険行為をしていることに心の底から震えた。
 だって周辺には徐々に動物たちが集まってきているのだから。
 スパイグラスの望遠機能ではっきりとその姿を写し取っている。
 どの動物も牙や爪が、筋肉が発達しており非常に危険な生物に見えた。
 一体どうなってしまうのかとハラハラしていたとき。
 一つの小石が岩にぶつかって砕け散った。
 何が起きたか分からなかったが、爆ぜた小石から視線を移せば、フリークフィストで一部の腕を変化させた優がアッシュブローで近くの小石を拾い投げつけた姿が見えた。
 その威力に怯んだ幻獣たちが離れていく。
 その隙にドライバーはノーネームを自分が運転するバスへと引きずり込んだ。

「トラブルがあれば車から降りずにその場で待機しててください! 車から降りるなんて自殺行為でしかありません! 入口で緊急ボタンを渡されましたよね? そのボタンを押せばすぐにスタッフが救助に向かいます。このような危険行為は二度としないでくださいね」
「悪かったな。どうすればいいのか分からなくてパニックになってしまってな。気をつける」

 ノーネームも素直に謝罪して空いている席に座る。
 それからは何事もなく出口を出てこの心労を癒すためにふれあいゾーンへと薺は向かう。
 誰かに背中から押されてバランスを崩した際にスパイグラスを落としてしまったが、ノーネームが拾い上げてくれたことで眼鏡は無事だった。
 それが普通の眼鏡にすり替わっていることなど薺は一切気が付かなかった。

「回収してきたぞ」
「御苦労」

 ノーネームのアタックモービルで待機という名のサボりをしていた葵 司がノーネームが回収してきた薺のスパイグラスを受け取る。
 屋外も人混みも大嫌いな引き籠りの司はノーネームの手によって強制連行された怨みを忘れていない。
 面倒くさそうにスパイグラスをサイコメトリーで見ていく。
 インスピレーションを頼りになにか引っかかるもの、事象がないか見定めていけばやはりノーネームが騒ぎを起こしたサファリゾーンにいる幻獣に目が留まった。
 イヌ科の幻獣の数が多いのだ。
 邪推かもしれないが、守りたいもの、隠したいものがあるからこそ、門番の伝承を持つ幻獣を集めているのではないか。
 そんな直感が司に降りてきた。
 あとはその直感をアーティストの腕前で美しき暗号を仕込むまで。
 風景画をお絵描きセットで描き始める司。
 その表情は先程までの不貞腐れた顔が一切なかった。

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