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ムーンライト・ミステリーツアー

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ムーンライト・ミステリーツアー
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チーム:SSAのスパイ活動


 【チーム:SSA】はそれぞれ己の表の顔を活かして潜入を開始する。
 事前に潜り込めたのはリーダーの幾嶋 衛司は喫茶“憩いのルーン”【【不動産】喫茶店】を持つが開店したばかりでお客さんも少ないから、時折店を臨時休業して雇われシェフとして雇われるという体でウェイターのブリギット・ヨハンソンととあるエリアのレストランに配属された。
 他にすでに潜入しているのは医療班に入り込んだシジマ アキナ
 衛司とブリギットと同じ給仕の顔を持つ音無 ミュートはまだミッションが始まる前から潜り込めるくらいのレベルではなく、エージェントの上司から今回の任務のために用意してもらった手引きで潜入した形だった。
 事務員の黄泉ヶ丘 蔵人も同様で手引きされて潜入した故に信頼関係は築き上げられていない。
 メカニック担当の保智 ユリカに至っては駆け出し故にギリギリ通行証を手に入れただけで月光園のスタッフには顔も存在も知られていない。
 そんな潜入組とは別口で一般人として学生のアクア・フィーリスが先刻来場した。
 時間的にミュートの休憩が始まる頃の時刻を狙って。
 パンフレットの地図とにらめっこしながらミュートを待つアクア。
 敷地の広さにとても驚き、成り立ちを思い出す。
 基地を整備し作り直したという情報からもきっとたくさんの苦労をしたのだろうと同情する。
 だが、怪しいことも裏ではしているらしいが、それは一体なんなのだろうか。
 その内容は忘れてしまったが、そこはミュートに合流した時に聞けばいいだろう。
 ただ待つのもなんだしと周囲を見回せば、数人の学生グループが歩いているのに目を付けた。
 学生らしきグループにパッと突撃したアクアはカインドマスクを顔に貼りつけ警戒心を持たせないようにして声をかける。

「ねーねー、幻想生物? っていうのに興味があるんだけど、どこにいるか知らないかなー?」
「え、幻想生物? それならライダーエリアかサファリエリアにいるんじゃない?」
「だね。初めて来たんだったら、ライダーエリアのケンタウロスにガイドしてもらえばいいかも」
「ケンタウロスがガイドするの!?」
「そうだよ。皆いい肉体をしているのよね。デッサンに持ってこい」
「それか車の中からいろんな動物が見れるサファリエリアだっていいぞ。触ることはできないけど」
「ライダーエリアとサファリエリアね。ありがとう! 一度でいいから会って見たかったの!」

 学生グループから情報を聞き出しているとミュートの姿を発見したアクア。
 学生グループに手を振って別れるとギュッと抱きついた。

「ア、アクア!?」
「ミュートちゃん! 逢いたかったよっ時間は大丈夫?」
「昼休憩時間だからそれなりに、だな」
「それなら、どっちのエリアに行く? さっきの学生が幻想生物を見るならライダーエリアかサファリエリアが良いって教えてくれたんだけど」
「どっちも体験するのに時間がかかるな。遊びに来ているのに時間を気にする客は目立つ要因だし、オレたちじゃ車を乗り回すのもできない。ギリギリの綱渡りになるがサファリエリアの方が可能性は高そうだ。ショーの時間に間に合わなくなるからって理由で短時間で回ってもらおうぜ」

 衛司やブリギットとは違いまだ給仕として馴染み切っていないミュートが遅刻するのは非常によろしくない。
 せっかくのアクアとのデート()なのにこれではエスコートも十分にしてやれないではないか。

「ヴィランだよ、魔獣が居そうな場所を教えてもらったから、今から行ってみるね」

 無線機で衛司に情報を届けるアクア。
 その通信を無事に終えるとサファリエリアに向かう巡回バスに乗り込んだ。

「と、いう訳で、この子はショーも見たいんですって。私もまだ仕事があるから最後まで付き合えないから、できる限り最短コースを巡ってほしいの」
「直近のショーといえばあそこのショーですね。分かりました。ちゃんとその時間に間に合うように、それでいて楽しい解説をお送りしましょう」
「ありがとうございます」
「お気になさらず。これもドライバーの役目ですから」

 ミュートのトークセンスでサファリエリアの専属ドライバーと交渉を完了したミュートがアクアをエスコートしサファリエリアの見学が始まった。
 様々な幻獣がそれぞれのテリトリーで行動しているのを小型の自動車から見ていくアクア。
 その幻獣が魔獣かどうかは超直感や危機回避の本能で判断しようとしている。
 どのエリアにどんな動物がいるかサラッとホライゾンパスケースにメモしていく。
 アクアだけでは進んでいるコースを記憶することは難しいので、巡回コースをミュートが記憶することでフォローし、何事もなくサファリエリアを出ていく二人。
 アクアの直感でビビット来たいくつかのポイントにマークが記されている。
 確証を得る段階には至らなかったのはその直感的な感覚がバイナリアに反発したからか。

「それじゃ、オレは自分の持ち場に戻らないといけないから」
「うん。付き合ってくれてありがとう。わたしはこのメモを衛司さんに渡してくるね」

 ミュートとアクアはそれぞれ別れた。
 メンテナンス員として偽装した許可証で園内に潜入したユリカはメンテナンス作業をしている社員と合流し、工具箱の道具とアイアンモンキーでアトラクションのメンテナンスを行っていく。

「なぁ。幻獣も作り物のロボットか何かで、メンテナンスが必要だと思うんだけどさ、する必要はないのか?」

 そう尋ねたのはスタッフ側が動物たちの正体が魔獣だということをちゃんと把握した上で働いているのか気になったからだ。

「まさか。あの幻獣たちはロボットじゃなくてそれっぽく見せかけているだけの普通の動物さ。演出で幻獣っぽく見せているだけ。あ、これは一般客には」
「安心しな、言いふらしたりしないよ」
「それを聞いて安心した。あ、でもフューチャーエリアは完璧ロボットばかりだからメンテナンスは必要かもな」

 高所のアトラクションのメンテナンスで上がった際にチラリと全景を見回したが、ヴォルケーノエリアのドラゴンくらいしか見つけることはできなかった。
 ここからではあのドラゴンが本物の幻獣か判断できないが。
 別のメンテナンスに入るために移動している間にユリカは無線でメンバーにこのことを伝えるのだった。
 その情報を事務室で受け取った蔵人は積み重なった書類やバインダーにまとめられた書類を調べ始める。
 探しているのは魔獣やその餌と思しきものの納品記録。
 餌の量が分かればそこから魔獣の数もある程度推測できると判断してのことだ。
 様々な書類を漁り不自然に量の多い食料や詳細の分からない納品物がないか探していくがそれらしい書類は見つからない。

「あなた、一体なにを調べているのかしら?」

 同じ事務をしている女性が訝しげに蔵人を見つめてくる。

「いや。早く仕事を覚えるために過去の記録を見ていただけだ」

 悪魔の会話術で誤魔化しにかかる蔵人だが、女性の疑いは中々晴れない。
 なんせ本当に怪しい書類など見つけていないのだから。

「そう。そんなに覚えたいのなら、ここからここまでのファイルを念入りに頭に入れておきなさい」
「マイガッこの量を……!?」

 悪魔の会話術で完全には誤魔化せなかった蔵人に女性が年代別に分けた動物の健康記録を調べるように言い渡す。
 動物の健康具合を頭にたたき入れればそんな疑問も出てこないだろうと新たに仕事を命令した女性は泣く泣くその作業に入った蔵人を見届け自分の事務仕事に戻った。

「シジマ先生って素敵ね……」
「ほんとうに。憧れちゃうわ」
「見たこともない技術を使っているけど、どこで学んだのかしら?」

 医療班に潜り込んだシジマは、医療記録も調べられる程度には周囲との信頼関係は築き上げている。
 怪我の痛みでパニックになっている怪我人をハートケアし、冷静さを取り戻させようとする優しさ。
 危険把握で素早く怪我の具合を把握し手当をする技量はそれなりに目を引くものがあるが、その技術は異世界の技術であることからも周りからは疑問の目が向かうことになる。
 ここにいる医療スタッフもそれぞれ戦争を体験し必死になって医療技術を積み重ねていった技術職員なのだから。
 未知の技術で治療に当たるシジマは下手をすれば正体に気づかれてしまいそうだが、バイナリアの医師として名を上げた信頼から辛うじてスタッフに溶け込んでいた。
 これまでの園内で治療した医療記録から怪我人の中でも気になるのは狩りのイベントに参加した人が怪我をしたという情報がどこにもないことだろうか。
 ディープリガードで考え、インスピレーションで閃いたのは、この狩りのイベントこそが暗殺行為の偽装なのではないかということ。
 完全に魔獣に食い殺されてしまえば医療記録には記録されない。
 なんせ怪我人は存在しないのだから。
 日常的な表の世界の怪我人は精々が子供が転んでひざやひじを擦りむいたという程度。
 食品による食中毒も食品アレルギーも発生していない。
 持病の発作が発生した際の記録もあったが、それも不自然ではない。
 狩りのイベントだけが不自然な程に怪我人が発生していないのだ。
 この情報はリーダーの衛司に、メンバーに共有する必要があるだろう。
 救急セット【救急セット】の補充に行くと言ってその場を離れるとシジマは無線を入れた。

「そのうち仕事としてじゃなく妻とのデートで来たいんだけど、オススメの場所はあるかな?」

 次々に情報が衛司の無線に飛び込んで来るのを耳にしながらも顔には出さずに同じレストランのスタッフに問いかける。
 今の衛司はちょっとした休憩時間なのだ。

「オススメといっても具体的には?」
「そうだな。妻は竜が出てくる神話や御伽噺が好きだから、この園にも竜がいるなら場所を教えて欲しい」
「それならヴォルケーノエリアがいい。あの火山がある」
「へー。あそこ、たしかジェットコースターがあったよね」
「そうそう。そこそこ」
「じゃあ、機会があったら誘ってみるよ。ありがとう」

 衛司が礼を言って調理場に戻る際、席でジュースを飲んでいたアクアがさり気なくサファリエリアで調べてきたメモを衛司に握らせた。
 衛司が知りたいのはこの園の防衛戦力だ。
 キャストの大半は東オデッサ軍の軍人、あるいは政府機関に異動した元軍人であることは時間をかけて調べ上げた。

「エージくん」
「ブリギットちゃん。どうしたの」
「あとで見ておいて。次のデートの予定日が書かれているから」
「シフトが決まったんだ。俺の方もあとで見ておくから、予定が合ったらデートしようね」
「うん。期待してる」

 メモを手渡しブリギットはホールへと戻っていく。
 そのメモにはホールで給仕をしながら集めていた情報が書かれていた。
 デートの可能な予定日などそこには書かれていない。

「よう。ラブラブじゃねーの」

 ニヤニヤと年配の男性が衛司をからかってくる。
 年が若いのに夫婦となった二人のことを新婚さんと言ってきたのはこの男性がきっかけだっただろうか。

「ええ、それほどでも」
「カーッ羨ましい! 自分の店をこの年で持つだけじゃなく、奥さんまでいるんだから世の中分からねーよな」
「カッツさんにも奥さんがいるじゃないですか」
「アレはいいんだよ」
「またそういうことを言って。奥さんに知られたらあの足で蹴りを入れられますよ」

 このカッツとは潜入し始めの頃から仲良くしてくれている料理人だ。
 奥さんのチェーニャは元々ここの常連だったらしい。
 カッツの一目惚れで猛アタックしたのはいつの頃か。
 今ではしっかりと尻に敷かれる関係に収まっている。

「ご、ごほん。ブリギットちゃんもニクイね。放し飼いになっている幻獣の場所まで知りたいだなんて。夫婦になってもデートができる関係ってのはいいねェ」

 やたらと絡んで来るカッツを笑いながら受け流し衛司は調理の仕事を開始する。
 頭の中では先程ブリギットが手渡してきたメモの内容やSSAのメンバーから上げられた情報を防衛戦術的目線からデフラグメンテーションで整理をしていた。
 アクアとミュートのサファリエリアの配置地図、ブリギットのライダーエリアの幻獣の情報、その他諸々を整理していけば、有事の際はサファリエリアの魔獣を含め、パーク内の大多数が戦力として動けるようになっているだろうことが予想される。

「これは一筋縄ではいかなさそうだ」

 ポツリと呟いた声はフライパンを振り回す音に紛れて掻き消えた。

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