クリエイティブRPG

ムーンライト・ミステリーツアー

リアクション公開中!

 101

ムーンライト・ミステリーツアー
リアクション
First Prev  1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11  Next Last

ヴォルケーノエリア


 受付を終えた苺炎・クロイツは月光園の中を進んでいく。
 このフリーパスもA機関から経費として提供されたもの。
 食事やお土産代も組織で負担してくれるというのだから、実に太っ腹である。

「月はどこの世界でも存在する。ここの世界の月は綺麗なのかな。ワンダーランドのような物騒な月じゃないといいんだけど。さて、この世界からは、月がどう見えているのか……見えない、誰かが隠した裏側なんてものもあるのかもしれないよね……」

 研究者としてうずくものがある。
 A機関からの事前情報では受付で精神操作が行われているようだが、対策済みの自分はその洗脳からは解放されている。
 だからこそ、見えてるのに周囲がスルーしてるものは危険なモノかもしれない。
 正しい反応を返せずにボロを出す可能性が十二分に存在した。
 オブリビオンで見たものは忘れ、個人所有の事務所に帰った際にディープリガードを行うことをトリガーに思い出し直そう。
 念のためにアンブリンキングで自分の本心すら騙しておく。
 ここからはただ月光園を楽しむ研究者、苺炎・クロイツだ。

「やっぱり遊園地に来たからにはジェットコースターは外せないよね」

 火山の頂上にはドラゴンが座っており、コースターが近づくたびに火を吹いている。
 あの炎は本物なのだろうか。
 偽物だとしてどこまで本物に寄せているのだろうか。
 伝承知識があってもあのドラゴンの背景にある伝承をここから窺うことは出来ない。

「よし、アレにしよう」

 『月姫のジェットコースター』に乗り込んだ苺炎。
 ゆっくり出発したコースターはまず銀の根、黄金の茎、白き玉の実を持つ枝が生えた林へと入っていく。
 次第に海に近づき、荒海を切り裂くように猛スピードで走っていくと、今度はあの外から見えていたドラゴンの炎のブレスの中を駆け抜けて行った。
 熱さは感じるが魔法のベールで守られているように誰も怪我をしていない。
 幻だとしてもリアルだった。
 もしかすれば本物のドラゴンのブレスを本当に魔法で遮っているだけの可能性も捨てきれない。
 炎の中を突き抜けると一匹の燕に導かれるようにひとつの貝を手に入れてジェットコースターは黒髪の綺麗な女性の前で止まる。
 女性が悲し気に首を振ると徐々にその姿が月に向かっていくように小さくなっていく。
 それで終わりかと苺炎が気を抜いた瞬間。
 ジェットコースターは逆走するように後ろ向きでどんどん走り抜ける。
 燕もいない。手にしていたはずのあの貝も気づけば消えていた。
 今まで見てきた出来事は夢だったのか。
 暗闇を走っていたジェットコースターが止まると人工的な灯りが点き安全バーが解除される。
 これで本当に終わりのようだ。

 いろいろ情報が多すぎた。
 近くのベンチに座り『月姫のジェットコースター』について世界観の考察していく。
 基本的な伝承しかまだ知らないが、あのモチーフは間違いなくかぐや姫だろう。
 あの煌びやかな林は鉢蓬莱玉の枝がモチーフかもしれない。
 まだもがれていない木に成った白い玉の実がたわわに実っていた。
 荒海は龍の首の珠を探していたあのシーンだろうか、それにしては火鼠の皮衣や仏の御石の鉢といったモノは出なかったように思えるが。
 ここにはいろいろな世界観が独立している。
 世界観を学んで楽しみたいタイプの自分にすればどれも刺激的な魅力にあふれている。
 脳を楽しませ、パンフレットに書かれていたナイトパレードが始まるまで時間を潰していく。
 月の世界がモチーフならばきっと夜景も綺麗だろう。

「デート向けの特別なアトラクションとかないかな? あーあ、恋人と来たかったなぁ。次は誘えたらいいなぁ……」

 次に目についたのは『月の狩人』。
 月光園にいる幻想生物をぬいぐるみにした人形をおもちゃの弓矢で落とせたらその景品がゲットできるらしい。

「やってみようかな」

 興味を惹かれた苺炎はトライしてみる。
 簡単そうでいてなかなか命中しない。
 最後の一本でようやく撃ち落とすことに成功した苺炎はそのぬいぐるみを抱えて次のアトラクションを吟味する。
 そうしてナイトパレードまで楽しんだ苺炎は眷属のコウモリを放って帰宅する。
 夜景をコウモリを通して見るためだ。

「あー楽しかった!」

 事務所に戻ってきた苺炎はおもちゃの弓矢で打ち落としたぬいぐるみをそっとテーブルに置くと、いろいろ考察したメモを広げディープリガードを開始。
 そういえばオブリビオンを自分に仕掛けていたような。

「あーーー! 早く書かなきゃ。すぐに書かなくちゃ。忘れちゃう、忘れちゃうから!!」

 月光園にいた動物が本物であったこと。
 すごい演出、まるで魔法のようだと思ったことは本当に魔法だったこと。
 書かなくては頭から零れ落ちてしまう。
 それだけあの月光園は目隠しのベールが分厚かったのだ。
 そういう演出だと思い込んでいた、思い込ませることの危険性を改めて自覚した苺炎だった。



◇          ◇          ◇




「月光園で多少気を付ければ素敵な時間を過ごせるでショウ!」

 そう勢いよく意気込むのは【パレット】のチェレスティーノ・ビコンズフィールド
 タイムトラベラー的勘でこの月光園へ駆け出しのヘアメイクアーティストである奏梅 詩杏とウサギのライカンスロープである学生の剣堂 愛菜を誘ったのだ。
 詩杏の頭の上にはトレードマークのフィリア【ミニューズ】が乗っている。

「楽しそうなところですね! テンションを上げるためにもまずはジェットコースターに乗りましょう! その後は鏡の迷路とかミュージカルショーとかお船に乗ったりとか……にゃふふっ♪ 色々回りたいですねー!! サファリエリアのバスツアーも捨てがたいですが、もちろん観覧車も当然行くですよ! 定番のラストですよね!! 高いところからの綺麗な景色も楽しみです!」
「そうだね……あたしもいろいろな乗り物、乗りたいな。速い乗り物は良く乗るし好きだから」
「ジェットコースターですカ。実は乗った事無くて……楽しみデス!」

 月光園の雰囲気を味わうため、まずはヴォルケーノエリアまで巡回バスでやってきた三人。
 『月姫のジェットコースター』は列になっており、しばらく並ぶ必要があった。
 それとなく詩杏が手すりや壁に触れてみて、サイコメトリーで残留する魔素から情報を読み取ってみる。
 読み取れたのは事前調査報告書で読んだかつての軍事施設だった頃の風景。
 ライカンスロープやヴァンパイアを使った実験の一部が読み取れた。
 その実験を隠すためにこのテーマパークは出来上がったのだ。
 その実験は今も裏では行われていることからも、ライカンスロープやヴァンパイアは東オデッサ政府に狙われる可能性があった。
 再生公社という公営組織が大きくかかわっていることも別の残留魔素から読み取った。
 即座にテレパスで伝える詩杏。
 ハッと表情を変える二人だが、すぐにその驚愕の顔を押し込んで一般人に成りすます。
 順番が回り、ジェットコースターへと乗り込んだ三人。
 詩杏と愛菜がペアになり、チェレスティーノは後ろに知らない人と共に乗りこみジェットコースターは出発した。
 前からは「キャーッ!!」と楽しそうに声を上げてはしゃぐ詩杏の声と、「ひゃん」というか細い愛菜の声が聴こえてくる。
 チェレスティーノが聞き取れたのはこれだけ。
 初めてのジェットコースターはまさに魂が飛び出るかの経験だった。

「……た、楽しかったデス……ガクッ」
「大丈夫……?」
「真っ青ですけど、ティノさん少し休みますか?」
「平気……デス。せっかくの休日を無駄にしたくありませン。次にいきまショウ」

 よっぽどチェレスティーノの顔色が悪かったのか、次のアトラクションは悪いドラゴンを銃で退治するシューティングアトラクションを選んだ詩杏。
 元気よく銃を撃ちこむ詩杏に対し、愛菜は慎重に照準を合わせて確実に撃ち落とすヒットマンだった。
 次々に休むことなくアトラクションを制覇する勢いで愛菜とチェレスティーノを引っ張る詩杏。
 あまり大きな声を発声をすることが出来ない愛菜ながらも、時折声を出して必死に楽しもうとする愛菜。
 アイドルの世界ではファンがたくさんいたことがある二人はこの世界であっても魅力的な人だった。
 先輩アイドルに尊敬の眼差しを向けながらチェレスティーノは決して二人の間に入ることはない。
 以前どこかで聞いたのだ。
 女の子同士の友情……いわゆる百合の間に挟まる男は死! の定めにあると。
 百合百合しい関係の間に入ることを避けていたが、どうやら二人はそのことを気にしている様子は見受けられない。
 ならばあまりこちらで気を配っていては失礼に当たるだろう。
 日も傾きだした頃。
 最後のアトラクションとして『ソールとマーニの観覧車』に乗り込んだ。

「いやー遊びまくりましたねー」
「うん。楽しかった……おしゃれで獣の耳を生やす人がいるけど、気を付けた方がいいかも。再生公社に目を付けられて実験体にはなりたくないな」
「あまり怖がっていてはかえって違和感を覚えさせることになりまス。先輩方はそうでなくとも魅力的な人なのデス。さいけど明るくパワフル、それでいて優しくて、守って付いていきたくなる詩杏先輩に、声が基本出ないけど、時々小さく可愛らしい声が出ちゃいつつ楽しもうとしている愛菜サン。尊みを感じずにはいられませんネ…流石お二人とも沢山のファンがいる先輩アイドルでス! ボク自身にもお二人みたいな魅力が身に付いたら……おっと、ついついボクたちの元々の世界のアイドルモードになってしまいまシタ。ハハハ」

 トークセンスを活かして詩杏と愛菜を褒めるチェレスティーノ。
 ゆっくりと回る観覧車内で今日遊んだアトラクションについて思い出話に花を咲かせる三人であった。
 夕日をバックに三人が笑顔で収まった写真を出口で受け取り、それぞれは帰路についた。

First Prev  1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11  Next Last