クリエイティブRPG

ムーンライト・ミステリーツアー

リアクション公開中!

 101

ムーンライト・ミステリーツアー
リアクション
First Prev  15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25  Next Last


・【チーム:アシェリッター】

 現在の状況は、月光園でエカテリーナの保護に動いている他のエージェントたちにも周知された。
 その連絡を受けて、動きだしたのが【チーム:アシェリッター】だ。
 大通りに駆けこんだエカテリーナはもう誰もが怪しく見えるのか、そのままじっとしていればいいものを、自らへ近づいてくる人間を避けるかのように、右往左往して、最終的に再び人気のない場所へと駆けこもうとしている。
 まあ、エカテリーナの判断も分からなくはない。
 誘拐ならともかく、殺害すること自体は人目があってもできなくはないのだ。
 逆にエカテリーナの周囲に人が多すぎて、容疑者が絞りこめない状況で行うという手もある。
 要は殺害の瞬間を見られなければいいのだし、仮に見られたのだとしても、自分から目撃者として名乗りを上げて、本当の目撃者を犯人に仕立てあげてしまえばいい。
 うっかり監視カメラに犯行の瞬間が映っていたなど、言い逃れできない状況であれば通用しない手だが、まさかプロのエージェントがそんな失敗をするはずもないだろう。
 そのため逃げる側の視点からすれば、監視カメラのどれか一台を見つけてその範囲内に留まるというのが簡単かつ分かりやすい対策だが、なりふり構わない強硬手段に出られたらどうしようもないし、そもそもその一台をハッキングされる可能性も考えれば、確実な手段とはならない。
 そして、増援を相手に絶賛奮戦中の【チーム:【月夜の影】】だったが、状況を動かす選択権は敵の方に移っており、堅い守りで時間稼ぎを行う【チーム:【月夜の影】】を迂回する敵エージェントたちが現れていた。
 そのフォローの意味も籠め、エカテリーナの保護に動いた【チーム:アシェリッター】は、同タイミングでトラブルを抱えており、メンバーが現場に集まるまでタイムラグがあった。
 当初の作戦どおり自分たちがエカテリーナに接触するのを、女性陣のチームメンバーが接触を済ませたあとと決めていたレーゼラッテ(朔日 睦月)とキュルビス(萩原 雅怜)は、運悪く女性陣と比べて現在地がエカテリーナから遠かった。

「すみません、通してください」
「……こりゃ、時間かかりそうだねぇ」

 睦月は遊園地側から、雅怜は魔獣の猟場側から、それぞれエカテリーナのもとへ向かっている。

「あー、ちょっと、この車なんだけどね……」
「た、たまたま自家用車が装甲車だっただけよ!」

 そして魔獣の猟場から急行しようとしたランツェ(桐島 風花)は、遊園地エリアに入ったとたん、フォックスハウンドを走らせていることについて月光園のスタッフたちに説明を求められていた。
 もちろん、すらすらと理由を話した。
 危険な魔獣を間近で写生したいからこの車にした、と。

「でも、どうもこの辺りじゃ見かけない車種みたいだし、照合しても出てこないから……」

 言い訳を信じてもらえず、風花に対するスタッフたちの追及がしつこい。
 とはいえ調査を強行するにはスタッフ側も理由が足りず、何とか出させてもらえたが、フォックスハウンドに乗って出発するまで、時間を浪費させられた。
 一方、えっちらおっちらホライゾンチャリで移動しているのは、アシェンプテル(今井 亜莉沙)なのだが、アシスト機能つきとはいえ車やバイクと比べると速度に差がある。
 とはいえ、遊園地エリアなら人混みの影響で多少緩和されているし、むしろ小回りが利いて便利かもしれない。

「ダイエットになるかも! とか言ってる場合じゃないのよ~!」

 亜莉沙は亜莉沙で、予測できない方角に何度も方向転換しつつ迷走するエカテリーナを見失わないようにするため、必死になって追いかけていた。
 対するそんなエカテリーナは、どこまでもついてくる自転車の存在に恐怖し、ますます逃げる。
 怪しい人間じゃない、保護に来たと言いたいが、誘拐が目的の純血同盟も名目は保護だし、政府の暗部組織だって表向きには保護のため来ているに違いないので、エカテリーナとしてはもう騙されないぞという気持ちである。

「こっちだ! こっちに来い!」
「待って待ってそっちいっちゃ駄目ー! そいつ敵だからー!」

 ここぞとばかりに敵エージェントたちにも保護に来たのだと味方の振りをする者が現れたため、エカテリーナの疑心暗鬼に拍車がかかる。
 さらには亜莉沙がエカテリーナの行き先に回り道して保護しようとすれば、今度は敵エージェントたちが亜莉沙を刺客に仕立てあげ、濡れ衣を着せようとする始末。
 それでも、裏では少しずつ、睦月と雅怜の援護を受けながら、ザルツァ(白森 涼姫)の手によって敵エージェントたちの排除が進み、徐々にだが数は減っていっている。

「が、頑張れ、私……!」

 自分を元気づけ、亜莉沙は加速するため、ペダルを漕ぐ足の力を強めた。
 稼いでくれた時間を活用し、涼姫は裏の顔のザルツァとして、エカテリーナの周囲に見え隠れする、敵エージェントの殲滅を急いでいた。
 アタックモービルに乗って走るザルツァが、反射的にハンドルを切ると、地面に赤い火花が散る。
 小さな弾痕が穿たれたのを、ザルツァは見逃さなかった。
 銃撃されたのだ。
 振り返れば、敵エージェントの運転する車が追いかけてきていて、助手席に乗るひとりから銃口が向けられていた。
 エージェントを襲って着実に戦力を減らしていくザルツァを、ついに敵も排除に動いたらしい。

「人目がなくなったとたんに、遠慮もなくなるようね! まったく、嫌になるわ!」

 ハンドルを切り、蛇行して撃ちこまれる弾丸を避けると、サイドカーに搭載されたショットガンで応射しつつ、反転し突撃する。
 あわや衝突するかというところで、アタックモービルをウィリーさせ、ザルツァは車体ごと跳躍しルーフの上に着地した。
 着地と同時に放った流れるような四連蹴撃でルーフを叩き割り、割れ目を強引に手で押し広げると、唖然とした表情で頭上を見上げる敵エージェントたちのうち、運転手を強引に天井へ引きずりだし、車外に投げ捨てる。

「シートベルトくらい、しとけってのよ! 常識でしょ!」

 残りの敵エージェントたちが、手元の銃器へ一斉に手を伸ばしたのを見て、ザルツァはアタックモービルを発進させ、天井から降りて逃げだす。
 とっさに運転を代行しようとする者がいなかったのか、あるいは運転席への移動が間に合わなかったか、蛇行を始める敵エージェントの車のフロントガラスに散弾を撃ちこめば、ガラスの割れる音と共に車が横転し、タイヤを空回りさせた。
 涼姫のアタックモービルの後方から加速して伸びてくる車があった。
 反射的に銃口を向けそうになるザルツァだが、車種を見て思い留まる。
 雅怜の運転するギミックワーゲンⅠだ。
 今はキュルビスとして動いている。

「すまない、遅くなったねぇ」
「心配しないで。敵はまだまだ残ってるわ。喜んでいいわよ」
「嬉しくないねぇ」
「本当に、ね!」

 会話の途中で、ザルツァが伸縮式スタッフを後方へ振り抜く。
 斜め後方からバイクで寄ってきていた敵エージェントが、吹っ飛んで地面でバウンドし、視界外へと消えていった。
 続けてキュルビスも助手席に置いていたトイボックスのギミックを作動させ、サブマシンガンの銃口を展開する。
 窓を開けてトイボックスを突きだし、後続の車に弾幕をばらまいた。

「広い施設で良かったねぇ。普通の遊園地や動物園だったら、こんなことすれば絶対目撃されて、たちまち警察が飛んでくるよ」
「ある意味では、場所を選べば目撃者が出ないほど広いせいで、こんなことになってるんだけど?」

 単なる家出娘の保護任務のはずが、いつの間にかド派手なカーチェイスをする羽目になっているふたりは、軽口を叩き合いつつ襲撃を凌ぎ切った。
 そのまま、亜莉沙との合流を目指す。
 足止めを喰らっていた風花は、途中で睦月を見つけていた。
 移動手段になるものを持っていないため、睦月はほぼ予定からずれず、推測したとおりの場所にいた。
 助手席のドアを開け、ちょいちょいと手招きする。

「乗っていく? 皆集まりつつあるらしいわ」
「そうみたいですな。同乗させていただきましょう」

 じっくりアトラクションや商業施設を見て回るならともかく、目的地に集合するなら足があったほうが確実に早いため。睦月は風花の誘いを受けることにした。
 そのフォックスハウンドを、路上駐車していた車が音もなく発車し、追跡する。
 不審な動きを見せた車に、睦月も風花も気づいていた。

「後ろの車、見えるかしら?」
「ええ。きな臭いですな」

 後ろの車はフォックスハウンドと同じ方角にハンドルを切り、延々とついてくる。
 不気味に沈黙を保つ様子は、機会を伺っているかのようだ。
 実際に、この車があとをつけてからはずっと人目があるので、その信憑性が増している。

「このまま敵を案内するのも馬鹿らしいわね。ここで倒しておくべきかしら」
「同意します。この際今のうちに黙らせておきましょう」

 風花はわざと人気のない魔獣の猟場へ続く道へ進路を取り、追跡者たちが動くのを待った。
 開いた窓から突きだされ、向けられたのは、銃口。
 それを見て、表の顔を演じていた風花と睦月の表情が一変し、ランツェとレーゼラッテとしてのものになる。

「っ!」

 とっさに急ハンドルを切り、ランツェは不意討ちを避けた。

「反撃します」

 冷静に、助手席の窓から身を乗りだしたレーゼラッテがショットガンステッキで応戦し、散弾をばらまいた。
 一部がタイヤに命中し、パンクした車が勢いよく回転して横転し、沈黙する。
 慌てた様子で出てきた男たちが、直後に爆発した車の衝撃で吹きとばされ、地面に転がる光景が、遠ざかっていった。
 最終的に、エカテリーナに接触することができたのは、女性陣である涼姫、亜莉沙、風花の三人。

「見ての通りの、休暇中のガードマンよ。ここは危ないから、一緒に避難しましょ?」
「お、追いかけるだけでずっと手を出さなかったんだから、せめて無害だっていうことだけは、信じてもらえない……?」
「写生にきた学生だから、お願い信じて!」

 三人とも表の顔で、説得を試みる。

「も、もう騙されませんよ!」

 しかし、警戒心の権化となったエカテリーナには保護しにきたと説明しても信じてもらえず、逃げられてしまった。


First Prev  15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25  Next Last