クリエイティブRPG

ムーンライト・ミステリーツアー

リアクション公開中!

 101

ムーンライト・ミステリーツアー
リアクション
First Prev  15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25  Next Last


・【チーム:ノーネーム】

 その場が安全でも、その安全をエカテリーナが確信しなければ逃げられてしまう。
 味方が得たその教訓を活かし、【チーム:ノーネーム】はエカテリーナを追跡している。
 月夜鴉(クロウ・クルーナッハ)と土方 伊織は、手分けして物体に残留した魔素から情報を読み取り、エカテリーナを見つける手がかりを探した。
 とはいえ、魔素の薄い遊園地エリアでは、見える映像は断片でしかなく、エカテリーナを追うにはどうしても推理が必要になる。
 エカテリーナの姿がなかったとしても、他の人々が映りこんでいることもあった。
 それが敵エージェントだったりする可能性も皆無ではないため、明らかにエカテリーナが映っていない映像だったとしても、精査する必要があった。
 クロウはわくわくはしゃいでいる演技をしつつ、券売機やアトラクションゲート、整列用の誘導柵などに狙いを絞って情報を読み取っていた。

「……楽しそうだなぁ」

 演技のはずなのだが、映像を確認するクロウの呟きにはちょっぴり本心が混じっていた。
 映っているのは家族連れやカップルがほとんどで、それに混じって友人同士で来たのであろう、少年少女の集団などが続く。
 誰もが楽しそうにしていて、見ているクロウにもそれが伝わってきた。

「っと、仕事に集中しないと」

 そわそわしてくる自分の気持ちを自覚しつつ、エカテリーナの捜索を続ける。
 映像の中でクロウが注目したのは、単独でいる少女だった。
 それが、エカテリーナの変装姿である可能性が高い。
 さすがに異性に化けていることはあるまい。骨格の違いなどから、素人変装では一般人相手でも普通にばれる。
 伊織は動物園エリア、いわゆる魔獣の猟場の方で情報収集に励んでいる。
 ダッシュモービルで軽快に走行を続ける伊織の視界からは、遠目ではあるがのびのびと過ごしている幻獣や魔獣の姿がよく見えた。
 基本放し飼いなので檻などはないし、もちろんリードもない。
 近づいてきた幻獣や魔獣に、伊織も追いかけられることがあった。
 小型の草食獣みたいな姿なら怖くないのだが、明らかに巨大だったり、見た目が完全に肉食獣のそれだったりすると、ただの興味本位なのか、それとも獲物と見られたのか、分からなくてちょっと肝が冷える。

「お嬢さまを人知れず始末するには絶好の場所ですね。万が一目撃されても誤射として言い張れますし、目撃されなければ文字どおり獣の餌にして闇に葬って終わりです」

 暗殺するにしても、誘拐するにしても、人目につきにくいというのが、犯行を行う側にとって一番都合がいい。
 今はエカテリーナは自重して魔獣の猟場にまだ足を運んでいないものの、時間の問題だろう。
 我慢できるとは思えないし、できるならそもそも月光園に来ること自体を我慢するだろう。
 限界まで我慢して、それが爆発した結果が、今のこの状況なのかもしれないけれども。
 くまなく魔獣の猟場を探しまわった伊織だったが、エカテリーナの姿を見つけられないまま一周してしまった。

「おかしいです。全く姿が見当たりません。入れ違いでしょうか。それとも単に見逃しただけ?」

 一応伊織なりに集中して探していたので、見逃しというのは考え辛い。
 入れ違いで遊園地エリアへ移動したという可能性もあるものの、それにしても物体の読み取りでもなにも引っかからないのはおかしい。
 そもそも、まだ魔獣の猟場には足を踏み入れていないと考えるのが、自然だった。
 魔獣の猟場にエカテリーナがいる可能性は極めて低いということで、探索のバトンは遊園地エリアを調べているクロウへと返される。
 最終的に、エカテリーナはクロウが張り巡らせた捜索網に引っかかった。
 やはり、まだ遊園地エリアにいたらしい。
 しかし同時に、刺客らしき不審な動きをする者たちの姿も見え隠れしているので、まずはこれを排除しなければならない。
 実際に、キャストに客引きされ、どこかへ誘導されそうになるエカテリーナの姿は、読み取った映像としてクロウがいくつも確認していた。
 何人かは本当にただのキャストである可能性も高いだろうが、間違いなく、刺客は紛れているだろう。

「予定どおり進めるわ。私たちは刺客を排除する。エカテリーナの保護と二手に別れましょ」

 雷切(桐ヶ谷 遥)の号令で班分けが行われ、エカテリーナのところへはクロウと伊織、さらにそれに加えて四十雀(シレーネ・アーカムハイト)、セキセイ(川上 一夫)、コザクラ(川上 四穂)の三名が保護に向かうこととなった。
 刺客の排除は遥、ダブルイーグル(ジェノ・サリス)、ブラック(クロノス・リシリア)の三人だ。

「分かった、行くぞ」
「うん。頑張ろうね」

 表の顔から、裏の顔へ切り替える。
 ダブルイーグルとブラックの会話を聞きながら、実際に振り返ってふたりがついてきているのを確認しつつ、雷切は進む。
 二台のアタックモービルを、ホライゾンバギーが追いかける形だ。
 刺客かそうでないかは、ある程度判別をつけることができた。
 ただのキャストであるならば、すぐに別の客引きに戻っているが、そうでないキャストは、さりげなくエカテリーナの足取りを追っている。
 雷切の目から見れば、それはどこからどう見ても尾行に他ならない。
 それらはひとまず、他の味方に任せることにする。
 まず行うべきは、魔獣の猟場に伏せられているだろう、敵戦力の撃滅だ。
 最悪エカテリーナが魔獣の猟場に誘導されてしまっても、守りきれるよう先んじて動いておく必要があった。
 ハンタードッグを放ち、金属の臭いを辿らせて、大雑把な位置をつかむと、そこへ急行する。
 不自然に停車している車を見つけた。
 本当にただの客なのか、それとも実は敵のエージェントなのか、見極める。
 方法は簡単だ。
 殺気を放てばいい。
 一般人は殺気の感知などできないだろうから、戦意を失うにしても、居場所がばれて積極的に狙われるにしても、何かしらの行動に出た時点で刺客だと分かる。
 一斉にドアが開き、機敏な動作で敵エージェントたちが飛びだしてきた。
 もう、敵エージェントだと断定してもいいだろう。
 数は四人。
 雷切たちよりひとり多いが、問題はない。

「突っこむわ。銃で援護をちょうだい」
「任せろ。十全に動けるよう、お膳立てしてやる。まぁ、威嚇射撃で倒してしまうかもしれんが」
「やってみる」

 裏の戦いが始まった。
 駆けだす雷切の背後から、ダブルイーグルがクワイエットガンで銃撃する。
 雷切に接近戦を仕掛けられ、鎬を削り弾き飛ばされた敵エージェントのひとりが、合図を出した。
 先ほどの一当てで実力差を感じ取ったのか、敵エージェントたちは車に乗りこもうとする。
 逃げだす腹積もりなのだろう。
 なにしろ、魔獣の猟場は広いのだ。
 見失えば、再発見するのには骨が折れるだろう。

「そうはさせないよ」

 機転を利かせたブラックが、敵エージェントたちが降りてきた車のタイヤに弾丸を撃ちこむ。
 避けられたものの、アタックモービルに乗った雷切が追いかけてショットガンで銃撃し、パンクさせた。
 ブラックはまともに戦うより、援護に徹した方が活躍できると己の実力を分析し、的確に雷切を支援する。
 ダブルイーグルも、自分の攻撃に合わせてブラックが追撃をかけてくれるため、ひとりで雷切を援護するより動きやすかった。

「いいぞ。その調子で頼む」

 褒めながら、ダブルイーグルは、雷切と斬り合う敵エージェントの武器を撃ち、手から弾き飛ばした。
 素手になったその隙を逃さず、鞘に収めた膝丸を居合抜きして、雷切が斬り捨てた。
 そんな風に、遥、ジェノ、クロノスの三人がエージェントの雷切、ダブルイーグル、ブラックとして、魔獣の猟場で敵戦力を壊滅させて回るあいだ、遊園地ではシレーネと一夫、四穂によるエカテリーナの保護の試みが行われていた。
 一夫と詩穂は、魔獣の猟場へのルートを張りこみに向かい、シレーネが失敗しても、致命的にならないように動いた。
 というわけで、最初にエカテリーナと接触したのはシレーネだった。

「へい彼女、ひとり? アーシもひとりなんだけど、良ければ一緒に見て回ろうぜ~」

 陽キャの気配を放ちながら笑顔でぐいぐいパーソナルスペースを詰めるシレーネを、エカテリーナはまじまじと見つめる。
 顔から靴まで、じっくりと。
 服装や容姿的には、取り立てて珍しくはないはずだが、居心地の悪さが凄い。

「……あなた、東トリスの者ではありませんね? それどころか、オデッサの者でもありませんね?」
「んっ!?」

 思わず変な声が出そうになり、シレーネは咳きこんで誤魔化した。
 なんでバレた。
 とにかく言い訳を考える。
 留学生で、有名な月光園に遊びに来ている?
 駄目だ。ならばどこから来た留学生かと聞かれたら、どう考えても自然な答えにならない。

「な、なんで分かったし……」

 頭を抱えるシレーネだったが、種明かしをすれば単純なこと。
 シレーネのまとう良い子的なオーラと、自分の顔を美少女に見せる技術は、この世界由来のものではない。
 その事実が、エカテリーナに異邦人の印象を抱かせたのである。
 警戒心を解くこと自体には成功しているので、それを慰めに思うべきか。
 とはいえ、それもシレーネがこれからどう言い繕うかにかかっているのだが。
 言い訳を思いつかず物陰に隠れたシレーネは、一夫と四穂に連絡して助けを求めた。

「た、助けてほしいし!」
「任せてください!」
「すぐそっちに向かうね!」

 返事をした一夫と四穂は、一夫が運転するギミックワーゲンⅠでシレーネのもとへ急行した。

「ごみん。アーシ怪しまれちったかも」
「気にしないでください。私たちで何とかします」

 一夫は四穂を連れ、エカテリーナの傍に近づいた。

「パパの嘘つき! 乗せてくれるって言ったじゃん!」
「落ち着いて、大丈夫、乗れるからね……」

 ギャン泣きする詩穂を宥めながら、エカテリーナへ話しかける。

「すみません。娘がこのアトラクションに乗りたいとごねるので連れていきたいのですが、道に迷ってしまいまして。どう行けばよろしいでしょうか」

 パンフレットの地図を見せて、一夫はエカテリーナに道案内を頼んだ。
 安全のために、魔獣の猟場から一番遠いアトラクションを選択している。
 もっとも、本当に詩穂がそれに乗りたがっているという理由ももちろんあるのだが、
 親子連れに見える一夫と四穂を、エカテリーナは見捨てられなかったようだ。

「それなら、こっちです。ここを右に曲がって……実際に案内した方が早そうですね。ついてきてください」

 癇癪を起こした四穂を見て、苦笑したエカテリーナ自ら、案内してくれた。
 しかし、道案内しているうちに、シレーネによって削がれていたエカテリーナの警戒心がむくむくと復活してきた。
 よくよく考えれば、先ほどのシレーネの時点でエカテリーナ視点で見れば怪しいことこの上なかったし、多少の時間差はあるとはいえ、入れ替わりにこうして一夫と四穂の道案内をすることになるのもおかしい。
 そうすると、エカテリーナ自身の判断だったはずの、道案内という行為自体疑わしくなってくる。
 思考誘導の二文字が、エカテリーナの脳裏に浮かんだ。
 しかも、間の悪いことに、魔獣の猟場から一番遠いアトラクションということは、自然と月光園の遊園地エリアの、敷地の隅ということになり、当然中心部からは離れるので、人気も疎らになっていく。
 シレーネも一夫も四穂もまったくそんなつもりはないのだが、悪い方に状況が一致してしまう。
 身の危険を感じたエカテリーナは逃げた。


First Prev  15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25  Next Last