クリエイティブRPG

ムーンライト・ミステリーツアー

リアクション公開中!

 101

ムーンライト・ミステリーツアー
リアクション
First Prev  15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25  Next Last


・【チーム:パンドラ】

 保護が成功したかに見えたものの、そう簡単にはいかない。
 倒した敵エージェントたちの増援が来て、戦闘続行になったのだ。
 ふたりの聡美はエカテリーナを逃がすための時間稼ぎとしてその場に残り、その後の捜索を味方に委ねた。
 エカテリーナについては、背格好こそ分かっているが、月光園のアトラクションのうち、どんなものが好きなのかなど、詳しい情報はほとんど分かっていない。
 見つけだすには、彼女の思考を予測して先回りするよりも、人海戦術で目撃証言を集め、居場所を絞りこんでいった方がいい。
 一応変装をしているようだが、一般人による変装なので、プロであるエージェントたちの目を誤魔化せるほどではない。
 そして、それについては敵エージェントが見つけた場合にも同じことがいえるため、どちらが早くエカテリーナを発見できるかが、その後の保護を成功させる鍵だった。
 逃げだしたエカテリーナに敵エージェントの手が伸びる前に、再び保護しなければならない。
 様々なチームが協力して、エカテリーナの捜索を行っている。
 【チーム:パンドラ】も、そんなチームのひとつだった。
 更衣室から拝借した作業員の制服と、変装技術で作業員に化けたUnknown(綾瀬 智也)は、保守点検の名目で観覧車に乗っていた。
 スパイコロンによって調合した作業油の香りを微かに漂わせており、姿は完全に化けることができている。
 観覧車に乗っているといっても、智也はゴンドラの中にいるわけではなく、その姿は観覧車の中心部の、保守点検用のスペースにあった。
 言うまでもなく、関係者以外立ち入り禁止の場所だ。
 梯子を昇って到達できるこの場所からは、観覧車で隔てられた半分のみとはいえ、月光園を一望できる。
 当然ながら、観覧車の向こう側は見えない。
 一度地上に降りて、また別の梯子を昇り、反対側に回らなければならないだろう。

「ふーむ……」

 スパイグラスを覗きこんで智也が探しているのは、エカテリーナもそうだが、敵エージェントたちも対象に入っている。
 向こうも変装しているだろうから、見た目で判断することは困難だ。
 相手もプロなので、見た目で簡単に分かってしまう素人変装とは違うのである。
 行動から推測し、目星をつけて見破っていくしかない。
 そのためにも、まずはエカテリーナを再発見する必要がある。
 作業員の制服を拝借するなど、智也は騒ぎの火種となりうる行動をいくつか取っているため、あまり時間はかけられない。
 時間をかければ、それだけリスクが高まる。
 急ぐ智也は、エカテリーナらしき姿を発見する。
 最後に見た時と同じ変装姿なので、おそらく本人だろう。
 まさか替え玉を用意していて、見失ったタイミングを利用して入れ替わっているなんてことはあるまい。
 それができていたら、もはやプロの所業である。
 むしろ、そんなことができるなら、エカテリーナはもっと本格的に変装していてもおかしくない。
 問題は、そんなエカテリーナに接触するキャストがいることだった。
 なにかを話しているようだが、さすがに距離が遠く、会話の内容は分からない。
 だが、エカテリーナがキャストのあとをついていくことに決めたのだと、その行動から分かった。
 距離があるのであくまで疑惑止まりであるが、そのキャストに、智也の直感と観察眼がビンビンと反応している。
 智也は即座にチームメンバーへ連絡を取る。

「エカテリーナを発見しましたが、どこかへ誘導されようとしています。追跡をお願いします」

 伝えながら、智也は周囲から観覧車へ園内スタッフらしき者たちが集まりつつあるのに気づいた。
 制服を拝借したのがばれたのか、予定にない点検を行っている人物として、不信感を抱かれたか、はたまたその両方か。
 どちらにしろ潮時であるのは確かなので、逃げ場がなくなる前に監視を中断し、観覧車から降りると、監視をカノン(佐門 伽傳)に引き継いでもらい、ギミックワーゲンIに乗ってさっさと逃げた。
 一方、連絡を受けたチームメンバーであるラ・マン(紫月 幸人)、ソオド(高橋 蕃茄)は、それぞれの居場所からエカテリーナのもとへ急行していた。
 再び監視の役割を、移動した智也に返した伽傳も、遅れてダッシュモービルに乗り、エカテリーナのもとへ向かっている。

「俺も接触したいけど、ちょっと距離が遠いねぇ……。ソオド、先行してくれるかな」
「分かりました。向かいましょう」

 幸人からの通信を受けた蕃茄が、アクセルを踏みこむ。
 距離的には蕃茄が一番近く、さらに足としてギミックワーゲンⅠもあるため、早い。
 あいにく未来を語る賛同者たちから同行者は得られなかったものの、フットワークそのものはひとりの方が軽い。
 幸い渋滞にぶつかることもなく、スムーズに現場に到着することができた。
 見れば、すっかりエカテリーナは敵エージェントを味方と信じこんでいる様子で、のこのこ誘導されようとしている。
 そのまままっすぐ魔獣の猟場に連れていかれでもすれば、さすがにエカテリーナとて怪しんだだろうが、ワンクッションツークッション挟まれれば、気づけないのは仕方ないかもしれない。
 まだ子どもなのだから。
 今蕃茄が姿を現しても、保護の名目でエカテリーナと接している敵エージェントに刺客の濡れ衣を着せられて泥沼になりかねないので、まずはエカテリーナから敵エージェントを引きはがす必要があった。
 そしてその行為は、元々妨害役として動く予定だった蕃茄の行動とも一致している。
 ここから蕃茄は、ソオドとして動く。
 操糸で引っぱって、無理やり引きはがそうとしたものの、糸を切断して逃れられた。
 相手の実力次第では糸が切断されることはあり得るので、仕方ない。
 あまり気は進まないが、表の顔に戻って次善の策でいくことにした。
 まだ人混みから離れ切ったわけではないのでそれなりに人通りは多く、シチュエーションも整っている。
 ぶつかりざまに、スタンウォッチで電撃を浴びせて無力化を狙う。
 駄目なら言いがかりをつけて騒ぎを起こし、スタンウォッチを使ったこと自体をうやむやにし、あわよくば騒ぎを嫌った相手側が引くことを狙う。
 いわゆる、当たり屋作戦である。
 とはいえぶつかる瞬間をエカテリーナに見られたら怪しまれることこの上ないので、彼女がよそ見をした瞬間にぶつかった。

「いくら混んでるからって肩から真っ直ぐぶつかってくることはないだろ!」
「え、ぶつかってきたのはそっちの方からじゃ……」

 そのとおりなのだが、ここで引いては負けである。

「お前ここで騒ぎを起こす犯人だな、野放しにしたら東が崩れるぞ!」
「……さては貴様、お嬢さまの命を狙う刺客だな!」
「何を! それを言うならお前の方こそ刺客だろう!」

 ここに、ごり押しの正体擦り付け合い合戦が始まった。
 エカテリーナもさすがに片方は味方で、もう片方が敵だということは悟ったようだが、それよりも状況への困惑が先走っているようで、「え、何これ……」みたいな唖然とした表情になっている。
 そんなエカテリーナを、「同じように騒ぎに巻きこまれた通りすがりの聖職者」な体で連れだそうとするのは、伽傳だ。
 避難はできたものの、連れ出しにエカテリーナが警戒しないはずもなく、そんな彼女を信用させられるかどうかは、伽傳がどう対応するかにかかっている。
 伽傳は、自分のことを、教会に来る子供たちを、月光園に連れていくため、その下見に来たのだと説明した。

「まあ。教会の方なのですか……」

 信じてもらえたかは分からない。
 エカテリーナの視線は右へ左へ泳いでいる。
 退路を探している風にも見えなくはない。
 裏では、エカテリーナの目がなくなったのでラ・マンも加わり、ソオドとふたりで秘密裡に自分たちが言いがかりをつけた敵エージェントを実力行使で排除している。

「やー、災難だったねぇ」

 安全を確保してから、何食わぬ顔で、幸人としてエカテリーナに接触した。
 新手と勘違いしてエカテリーナは逃げた。


First Prev  15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25  Next Last