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ムーンライト・ミステリーツアー

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ムーンライト・ミステリーツアー
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・少女はどこに1

 救護室に詰めるナースキャストの中に、ティー(マリアベル・エーテルワイズ)の姿があった。
 なるべく怪しまれないよう、かなり以前から潜りこんでいるので、働き始めてそれなりに月日が過ぎている。

(……見た感じ、大丈夫そうではあるけど)

 そのあいだに救護室についてはいくらでも調べる機会があったので、問題ないように思えるが、マリアベルは決して慢心していない。
 気づけなかっただけかもしれないし、あるいはそもそも直前になって何かが隠された可能性も、念頭に入れている。
 例えば、監視カメラなど。
 もし本当に最近監視カメラを仕掛けられたのなら、今から丹念に調べれば分かるかもしれない。
 とはいえさすがに、それを行うには人の目が多すぎるので無理だ。

(敵が紛れていないか探ってみようか)

 時折運ばれてくる客に治療を施したり、出動要請に応じて同僚のナースキャストと共に魔獣の猟場に向かったりしつつ、合間の休憩時間を利用して、顔に見覚えのないナースキャストと会話を試みた。

「見ない顔だね? 新人さん?」
「先日働き始めました! よろしくお願いします!」

 はきはきと喋り、礼儀正しく礼をするその態度からは怪しさは感じられない。
 嘘をつかれているかもしれないものの、少なくとも表面上は自然に振る舞っているように思えた。

(信じても良さそうかな。……今のところは)

 一方、磯菊(ナハイベル・パーディション)は魔獣の猟場近くにあるレストランで、新人の給仕スタッフとして忙しく働いていた。

「おーい、新入り! 魔獣の猟場の受付にヘルプに入ってくれ! 手が足りないそうだ! ついでにこっちの飲み物と料理も売ってきてくれ!」
「はーい!」

 指示されるままにレストランを出たナハイベルは、それとなく辺りを見回す。
 受け取った料理と飲み物は、持ち運びを考慮した容器に入れられ、いわゆるテイクアウトのような状態になっていた。
 それらを運びつつ指定された受付所に向かってみれば、魔獣の猟場が近いこともあり、普通の格好をしている客たちに混じって、まるでファンタジー世界から迷いこんできたかのような姿の客たちがちらほら見受けられる。
 彼らは狩りに行くのだろう。
 エカテリーナへの刺客が武器を持って紛れるのには、絶好の状況だ。

(調べたほうがいいよね)

 受付を手伝いながら、ナハイベルは片っ端から狩りに来た客へ声をかけた。

「お客様、狩りの際に携帯できるお飲み物やお食事はいかがでしょうか?」
「うん? ああ、ひとつ貰おうか」

 断られたり、素通りされることの方が多いものの、中にはこうやって応じてくれる客もいる。
 料金を受けとって品物を手渡す際に、さりげなく手を握ってみたり、表情などを観察してみるものの、刺客だと確信できるような人物はいなかった。
 一般人にしては掌にまめが多すぎる者もいたが、それだけで刺客と判断するには厳しい。
 ただ武道を嗜んでいるだけの一般人かもしれない。
 エカテリーナを探して動きはじめた各々だが、今のところ発見報告は上がっていないようだ。
 ただ、潜りこんでいるであろう刺客たちも息を潜めており、月光園では一見すると穏やかな日常風景が流れている。
 とはいえ、味方か刺客のどちらの仕業によるものか、騒ぎが起こることは皆無ではなく、時折キャストたちが現場に急行し、客の混乱を落ち着かせる姿も見られた。

「ありゃ、キャスト連中もぴりぴりしてきてるな……」
「特ダネの匂いがするぞ。それも一級品の」

 呟く冬風(水谷 大和)へ、前方から歩いてきた夏風(リク・ライニング)が、すれ違いざまに声をかける。
 そのまま、リクは表の顔で大和へ流れるように話を切りだした。

「遊園地の取材に来たのですが、お話を伺ってもよろしいでしょうか?」
「ん? ああ、構わないぞ。向こうに俺のアタックモービルがあるから、そっちで話そう」

 しばらくして、バイトの給仕と遊園地を訪れた記者という演技を続けるふたりを乗せたアタックモービルは、遊園地ゾーンの道路を行き交う乗り物の列にあった。
 アタックモービルを走らせる大和は、数台の車を挟んで、同じ車がずっとついてきているのに気づく。

「あの車、怪しくないか?」
「それ以上に、まずいぞ。ひとりで行動している女学生らしき婦女子を発見した。エカテリーナかもしれない」

 大和が手で示した後方には、エカテリーナを狙う刺客の車が、リクが手で示した先には、変装したエカテリーナらしき少女の姿が、それぞれあった。
 とんでもなくニアミスしているものの、刺客が大和やリクに気づいていないようなのは、幸か不幸か。

『保護対象らしき少女を見つけたが、近くに敵かもしれない奴らもいる。来れないか?』
『僕は行けるよ。エカテリーナかどうか確かめてみる』
『近くだから向かうよ! 加勢するね!』

 味方がいないか通信で探したところ、出動中のマリアベルが連絡に応じて、受付所からもナハイベルが急行するとのことだった。
 連絡を終えた大和とリクは、少女がエカテリーナであるかの確認と、敵らしき者たちへの対応のどちらを優先するか考えた末、敵への対応を優先することに決めた。
 追跡されていたことが濃厚なので、敵も大和とリクを怪しんでいる可能性が高く、逆にすぐに動きだす様子がないため、エカテリーナらしき少女に気づいていない、あるいは気づいていても今すぐ手を出すつもりはないと予測がついた。
 そして、大和とリクを追跡していたのが敵……つまり純血同盟、あるいは政府の暗部組織のエージェントだというのも、人気がない場所に移動した時点で戦闘が始まったことで、すぐに確信に変わった。
 駆けつけたナハイベルも、磯菊として戦闘に突入する。
 そのあいだに少女に接触しようとしたマリアベルだったものの、辺りに漂い始めた剣呑な気配に気づいたか、逃げられてしまった。
 騒ぎに気づいたJ(青井 竜一)、蛇(ネヴュラ・シェーレ)、紅目の猫(ダークロイド・ラビリンス)、ジャック(卯月 神夜)、人形姫(エナ・コーラルレイン)らが、裏の顔としてそれぞれ動きはじめた。

「向こうだな。急ぐぞ」
「道案内は任せておけ」

 戦いの現場は蛇の使役するコウモリが把握しているし、スパイグラスを使うことで、遠目であるがJも確認した。
 Jの運転するギミックワーゲンⅠに同乗した蛇は、上空からの目を利用して客に邪魔されずに到着できる道順を調べ、伝える。
 その道を駆け抜けたギミックワーゲンⅠが、速やかに現場に到着した。
 さらに退路を塞ぐ形で、徒歩勢の紅目の猫、ジャック、人形姫の三人も現れ、敵エージェントたちへ包囲網を敷いた。
 味方はナハイベル改め磯菊に、Jと蛇、さらに紅目の猫、ジャック、人形姫を加え、合計六人。
 車から出てきた敵エージェントたちの人数も、奇しくも六人だった。
 龍を思わせる角や尻尾を生やした姿に変身した磯菊が、罪狩りの鎌を手に突進し、敵エージェントのひとりに斬りかかった。
 援護に入ろうとした他のエージェントに、Jはショットアンブレラを発砲する。

「お前の相手は俺だ」

 弾丸を避け、慌てて物陰に隠れようとする敵エージェントに告げた。
 Jの銃撃に対し、敵エージェントは光弾を放って応戦してきた。
 迫る光弾を、Jは弾丸を撃ちこみ迎撃する。
 空中で眩い光と共に、光弾が弾け飛んだ。
 蛇はJを援護する。
 鳩をけしかけつつ、自分は物陰に隠れ忍び足でJと戦う敵エージョントへ接近を試みる。
 銃撃戦をJと行っている敵エージェントは、蛇の行動に気づけない。
 だが、気づいた別のエージェントが、蛇の行動を咎めた。
 追いかけて物陰に走りこむと、足元から影の手を伸ばし、蛇へ向けて放出する。
 戦場となっているこの場所は、近くにアトラクションの入口がなく、また客が行き交う遊園地エリアの順路から離れた場所にあるため、基本的に人気はあまりない。
 そのさらに物陰となると、完全に人の気配は感じられず、薄暗く、そんな中で漆黒の手を認識するのは難しい。
 気づくのが遅れ、蛇は危うく捕まりそうになったものの、何とか回避が間に合い掠めたのみに留まる。

「惜しかったがな。当たらんよ」

 さすがにこれを放置して援護には行けないため、蛇はそのエージェントに向き直って反撃に転じた。
 紅目の猫、ジャック、人形姫の三人は、敵エージェント三人と戦っていた。
 こちらはお互い敵味方が入り乱れる乱戦だ。
 どちらの連携力が上回っているかが肝となるだろう。

「ワタシの相手はお前か。楽しませてくれ……!」

 大上段から振り下ろされたゲートマンが、アスファルトを粉砕し、大量の土砂を巻きあげながら深々と地面に食い込む。
 その一撃を避け、威力の高さを見た敵エージェントは、徹底して紅目の猫を近づかせない作戦に出た。
 どんなに威力の高い攻撃でも、それが近接攻撃であるのなら、近寄らせなければいい。
 遊園地エリアを彩る木々を障害物として利用する敵エージェントに対し、紅目の猫は木々を叩き斬り、切り倒すことで強引に詰め寄っていく。
 紅目の猫を、ジャックと人形姫が援護する。

「あまり無茶すんじゃねえぞ……って、やっぱ聞いてねぇな」

 ハンタードッグをけしかけて噛みつかせるジャックが、紅目の猫に話しかけて苦笑する。
 人形姫は支援攻撃の手を休めない。

「支援はお任せですぅ! 弾はたっぷり用意したですぅ!」

 ぽいぽいぽいと投げられるのは、ホットドッグやポップコーンといった、遊園地によくある軽食の数々だ。
 容器ごと投擲されるそれらは、クラッカーのような音をたてて次々に破裂し、中身を飛び散らせている。
 殺傷能力は皆無だが、地味に結構な嫌がらせになっていた。
 投げているものがものなので、一見では通りすがりに乱入したただの学生客にしか見えない。
 三人がかりでまずは紅目の猫を無力化しようとする敵エージェントの連携を、ジャックがそうはさせじと引っかき回す。
 二振りのブッシュナイフで攻撃すると見せかけて、その本命は蹴撃を中心とした体術だ。
 よくよく見れば、ジャックの手足が頻繁に、獣の脚や鋭い爪へ変化しているのが分かるだろう。
 敵エージェント側も反撃の芽を探っているのか、時折攻撃対象が人形姫へと切り替わるが、人形姫は油断せず身構え、タイミングを合わせて横っ飛びに飛んで避けた。
 人形姫がいた場所に、突如炎が燃え広がる。
 敵エージェントが炎をまとって体当たりを仕掛けたのだ。
 だがもうそこに、人形姫はいない。
 徐々に、戦いの決着がつき始める。

「追いつめたぞ。仕上げだ」
「あとは任せろ」

 敵エージェントひとりの相手をしながら、振り返らずに鳩を襲いかからせ、蛇がJを援護する。
 あらぬ方角からの奇襲に驚く敵エージェントが晒した隙を見逃さず、Jは死角に入りこんだ。
 慌てて注意を戻しても、そこにはJはすでにいない。
 こめかみに弾丸が直撃し、敵エージェントが倒れた。
 ひとりが倒れたことで戦況が傾き、紅目の猫、ジャック、人形姫の勢いも止まらなくなる。

「まだまだ壊したりないぞ! もっとワタシを楽しませてくれぇ……!」
「俺たちもそろそろ決める!」
「隙を作りますぅ!」

 まずは人形姫が大気中の魔素に干渉し、電気を起こすと、敵エージェントたちにぶつけた。
 電気は人体を感電させるには到底足りない電圧でしかないが、それでも武器を通して手を痺れさせる程度の威力はある。
 なまじ、敵エージェント側は冒険者のような格好をしていたことが災いした。
 手が痺れ、手にしていた金属製の武器を取り落としている。
 その隙に詰め寄ったジャックがひとりを蹴り伏せ、もうひとりを紅目の猫の振るうゲートマンが地面に沈める。
 たまらず逃げようと背を向けた残る敵エージェントの背中に、人形姫の放った光線が突き刺さった。
 蛇が牽制した残るひとりも逃げだしていたが、ナハイベルの追撃を受けて倒れた。
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