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ムーンライト・ミステリーツアー

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ムーンライト・ミステリーツアー
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 遺産は誰の手に・7

「俺は『飛少年』、呼びにくかったらヒショーと呼んでくれな!」
 迅雷 敦也は自らのコードネームを名乗ると、少年のような笑顔で“D”に話しかけた。実際、飛少年はムーンチャイルドなので、子供らしさを感じるのは当然なのだが、その元気印は人付き合いを厭う“D”にはいささか眩しかった。とは言え相手はやはりムーンチャイルド、年を取らない種族である時点で男女の別なく大好きなので、“D”はすぐ気にならなくなった。
 何せ、飛少年の他にも二人のムーンチャイルドがいたのだから。
「ねえ、ベルちゃんたち、ヒントほしいんだけどな~? 知恵もらえたらベルちゃんも更に思考深めて考えてみるよ~」
 迅雷 火夜のおねだりが、“D”の心をくすぐろうとする。
「今回のミッションがわたしの初めての仕事なんですわ。初めての仕事が上手くいくように、きょーじゅさまの知恵が欲しいのですわー」
 そこに、「リリー」こと迅雷 沙耶の追撃も加わると、“D”はいよいよ困り顔になった。
「ヒントと言っても、何が聞きたいのか言ってもらえないことにはだな……」
「じゃあ、これを教えてくれよ。“D”は遺産を管理しているんだから、過去に発見されたものの傾向から、ある程度の場所が割り出せているんじゃないか? ちょっとした小物みたいな遺産でもいいから俺も見つけてみたいんだぜ! お馬鹿なお子ちゃまにちょっとだけでいいから知恵を授けてもらえねーか?」
 そこへ話を切り出したのは、飛少年。“D”はそれを受けて考え込む素振りをすると、飛少年に答えた。
「今回の遺産は、確かに別の遺産の記録と照合して存在を認めたものだ。だが、そこから類推された情報は、あくまで魔素濃度の高い場所に隠されている可能性があるということだけ。そしてこれは、ヒショーたちにも伝えた内容と同じことでもある。ただ、この任務に参加している別のエージェントは、地下が怪しいのではという考えを示している。試しにそこを探す価値はあるんじゃないか」
「そうか……うん、わかったよ“D”!」
 飛少年はそれに礼を告げると、ベルとリリー、そしてこれまで大人しく控えていた「幼狼」こと夢風 小ノ葉を連れて探索に向かった。
「俺たちで魔獣全部と戦うのは無茶ってものだから、移動にはこれだよな」
 飛少年がホライゾンホバーバイクに跨って仲間の準備を待つと、ベルはダッシュモービルに乗って用意する。そして幼狼はアタックモービルの運転席に座ると、サイドカーにはリリーを座らせた。
 これまでに仲間のエージェントが魔獣の相手をしてくれたため、いくらか狙われる危険は減っているかもしれないが、敵は魔獣だけではない。
 飛少年たちは、無理して戦わないことをしっかり意識しながら広い園内を駆け巡った。
「ベルちゃん、あの辺りはどうかしらー」
 立ち寄った場所でスパイグラスを手に周りを確認していたリリーが、ベルを手招きする。
「ふーん、一見何にもおかしいところはないけど……うん、怪しいっ」
 電流が走るがごときひらめきを得たベルは、自分が先行しようと走り出す。
「一応警戒はしてるけど、あまり離れすぎないでねー!」
 後ろから幼狼の声がし、ベルはふっと速度を下げたが、逸る気持ちは抑えられないらしい。早く行こうと背中が主張してくるので、飛少年と幼狼は仕方がないというように速度を上げた。
「ここ、うん、きっとそうだ」
 地面に手が触れた途端、周辺の過去情報が流れ込むのを感じたベルは、確信を得たように呟く。
 飛少年たちは行動を悟られないように急いで地下に潜り込み、そこで『マクシム・G試作型』に関連すると思われる武装類を見つけ出すことができた。
「よし、俺たちの目標としてはこれで十分だな。後はここを出て戻るだけだぜ!」
 飛少年は警光タレットを武装類が置かれていた場所に貼り付けると、仲間に声をかけて来た道を駆けあがっていく。タレットが発するサイレン音に注意を引かせ、その間に逃げおおせる算段だったようだが、事はそう簡単に運ぶものではなかった。音を聞きつけやって来た敵勢力の一部が、帰還しようとする飛少年たちを追ってきたのだ。
「ボクたちのことをつけてくる奴らがいるよ!」
「わかった、ここで追い払うぜ」
 飛少年は幼狼の声で背後を振り向くと、袖口に忍ばせていたマジックナンバー52を投げつけ迎え撃つ。さらに服の下からハトの群れを出現させ襲わせた。
「ベルちゃんもやっちゃうよ~」
 ベルは万年筆型ライトを敵に向けると、そこから放たれる光線を放って牽制し、大気中の魔素に干渉し起こした炎で焼こうとしたが、武器破壊と攻撃を同時に行う連撃に当たり万年筆型ライトを取りこぼしてしまった。
「ベルちゃん、わたしの後ろに下がるのですわ!」
 リリーはベルに声をかけると、ベルをなお狙おうとする敵に対して早撃ちを仕掛ける。さらに精密な射撃技術で急所を狙い撃とうとしたが、クワイエットガンの威力が大きくなかったこともあり、致命傷を与えるには至らなかった。
「それならボクに任せてよ!」
 幼狼は彼我の距離がそれほど離れていないことから、自らが挑みかかろうとする。そしょて殺気を放った威嚇で注意を引き付けると、アイアンワイヤーの衝撃だけを急所に叩きつけた。
 それでもまだ動こうとする気配を感じた幼狼は、足にワイヤーを巻き付けて機動力を封じにかかる。
「よし、今のうちに逃げるぜ!」
 状況を見ていた飛少年が、仲間に撤退を促す。それを受けた仲間たちは、それぞれの車両に乗り込んで走り出し、最後にリリーがスパイコロンから悪臭を放って注意を逸らすと、追手から逃れることができた。

 【チーム:ウォードッグ】もまた、探索前に“D”との接触を図っていた。
「私は『ラブブレイズ』。お話を聞いてもいいかしら」
「手短にな」
 ムーンチャイルドではないのかと内心で思い、“D”は素っ気なく返すが、コードネームであいさつしたルージュ・コーデュロイは気にせず質問に入る。
「魔素の濃い場所には、どのような特徴があるのかしら? そこに多い生物や起こりやすい現象などがあれば教えてほしいわ」
「特徴ねえ……まず、このエリアがそもそも魔素濃度が高いわけだから、魔獣は基本的に凶暴化の傾向にある。その中でもさらに魔素濃度が高い場所となると、長くいれば集中力の低下の他に、一種の魔力汚染状態として超能力が不発するとか、体がマヒするなんてことが考えられるだろう」
「そう、よくわかったわ。ありがとう」
 ラブブレイズは“D”と別れ、仲間の元に引き返した。“D”から得た情報を聞いたチームリーダーの『おにいちゃん』こと柊 恭也は、早速魔素濃度の高い場所を探るとともに、その周囲から隠し通路につながる道を目指そうと号令をかけた。
「万能鎧装『マクシム・G』、一個大隊を壊滅させるたぁ何処の機動兵器だ。コイツは是非欲しいもんだな……とは言え諜報員の俺達じゃ使い道に困るし、汎用性重視の量産型がお似合いだろう。運用し難い試作型より、誰でも何処でも使える量産型ってな。そんじゃ楽しい楽しい宝探しと行きますか」
 恐らくは遺産自体にも魔素が使われていると睨んだおにいちゃんは、ツンドラの運転するエーテルワーゲンで思索に耽る。
 この考えが正しければ、周囲に何らかの影響を与えている可能性が高く、また魔素を用いた隠蔽や遺産からの流出、それによる周囲への干渉などが考えられる、と。
「何にせよ、まずは行ってみるしかあるまい」
 自分の考えを伝え、最後にそう締めくくると、「トゥースイート」を名乗るキョウ・イアハートから返事があった。
「強硬派に渡っても、他所の結社に渡っても、『西との和平』から遠のくのは違いねぇ話で。眠ってるものの見当がついてるんならなおのこと。分かりやすく兵器だってのなら、どれ一つを渡していい道理もなく、ウォードッグの総力を挙げて回収させてもらおうさ」 娯楽施設とはよく言ったもの、案の定遺産が眠っていたわけか、なんてことを考えながら、トゥースイートはギミックワーゲンⅠの運転席で肩をすくめた。
 その車両には先ほど“D”と話をしてきたラブブレイズと、「ノワールブラン」こと優・コーデュロイも乗っている。
「試作型『マクシム・G』は、凡その性能を聞くだけでも恐ろしい性能のようですね。他の過激な人達に渡すわけにはいきませんし、子供達の為にもチームの皆と協力して入手しましょう」
 ノワールブランがそう言えば、ラブブレイズも強く同意した。
「ええ、使い方次第でとんでもない被害が出る遺産ね。子供達の為にも、強硬派達に奪われる前に見つけ出しましょう」
 隠し場所の調査は主にこの二人が担当するようで、ノワールブランは気まぐれな一面を持つサイコニャンのご機嫌を一通り取ってから魔素の探知をお願いする。ノワールブランの髪の毛に散々じゃれて満足したか、サイコニャンはすんなり要求を飲むと、魔素の濃い場所を探り始めた。
 その方向を詳しく探るべく、ラブブレイズは眷属のコウモリを車外に放つ。周りから怪しまれない高度で飛ばしたため、あまり遠くまで俯瞰することにはならなかったが、ラブブレイズには東トリスに対する土地鑑があるので、簡単に道に迷うことはないようだ。
 また、その車両に並走するようにホライゾンホバーバイクを走らせる「スティーブン」こと松永 焔子も、ホライゾンオプティカルサイトで周囲を探り、魔獣の姿ないしは足跡がないか、また人間の足跡なども残されていないかに目を光らせていた。
 ノワールブランもその補助になるべく森林に対する土地鑑を発揮しようとしたのだが、今一つ対応しきれないようだ。また、アクエリアス固有の技である一種の未来予知によって、サイコニャンが次にいつ気まぐれを起こすか予測しようとしたが、これも本来の力を発揮しきれなかった。ノワールブランは、今回はそれがわかっただけでも良しと考えると、サイコニャンの行動から何か気付けるものがないかと思い、その行動を見守ることにした。
 その頃、ラブブレイズは修めていた治療学や療法論から、自分の体に若干の変調があることに気づいていた。それはまさに“D”に言われていた症状と近いもので、今はまだ支障を来すほどではなかったが、確かに長時間の滞在は体に良くないとわかるものだった。
 念のために疑似輸血パックを使ったラブブレイズは、コウモリからの情報で周囲の見える範囲には目ぼしいものがなかったと理解しつつも、ここを詳しく調査するべきと考えた。
 そこで、まずはノワールブランとラブブレイズだけで調査することにし、魔獣避けとしてノワールブランが祈祷用香炉から香りを発散させる。それから目につくものを触り出すと、そこを襲撃しようとする者たちが現れた。
「ラブブレイズ、サイコニャンと一緒に私の後ろへ」
 ウォーターガンを構えたノワールブランは、精密な射撃で敵の乗ってきた車両のフロントガラスを撃つ。中身は水からペンキに変えてあり、フロントガラスは一瞬にして鮮やかな色に塗れてしまった。
 その隙にラブブレイズは周囲の調査に向かおうとしたが、殺傷力のないウォーターガンでは抑止力としては足りず、追い付かれそうになる。
「この先は通しませんよ」
 敵の襲撃にも慌てる様子のない声は、スティーブンから。
「有事でなければ月光園を観光なんていうのも良かったんでしょうけれど……ウォードッグとして集まったからにはこうなりますよね。仕方ない、確保が平和に繋がると信じて裏の顔に切り替えてぱぱっとやってしまいましょう」
 「わんわん」こと納屋 タヱ子も、アタックモービルから備え付けのショットガンを取り出して臨戦態勢を取っている。その言葉に静かに頷いたスティーブンは、
「遊園地に隠匿された遺産を巡って諜報合戦とは剣呑ですこと。しかし、様々な組織が血眼になる代物を放置することもできません。子供達の夢を壊すような物騒なモノは、私たちが秘密裏に回収させて頂きます」
 ショットアンブレラから魔素をかき乱す特殊弾を放つと、意識を揺さぶられるような衝撃を与えようとする。
「私も援護しますので!」
 スティーブンが人に狙いをつけるなら自分は車両を狙おうと、わんわんはショットガンに仕込んだトリモチ弾を足回りに向けて撃ち込んだ。
「よし、この隙に突っ切るぞ!!」
 おにいちゃんは仲間に声を張り上げると、車両の窓から身を乗り出してショットアンブレラを構える。戦闘の余波で不安定な車内だったが、サイボーグの機械部分を応用したことで姿勢を安定させたからか、照準に不安定さは見受けられない。ゴリラアームも狙いに補正を加えているのか、まるで安定した足場で放たれたような散弾は、フロントガラスやタイヤに無数の傷をつけて足止めの一助となった。
「そんじゃ、行くとするか!」
 ノワールブランとラブブレイズが乗り込んだのを確認したトゥースイートは、後方にオイルを散布して容易に通れないようにすると真っ先に離脱。それを追いかけるように、おにいちゃん、スティーブン、わんわんも車を走らせた。
「恐らくは、ここでしょうね」
 再び周囲の調査に入ったノワールブランが示すのは、自分たちが立つ地面だった。
「では、ガっとやっちゃってください」
 わんわんが解体屋に頼み、地上に現れた扉をこじ開けてもらうと、その先に見えたのはオデッサ軍が使っていたと思しき施設だった。
「皆、気を付けて。ここは地上よりも魔素の濃度が高いかもしれないわ」
 先を進むほどに体の変調が著しいことに気づいたラブブレイズが、仲間に注意を促す。
「ということは、悠長に万能鎧装を持ち帰れるサイズに解体するわけにはいきませんね」
 ついに『マクシム・G試作型』を発見はしたものの、その大きさが車両に乗せられるようなサイズではなかった。その解体を依頼しようと考えたわんわんだったが、ラブブレイズの言葉に断念せざるを得ない。目利きの要領で状態の良い武装類なんかを探そうともしたのだが、それに対する勘も上手く働いてくれないようだ。
「そっちの回収は“D”に任せることにして、俺たちは試作型を引き上げるぞ」
 状況からそう判断したおにいちゃんが言うと、トゥースイートが試作型の制御システムに干渉して、地上に出られるだけの動きができる状態にする。
「遺産相手じゃ、これくらいが限界でしょ。残りは“D”の担当ってね」
「では、試作型には私が乗り込んで動かしますね」
 わんわんがそう言って乗り込む。どうやら、乗って動く分には問題ないようだ。遅かれ早かれ隠し通路の存在は暴かれるだろうが、自分たちが先に来ていた痕跡だけは残さないようにとトゥースイートが周囲に細工を済ませると、【チーム:ウォードッグ】は速やかに地上へ戻った。
 だが、帰還への道で再び襲撃者が現れた。試作型に乗っているわんわんを守るように、スティーブンが前に立ちはだかる。
 まずはスティーブンを始末しようと銃を構えた敵に、ステアリング・極で旋回性能を向上させたバイクが突っ込み、その目前で行った切り返しが攻撃を不発に終わらせた。
 それをまだ狙おうとするのを察したスティーブンは、衣服を利用し注意を引き付けると、自身は死角に入り込んだ。
「残念、こっちが本体なんですよ」
 相手が認識が誤っていたことに気づいた時には、ショットアンブレラが散弾をばら撒いていた。弾丸に当たって敵がよろめくと、
「ここまで来て、戦利品を奪われるわけにはいきませんよね」
 ノワールブランがウォーターガンを構え、フロントガラスをペンキの色で塗りつぶしていく。
「さて、ここらへ終いにしようか」
 そしておにいちゃんが灼熱の火炎放射を放つと、辺りが一瞬にして高温に包まれた。この状態で戦い続けるわけにはいかないと考えたか、襲撃者たちは車両を捨てて逃走に入った。
「これは、念の為ってことで」
 まだどこかに敵が潜んでいる可能性を考えたトゥースイートが煙幕を張ると、【チーム:ウォードッグ】はわんわんの操縦する『マクシム・G試作型』を守るようにしながら帰還を果たした。
 
 こうしてエージェントたちに与えられた、『園内に眠る遺産を確保する』という指令は果たされたのだった。
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