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ムーンライト・ミステリーツアー

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ムーンライト・ミステリーツアー
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 遺産は誰の手に・5

「私は趣味が悪い、とまでは言いません。貴族の狩猟文化というものは社会が平らかになっても根強い人気があるのでしょう」
 【チーム:サクラメント】のリーダーである「臨終の赤(サングイス)」こと焔生 たまは、自前のアタックモービルのサイドカーに体を収め、月光園のパンフレットを見つめていた。視線の先は専ら動物園エリアの方だったが、自分が行き先を決めるということはないらしい。
 探索する場所を決めるのは、アタックモービル運転を務める「赦しの白(ルーメン)」こと焔生 セナリアと、ダッシュモービルに乗る洗礼の青(アックア)こと叉沙羅儀 ユウに委ねると決めていたからだ。
「いくら精神操作をしているからと言っても、『狩り』の出来る動物園って無理がありすぎじゃない? ホント、裏の顔があるとしてもこんな案を考える人も、それにGOサインを出す人もどうかしているわ……。まぁ、今その事を考えても関係はないし、他の勢力に先を越されないうちに遺産を探し出さないとね」
 臨終の赤の言葉を受けてだろう、魔獣狩りという行為に難色を示した赦しの白だったが、確かに今はその是非を問うている場合ではない。今はまず、探索場所にある程度の当たりをつけようと考えを巡らした。
「随分と殺伐とした動物園ですね……偽りの月の世界、裏の顔を知らんければ夢のような場所なのでしょうが何とも複雑です。しかしいろいろ都合がいいんでしょうけど、本当に何を考えて動物園で狩りを出来るようにしますかね……。ん……今は兎に角集中です、魔獣に敵対勢力の妨害も考えられます、頑張って行きましょうか!」
 洗礼の青も、やはり動物園エリアの在り方に対し複雑な心境を抱えていたが、遺産の確保に向かおうとすれば、それこそ魔獣と戦うこともあるだろうし、敵勢力の妨害も考えられる。この場をそれに集中すべきと、考えをシフトさせた。
「遺産がもし魔素を消費するようなタイプなら、魔素の濃いこのエリアであっても極端に濃度が低くなっている可能性はあるわ。もし極端に魔素が薄いエリアで魔獣の巣穴や湖なんかがあれば、詳しく捜索するわよ」
 そうして一定の推理を組み上げた赦しの白が、二人にそう提案する。
(……魔獣に遺産の武装が移植されているなんていうパターンは、出来れば勘弁願いたいところだけれどね)
 その思いは口に出さなかったのは、あまりにも嫌な考えだったからかもしれない。
「色々思うところはありますが、ともあれ、今回のミッションは遺産探しです。未発見にはそれなりに理由があるとすれば、魔獣やスタッフに扮した敵を避けてばかりはいられないでしょう。目撃者はなんであれ残すわけにもいきませんしね。では、狩りに向かうとしましょうか」
 ルートのメモは記録しておくという臨終の赤がそう言えば、いよいよ探索が始まった。
「何か読み取れたものはありますか?」
 一番近くにあった魔素の薄いエリアにて、洗礼の青が過去の情報を読み取ろうとしている様子に声をかければ、
「ここには何もないみたいです。何というか、周りを見てもひらめくものもないですし」
 手応えのなさがよくわかる答えが返ってきた。
 魔素の薄い地点では何も感じないということは、濃度の高い場所こそが当たりでは――やがて誰からともなくそんな考えになり、試しに行ってみれば、洗礼の青が過去を読み取ったことで、地下への隠し通路を見つけるに至った。
 しかし、ここにたどり着くまでに時間をかけすぎてしまった感は否めない。【チーム:サクラメント】は奥にもまだ道が続いていることを意識しながらも、道中で見つけた武装類だけを確保して地上に戻った。
「そいつを渡してもらおうか」
 その途端、この場から離れようとした【チーム:サクラメント】に声がかかる。
「まあ、そうなりますよね!」
 洗礼の青はシガーピストルを構えて牽制すると、大気中の魔素に干渉して起こした火を敵に放った。敵は火を掻い潜りながら、銃口の狙いを洗礼の青に定めるが、赦しの白がアイアンワイヤーを鞭のようにしならせながら足払いしようとするので狙いを外す。
 その隙に臨終の赤も赫鍵を構えると、アクセルロリポップで引き出した敏捷性を活かした斬撃を振るった。
「逃がしはしませんよ」
 鎌からの一撃は常人を越えるほどの剛力で振るわれ、それでいて舞踏にも似た美しさを見せつける。
 赦しの白も前に出ていくと、4連続の蹴りを放って追い詰めていく。武器はワイヤーからトライアルベイオネットに変わっており、スパイが緊急時に使うという技で対抗されても、それすら貫こうという気迫を見せていた。
「気を付けて、後ろに敵が!」
 二人の戦いを後方から見ていた洗礼の青は、注意を促すと同時に火を放って二人を守ろうとする。
 それに助けられた臨終の赤は、まだ向かってこようとする敵にショットガンを撃って返り討ちにした。また赦しの白も、魔力によって遠隔操作したワイヤーで拘束した敵の急所を貫こうと近づいたが、別方向から静かに近づいてきた敵にそれを阻害され、倒すには至らなかった。
 しかし、【チーム:サクラメント】との戦い続けるのは危険と判断したか、リーダー格らしきものの号令によって敵勢力はすぐに逃げてしまった。
「私たちの勝利ですね。戦っている時の表情、素敵でしたよ」
 危険が去った途端、臨終の赤は赦しの白に過剰なスキンシップを図る。腕を絡めただけでなく、胸元に飛び込んでみたりとやりたい放題だったが、赦しの白は慣れているのか、動じた様子はなかった。
「それからあなたも、さっきは助かりました」
 そして標的はいつの間にか洗礼の青に変わっていて、同じようなスキンシップが行われ――それらをすっかり堪能したところで、ようやく帰還となるのだった。

『旧軍事施設時代には、ロボットだけでなく、兵器としてのロケット技術の開発も行われたと聞くし、それこそ月世界まで行けるようなロケットを弾道弾として開発していても驚かないよ!』
『そうか、そんなものを開発していたとしたら、それこそ遺産だが?』
『月光園には、マクシム・G試作型以外の遺産がある可能性があったよね!? ということは、航空機やロケットなどの誘導路、搬送路と考えられる通路が見つかれば可能性は0じゃないよね!?』
『落ち着け。興奮する気持ちは分からなくはないが、発想が突飛すぎるぞ』
 コードネーム「サンダーチャイルド」という名を持つトスタノ・クニベルティは、興奮冷めやらぬ面持ちで“D”と出発前に交わした意見交換の内容を思い出していた。
「発想が突飛だって!? 月光園、という名前には意味があるはずだし、魔獣やライカンスロープだから月光、というのはコレはカバーストーリーだね」
 トスタノはこの月光園に「月」というテーマの何かがあるはずだ、とインスピレーションが湧いていた。
 ロボット兵器以外の、飛翔体関連遺産を中心に捜索を行いたいと思っているのだが、“D”から聞いた話では、旧軍施設のうち航空設備や格納庫、地下サイロなどの構造物のあったという情報は引き出せなかったのだ。
「大型ロケットも無さそうなんだよね」
 サイコメトリーを用いて、かつての基地が遊園地へ転用される時期に、ここに置かれていた兵器類がどこへ移動させられたかを辿ろうとしたが、上手くビジョンが浮かばなかったのだ。
「今回は諦めるけど、ここにはまた来そうな気がするんだ。その時は別の場所を探してみよう」

 コードネーム「0110」という名を持つ鷹野 英輝は、協力者たる舞阪 小梅エリジア・センファを連れて遊園地エリアに来ていた。
 他のエージェントたちが遺産の確保、あるいはその援護で動物園エリアに来ていたのに対し、0110たちだけ遊園地エリアに来ていたのは、“A”の正体ではと噂されるアレクサンドロフ博士に関する情報を手に入れるためだった。
 その情報を得る過程で、もしかしたら隠れた研究所の存在だとか、遺産の保管場所の手掛かりがつかめるかもしれないという思惑もあったため、0110の表情には全く油断を感じさせるものがなかった。
「自分にはどうも、バイナリアの壁は『電池の絶縁体フィルム』のような印象を受けますね……」
 その姿は変装セットによってオールバックから別の髪型になっており、紫の瞳にも別の色が乗っていた。さらには普段と雰囲気を全く変えることで、どこにでもいそうな一般客に成りすました0110は、周囲に他の客がいなくなった頃合いを見計らって小梅とエリジアに話しかける。
「絶縁体フィルムって……うーん、よくわからないんだけど。どういうの? 何のため?」
 0110に反応したのは、こちらも変装セットで普段の長い髪を短く整え、赤い瞳の色もカラーコンタクトで変えた小梅。会話を交わしながらも、その耳が周囲の異音を聞き洩らさないようにと集中しているのがわかる。
「絶縁体ですから、両者を分かつ膜です。この場合は、物理科学と幻想科学を混ぜ合わせないための膜になりますか」
「へえ、面白いこと考えてるんだね」
 聞き耳に集中しすぎたか、黙ってしまった小梅の代わりに答えたのはエリジア。いつもはセミロングの髪は、やはり変装セットを使うことで腰まで届くほどの長さになり、カラーコンタクトで黄色い瞳を変えた状態から眼鏡をかけていた。
「それを考えたのは、自分ではないですけどね。“A”とはいったい何を考えていたのでしょう……」
 表向きの美術商としての知識から壁に違和感をチェックし、次いで足下や天井までを見渡しながら、0110は考え込むのだった。
 会話が途切れたことにエリジアは気づいたが、自身もまた調査の途中である。それに専念しようと0110同様に周囲へ目を向け、アーティストとして表で活動している能力を応用し、暗号が仕込まれている形跡がないかを探り出すが、どうにも手応えがない。あるいは暗号ではなく、別の方法でデータが隠匿されているのではないかとも考えたのだが、そうした形跡も上手く見つけることはできずにいた。
「……ここ、中に入れそうだよ」
 しかし、探索を続ける内に、エリジアは奥に向かう扉の存在に気づいた。すぐに近寄ってきた小梅が扉近辺の壁を叩き、音の反響具合で空間の大きさの把握に努める。
「詳しくはわからないけど、小さい部屋って感じ」
「なら、入ってみましょう」
 0110の言葉に小梅とエリジアは小さく頷くと、戦いの心得がある小梅を戦闘にして扉を開けた。
 扉の向こうは殺風景だったが、部屋の古びた端末にはわずかに“A”に関連する情報が残っていた。
「“A”という存在は、機械関連にもある程度は精通していたようですね。さらには、西の技術にもいくらか知見を得ていたようです」
 もっと詳しい手がかりはないだろうか、研究所や保管場所につながるような手がかりは……。
 そう期待しながら、0110はさらに端末を操ろうとしたが、小梅が無言で肩を叩くのを感じて警戒心を強めた。
 直後、扉の目の前を通り過ぎようとする足音が聞こえたが、足音は何ごともなかったかのように通り過ぎていく。
 部屋に入る際、エリジアが侵入の形跡を見つけられないように細工をしていたことが役に立ったようだ。
 しかし、いつまでもここはいられない。0110たちは逃げ場のない部屋にいる状態で、小梅にしか戦う手段がないのだから。
 再び小梅に音を拾ってもらった0110は、周囲を慎重に探りながら部屋を抜け出したが、脱出する直前で園の関係者に姿を見られてしまう。それに対して0110だけは道を間違えた一般客としてやり過ごせたが、パーティーグッズレベルの変装道具を使っただけの小梅とエリジアは、曲がりなりにもプロである彼らを欺くことは出来ず、裏の顔を把握されてしまった。
 敵の機関に情報が広まるのは時間の問題だろう。

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