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ムーンライト・ミステリーツアー

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ムーンライト・ミステリーツアー
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 遺産は誰の手に・3

 【チーム:ローズハニー】の「灰色探偵」ことジェイク・ギデスは、月光園の地図を片手に“D”と会っていた。
「こんにちは“D”。俺は灰色探偵。噂は聞いているぜ。凄い技術者だってな。……貴男の見解から、あれについて教えてほしい」
 あれとはもちろん、万能鎧装『マクシム・G試作型』のことだろう。“D”は相手が人間ということでいかにも興味なさそうに視線を逸らしたが、灰色探偵が礼を失することのないようにスーツを着込んできたこと、凄い技術者と褒められたことに少しばかり気分が良くなったので、以降は真面目に受け答えすることに決めたようだ。
「それで、教えてほしいこととは何だ?」
「俺が知りたいのは、『マクシム・G試作型』の大きさや性能。それから、以前に発見された場所だ」
 “D”は言葉を探すように視線を彷徨わせると、灰色探偵の問いに答えを返した。
「まず大きさや性能だが、別の遺産の記録から『マクシム・G試作型』の存在を確信したということなんで、具体的な情報は手元にないんだ。そういうわけだから、当然、現物が今までに発見されたということもない……あー、こんなところだ」
 如何に凄い技術者でも、実物を目にした経験がない以上は、これくらいのことしか情報を提供できない。それがやや気まずかったのか、“D”は最後まで視線を合わせようとしなかった。
「いや、十分さ。協力に感謝するよ、“D”」
 灰色探偵は“D”の元を去ると、園内の地図を広げ始めた。今まで誰も見つけ出してないということなら、敵対勢力とて簡単に出し抜けるものではないだろう。その場合、隠し場所にふさわしいのはどの辺りだろうか。
「何かわかりそうかしら?」
 そんな灰色探偵の上空から、声がかかる。それはホライゾンホバーボードに乗った、ボーパルバニーことヒルデガルド・ガードナーだった。ボーパルバニーは戦闘以外にも、灰色探偵を乗せて調査を手伝う役目も担っているので、“D”と離れたのを見計らって迎えに来たのだろう。
「ああ、ちょうど隠し場所の目星をつけていたところだ」
 灰色探偵はボーパルバニーにそう答えながら、自分なりに怪しいと思う場所に印を書き込んでいく。
「遺産の隠し場所として考えられるのは、建物の中、もしくは小高い丘の上。逆に、地下に秘密基地があるというのもあり得そうだな。ここから先は、足で探す以外に方法はないだろう」
 いくつか書き込みをした地図をボーパルバニーに見せながら、灰色探偵は今までに押さえた情報や周囲への土地鑑を総動員させた考察を述べ、そのことは他の仲間たちにも無線通信で伝えた。
「了解よ。しっかり掴まっててね」
 ボーパルバニーは無線連絡が済むのを見届けると、灰色探偵を乗せて空へと飛び上がった。
「灰色探偵さんが目星をつけたのって、この先だよね」
 まずは近場から探すということでやって来た場所を見渡しながら、燈音 春奈こと「マギア」が、「ハク」というコードネームを持つ燈音 了に話しかけた。
「ああ、ここで間違いない。まずはコウモリに偵察させるぜ」
 任務への緊張や高揚感からか、平時と違う口調でハクは言うと、ヴァンパイアとして従えているコウモリを奥へ向かわせ情報を得ようとする。
「……ひとます、魔獣の姿はないみたいだ」
 ハクはわかったことを伝えると、ライドボルケーノに乗るマギアの隣を、ウィングモービルに乗って進んでいく。
 その近くには宅配ピザバイクに乗っている成神月 鈴奈――「黒虎」がおり、上空にはまだボーパルバニーと灰色探偵が待機している状況だった。
 進む道には確かに魔獣の姿がなかったが、マギアは不意に周囲を見渡すと、
「気を付けて、来るよ!」
 仲間に警戒を促した。それと同時に現れたのは、ヒットマンらしき姿。日ごろは表向きにはガードマンをしていたマギアだからか、人より優れた警戒能力が敵の気配を察知したのだろう。
 マギアは二輪車に乗ったままラズルシャーチを握りながらヒットマンに接近すると、その状態から器用に攻撃を仕掛けていく。サイボーグの機械部分の動きを応用した繊細な動き方は、二輪車という不安定な足場をものともせずに重い一撃を見せつけ、ヒットマンを圧倒しようとするが、敵もまたマギアの隙を伺うように向かって来ると腕力で拘束しようとした。
「させるか!」
 ハクは叫ぶと、蒼星弓の矢を射って阻もうとする。行動を阻害されたヒットマンは、代わってハクに狙いを定めるが、ハクはウィングモービルを巧みに操りジグザグ走りをすると、ナイフの突き出しを華麗に避けてみせた。
「敵はあいつ以外にもいるみたい、注意して」
 マギアがハクに告げた途端、木の陰からもう一人が姿を見せた。
「なら、こいつをお見舞いしてやるぜ!」
 ハクは服の裾を大仰に振ると、興奮状態にあるハトの群れを出現させる。ハトはその場に混乱をもたらすように何度も羽ばたきを繰り返し、視認した敵へと襲いかかった。
「ボーパルバニーと灰色探偵は、今のうちに先へ行け!」
 敵の注意がハトの群れに釘付けされている内にと、ハクが上空の二人を促す。
「なら、私も一緒に行って援護するわね!」
 この場は吐くとマギアに任せても平気だろうと判断した黒虎も、敵の脇をすり抜けるように走り去った。
 仲間の姿を見送ったマギアは、ハトの群れが去ってもまだ混乱から抜けきらないヒットマンに向け、ショットガンを撃ち放つ。続けてその相手に向かって常人離れの剛力による斧の一撃を叩き込もうとしたが、ヒットマンは足元の土を蹴り上げた目くらましでマギアの攻撃を避けてしまった。そこから攻撃が続こうとするのがわかったマギアはAGTLのリミッターを解除すると、斧の斬撃でヒットマンの攻撃も体も撥ね返した。
「後はあなただけ……!」
 マギアは斧の先をもう一人のヒットマンに向けるが、リミッター解除の無理がたたり、腕に力が入らなくなった。ヒットマンはそれを好機と捉えると、近くで伸びている仲間の体を担いで逃げ去ってしまった。
「一足遅かったか……」
 隙あらば敵の端末を奪って情報の攪乱を考えていたハクだったが、逃げられてしまってはどうしようもない。疑似輸血パックで失った体力を取り戻すと、マギアの回復を待つため待機することにした。
 その頃、先に進んだ仲間の前にも敵のスパイたちが現れていた。上空から調査していたことで目立ってしまったのか、向こうもまた遺産の隠し場所をこの近辺と睨んだかはわからないが、戦闘を避けることはできないようだ。
「こうなったら仕方ないわね」
 ボーパルバニーは灰色探偵に注意を促すと、ホライゾンホバーボードでスパイたちの真上を狙うように攻撃を仕掛けた。その狙いはスパイたちにダメージを与えることはできなかったが、攻め込む隙を生み出すことはできたようだ。
 殺気を放って威嚇したボーパルバニーは、怯んだところにゲートマンで斬りかかっていく。
「その首……ポロリしちゃっても良いわよねぇ……」
 怪しく微笑む目にはまだ殺気が宿っているが、先ほどの攻撃から想像させる剛力もまた、スパイの脅威となっているようだ。ボーパルバニーは武器をアイアンワイヤーに持ち替えると、足を絡めるとような拘束を狙おうとする。
 だが、もう一人のスパイが早撃ちでワイヤーを弾いたために逃してしまい、拘束を逃れたスパイも精密射撃で援護を始めた。
「そうはさせませんよ!」
 ライカンスロープの血を呼び起こすことで、顔だけ黒い虎のように変貌させた黒虎がスパイたちに向けて閃光を放った。そうした妨害にはいくらか心得があったか、スパイたちは瞬時に顔を伏せて光から逃れたが、続く煙幕には対処ができなかったようだ。視界を遮るほどの煙が、スパイたちの攻撃を一時的に躊躇わせた。ただし、場所が屋外だったことが災いし、煙幕の切れ目は思ったよりも早いようだ。また、黒虎は煙幕にコショウを混ぜておいたようだが、それにそれに苦しめられている様子はない。黒虎の細工は失敗に終わり、間もなく敵は動き出そうとしていた。
「灰色探偵さん、ここまで来たならもう少しのはずです。煙幕が効いている間に先へ」
「わかった。悪いがここは任せるぜ」
 黒虎が灰色探偵に促せば、二人のやり取りを聞いていたらしいボーパルバニーもスパイを相手するように武器を構え直した。
「さあ、かかってきなさい!」
 黒虎は煙幕が切れた瞬間にトリモチ弾を一人にぶつけ、手にした拳銃ごと腕を封じる。
「今度こそ、捕まえてあげるわ!」
 そしてボーパルバニーがワイヤーを振りかざすと、ついにスパイの一人を捕らえることができた。
 だが、黒虎が拘束した相手にジャーナルカメラ向けようとしていることに気づいたスパイは、それを阻止しようとカメラに弾丸を撃ち込もうとする。カメラはその頑丈さゆえに大きく損傷した様子はなかったが、その攻撃で黒虎の手元からカメラは弾かれてしまった。
 それに気を取られたせいでスパイは拘束から抜け出てしまい、ボーパルバニーもまた射撃の牽制に邪魔され追いかけることはできなかった。とは言え、ひとまず敵対勢力との戦闘は終わったようだった。
 その頃、灰色探偵はサイコニャンの力を借りながら手がかりを探っていた。その過程で地面に触れた瞬間、隠し通路の存在に気づいた灰色探偵は、地下を行く道に向かって念力で作った黒い手を這わせていた。
「遺産の隠し場所は、ここで間違いないようだな」
 灰色探偵はその確信を得ると、無線連絡で仲間に発見した旨を伝え、『マクシム・G』の量産型の確保に成功した。

 道なき道には、1台のクリーンワゴン。運転席から顔を出し、スパイグラスで周囲を観察していたのは、表向きはゴミ運搬車の運転手として生きているロウレス・ストレガだった。
 今は「鶸」というコードネームを使って任務にあたっている彼の目的は、もちろんゴミ収集ではなく遺産の回収にある。
「さて、隠し場所への道を探るならば予測するしかないが……可能性があるとすれば地下へのルート、マンホールあたりだろうか?」
 そう思った理由は、ここが動物を狩れる動物園であることに起因するようだ。もし遺産の隠し場所が、地上にある木や建物の近くにあれば、狩りの最中に流れ弾が当たってしまうとも限らない。その可能性を考慮すれば、自ずと隠し場所は地下にあると考えられる、ということだった。
 そのため、先ほどからスパイグラスが見つめる先は専ら地面ばかり。茶色に覆われた視界は変化に乏しいものだったが、根気よく観察し続けていると、ついに隠し場所に続くと思われる手がかりを見つけた。
 クリーンワゴンを走らせた場所は、これまで以上に魔素が濃いように感じられたが、鶸には多少の耐性があるため、すぐに変調を来すことはないようだ。とは言え、長居すればどんな影響があるか予想がつかない。そんな危険のある場所に突入しようとする鶸だったが、
「そこまでだ」
 剣呑な声が、鶸を足止めした。その殺気を感じれば、別働で遺産確保に乗り出している仲間でないことは明白である。
「チッ……嫌なタイミングで来たもんだな」
 鶸は呟くと同時にシガーピストルを向け、先手を打つ。不意をつかれる形となった刺客だったが、すぐに態勢を立て直して反撃に出た。
 銃口が急所を狙い撃とうと構えられるのを見た鶸は、車のドアで体を守りながら次の手を考える。そして銃声が止んだ一瞬の隙に身を乗り出すと、相手の銃を狙うようにして射撃を行った。
 銃を弾き飛ばされたスパイが動揺している間に車を発進させた鶸は、去り際にオイルを散布して足止めに出る。
 さらにはマフラー部から煙幕を出して煙に巻いてしまえば、敵は追うことも攻撃することもできなかったようで、鶸は迅速にその場を脱出したのだった。

「隠された遺産か……それはまた、なんとも好奇心をくすぐられる話だな」
 ダッシュモービルを走らせながら独り言ちるのは、有間 時雨。傍目に見たところ、猟場を訪れた観光客といった様子だが、時折鋭くなる視線は、裏の顔たる「ディレッタント」を窺わせるようでもあった。
 と言っても、余程注意深くディレッタントを観察しなければ気づけないようなもの。東オデッサに住む一般市民を装ったディレッタントが、意図して魔素濃度の高い場所に向かっていることなどわかりようがなかった。
 実際に探索してみると、魔素濃度の高い場所はいくつか存在しており、ディレッタントはその度に周辺に手がかりがないか探りを入れる。例えば物資の運搬の形跡、隠し通路の偽装の手入れ、遺産に関連する試験の痕跡……それらしいものは足元に多くあり、そうしたものに近づくたび体に電流が走るのだが、もう少し情報が必要なのではという思いも同時にあった。
「さて、次はどうするか……ん?」
 スパイグラスで遠方を観察していたディレッタントだったが、視界に違和感を抱いたため、その地点へ急ぐ。
(確か、この辺りだったな)
 移動に疲れて立ち止まった振りをしながら、周囲に隈なく目を配ってみれば、ある一点を注目した瞬間に一番強いひらめきが下りた。それから、本格的に休憩するために地面の具合を確かめるのだというように触れてみると、
「当たり、かもな」
 指先が足下に潜む情報を読み取るのだった。ディレッタントが得たのは、地下には基地が残されているらしいということ。地面に目を向けるたびにひらめきを得たのは、そのためだったようだ。
 先ほどのサイコメトリーで、地下に続く扉の位置にも察しはついている。早速、地下に向かおうとしたディレッタントだったが、その行く手を阻むのは、園内に放し飼いされている魔獣たちだった。
 それは遺産に目をつける者を排除しようとする行動ではなく、単独行動するディレッタントを狙い目とみてやって来ただけのようだが、一人で相手するには分が悪かった。
 ディレッタントはすぐに撤退を選択すると、ダッシュモービルのオーバーダッシュ機能を利用して素早く逃げ出した。

 裏で「鴉」というコードネームを利用している、風間 瑛心。この場における目的は遺産の確保ではなく、それを円滑に進められるように魔獣を排除して回ることだった。
 周辺に耳をそばだてている内、何か獲物を追いかけるように疾走する魔獣に気づいた鴉は、迷わずクワイエットガンを構える。そして射程内に魔獣の姿を収めた瞬間、その足を狙うようにして弾丸を撃ち込んだ。
 鴉の使う拳銃は銃声やマズルフラッシュを抑える仕様になっているためか、魔獣は弾丸が至近に来るまで気づけなかったらしく、甲高い声を上げて地面に倒れた。
 しかし、消音を重視した半面、威力の落ちている拳銃では倒し切れなかったようで、すぐに狙撃者たる鴉を見つけて向かってきた。その速さは魔素による狂暴化もあるからか、まともにぶつかれば命の保証はないと思わせるほどである。
「……やむを得ん、か」
 鴉は懐から取り出したサードアイピルを飲み込むと、たちまち向上した動体視力で魔獣の動きを見極め、最低限の動きで突撃を避けた。
 そして魔獣の背後を狙うように体の向きを変えると、再び拳銃を発砲。狙いは頭部だったが惜しくも外れ、魔獣の肩口に傷が増えた。
 新たな痛みにまた悲鳴を上げた魔獣は、よろめきながらも鴉を振り返る。だが、鴉の銃口が自身に向けられているのを見て戦意を失ったか、攻撃してくる様子はない。
 そして鴉がわずかに銃口を下ろす素振りを見せると、たちまち逃走してしまった。
「……ああ、それで良い」
 元から倒し切ろうとまで思っていなかった鴉は、魔獣の姿を見送るとその場を去った。
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