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ムーンライト・ミステリーツアー

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ムーンライト・ミステリーツアー
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 遺産は誰の手に・2

 「ギムレット」というコードネームで“D”に接触したロデス・ロ-デスは、魔素濃度の濃い場所はどこか尋ねていた。
「猟場で、特に魔素濃度の高い場所はどこだろうか。そこにはきっと、強い魔獣もいるのだろう?」
「恐らくは。だが、あえてそこに踏み込むのはなぜだ」
 ぶっちゃけムーンチャイルド以外に興味はない教授ではあるが、わざわざ魔獣へ言及したことは気になったらしく、ギムレットに尋ね返す。
「魔獣が遺産の手がかりを持つ番人と思っただけさ。それに折角狩りのできるテーマパークに来たんだから、少しは狩りを楽しまないとな」
「ふん……そういうことか」
 教授は軽く頷くと、ギムレットの要求に応じた。
 情報を経たギムレットは、早速アタックモービルに乗って猟場に来ていた。それを待ち受けるのは、いかにも屈強な体つきの魔獣。
「魔素濃度が濃い猟場の方が、番人として相応しい強い魔獣がいるはずということで来てみたが……お前がまさに番人だったりするのだろうか」
 魔獣は答えず、ただ見下ろしてくる。だが、ギムレットも対話でやり過ごすことなど微塵も思っていないわけだから、これで良いのだろう。
 アタックモービルから降りたギムレットが構えるのは、社畜勇者の剣。この場を訪れる者には、ファンタジーの冒険者のような格好をする者が多いようなので、ギムレットもそれに倣った口である。
 ただし、ファンタジーな剣の刀身には【銀弾】イワンが塗られているので、単なるファッションで用意したものでないことは明らかだった。
「さあ、俺を楽しませてくれ」
 その声を合図に、魔獣がギムレットに飛びかかった。ギムレットは大振りの一撃をさっと躱すと、足を斬りつけ距離を取る。塗り込まれた薬剤が効果を出したか、魔獣は軽くふらつく様子を見せたが、斬られた足を庇うようにしてギムレットに向き直った。
「なるほど、やはりお前は強そうだ」
 ギムレットはそれを感心したように見ていたが、今度は自ら仕掛けようと走り出す。剣に激しい稲妻を纏わせ一気に振り上げる技の名は、神魔滅却・超勇者斬。
 やるからには可能な限りファンタジーらしさを出したかったのか、技の名前にもらしさを感じさせるものがあったが――それは魔獣を退けるに十分な威力も伴っていた。
 魔獣が倒れたことで周囲に変化がないか注意するギムレットだったが、どうやらこの場所には何もないようだ。当てが外れたギムレットは、再び広大な敷地を探索することにした。

「織女星ちゃん、教授を見つけたよ! 早速、お話ししに行こ?」
 【チーム:星月夜】に所属するノーン・スカイフラワーこと綺羅星は、何者かが自分たちを見ているような気がして振り返ったのだが、その相手が“D”であることに気づくと、すぐにアリーチェ・ビブリオテカリオをコードネームを使って呼び寄せた。
 ところで綺羅星と織女星どちらもムーンチャイルドだったから、“D”は二人の接近を嬉しがっているような様子である。チームとしてそれを利用しない手はもちろんないので、だからこそこの二人が選抜されたのだが、そんなことはおくびに出さずに二人は話しかけた。
「ねえ、教授はこの園内で遺産を隠すとしたら、どこが怪しいと思う?」
「遺産……万能鎧装『マクシム・G試作型』が何処にあるのか、手掛かりとか見通しがあれば教えて貰えたら嬉しいな!」
 織女星は直球に遺産の在処についての見解を聞き出そうとし、綺羅星は良い子ちゃんな雰囲気を存分に見せつけながらのおねだりをしている。ややあからさまにも感じられる要求だったが、“D”は特に難色を示すことなく応じるつもりのようだ。
「これは他のエージェントが示した見解ということでもあるんだが、最も怪しいのは地下だ。魔素濃度の高さというのも、見逃せない点だ。そうした場所で地下に向かう道を見つけることができれば、何らかの成果を得られるだろうな」
 その言葉を受けた織女星は、早速アカデミックノートに園内の地図を描いき始める。それを邪魔しないようにしながら、綺羅星は“D”に無垢な笑顔を向けた。
「そうなんだ、ありがとう! この土地にそんな習慣があるかどうかわからないけど……すごく早い『お年玉』ってことで、役立たせてもらうね!」
 “D”はそれにやや締まりのない笑顔を返すと、二人から離れた。
 その頃、ノートを睨みながら考えに耽っていた織女星が、ついに何かを思いついていた。
「となると……この辺が怪しいわね」
 電流の走ったかのようなひらめきが導いた地点は、やはり魔素濃度が特に高いとされる場所。
「織女星ちゃん、何か閃いたの? 流石だよ! 早速、七つ星ちゃんに連絡をしよーね!」
 チーム内で連絡役を担当する七つ星こと邑垣 舞花の名前を出した綺羅星は、そう言いながら仲間を呼びだす。そして、織女星は呼び出されたメンバーの一人である星川 潤也――牽牛星に自作の地図を手渡すと、その姿を見送るのだった。
「私は壁によって分断された“世界”バイナリア。この世界での私たちの活動がいつか分断の解消に繋がることを願っています」
 探索に向かう車両は2台。便宜上1号車と呼んでいるエーテルワーゲンを運転しながら、凛とした雰囲気で告げる七つ星に、牽牛星が応じる。
「俺もそう願うよ。いつまでも分断されたままなんて、良くないに決まっているからな。それにしても、これまで東西エージェントたちが発見できなかった、軍事基地の遺産か……。そう簡単には見つからない所に隠されてるんだろうな」
 助手席から眺める景色に、それらしいものは影も形も見当たらないから、やはり地下にあると考えて間違いないのだろう。まさか遺産が野ざらしになっているとは考えづらかったので、牽牛星は川底のような発見が容易でない場所に遺産の隠し場所があるかとも考えていたのだが、今回に関しては魔素濃度に注目して探せば良いらしい。
 持ってきたダイビングセットの出番はなさそうだが、代わりにサードアイピルの効果が頼れそうだと思った牽牛星は、自らが薬を服用してみる。薬の効果で魔素を感知できるようになった牽牛星は、すぐにその場所に当たりをつけた。
「こちら2号車の影星。流れ星が周囲を見張ってるんですけど、今なら魔獣や敵対勢力らしいものは見つからないみたいです」
 牽牛星が気になった場所を仲間に伝えると、2号者であるギミックワーゲンⅠを運転していた影野 陽太から、そのような応答があった。
 その助手席にいるのは、エリシア・ボック。先ほど、流れ星というコードネームで呼ばれていたのが彼女だろう。スパイグラスを手にしながら、ひたすら偵察に徹していた。
「では、動くなら今のうちですね。分断の解消をする為にも、今はA機関のエージェントとしてコツコツと地道に任務に取組んでいきましょう」
 仲間たちが警戒してくれるなら、自分はひたすら目的地を目指すだけ。七つ星は仲間に号令をかけると、土地鑑を働かせながら先を行く。その後ろからも影星が運転に専念する様子があり、その甲斐あってか襲撃に晒されることなく向かうことができた。そうして辿り着いた場所では、それまで双眼鏡で周囲を警戒していたほうき星ことメイリア・ネイクが、サイコニャンと一緒に隠し通路の存在を探ろうとしている。
「うんうん、お宝探しスゴク楽しいね♪」
 サイコニャンに呼びかけ、周囲の地面を軍用シャベルで掘り起こしながら、ほうき星は直感の赴くままに土や地面に触れていく。その様子は土や泥にまみれながらも嬉々としているので、今回のようなお宝探しに近いことは苦にならないらしい。ほうき星が積極性を見せているからか、気まぐれな性質を持つサイコニャンもなかなか熱心に取り組んでくれているようだ。時折地面ではなく空を見上げることはあったが、基本はほうき星を真似するように地面の様子を探っていた。
「あれ、ここ……」
 足元の地面に触れた瞬間、ほうき星は自分の手を伝って情報が流れ込んできたのを感じた。そこを仲間たちと協力して探っていけば、ついに隠し通路が暴かれた。
「なるほど、こんな所に隠されてたのか……。どうりで、今までずっと発見されなかったわけだぜ」
 牽牛星が感心に近い言葉を呟くのをきっかけに、一行は地下へと潜入していく。
 件の『マクシム・G試作型』というものの実物を見た者はいないが、周囲には早くもパーツ類が置き去りにされているのがわかったので、その近くに試作型もしくは量産型があることは想像に難くなかった。
「ひょっとして、これがそうなのでは……?」
 初めに気づいたのは、七つ星だった。その言葉にほうき星が近づき手を触れたところ、
「多分だけど、これは量産型の方かなって思うな」
 確信ではないが、ほうき星は読み取った情報からその思いを口にした。
「サイズはかなり大きめですね。残念ですが、乗ってきた車両には乗せられそうにないです」
 車両の後部座席に乗せて運搬するつもりだった影星は、肩を落として呟くが、在処を発見できれば“D”からも手を回してくれるようなので、ひとまずは気になりそうなものだけ載せることにした。
 もう少し奥に行けば、あるいは試作型にも出会えたかもしれないが、高濃度の魔素が体に影響を及ぼし始めていた。魔素への耐性が低い流れ星が、見るからに気分が悪いという表情をしているので、七つ星は探索をここまでで切り上げることを伝えた。
 しかし、地上に戻ろうとする時、ついに犯罪結社の一員と思われる者と遭遇してしまった。
「今回は用心棒役ですから、戦闘方面は任せてくださいませ」
 仲間たちの前に出た流れ星は、ホライゾンカービンから精密な射撃を放って敵対者を退けようとする。だが、魔素の影響で集中力が低下していたか、その狙いは思うように定まってくれない。
 それを好機に捉えた敵は流れ星同様に精密射撃で応戦に出るが、その様子を見ていた影星が、車両下部からオイルを散布すると同時に煙幕を張って状況の攪乱に出た。
「七つ星、今のうちに地上へ!」
「わかりました、影星様!」
 脱出時にほうき星が後方を確認すれば、流れ星もリープシューズを使って敵対者の頭上を飛んで逃げてきたのが見えた。
 どうやら全員無事に地上に戻れたようだが、間髪入れずに現れたのは、このエリアを住処にしている魔獣だった。
「今度こそ、用心棒の役目を果たしてみせますわ」
 魔素の影響から抜けた流れ星は、ズィルバーシュヴェルトを魔獣に構える。その様子に自らも姿勢を低くして臨戦態勢になった魔獣は、一足飛びに流れ星へと挑みかかった。
 魔獣の固い蹄が容赦なく胴を蹴り上げようとするが、流れ星がそれを避けると同時に牽牛星が魔獣に近づくと、パルサーウォッチをつけた手のひらから電撃を発射した。電撃は魔獣の体に痺れをもたらし動きを鈍らせたが、すぐに回復してしまったようだ。
 しかし、その間に再び接近していた流れ星は、踊るようなしなやかさで剣を振り回すと、魔獣に次々と傷を与える。
「このままブチのめして差し上げましょう……と言いたいところですが」
 魔獣の勢いがすっかり削がれていると知った流れ星は、優雅に笑って剣を収めた。影星が車両に仕込まれていた煙幕やオイルを既に使っている以上、いつまでも戦闘するのは得策でない。
 既に一定の成果も得ていることから、【チーム:星月夜】は速やかなる離脱を図ることにした。
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