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ムーンライト・ミステリーツアー

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ムーンライト・ミステリーツアー
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 遺産は誰の手に・1

 月光園のどこかに眠るという遺産。
 それを探そうとするエージェントたちに立ちはだかるのは、園内に生息する魔獣や遺産の悪用を企む組織。
 そして、あまりにも広大な敷地だった。

 エージェントたちが魔獣の生息するエリアに向かうのを遠くに見ながら、渡会 千尋は月光園を訪れる観光客用の地図を広げていた。
 可能であれば園内の管理コンピュータに侵入して、地図と照らし合わせてセキュリティ施設の在処を把握しておきたかったところだが、今の千尋の能力ではできそうにないようだ。
 無理して粘ったところで有用な情報は得られないだろうし、逆に相手に手の内を晒すことにもなりかねないと考えた千尋は、早々に侵入を断念すると、改めて地図を観察し始める。
 月光園がそもそも広いが、動物園エリアも相当に広い。何かを隠しても簡単に気づかれないとは思うのだが、果たして地上のどこなら隠し通せるだろうか。
「もしかしたら、地上じゃないのかも。何となくだけど、動物園エリアの地下深く。そういうところに遺産の保管場所があるんじゃないかな……」
 ふとそう思っただけだったのだが、思い付きとともに電流が体内をめぐるのを感じた千尋は、この予想に一定の信用があると考えた。そこで千尋は、すぐに技術官“D”ことドラグノフ教授に連絡を入れた。
「地図を眺めていた時に気づいたんだ。ボクの見立てでは、遺産は地下に眠っているよ」
「なるほど、地下か。あり得ん話ではなさそうだな」
 “D”との話を終えた千尋は、一箇所に留まり続けるのは危険と感じ、静かに立ち去った。

 次に“D”と接触したのは、アイリス・シェフィールド。「雷鳥」というコードネームを名乗り現れた彼女が、“D”の嫌いな人間という種族だったため、やる気のない態度を向けられたが、会話自体を拒否するということはないようだ。
 周囲の警戒をしながらエアカーに待機する入谷 香澄をちらりと見れば、こちらは気にせず好きに話をするようにという目線が送られた。
 雷鳥はそれに小さく頷くと、“D”に話を切り出した。
「今までに調査した場所、教えてほしいヨ。そうじゃないところを探しに行くネ」
「私たちも調査を始めたばかりだ。調査していない場所の方が多い、くらいにしか言えん」
 “D”の態度は良くなかったが、ここで嘘を言う理由などないから、真実と受け止めるべきだろう。
「うーん、わかったヨ」
 雷鳥は“D”と別れると、香澄の車に乗り込んだ。
「どう、行き先は決まったかしら?」
 香澄の問いに、雷鳥は悩む。
 “D”から有力な情報を引き出せなかった以上は、自分に備わった土地鑑を頼りにするしかない。悩んだ末、雷鳥は動物園エリアにある施設を見て回ることにした。
 この敷地では、いつ魔獣との遭遇が起こるかわからない。香澄は運転席からの目視に加え、自分に備わる予知という感覚にも意識を集中させていく。
「少し迂回するわ。この先、何だか危なそうだから」
「任せるヨ」
 曖昧な理由で迂回したにもかかわらず、雷鳥が難色を示さなかったのは、香澄の勘を信頼してるからだろう。そのすぐ後に、後方から不穏な足音が聞こえてきたので、迂回は正しかったようだ。
 そうしてやって来た施設は、いわゆる関係者以外立ち入り禁止とされる場所。周囲を軽く見渡した雷鳥は、セキュリティのかかった扉を見つけると、まずはそのすぐ近くに身を潜める。香澄が再び周囲の警戒をするが、今のところは安全らしいので、早速不正なアクセスで干渉を試みた。
 少し探った感じでは、この扉を開けること自体は簡単なようだ。そのついでに、隠し扉の存在を示す情報がないかも調べてみるが、この施設にはそうしたものはないようだった。
「ここには何もなさそうだヨ」
 雷鳥がそう言って移動しようとした途端、
「そのまま伏せて!」
 霞から鋭い声が飛び、次いで拳銃の発砲音がした。どうやら、何らかの勢力に目をつけられてしまったようだ。香澄がすぐに光の壁を張って防御に出ると、雷鳥はその隙にサイドカーへと引き返した。
「雷鳥、怪我はない?」
 そこへ追い付いた香澄も運転席に乗り込むと、車を発進させながら雷鳥に尋ねる。雷鳥はそれに首を振ると、新しい行き先を示すのだった。

 “D”の前に立つのは、全身を機械化したサイボーグ。その名はアイン・ハートビーツ、裏では「飛燕」と名乗り、【チーム:カノープス】のリーダーを務めている者だ。
 その飛燕が主人に忠実なメイドの如く、機械や人形のように整った仕草でお辞儀すると、“D”はたちまち態度を軟化させた。
「聞きたいことというのは、何だ」
「現時点で判明している、月光園と遺産に関する情報を教えてほしいんだ」
 “D”はそれに少し考え込むと、答えを示す。
「まず、月光園についてだが。猟場となっているエリアは、かつては演習場だった場所を再利用しているらしい。そして遺産についてだが……これは旧軍施設だった時代から秘匿扱いの情報とされていた、ということはわかっている。つまり、私たちにも目ぼしい情報がないんだ」
 園内に眠る遺産として可能性が高いのが『マクシム・G試作型』ということまでは判明しているものの、それはこの任務に従事するエージェントたちなら当然抑えている情報である。“D”からそれ以上の情報は得られそうにないとわかった飛燕は、仲間の元へ引き返すことにした。
 チームの仲間は、全部で4人。リーダーである飛燕の他には、アデリーヌ・ライアーこと「狐狸」。
 ルーザー・ハートレスこと「鵺」。
 そして、チームで移動に使うエーデルカーの運転手として、夏色 恋こと「鸞」というメンバーがいた。
「“D”からはどんなことが聞き出せたの?」
 車に乗り込んだ飛燕に鸞が尋ねると、飛燕は困ったように首を振る。
「向こうも調査の途中みたいで、そんなに詳しくは教えてもらえなかったよ」
 ひとまず、新しく得た情報を仲間に共有してみせると、狐狸が口を開いた。
「わからないことが多いなら、何があってもおかしくないってことだよね。遺産にしたってそう、『マクシム・G試作型』以外で何か……例えば、ここで放し飼い状態になっている魔獣をコントロールできるような『何か』があったりするかも」
 狐狸の言葉に、鵺の目が怪しく光った。
「幻獣や魔獣に関する遺産があるかもしれないのか……そもそも気に食わなかったんだよねぇ、見せ物にしようってその考えがさ。まるで動物園に囚われた動物みたいで非常につまらないよねぇ……なら楽しくしてあげないとね♪ キヒヒ……制御を失った管理者たちの姿が今から楽しみだね」
 悪だくみしているのは明らかだったが、仲間には鵺を止める意思はないようだ。もちろん飛燕にも止めるつもりはないようだが、一旦この場を締めようと声をかける。
「まずは、動物園エリアにある施設に突入してみようか」
 それに話し合いの終わりを感じた鵺は、車から出ると自前のウィングモービルに腰を下ろした。
「うん、わかった。ドライバーは本職だから任せてくれて大丈夫だよ」
 そして鸞は車内に残った仲間に声をかけると、エーデルカーを発進させた。
 施設につくと、飛燕と鸞はその場に待機し、狐狸と鵺が入口へ向かう。しかし、二人揃って行動するわけではないようで、まずは表向きは警察官をしている狐狸が周囲の偵察をするようだ。
 怪しいと思った場所に手を触れ、わずかな手掛かりでも見逃さないよう集中していると、園の関係者らしい人がやって来た。
「警察の者です。人探しにご協力を」
 狐狸はあらかじめ用意していた理由を伝えると、関係者に聞き取りする態度を見せた。そうやって狐狸が人を引き付けている隙に、鵺がさっと何かを投げつけた。
 それは、1通の予告場だった。
『オリに囚われし獣たち 彼らの心を頂きます』
 予告上に目を通した瞬間、その場にいた人々の顔色が変わる。その様子に、鵺は彼らが遺産についての情報を知っている可能性を思いつくと、狐狸の同僚の警察官であるように姿を装って近づこうとした。
 だが、現れた二人目の警察官に、彼らは強い警戒心を持った様子で話しかける。
「あなたも人探しの聞き込みですか? 悪いけれど、今はそれどころじゃないんです」
「それより、月光園に対して犯行予告が来たんです。その捜査をしてくださいよ」
 どうやら、鵺の送りつけた犯行予告は、園の関係者に余計な警戒感を与えてしまったようだ。ここにいては疑われかねないと考えた狐狸と鵺は、外に待機する車に引き返そうとしたが、それより先に車の居場所を知られてしまったようだ。
「あの車、怪しいんじゃないか」
 外からそんな声がするのを聞いた飛燕と鸞は、急いで車外に飛び出した。二人に武器を構えるのは、園の関係者らしい姿をした者たち。そうなった理由は二人にはわからないが、歓迎されていないのは明白だった。
「荒事はなるべく避けたかったんだけど……」
「こうなった以上は、そうも言ってられないよね」
 飛燕と鸞は目配せし、戦闘態勢を取る。はじめに仕掛けたのは鸞、腕だけを獣のような強靭な姿に変えて拳を振るった。
 鸞が攻撃するのに合わせて飛燕も飛び出したが、それに銃口が狙いを定めて撃つ。しかし、弾丸が貫いたのは飛燕の来ていた給仕服のみ。
 衣服に気を取られている隙に屈んで死角に回り込んだ飛燕は、その状態から狙い澄ませて電を纏った斬撃を浴びせた。
 給仕服の下に纏っていたのは、冒険者の鎧。社畜勇者の剣と併せると、何かの作品で見たような印象を相手に与えたが、正体を隠そうとするにはかえって目立ちすぎたようだ。
 飛燕の裏の顔は、相手に認識されることとなった。
 その間に施設からはライカンスロープの血を呼び起こし九尾の狐の姿に変わった狐狸、警察官の姿のままの鵺も飛び出してくる。
「これで全員、このまま撤退しよう!」
 飛燕が呼びかけると、鸞が狐狸に近づこうとしていた相手を腕力で抑えつけ退路を作り出した。それで狐狸が車に乗り込んだのを確認すると、飛燕と鸞も車に戻って逃走の準備を図る。
 最後に鵺が牽制の射撃で相手との距離を保ちながら二輪車にたどり着けば、【チーム:カノープス】は速やかに逃走した。
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