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ムーンライト・ミステリーツアー

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ムーンライト・ミステリーツアー
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サファリエリア 2


 ビーシャ・ウォルコットはサファリエリアのドライバーとして潜入していた。
 腕の立つドライバーであった彼女はシティガイドで培ってきた運転技術、持ち前の土地勘センスによる空間把握能力に長けていることを面接時にアピールしていたのだ。
 ガイド経験もあることからバスツアーの運転兼ガイド役を務められることをトークセンスでしっかりと誤魔化し、労働への熱意を伝えられるよう口八丁手八丁で丸め込むと見事にバスツアーの運転ガイドの役を射止めたのだった。
 とはいえ、採用されたからとすぐにバスツアーの運転手にはなれない。
 バスツアーの運転手はサファリエリアのガイドが出来なくてはいけないのだから。
 生息する動物の活動域や時間に関する知識を伝承知識を駆使して頭に叩き込む。
 先輩スタッフには危険視していた狩猟内容がどういったものなのかリサーチを行う。
 この狩猟という言葉は観光目的なのか、それとも文字通り狩猟……狩られる側がどちらなのか分からないが、それなのか。もしくは今回の任務に関する情報や物資に関する意味でなのか。スタッフ側での認識を確かめておく必要があった。
 そこでホッとしたのだが、この狩猟というのはあくまでも観光目的。ごく限られた範囲内にいる動物を狩猟できる体験イベントを指していたのだ。
 冒険者風のコスチュームはあくまでも雰囲気造りの一環として貸し出しているらしかった。
 裏メニューとしてハンターメニューがあるが、一般スタッフがその裏メニューのガイドを担うことはないから安心して欲しいと保障された。
 その情報こそビーシャとしては欲しかったが、一般ドライバーとして採用されたため、裏ガイドに就くことはできなかった。
 ツアーの運転手として知識を詰め込んだビーシャがバスツアーのドライバーになるまでそう時間はかからなかったのは幸いか。
 今日も元気にバスツアー、ときにはスーパーバスツアーのガイド運転手として楽しくガイドを行っていく。

「はーい、ガンダルヴァの演奏はどうでしたかぁ? 天界で神々の音楽師を務めているとされる彼らの演奏は。もっとよく聴きたい人はぜひ個人車両でゆっくり聞き込んでくださぁい。次のエリアは迫力満載の飛行龍エリア! リンドヴルムやワイバーンといった飛行龍が飛び交うエリアとなりまーす」

 各エリアに生息する動物、亜人たちを紹介しながら丁寧に安全運転でバスを走らせるビーシャ。
 伝承知識で基礎的なバイナリアの伝説・伝承に関する知識を織り交ぜたトークセンスで車内を盛り上げてコースを巡っていくのだった。

 バスツアーに参加する者がいれば専用車両で個人的にコースを楽しむ者、東トリスでは少数派の個人車両を走らせる者も存在する。
 【チーム:アセスクラウンズ】の草薙 大和草薙 コロナはそんな少数派の個人車両、ギミックワーゲンⅠを走らせる学生カップルに扮してサファリゾーンを走っていた。
 そうなったのも月光園との提携を取り付けたルルティーナ・アウスレーゼの作戦だった。

「大和さん、コロナさん、茉由良さんは遊びながら園内の探索を。お姉ちゃんは、お店の宣伝をしつつ情報収集をお願いしますね」
「任せてよ♪ ライカンスロープでも疑問を抱かれないっていいね☆ ルルちゃん、元から神州出身の狐の妖怪娘ちゃんだけど。てかやっぱライカンスロープって本物とバレると不味いんだね?」
「洗脳があればおいそれと気づかれはしないだろうが、スタッフ側はどうなのか分からないところだな」
「あまり本物の存在だと知られるのは危険だと思うです」

 喫茶ナインテール制服【給仕服】から生えているしっぽをモフモフするシャーロット・フルールに大和とコロナも正体に気づかれるのは危険だという意見で重なっている。
 数多彩 茉由良としてはドラグノフ教授と談義して世界観掘りをしてみたいとも思っていたが、チームの方を優先して今回は自分の希望を飲み込んだ。

「それでは皆さん、お仕事がんにゃ……っ! うぅ~。大事なところで噛みましたぁ……わたし、リーダーなのにぃ………」
「んふふ♪ 噛んじゃうルルちゃんもプリティにゃんっ☆」
「あうう……」

 頬を赤く染め顔を押さえるルルティーナ。
 シャーロットを始めに他のチームメンバーも微笑ましく音頭を待っている。
 小声でもう一回っと気合を入れ。

「お仕事、頑張りましょー! おーっ☆」
「おー☆ さーて♪ 愛するルルちゃんのお店の宣伝がんばるぞ~♪」

 それぞれが持ち場に分かれる【チーム:アセスクラウンズ】。
 そうしたこともあり、今は学生カップルとして大和とコロナはコースに従いながら魔素の濃い場所を探していた。
 大和はスパイグラスの望遠機能と超直感を使いマッピングを行いつつハンドルを操縦していく。

「えへへ~、大和さんとテーマパークでドライブデートですー♪」
「久しぶりにドライブデートをしたかもしれないな」
「ですよー。遊園地ゾーンでももっとデートしたいですし、絶対幻の虹蛇とバールーを見つけるのです!」

 イチャイチャしながらもコロナは試作ラットバグが届ける音に聞き耳を立てている。
 視覚を大和が、聴覚はコロナが担当することで見落としが無いように隅々まで探索を行おうとするためペースはとてもゆっくりだ。
 コース上は安全エリアとも呼ばれ、受付で安全エリアから外れた道を走らないように厳重に忠告を受けている。

『ヤマコロちゃんに報告だよ。サファリエリアには裏メニューが存在するみたい。そっちのメニューにハンターメニューが存在するんだって』

 無線から報告を入れているのは月光園のスタッフとして潜入していたエンターティナーに扮したシャーロット。
 アンカーショットとスプリングブーツでアクロバティックに、顔面国宝級の可愛さを武器に、トークセンスで来場客に話しかけて情報を集めていた。
 フェスタのトップアイドルの実力を見よっ☆ とはよく言ったもので、接客の中に喫茶ナインテール【出張店舗】【【不動産】喫茶店】の出張サービスをしているルルティーナの番宣のための喫茶ナインテール宣伝チラシ【美術品Ⅰ】を配っていた時に情報を掴んだのだ。

『裏メニューって響きに惹かれて安全エリア内で行われる狩りに参加する人もいるみたいで、冒険者風の恰好をしている人が目印。で、ここからが本題なんだけど……狩猟ゾーンの外側って安全エリア外なのね。そっちに入っちゃうと逆に襲われちゃうから絶対外には出ちゃダメなんだって』
「ドライブコースとは違うコースなのか」
『もちろん。でも安全エリアはとても狭くて、そのエリア内の動物は基本的に逃げるだけで、積極的に客に襲い掛かることはないの。だから冒険者になったお客さんはその逃げる獲物を追いかけて狩るのを楽しむんだってさ』
「ということはつまり、安全エリアの外側は魔素が濃いってことですね。魔素が濃いが故に狂暴化した魔獣に襲われる……」
『そういうこと』
「分かった。コースから外れてどこまで調べられるか分からないが、少し調べてみる」
『気をつけてね』

 無線が切れる。
 そして大和は気合を入れ直し、狩猟エリアになりそうな場所を直感的に選び、ギミックワーゲンⅠをコースから外して奥へと走らせた。
 コース上ではあまり感じ取れなかった魔素が徐々に濃くなっていくのが肌で感じられる。
 魔素耐性のある大和とコロナは注意深くなにかないか周囲を見回していくがなにも見つからない。
 それよりも魔獣たちの殺気の方が強くなっているように感じられた。

「コース上は意図的に魔素を薄くしているのかもしれないな」
「はいです。一歩外に出ただけでこんなにも殺気を感じられるのです。本当に危険区域のようですね」

 周囲は山や川、木々が生い茂り人工的な建物は見当たらない。
 だが、ふと一部の山が気になった大和。
 スパイグラスをズームにしてみるがなにも変わった様子は見受けられない。

「コロナ。あの山が見えるか」
「見えるです」
「なにか聞こえたりは」
「…………なにも。ッ待ってください! 誰か来てるです!!」

 猛スピードでこちらに接近して来たのは一台の車。
 その車にはスピーカーが取りつけられているようでスピーカーから大声が発せられる。

「ここはサファリコースから外れている。そこで何をしているか!」
「えっぼ、僕たちはなにもしてません!」
「そうです! 幻の虹蛇らしい存在を見つけたので追いかけただけです!」

 とっさにコロナがそう誤魔化す。
 虹蛇の姿がどんな形なのかはこの際関係ない。
 とにかくコースから外れてもおかしくはない理由をでっちあげるしかない。

「本当だ! 虹蛇というのは滅多に見られない存在らしいじゃないか。それらしき存在を見つけたら思わず追いかけてもおかしくはないだろう!?」
「わたしたちこれからもずっと幸せに暮らせますように。ラブラブに生きられますようにって虹蛇さんにお願いしたくて探してたのです!」
「彼女は可愛いだろう? 他の人が恋をしてもおかしくはない。僕はそんな横恋慕してくるような悪しき存在を吹き飛ばしたいんだ。僕の恋人は彼女だけ。彼女を愛するのは僕だけでいい!」
「わたしも愛しているわ! 好き好き大好き!」
「僕もだよ。愛している」
「キャーッ聞いた!? 愛しているですって!!」

 できるだけバカップルらしく振舞ってみせる。
 少々考える能力が足りない学生カップルが恋の成就のために虹蛇を探しているということで納得したのかしていないのか。
 スピーカーからはこれ以上問い詰める言葉は出てこない。

「早く元のコースに戻りなさい。コースの外は彼らのテリトリーだ。襲われても責任を持てないんだよ」
「「ごめんなさい」」
「分かってくれればそれでいい。道に迷ってしまってはこちらも寝覚めが悪い。私の後を着いてくるように」

 これ以上の調査は難しい。
 大和とコロナは視線を交わし元のコースに戻っていった。

 茉由良も大和とコロナのミックワーゲンⅠとは別にスーパーバスツアーに参加しいろいろ思考を巡らせていた。
 このバイナリアに蔓延する魔素、そしてエネルギーというのは超能力や、エーテルリアクター等の作用に関わるモノでエネルギー源の様な物質だったか。或いは残滓・痕跡の様なモノなのかもしれない、と。

「(発見は近代……との事で、ゼストのブルー粒子の様に……何らかの、世界のルール変更で現れたものでなければ……多分、昔から……それが関わった事象……魔獣とかが現れてもおかしくない土壌が在った、事になりますけれど……)」

 魔素汚染が登場したのは戦中・戦後あたりだったか。
 研究者としての血が騒ぐ。

「(エネルギーとして、ベクトル量で世界内に普遍的に満ちているモノなら、何故以前は影響が無かったのか? というのも気になりますけれど。或いは、エネルギーを取り出される事で世に現れる物質なのか? とも考えられますが……)」

 本来は、一定以上の運動エネルギーの様なものを有していて、普遍的に偏り無く世に満ちているハズのものを、超能力やエーテルリアクターの動力源等として、内包するエネルギーを奪われる事で運動エネルギー的なものを失い、その近辺に留まる事で濃淡、偏りが出来てしまうものなの、か?
 物質として在るという事は、何らかの粒子としてか、発見されて顕微鏡等で見る事も出来ると記憶している。

「(それが多く在る所は、生物を変質させる……という性質も、不思議と言えば不思議……ですけれど。生化学的には、どんな反応なのでしょう?)」

 思考の海に落ちながらも一般常識から外れない形で驚くところや笑うところを周囲と合わせることで浮かないように目立たないように。
 魔素の濃い場所というのは気分が悪くなるもの。
 サファリエリアの入口で、バスの中で何度もスタッフが定める「安全エリア」から外れないようアナウンスが入っていた。
 バスの外へ飛び出す人なんているのかしら? なんて考えながらスーパーバスはどんどんコースを走る。
 茉由良は天井に登ってきた魔獣に驚きつつ、この魔獣も魔素の薄いこの場所で晒している凶悪さを観察していく。
 もし安全エリアの外に入ってしまったらどれ程変容した魔獣がいるというのか。
 スーパーバスに近寄って来る魔獣の種類を頭に入れる。
 今後サファリエリアの奥を調べる際に見分けるポイントになるかもしれない。

 そしてサファリゾーンを出てきたバスから下車した茉由良。
 遅れて大和とコロナのギミックワーゲンⅠも出口から出てきて、数分遅れでルルティーナの営業する喫茶ナインテールへと集合した。

「いらっしゃいませ♪ 喫茶ナインテールへ、ようこそ♪」
「すっごいアクロバティックな狐の女の子に紹介されてね。ここがナインテール?」
「あ、チラシを見てご来店くださったんですねっ。ありがとうございますっ♪ えっと、何名様でしょうか?」
「3人だよ」
「……はい、承りました♪ お好きな席へどうぞ~♪」

 ルルティーナは顔面国宝の笑顔で接客を行っている。
 喫茶ナインテール制服は可愛らしく、ブラウスにベストとスカートの組み合わせになっており、実は【チーム:アセスクラウンズ】のメンバー全員が色違いの制服を持っている。
 もちろん大和の制服はシャツにズボンの組み合わせである。
 ルルティーナのカラーは明るい赤でブラウスの上にベストを着ている。
 食料【卵類】を調理し、フルールベリーズ【モルス】をカップに注ぐ。
 フルールベリーズは喫茶ナインテールオリジナルの期間限定の桜色のドリンクで、ベリーに蜂蜜とリンゴを加え、少量のソーダで後味を効かせた一品となっている。
 良い子のオーラと顔面国宝の笑顔を振りまきつつルルティーナは一般常識から外れないように注意しながら手を止めずにお客と会話を始める。

「お客様は、もうこの月光園、すべて回られました? わたしも遊びたいんですけど、お店があるので遊べないんですよね~。遊びに出たら出たで、子供だけですと園内が広くて迷子になっちゃいそうですけど♪」
「そうだね。これだけ広いと全部はまだ遊べてないかな。子供だけでも楽しめるエリアもあるけど、やっぱり大人の付き添いがいないのはいろいろ心配かな。あ、高校くらいに上がったら大人の付き添いはなくても十分大丈夫だと思うよ。個人的な考えだけど」
「そうなんですね。ふふ、お話ありがとうございます♪ こちらも、お待たせしました♪ こちら、当店新作の期間限定ドリンク、フルールベリーズと軽食のセットになります~♪」
「ありがとう」

 カウンター席のお客にセットメニューを渡し、チラリと戻ってきた茉由良と大和とコロナたちへ視線を向ける。
 聞き耳で有用な情報もチェックしつつ、手に入れたサファリエリアの大まかな配置図を描いた紙をお盆の下に挟みながら注文を受けるためにメンバーのところへと足を運ぶ。

「いらっしゃいませ♪ ご注文は?」
「フルールベリーズと軽食のセット3つ」
「かしこまりました。少々お待ちください」

 定型文を交わしながらルルティーナはさりげなく配置図の紙をテーブルに置く。
 アスタリスクで基本的に徒歩では移動しません。たまにルール破って歩く人はいます。とメモ書きが残されている。
 このルルティーナの情報に加え、大和とコロナのマッピングした地図でなかなかに詳細なサファリエリアの地図が完成する。
 コース周辺の地図は完璧といってもいいだろう。
 一部大和とコロナが調べに入った奥地の部分が飛び出して地図に載っている。
 茉由良はその地図に各エリアに配置されている魔獣たちの種類を記していく。
 周りからはサファリエリアをもっと楽しむために情報を共有しているグループに見えていることだろう。
 一部の会話は大和とコロナの暗号会話も織り交ざっているが保安局員に気づかれることなく情報を共有した【チーム:アセスクラウンズ】。
 シャーロットの番宣の力で喫茶ナインテール宣伝チラシを持ったお客はこれからもやって来ることだろう。
 あまり席を占領しているのは良くないと、注文したセットメニューを食べ終わるとふれあいゾーンへと移動していった。

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