クリエイティブRPG

新クレギオン

亡霊の守る場所

リアクション公開中!

亡霊の守る場所
【!】このシナリオは同世界以外の装備が制限されたシナリオです。
リアクション
First Prev  4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14  Next Last


・侵入し、突破せよ 3


 三隻目の輸送船が、小惑星グレイブの大地に鎮座していた。
 この輸送船は、ブルーネットワークーーつまり三大組織に所属しない“無所属”のものだ。
 近くには、クレーターに偽装された扉がある。
 すでにほとんどの人員が展開を終えているようだ。

『総員オートマタを警戒! 電脳士は開閉装置のハッキングにあたって! 私はここから指揮をするわ!』

 通信を介して星空 はるかの声が響きわたる。
 指示を出しているのだ。

「無線やメールはどこかの組織に盗聴されているかもしれない。気をつけて」
『ありがとう。気に留めておくわね』

 はるかの返事を確認して、暁 紫音はプラズマスフィアを展開した。
 球状になった三つのプラズマの塊が、紫苑の周囲をぐるぐると回っている。
 クレーターの向こうからは、早くもオートマタたちの姿が見えていた。
 一見するとクレーターにしか見えない扉は、ものによって大きさはまちまちで、遠くに見えるクレーターは過去に宇宙船が出入りしていてもおかしくなさそうな大きさのものもある。
 となれば、無事な宇宙船が手に入るのではないかという期待が膨らんでしまう。

『普通に考えれば、まず壊れているだろうし、駄目元だけれど……』

 通信機越しにはるかのぼやきが聞こえる。
 はるかが突入場所に選んだのは、人が通れる程度で比較的小さめのクレーターだ。
 といっても数メートルはあり、狭苦しいという感じはしない。
 あまり広くても入口を確保し続けることが大変なため、結局どこの組織もそこそこの大きさのクレーターを選択しているようだ。
 幸い、輸送船同士の距離はそれなりにあるので、ここで人間同士でドンパチしなければいけなくなる可能性は低いとみていい。

『輸送船を回すわ。足場や遮蔽物がわりに使って。でもあまり壊さないでね、帰れなくなるから』

 オートマタたちから視界を塞ぐように、はるかが輸送船を巧みに操って停船位置を変える。
 でも最前線で壁になるようなことはしない。先ほどはるか自身が言っていた言葉どおり、もし輸送船が破壊されれば小惑星グレイブからの脱出が困難になるからだ。
 最悪三大組織のどれかと接触して同乗させてもらうという手もあるものの、なにを吹っかけられるか分からないし、そもそも乗せてもらえるとも限らない。
 なので、負傷者が下がった際に、遠方からオートマタにならないよう目隠しとして扱うなど、消極的な使用に留めていた。
 そんな努力の甲斐もあって、輸送船は今のところ壊れることもなく、いつでも飛びたてる状態を保っている。

『増援のオートマタを確認したわ。手が空いている人はいる? このままだと横合いからつつかれてしまいそうよ』

 指揮と周囲の警戒に専念するはるかは、時間経過と共に移りかわる戦況と、次々に出現するオートマタを見逃さず、都度的確に指示を出した。

「分かった。俺が向かおう」

 急行して対応した紫音へ、オートマタの銃撃が撃ちこまれる。

「そう簡単に当たりはしない!」

 紫音の周囲を回るプラズマ球の一つが銃弾を受けてその熱量で溶かし、また別のプラズマ球が、そのオートマタへ向けてプラズマを放射する。 直撃を受けたオートマタは胴体の装甲を失い、内部の構造を晒して火花を散らす。

「もらった!」

 そこへ飛来した光の刃が、オートマタを両断して爆散させた。
 たび重なる増援にも、紫音を始めとして無所属の面々は大して混乱することなく対応できている。
 連携の深さは、三大組織と比べても勝るとも劣らない。
 そうやってオートマタを押しとどめているあいだに、高橋 凛音が開閉装置のハッキングを続けている。

「ううむ……。分かっておったが、これは医者のやることではないの……。まあ仕事は仕事、手を抜くつもりはさらさらないが」

 凛音の頭上ではサイ・ドローンが巡回を行っており、オートマタたちが味方が構築している防衛線を抜けてこないよう上空から見張っている。 サイ・ドローンはオートマタを凛音へ近づけまいと、FPS82-リトルドールを身にまとい奮闘する仁 小龍の姿も捉えていた。

「先生に手を出させるもんか!」
「その意気じゃ。頼むぞ」

 視線はあくまで開閉装置に向けたまま、凛音は小龍へ声援を送る。
 開閉装置に直結されたウェアラブルコンピューターから浮かびあがる、仮想キーボードを操作する凛音の手つきは淀みない。
 途切れなくタイプしながら素早く周囲に視線を巡らせた凛音は、自分へ差し迫った危機が近づいていないことを確認する。
 小龍はよくやってくれている。
 護衛役として凛音を守って戦っているのは小龍だけではない。
 FPS82-リトルドールを装着している無銘 刀もその一人だ。
 傍にはアルマ・ヴァレンタインを連れている。

「師匠と初仕事だ……! やれるだけのことはやらないとね!」

 アルマはオートマタに興味津々なようで、目をキラキラとさせている。
 ここが戦場でなければ、弄りまわしたいと言いだしそうだ。
 とはいえ、まずは目の前の光景をどうにかせねば始まるまい。
 押しよせるオートマタたちを前に刀が思うのは、元軍人としての感傷か、それとも共感か。

「なんとしてもこの星を守ろうとするその姿勢に……敬意を表するよ」

 PSオートライフルの引き金が引かれ、けたたましい音と共に弾丸を吐きだす。
 掃射された銃弾が、オートマタの装甲を貫いて地面に弾痕を穿つ。
 もともとあまり耐久性がないのか、長い年月を経て劣化したのか、オートマタの装甲はそれほど強固ではないようだ。

「さすがは師匠! 頑張れ頑張れ!」

 応援を受けて、刀の戦意が静かに高まっていく。

「……当たれば壊せるか。ならば」

 刀は周囲を見回し、二体のオートマタの中間点に陣取った。
 当然、左右からオートマタたちは銃撃を放ってくる。
 そこで刀が避けてやると、弾丸は流れ弾となって飛び、オートマタ同士にそれぞれ突きささった。
 すかさず刀もPSオートライフルで追撃し、爆散させとどめを刺す。

「有効そうだな。これはどうだ」

 続いて刀は、一体のオートマタを別のオートマタのあいだに挟むよう位置取りする。
 すると、そのオートマタを外して銃撃が飛んできた。

「なるほど。簡易なAIといえど、その程度の判断はできるようだな」

 精密な狙いはつけずに今度は連射して弾幕を張り、丁寧に一体ずつ落としていった。
 そのあいだも、凛音はウイルスと一進一退の攻防をくり広げている。
 並行してロック解除パスワードの調査も行っていた。

「オートマタの相手をせんでもよい分、妾の相手はこの扉のロックと、ウイルスを突破することじゃな。守ってもらっている以上、しかと結果を出してそれなりの働きをせねばなるまいて」

 じわりと、余裕の表情を崩さない凛音の額に珠の汗が浮かぶ。
 態度では隠しているものの、たった一人で解除に当たっている凛音にはかなり負担がかかっていた。
 幸いにも凛音が集中できているのはオートマタに狙われていないからだ。
 いや、正確にいえば狙われているのだが、攻撃はことごとく小龍や紫苑、刀といった面々にカットされており、凛音にまで届いていない。

「させん!」

 オートマタの銃撃に反応し、紫苑は三つのプラズマ球からプラズマを乱射して弾丸を消しとばし、さらに本体を飲みこんでいく。
 あとには半ば溶解したオートマタの残骸が残った。

「よし……抜いたぞ!」

 ついに、正解のパスワードを探し当てた凛音によってエンターキーが押され、甲高い音をたてた。
 扉のロックが解除される。
 それを確認すると、急いで接続を解除し侵入したウイルスを駆除する。

「さすがは先生だ! あとはオイラたちに任せて!」

 小龍は凛音を守るため、オートマタへ向けてPSオートライフルを牽制として放ちつつ、腕と足のアクセルユニットによる推力で一気に接近した。

「これでもくらえ!」

 パワーアシストを受けた拳が叩きこまれ、一瞬オートマタの身体が宙に浮く。
 すかさず肘打ちからの回し蹴りに繋げ、勢い余って吹きとんだオートマタを追撃した。
 オートマタも途中で体勢を整え、踏みとどまって銃撃し応戦してくる。

「こっちだ!」

 機動力を存分に生かして側面から突っこんできた小龍が、全力でオートマタをぶん殴った。
 とどめとばかりにオートマタの周囲を旋回しながらPSオートライフルを全弾撃ちこむと、オートマタが赤熱して爆散する。

「やった! 先生、見てた!?」
「うむうむ。よくやった」

 戻ってきた小龍を、凛音は笑顔で労った。
 破壊されたオートマタが増えてくると、戦闘組にも余裕ができてくる。
 これは、開閉装置のロック解除が終わったことで凛音自身自衛できるようになり、、無理に守る必要がなくなったのも大きい。
 後ろから刀を応援したり、部品が残ることを祈りつつ対装甲ロケットランチャーをぶっ放したりして援護していたアルマが、オートマタ残骸を弄りまわす。

「これ自体ロステクなんだよねぇ……」
「そうだな」

 知識欲を満たさんと調べているアルマの横で、刀が周囲を見張っていた。


First Prev  4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14  Next Last