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新クレギオン

亡霊の守る場所

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亡霊の守る場所
【!】このシナリオは同世界以外の装備が制限されたシナリオです。
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・侵入し、突破せよ 2


 フォーチュン・マキシマ社と同じように、ペンタクラン・ファミリーも別の入口に辿りついて、そのロックを解除しようとしていた。
 ヤクモ・ミシバシンシア・レイコットはロックの解除担当だ。
 一度は一掃したオートマタが、開閉装置にアクセスしたことで再び集まりつつあるようだ。

「俺のやることは変わらん。秋良たちの期待に応えるまでだ」
「ええ、私たちの働き如何で作戦の成否が決まります。急ぎましょう」

 二人はウェアラブルコンピューターを解して電子の海に潜りこみ、解析を続ける。

「時間をかければロックそのものは突破できそうだが、ウイルスが厄介だな……。ダミーをまくか」

 電子戦のやり方は多種多様であり、行う人やシチュエーションによって千差万別だ。
 今回、ヤクモはダミープログラムをウイルスにわざと感染させて隔離し、無力化することを試みた。
 その試みは成功し、ウイルスはダミープログラムに閉じこめられている。
 ダミープログラムはどこにも経路が繋がっていない袋小路で、さらにウイルスに感染した瞬間自らアクセスを拒否して通信から隔離されるため、そこでウイルスの侵攻は止まる仕組みだ。
 とはいえ、ダミープログラムも無敵ではないので、内側からクラックを受け破壊されそうになっていた。
 そのたびに新しいダミーを追加し、それにウイルスを感染させて凌ぐ。
 一方で、シンシアはウェアラブルコンピューターに表示されたパスワード画面を見て冷や汗をかいていた。
 凄まじい桁のパスワード入力を要求されたのだ。
 これを一発で解ける者がいたら、それは間違いなく人間ではない。
 電子戦に強いシンシアといえど、完全に没頭しなければ突破は難しい。

「頼みましたよ、藤白」

 己の護衛に声をかけ、シンシアはパスワードの総当たりを始める。
 ヤクモとシンシアは目と目を合わせた。
 二人で別々に行うより、力を合わせて役割分担したほうが効率的だと判断したのだ。
 シンシアがパスワードの突破と並行して行っていたウイルス対応をヤクモに回し、ヤクモは逆にパスワード関係をすべてシンシアに投げる。
 情報が二人のあいだで共有され、二人のウェアラブルコンピューターに表示されるウインドウは瞬く間に増えていった。
 パスワード入力画面を複数開いたシンシアは、すべて同時に入力して並行認証させる。

「……とにかく、手を早めましょう」

 ウェアラブルコンピューターを操作するシンシアの指がぶれて見えない。
 その入力速度は、かなりのものだった。
 当然扉の開閉装置にアクセスしているヤクモとシンシアは集まってきたオートマタたちの最優先目標となっており、その危険度は計りしれない。
 二人を護衛する者として、砂原 秋良藤白 境弥がいた。
 秋良がヤクモを、境弥がシンシアをそれぞれ守っている。

「ここを凌げば他のメンバーが到着します。踏んばりどころですよ」

 未来予知とも呼べる直感でオートマタの銃撃を避け、乱舞するプラズマスフィアから放射されるプラズマで弾きとばし、秋良は味方を鼓舞する。

「ヤクモの邪魔はさせません。もうしばらく、私の相手になってもらいますよ」

 秋良は回復役としても重要な役割を担う。
 単体対象、複数対象の回復を使いわけ、自分だけでなく共に戦う境弥をも支えた。

「最後までよろしくお願いしますね。こんなところで倒られては困りますので」
「心配には及ばないが、回復は感謝する」

 突然オートマタの一体が爆散した。
 その残骸へは境弥のアンチシールドレーザーが向けられたままだ。
 どうやら境弥がこれで撃ちぬいたらしい。
 まず武装を破壊し、足を撃って壊し、また別のオートマタを狙うという足止めを主目的とした戦法を取っている。
 そして余裕があればAIが格納された箇所を狙撃して止めを刺す作戦のようだ。
 弱点を的確に狙いうち、足止めから破壊まで一人でこなすさまはさすがである。
 回復と攻撃を状況に応じて使い分ける秋良も、状況的な余裕を生みだしており、プラズマスフィアをときには集中させ、ときには拡散させと、冷静に判断して操っていた。

「相手がオートマタというのが残念ですね。人間なら、人質という悪党らしい手段が使えたのですが。まあ、こうしてこつこつ善行積んで人望を集め、他者の扇動に繋げるのも悪党らしいといえますね」

 クールと優しさを同居させる秋良が浮かべる笑顔は、どこかミステリアスで底を見せない。

「戦意高揚になっているから、悪いことでもないが。まあ、俺がどうこう口を挟めることでもないし、上手くいっているならそれで構わんだろう」

 二人が話しているあいだも、オートマタの結集は止まらず、プラズマとレーザーが乱舞する。
 それぞれが護衛するヤクモとシンシアは二人協力してロック解除を行っているため、護衛の二人も必然的に連携を見せていた。

「……あともう少し、といったところか」

 ふり向いた境弥はシンシアの様子を確認すると、身もせずにレーザーを放ち、迫っていたオートマタを撃ちぬいた。
 二人と同じようにオートマタの相手をしながら、ゲオルグ・グレイマンは倒した残骸に興味を引かれていた。

「なにかに使えるかもしれん。持って帰れるなら回収したいところだが……そのためにはまた別のオートマタが邪魔だな」

 扉の向こうも大いに興味を引かれるものの、ゲオルグに求められているのは秋良や境弥と同じように、扉の開錠を試みているヤクモとシンシアを、オートマタたちから守ることである。

「まずは目の前の障害を排除せねばそれどころではないな」

 電磁砲を構え、オートマタを照準内に入れて引き金を絞る。
 砲身内で電磁加速された弾丸が轟音をたてて吐きだされ、凄まじい勢いでオートマタへ直撃する。
 胴体に風穴を開けたオートマタが、その場にくずれ落ちた。
 ジェットを噴射して、反動を殺す。
 同時に一斉発射されたミサイルが、砲撃後の隙を殺してオートマタたちの反撃を阻む。
 しかたなくオートマタたちは照準をミサイルに定めるが、すかさずそこへ降りそそぐ光の雨が凄まじい勢いでなぎ払っていく。
 駄目押しとばかりに、空から裁きの雷のごとく電撃がオートマタたちに降りそそいだ。
 効果的に秋良と境弥が押しとどめ、ゲオルグに粉砕されていくオートマタたちだが、その量にものをいわせ、次から次へと新手がやってくる。 秋良だけでは回復が追いつかなくなってきたものの、ペンタクラン・ファミリーにはルイーザ・キャロルがいた。

「やれやれ……こういう仕事についていると、仕事がたくさんあってもそれはそれで喜べませんよね」

 ルイーザの仕事は、戦場における傷病者治療だ。
 ときには野戦病院を開いて一手に負傷者を受けいれることもあり、それが必要だということは即ち、すぐに手当てをしなければ命を危ぶまれる者がいるということでもある。
 ペンタクラン・ファミリーがマフィアシンジケートである以上、暴力や悪徳とは切っても切れない関係だ。
 それはルイーザ自身も例外ではなく、本人の気性や性格はどうあれ、その行動にはどうしてもファミリーの利益が絡んでくる。
 例えばフォーチュン・マキシマ社の人間も、ネトヘス義賊団の人間もルイーザは分け隔てなく治療するものの、治療やその報酬支払いを口実に戦線復帰を禁じてしまったりすることもある。

「まあ、仲間の治療が優先ですけどね……」

 さすがにファミリーの危機を放って他陣営の治療へは出かけられない。
 冷静に状況を観察しつつ、ルイーザは秋良と境弥、ゲオルグの三人を、秋良自身から引きつぐかたちで回復支援する。
 三人のうちの誰かが被弾するたび、まず初期対応の方法を検討した。
 怪我の程度によってその場で手当てするかいったん安全な場所まで運びだして手当てするか決め、さらに重傷具合で優先順位をつける。
 とはいえさすがというべきか、秋良と境弥、ゲオルグの三人は命が危ぶまれるような怪我を負うことは基本的にないが。
 あえて扉の開閉装置に近づこうとはしていないため、ルイーザが狙われる頻度は低い。
 とはいえまったく狙われないわけでもなく、幾度か襲撃を受けることもあった。
 医者の端くれであるルイーザ自身には大して攻撃手段がなく、従って独力でオートマタを退けることは難しい。
 そのための護衛として、リデル・ダイナがルイーザにつきっきりでついている。
 とはいえ主な対応は秋良や境弥、ゲオルグといった面々に任せ、リデルは防戦に回ってルイーザを守りつつ、後退するだけの時間を稼ぐのが主な役回りとなった。
 ガベッジブラスターでオートマタの足をすくい、横転しているあいだに身体の一部を変異させ、手を引いて逃げるリデルへ、ルイーザが申し訳なさそうな顔をする。

「いつもすみません……」
「問題ないにゃ。思うままにやればいいにゃ。私はそれを応援するのにゃ」
「じゃあ、私はもういいですから、怪我人を探してきてください。きっと助けが必要な人がどこかにいるはずです」
「行ってくるにゃ!」

 ルイーザの頼みとあっては断るという選択肢はなく、リデルはウェアラブルコンピューターによる情報共有と、あちこちを回って実際に目で見てまわることで怪我人を探し、そこへルイーザを案内した。
 患者を移動させるよりも自分が移動するほうが早い場合もあり、ルイーザのフットワークは軽い。

「手伝ってください。止血をお願いします」
「わかったにゃ」

 自らも知識があることを生かし、リデルはルイーザを手伝い治療の一助となった。
 そうやって、オートマタへの対応と負傷者の治療で皆が協力しながら持ちこたえているうちに、扉が開いた。
 ヤクモとシンシアがロック解除に成功したのだ。


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