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新クレギオン

亡霊の守る場所

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亡霊の守る場所
【!】このシナリオは同世界以外の装備が制限されたシナリオです。
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・亡霊という名のキャバリアー 3


 そんなこんなで時間を稼いでいるあいだに、フレデリカとレベッカは相談する。
 望、マイキー、メビウスの三人全員が、ファントムに対し戦いの意志を持っていなかった。
 にも関わらず、ファントムは望のみを見逃した。
 その差が武器の有無であったことを、フレデリカもレベッカも見逃していない。

「ねえ、どう動く?」
「引きつづき、自動操縦の行動パターンを見定める。……姫宮、聞こえているな? 余計な消耗は控えるように」
「難しいことを言ってくれる!」
「できないわけではあるまい」
「まぁな!」

 通信を切って和希との会話を終えると、レベッカはファントムの行動パターンを解析していく。
 どうやら、ファントムは小惑星グレイブに近づく者を優先して襲うらしい。
 それは、最前線に立つ和希を執拗に狙うことからも窺える。
 今のところ、攻撃として確認されたのは格闘と中距離からの機銃掃射のみ。
 見た目で壊れているか、破棄されているかどうかの判別はできるので、それ以外の武装は残っていないとみて間違いない。
 機銃で迎撃しきれなかった和希の弾丸を、ファントムが避けた。

「……ふむ。短距離転移は回避には用いないのか。ならば攻撃に利用してくるか?」

 しばらく考えこむと、レベッカは連携を取るフォーチュン・マキシマ社の全員に通信を入れた。

「できるだけ、デブリなどで射線を塞ぎつつ距離を取り、ファントムの転移を引きだすように戦ってくれ」

 指示に従い、主な戦闘場所が開けた宇宙空間から、デブリ帯へと次第に移っていく。
 射線を開けたり間合いを詰めるため、ファントムの転移頻度が増えた。
 しかし、その精度はあまり高くないようだ。
 転移の機能も往年のそれには程遠いらしい。
 動いているのが奇跡のように見える。

「了解しました。ちょうどデブリがありますし、自分は側面を突きます」

 FPS82-リトルドールを着こみ、脳神経と電子機器を直結させたクラーク・エアハルトが、一度ファントムから離れデブリ帯を通りぬけていく。
 レベッカも動きつつ、引きつづきファントムを観察する。

「精度が甘いようだな。私が楔となる攻撃を撃ちこむので、そこへ一斉攻撃をしかけてくれ」

 幸い、近くにデブリ帯があるので弾丸はいくらでも補給できる。
 移動したレベッカはガベッジブラスターにスペースデブリを装填し、次々ファントムへ向けて撃ちだしていく。
 認識外からの狙撃にもファントムは機敏に反応し、機銃でスペースデブリを爆散させるも、レベッカの居場所をつかめず反撃はデブリを貫くのみ。

「……そこか」

 狙いすましたレベッカの狙撃が、針に糸を通すような精度で機銃掃射の波を越え、ファントムへ到達する。
 ファントムが背中のスラスターから排気を行い、急速回避を試みる。

「偏差の計算完了。データを送る」

 だが、その行動はすでにレベッカによって読みきられていた。

「さあ、いくわよ!」

 飛びだした桐ヶ谷 遥の号令を受け、二人のサイバーソルジャーがマルチミサイルを一斉発射し、さらにマスターがスナイパーライフルでスラスターを撃ちぬく。
 姿勢を崩したファントムへ無数のミサイルが殺到し、大爆発を起こした。

「逃がさない!」

 たまらずデブリ帯を離れるファントムへ、さらにFPS82-リトルドールを身にまとった遥自身も突っこんでいく。
 サイバーソルジャーたちとマスターも遥に追随した。
 航宙機動スラスターが熱を帯び、宇宙に鮮やかな帯を作る。
 爆発の炎から飛びだしたファントムが、遥たちへ機銃の銃口を向けるが、当たらない。
 四つの流星が、ファントムの機銃掃射を置きざりにして暗い宇宙を翔けた。
 未来予知にも似た直感でファントムの機銃掃射を予期し、身体を回転させてバレルロールを行う戦闘機のごとく掃射を紙一重で避け、一直線にファントムへ肉薄していく。

「今だ!」

 さらに遥に呼応し、デブリ帯をぬけ出たクラークが遥と挟み撃ちにする形でPSオートライフルを連射しながらファントムへ突っこむ。
 横殴りに襲いかかった弾丸の嵐がファントムを撃ちぬき、巨体を揺らす。
 全弾撃ちつくす勢いでトリガーを引きつづけ、弾切れになると素早くマガジンを入れ替えて銃撃を続行した。
 たて続けに薬莢が吐きだされ、あまりの連射速度に、PSオートライフルの排熱が追いつかず熱気を帯びていく。
 接近する遥と、それを支援して猛攻をかけるクラークに対し、ファントムは拳を振りかぶった。
 拳が振りあげられた状態では、それが遥とクラークのどちらに叩きつけられるのかは分からない。
 とはいえ、それがどちらだろうと当たれば被害は甚大だ。
 共にFPS82-リトルドールを身にまとっている遥とクラークといえど、人体の大きさの域を出ない二人に対して、キャバリアーであるファントムは何倍もの大きさを誇る。
 殴られただけで、フレームがひしゃげて爆散しかねないだろう。
 着ていた人間がどうなるかなど、語るまでもない。

「これで!」

 銃撃を中断したクラークが、輸送船から持ちだしておいたトリモチ式の外壁緊急補修材をとっさに投げつける。
 動きを止められたのは一瞬のみで、すぐ脱出されてしまったが、その一瞬を稼げれば十分。
 航宙機動スラスターをふかし、まずはクラークが急下降して拳の範囲から逃れる。
 反転して加速し絶好の位置を取ると、下から対装甲ロケットランチャーを背部スラスターの排気口めがけて撃ちこむ。
 その一射はファントムが動いたことで狙いをそれ、拳に弾かれた。
 だが、悪くない。
 遥に直撃コースだった拳の軌道がずれている。

「桐ヶ谷さん、隙間ができた! 今のうちに!」
「ありがとう! ここは突っきるわ! 当たらなければ、どうということはない!」

 迫るファントムの拳を前にしても怯まずつき進む遥を、固唾を飲んでクラークは見送った。
 紙一重で拳が空を切り、その下を遥とマスター、サイバーソルジャーたちが通過し交差する。

「コックピットは……あそこね!」

 ファントムの胸部にあたりをつけ、遥は異能の力を注ぎこみ対装甲ロケットランチャーを発射した。
 爆発に紛れてさらに距離を詰め、PSブレードでファントムのハッチをこじ開ける。

『我々は……ただ平穏を……』

 あったのは風化した骸骨であった。そして音声パターンをくり返しているだけである。
 この骸骨も、かつては生きてこの小惑星グレイブを守るため戦っていたのだろう。
 たった、一機で。
 その願いを踏みにじることに一瞬胸を痛めるも、遥はFPS82-リトルドールをパージする。

「あなたたちの平穏を破って悪いとは思ってる。でも、そっちも関係ない貨物船を撃墜しているんだからお互いさまよ。……なによりわたしは、乙女のロマンが詰まった夢を、諦める気はない!」

 直接ファントムのコックピットに乗りこみ、自動操縦を停止させようとする。
 しかしそれより前に録音音声の再生が止み、うなりを上げていたファントムのエンジン音も消え、沈黙に包まれた。
 遥は持ちうる知識を総動員し、コックピット内の機器に目を走らせ素早く点検する。

「再起動は……無理ね。完全に壊れちゃった? ……まあ今まで動いていたのが奇跡のようなものよね」

 外に出て、FPS82-リトルドールを再装着した。
 突如、フォーチュン・マキシマ社の輸送船から網や牽引ワイヤーが内蔵されたファントム捕獲用アームがとび出た。
 こんなこともあろうかと、密かに猫帝 招来が搭載しておいたギミックである。

「フフフ……捕獲して我の素晴らしき頭脳で研究しつくしてくれよう」

 輸送船が近づいても、ファントムは沈黙している。
 もう動くことはない。

「これで得たデータで試作機を作り、それを正式採用機として量産化させる……その暁には、海賊や犯罪集団どもなど、あっという間に叩き潰してくれるわ!」

 テンションのあがった招来は三段高笑いをした。
 輸送船内に、招来の笑い声が響きわたる。

「あの……大丈夫?」

 遥が声をかけ、招来を現実に引きもどした。

「おお、高機動型リトルドールカスタム・灰色の女神・遥猫型《ヴィシュヌオブグレイ・タイプハルニャン》の乗り心地はどうだね?」
「悪くないわよ。名前とやたらかわいらしい猫耳アンテナ以外は」
「なるほど、なにも問題なしだな?」
「……うん、まあ、無節操に腕とか角とか増やされるよりは、確かに」

 あまりに自信満々に言われたので、思わず納得しそうになる遥だった。
 招来がFPS82-リトルドールを装着しエアロックから宇宙空間にとび出る。

「さて、ではファントムを回収しなければな。我が手で、彼奴をパーフェクトファントムとして蘇らせてやらねば……! メビウスも来たまえ!」
「はーい」

 ひととおり歌と踊りを見せて満足したメビウスが戻ってきて、招来と合流する。
 そのとき、突如クラークのマスターが反転し、スナイパーライフルを構えた。
 素早く遥が招来とメビウスを背にかばう。

「下がって!」
「ぬっ!?」
「わぁ!」

 機能停止に陥ったことを確認し、注意をファントムから外していたクラークも気づく。

「あれは……!」

 完全武装のキャバリアーが一機、急接近していた。
 フォーチュン・マキシマ社のものではない。
 ペンタクラン・ファミリーに属する納屋 タヱ子ジョニー・ケントの二人乗りキャバリアー、ダイジャスティスだ。

『マフィアに正義はないのかもしれない……。でも、アレイダを統一して救えるのはペンタクランだけ。たしかにフォーチュン・マキシマ社は真っ当な企業ではあるのでしょう。でも、能力主義は振り落とされる人間を生む。それを是とする者たちに、負けるわけにはいきません!』

 啖呵を切るタヱ子に対し、フォーチュン・マキシマ社陣営の反応は早かった。

「……敵か!」
「クラーク君! ここは私たちが!」
「今のうちに、早く回収を済ませてしまえ!」

 時間を稼ごうと、レイラ・ノーウッドリック・オルコットが立ちふさがる。
 二人とも、パワードスーツすら着用していない宇宙服姿だ。
 あまりに危険すぎる。

「宇宙の藻屑になるのは嫌だけれど、やるしかないわ……!」

 レイラが閃光手榴弾の安全ピンを外し、放って炸裂させる。
 凄まじい光量の閃光が宇宙を照らす。
 完全自動操縦だったファントムとは違い、パイロットがいるダイジャスティスには一定の効果があるようだ。
 とはいえ、時間が経てば目潰しは回復するだろうし、センサー音である程度の接近を感知し対応してくることは十分に考えられる。
 油断はできない。

「まともに相手をしていられないな……なら、この隙をつく!」

 リックが対装甲ロケットランチャーで砲撃し、ダイジャスティスの破壊を狙う。
 キャバリアーの厚い装甲でも、これなら貫通を見こめるはずと思った。

「たたみかける……!」

 続けてレイラはダイジャスティスへ向けてマルチミサイルを一斉発射し、切り札であるロストテクノロジー兵器の発射体勢に入る。
 ロケット弾が迎撃され、大爆発してダイジャスティスとレイラ、リックの姿をお互いに隠す。

「もう一つ!」

 間髪入れず、リックが二発目を撃ちこみ、煙を強引に吹きとばす。
 そのあいだに、レイラの攻撃準備が整った。

「ブラックホール・バースター……!」

 超重力が凝縮され、重力異常をひき起こす。
 銃口の周りで空間が歪み、その風景が吸いこまれるように集っていく。

「当たって!」

 音もなく放射された超小型ブラックホールが、ダイジャスティスへ向かっていく。
 さらに先ほどレイラの撃ったミサイルの雨が、時間差で今頃になってダイジャスティスへ殺到した。
 回避行動など、取らせはしない。
 所属が同じというだけの者たちも、ダイジャスティスを前に力を合わせる。

「さて。俺もしかけるとするかね」

 シニカルに口の端を釣りあげ、ライオネル・バンダービルトがヴォルカニックアクセルと航宙機動スラスターによる加速を併用し、彗星のごとく突っこんでいく。

「どちらにしろ、キャバリアーの相手をすることになろうとは……」

 ライオネルに合わせてデブリ帯を駆けぬけ、二方向から同時奇襲をかけようと有間 時雨も急いで動く。
 航宙機動スラスターの噴煙が、きらきらと帯のようにたなびき煌めいた。

「俺に合わせろ!」
「承知した!」

 通信でタイミングを計ったライオネルと時雨が、同時にダイジャスティスへ襲いかかる。

「まずは俺からだ!」

 発声した重力に囚われミサイル放射を浴びるダイジャスティスに接近すると、ライオネルは全身を戦闘機のような形状に変形させ、さらに速度をあげながら回転し、貫通力を高めて体当たりをしかける。

「サイキックの力を見せてやろう……!」

 プラズマスフィアを放った時雨が、ダイジャスティスを囲んで一斉に浴びせかけて対応を強制し、ライオネルの攻撃を援護する。

「さすがに硬いぜ……!」

 しかしダイジャスティスの厚い装甲に阻まれライオネルは突破できず、瞬時に退避判断を下して再加速しデブリ帯に逃げこんだ。
 再び人型に戻って全身からオーラを噴出させるとデブリを足場に跳びまわり、ダイジャスティスに狙いをつけさせない。

「攻撃の手を止めるな!」

 さらに時雨が宇宙に漂う人の顔のようなものが浮かんだ靄を取りこみ、己の異能力を強化させ、出力の上昇したプラズマを乱発し囮となる。

「おおっと、狙い時だな」

 機を見計らい、再びライオネルが高速機動形態をとって突撃してきた。
 音速を突破したかのようなソニックブームをまき起こしながらダイジャスティスを殴りつけて吹きとばし、その反動で自らも後方に跳び、全速力で距離を取る。

「これだけやれば、撹乱としては十分だろ?」

 完全にダイジャスティスの索敵範囲から離脱すると、スラスター駆動も抑えて宇宙の暗闇に溶けこんだ。

「私も一度退避する」

 最後に一斉にプラズマスフィアをダイジャスティスへ突撃させて追撃を防ぎ、時雨も下がっていった。
 一連の攻撃で発生した煙が晴れる。
 現れたのは、依然として脅威であり続けるダイジャスティスの姿だった。

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