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新クレギオン

亡霊の守る場所

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亡霊の守る場所
【!】このシナリオは同世界以外の装備が制限されたシナリオです。
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・亡霊という名のキャバリアー 2

 フレデリカ・レヴィのちびドロイドに上空から見守られつつ、姫宮 和希は、フォーチュン・マキシマ社の一人として先陣を切り、ファントムの眼前に立ちはだかる。

『我々は……ただ……平穏を……望む』

 ファントムからは、パイロットのものであろうかずっとノイズ混じりの声が聞こえていた。

「平穏が欲しいなら、俺たちに力を貸しな。一緒にこのドンパチを終わらせてやろうじゃないか」
『我々は……ただ平穏を……望む!』

 振りまわされたファントムの腕が、つい先ほどまで和希が立っていた空間をなぎ払う。
 避けていなければ、全身を強打されて即死コースだ。

「有無を言わさずかよ! 話しあいにすらなりゃしねぇか!?」
「近くにデブリ帯があるわ! そこへ退避して!」

 フレデリカの先導を受けつつ、ファントムから身を隠して格闘による打撃を凌ぎながら、デブリ帯に逃げこむ。
 腕部に仕込まれた銃を展開し、頭部の外部センサーを狙って応射した。
 通常より火薬量を増やした一発だ。キャバリアーといえど、損傷が激しく、動いてるのも奇跡のような状態だ。有効打が期待できる。
 だが、ファントムの機銃掃射により、届かない。
 黒山 望が前に出てきた。
 丸腰で。

「少し時間をくれ! 説得が通用するかどうか、試したい!」

 あえて武器を持たないのは、望の作戦だった。
 無所属の者たちの失敗を見ていなかったわけではない。
 非武装であれば、ファントムにも自分たちの意図が伝わるのではないかと考えたのだ。
 組織としては、必要であれば戦闘行為も辞さないとはいえ、組織を構成する個人の考えはまた違う。
 望のような者もいる。
 まずは、白旗を掲げてみた。
 反応はない。

「通じてないのか……? なら、これはどうだ」

 続いて投光器でモールス信号を送る。
 ファントムは望の投光器を操作する動きにわずかな反応を見せれど、それが脅威に値しないと悟ったのか、明確な迎撃行動に出ることはなかった。
 とはいえ、モールス信号を理解しているわけでもないようで、危険でないなら放置しようとばかりに、望を無視して反転する。

「まてまてまてまて!」

 慌てた望が、慌てて無線でファントムに呼びかけた。

「キャバリアーの武力を振りかざすだけでは平穏は手に入らない! 本当に平穏を望むのであれば、俺たちにも手伝えることがあるはずだ。協力させてくれ。頼む、交渉に応じてくれ」
『我々は……ただ平穏を……望む……』

 帰ってきたのは今まで同じ内容だったが、一応反応はしたかのように見えた。
 対話の可能性を探るため、望がさらに言葉を重ねる。

「もし君たちが人類の知らない土地に行くのなら止めないが、何百年かしてその場所に人類が進出したらどうする? また戦うのか? たぶん人類は君たちが行く先に追って行くよ。戦いは終わらない。それよりも、ここで味方を増やした方が平穏に一歩近づくと俺は思う」
『我々は……ただ平穏を……望む!』

 しかし、帰ってきたのは同じようなフレーズで、ファントムは止まらない。
 機械的な反応ではあるがその音声を仕組んだ人物の“絶望”がそこに感じられた。

 さらに無視して移動しようとしたファントムに、望ははね飛ばされそうになる。

「これ以上は危ない! もう下がれ!」
「くっ! そのようだね……」

 和希に助けられて事無きを得たが、諦めるしかなかった。
 とはいえ、対話が不可能ということは分かった。
 それだけでも充分な収穫といえるだろう。 
 うまくデブリを利用して和希がファントムを引きつけているあいだに、フレデリカはちびドロイドのカメラ越しにファントムをよく観察する。 装甲が所々はがれ、罅が入った外装は、いまにも剥落してしまいそうだ。

「……信じられない。旧時代のキャバリアーとはいえ、どうしてあんな状態で動けるの?」
「さすがは、ロストテクノロジーの産物だな」

 唖然としているフレデリカと共に、レベッカ・ベーレンドルフもこれには唸らざるを得ない。
 露出したあちこちの部品は摩耗していないものを探すほうが難しいほど。
 常識でいえば機能停止に陥っていてもおかしくない。
 だというのに、動いている。
 ファントムが上を向く。
 ちびドロイドに気づいたのだ。
 しかしフレデリカはサイ・ドローンを遠隔操作してファントムに襲いかからせ、うまくファントムの注意をそらした。

「そのまま頑張って耐えて。今のうちに情報を集めるわ」
「分かった! なんとかやってみるぜ! 気づいたことがあれば俺のほうでも知らせる!」

 和希に声をかけながら、フレデリカはファントムの動きを観察する。
 機体性能は本来のものに比べるべくもないが、それでもキャバリアーだけあって対人でいえば勝つのは不可能だ。
 だがその動きは自動操縦なので単調なものだ。
 さらに言えば明確な脅威でなければ後回しにするようで、マイキー・ウォーリーが野放しになっていた。

「オウッ! ボクは、FM社が誇る、愛の戦場カメラマン! 報道屋のマイキーさ! ポウッ! そこに被写体があるならば、たとえ死の中、水の中! アウッ! さぁ、張り切って新鋭アイドルメビウスちゃんやFM社員たちの活躍を全国放送だよ!」

 ちなみにリアルタイムでネットに流すのは飛び飛びになって話にならなため、録画である。
 ちびドロイドを飛ばして味方の撮影に勤しむマイキーの横を、凄まじい勢いでファントムが通りすぎていった。

「おおっと、こっちも忘れちゃいけない! 今回のタイトルは『劇場版MSS・ラヴ・ファントム』で決まりだね!」

 マイキーがカメラ……に見せかけられた対装甲ロケットランチャーを手にファントムを追う。
 被写体であるファントムに狙いを定めてシャッターを押すと、発射音と共にロケット弾が飛んでいった。

「あれれ? 故障かな? カメラからロケット弾が出たよ?」

 実はマイキーが武装していることに気づいたのか、ファントムはロケット弾を機銃で撃墜し、追いまわす。

「ポワーッ!?」

 たまらずマイキーは逃げだした。
 入れかわりに、メビウス・アウラニイスがファントムの周りで踊る。
 メビウスの背後には、彼女を巨大化して映しだしたホログラフィックが投影されている。
 逃げながら、すかさずマイキーがメビウスを連写した。

「ファントムさんも、みんなも、私の歌を聞いて!」

 そうしてアイドルの振りつけに合わせて歌いだしたメビウスを、じっと観察している様子だったファントムは、ガベッジブラスターに目をとめる。
 機銃の銃口がメビウスを捉えた。

「フォーチュン・マキシマ社はいいところ~♪ 亡霊さんはこちら~♪ 手の鳴るほうへ~♪」

 器用に踊りながらデブリを発射して機銃掃射を迎撃しつつ、メビウスがファントムから逃げていった。


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