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新クレギオン

亡霊の守る場所

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亡霊の守る場所
【!】このシナリオは同世界以外の装備が制限されたシナリオです。
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・亡霊という名のキャバリアー 1


 機体から火花を散らせながらファントムが飛ぶ。
 明らかに、小惑星グレイブに近づこうとしている輸送船たちを撃墜しようと狙っている動きだ。
 三大組織と呼ばれる組織が保有する輸送船に加え、ブルーネットワークの輸送船の計四隻から、宇宙服やパワードスーツに身を包んだ者たちが一斉に出撃する。
 最初にファントムとの接触を果たしたのは、どこにも属さないフリーランスの者たちだった。
 航宙機動スラスターで接近したアイリス・シェフィールドが、ファントムへ通信を介してコンタクトを試みる。

「ファントムさん、聞こえてる? 返事をしてほしいナ」
『我々は……ただ……平穏を望む……』
「平穏な旅をしたいならファントムさんは出ちゃダメだヨ、周りを刺激するだけなんだからネ」

 しばらく待っても、ファントムからの返答はない。
 そして、不思議なことに攻撃もない。
 一瞬壊れたのかと思うアイリスだったが、そういうわけでもないようだ。
 もっとも、今まで数々の激戦をくり広げてきたことを表すかのように、ファントムは満身創痍だったので、いつ壊れたとしてもそれはおかしいことではないが。

「傷だらけ……そうだ、アイリスが直してあげル。だから基地まで連れてって?」
『我々は……ただ平穏を……望む』
「話が通じないヨ。どういうことカナ」

 放たれていないとはいえ、キャバリアーであるファントムの機銃は人間に対してはそれだけで特大サイズだ。あまり危険に身をさらし続けるわけにもいかず、アイリスは退避する。
 離れたアイリスを、それ以上ファントムは追わなかった。
 次にファントムに接したのはアルミナ・シャウリス・アル=サハイトだ。
 宇宙服姿のアルミナが持つ護身棒にカメラを向けるファントムだったが、今のところ攻撃してくる様子はない。

「近地球圏の戦争は3625年に終わりました。今は3901年です。貴方達の平穏を脅かすものはもういません」

 ファントムはなおもアルミナの護身棒を注視している。

「アレイダへようこそ。貴方達はお客様です。歓迎いたします。よければお話とおもてなしをしたいのですが、訪問させてもらえるでしょうか?」
『我々は……ただ平穏を……望む』

 返答は、突きつけられた機銃の銃口だった。

「え? ええええ!?」

 慌てて最大出力で航宙機動スラスターをふかし、その場を飛びのくアルミナの、一瞬前にいた空間を、銃弾の嵐がなぎ払っていく。
 離脱が遅れていれば、穴だらけになっていた。
 続けてヨシュア・ハイランドが通信で呼びかける。

「平穏を望むのは我々も同じです。お互い、これで任務完了にしませんか? 平穏を堪能しましょうよ」
『我々は……ただ……平穏を……望む』

 有無を言わさずヨシュアへファントムが殴りかかってきた。
 宇宙服を着こんでいるとはいえ、生身に近い身では当たった時点でほぼミンチである。

「言っていることと行動が乖離しているんですが!」

 パイルドライバーで杭を打ちこみ、拳の軌道を逸らすことによって、辛うじて回避に成功する。
 すぐ横をファントムが通過していき、物凄い風圧でヨシュアは吹きとばされた。
 先のアイリスとアルミナに加え、ヨシュアまで失敗した。
 だが、それはそれで予想をたてる指針になる。

「これは、パイロットは正常な状態ではないのかもしれませんね……おっと」

 翔けぬけていったファントムが戻ってきそうだったので、急いでヨシュアは離脱した。
 ヨシュアを追いかけようとしたファントムだったが、その途中で軌道を変える。

「む。僕から注意が離れましたか……何故です?」

 ファントムが向かう先を見て、得心する。
 アウロラ・白蘭がいた。
 どうやらそちらへ狙いを変えたようだ。
 しかしアルミナのときと同じく護身棒に注目するだけで、すぐ攻撃するようなことはなかった。
 通信ではなく、アウロラはテレパシーを試みる。

『どうか……返事をしてよ!』
『……』

 返事は、沈黙だった。
 なにもないのではない。
 沈黙という、結果があった。
 間違いなく、ファントムにはパイロットとして誰かが乗っている。
 だが、テレパシーで感じる反応は。

「……そうよね。すごい、長い時間をかけて旅をしてきたのよね。……頑張ったのね、アンタ」

 異能者だからこそ、アウロラは悟った。
 パイロットの気配の“残滓”はあった。
 しかし、それはそこに“生きている者”がいる事を意味していない。

 ファントムとは、ある意味このパイロットにぴったりの名前なのだ。
 近地球圏大戦の歴史について調べたアウロラだからこそ分かる。
 ……彼は、どんな思いで戦っていたのだろう。

『我々は……ただ……平穏を……望む』

 通信機器越しに聞こえてくる言葉は変わらない。
 ゆっくりと、ファントムが機銃をアウロラに向けた。
 その光景も、アルミナが接触したときの焼きなおしで。

「……悲しいわね」

 憐れみを感じながら、アウロラは機銃掃射を避けた。


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