クリエイティブRPG

新クレギオン

亡霊の守る場所

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亡霊の守る場所
【!】このシナリオは同世界以外の装備が制限されたシナリオです。
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 邂逅・2
 
 立場の異なる者たちが一堂に会せば、やはりこうなることは避けられないのだろう。
 草花に囲まれるようにして横たわっているパワードスーツを見つけたマリオン・エンハンブレは、駆け足でそれに寄り添う。
 自分自身は戦いに来たわけではないが、かと言ってこの小惑星を守る力も持ってはいない。だからこそ、マリオンは真剣に祈ろうと思った。
「どうかあなた方の望んだ平穏が、これからは誰にも妨げられる事なく永久に訪れますように」
 もう動くことのないパワードスーツに祈りを捧げて立ち上がると、マリオンは巡礼者のようにグレイブを放浪した。
 
 (『我々』とはファントムと誰を示すんだ? 『平穏』が意味する物はなんだ?)
 入口を切り開いてくれた仲間に礼を伝えながら、朝霧 垂は心に浮かぶ疑問を反芻した。
 降り立った小惑星内には、未知の生物が存在する可能性もあるのだという。こんな状況でなければ、それも含めて丁寧に探索してみたいところではあったが、今は何を置いても建物の探索を優先させるのだった。
 小惑星内の入り口をオートマタが守っていたことから、建物に入る際にも何らかの守りがあると予想していた垂だったが、やはり思った通りにパワードスーツがそこにはいた。垂は後ろからついて来ていた中願寺 綾瀬を立ち止まらせると、自身は前に進み出て守護者の前に姿をさらす。垂をめがけて動き出したパワードスーツを立体的な動きに翻弄すると、瞬間的に垂を見失ったのを見計らってFPW5-トールハンマーで電撃を放った。
 それでパワードスーツの動きが固まった隙に、垂と綾瀬は入り口をすり抜けていく。垂と綾瀬の目下の狙いはパワードスーツやレーザーを管理していると思われる制御室、もしくはそれに類する区画だ。垂の勘で入ってみた区画には何らかのコントロールパネルが並んでおり、綾瀬は情報収集の一環として、まず小惑星の関係者の思念体がないか探りを入れる。だが、そうした思念体はこの場にはなかったため、綾瀬は目の前のコンピューターから情報を集めることに集中した。
 その間、垂は周囲の警戒を担っていたが、そこへ1体のパワードスーツが近づいてきた。自前の武器やFPS82-リトルドールでは心許ないと感じていた垂は、周辺に起動していないパワードスーツがないか見渡してみるが、役に立ちそうなものはないようだ。
 やむなく垂は手持ちの武器での応戦を決め、せめて綾瀬が情報収集に専念できるようにパワードスーツの注意を引き付けようとする。高速移動から拳を振り降ろし、またすぐ離脱すると、壁を蹴って一気に距離を詰め再び攻撃に転じる。パワードスーツはその速さに対応できなかったか、あらぬ方向へ銃撃してしまう。垂はそれに手応えを感じると、急発進と急停止を繰り返しながら電撃を放っていく。パワードスーツはやはりそれに翻弄されるままとなっていたが、レーザーが垂を狙い始めたことで形勢が変わる。それぞれの攻撃範囲に注意しながら回避と反撃を繰り返していく垂だったが、次第に壁際まで追い詰められていく。そしてついにレーザーに射抜かれ、垂は倒れた。守護者たちの矛先は、続いて綾瀬へと向かう。その頃には情報収集を中断していた綾瀬は、一瞬先の未来を予知してレーザーを躱すと、自身の周りに展開したフィールドで防衛を図る。しかしそれも長くは続けられず、綾瀬もその場で倒れることとなった。
 
 レーザーやパワードスーツをやり過ごし、建物内へ入ったルーザー・ハートレスは、思い悩んでいた。
 ネトヘス義賊団に所属する立場として、同じ組織の仲間の邪魔はしたくないが――心情としては暴れたいところ。さりとて、平穏を望むという小惑星の誰かを相手に立ち回るというのも気が引ける。それをまとめて解決できる方法を、模索しているのだった。
 そうやって思いを巡らす内に、ルーザーは閃く。ならば、この建物に集結しつつある他勢力を相手に暴れれば良いのだと。無人のパワードスーツと戦うよりは、余程暴れ甲斐がありそうだと、ルーザーは喜色を浮かべながら周囲の気配を探り始めた。
 そこへちょうど接近しつつあったのが、エスリン・マッキャンベル。折よく同じ無所属の身で、小惑星の主人と呼ばれる相手に会おうとしていたクエラ・マレフィキウムと出会ったため、その目的を手助けしようとしていた。
 ちびドロイドで周辺を探索し、ウェアラブルコンピューター大まかな地図を作製したクエラは、道中のレーザーを光の壁で防ぎながら中央を目指す。エスリンもその地図を確認しながら先行するように通路を進んでいたのだが、何者かの気配に気づいて警戒を強めた。そしてクエラを遠ざけるようにしながら、自身はさも重要なものを見つけたかのような反応をして注意を引き付けてみると、そこへルーザーが飛びかかってきた。
「来たね、平穏を乱す無法者達。キヒヒ……この地の平穏はボクらネトヘス義賊団が死守してみせるよ?」
 まるで他勢力など信用がおける相手ではないのだと、小惑星の主人に聞かせるかのような口上を述べながら、ルーザーは拳を数回にわたって振るっていく。
 エスリンはその攻撃に対応しながらも、ルーザーの弱点を見出そうと意識を研ぎ澄ます。そうしながらレーザーの攻撃範囲に誘い込むように動き回ると、目論見通りにレーザーが攻撃を始める。
 だが、ルーザーはそれを予め知っていたかのように難なく躱すと、反射に近い動きで反撃に転じてレーザーを無力化する。そして再びエスリンに接近すると、拳を打ち込んで壁に叩きつけた。低く呻きながらうずくまるエスリンに、クエラは急ぎ近寄ると治療を施す。咄嗟に致命傷は免れていたようだが、かなりの深手を負っているため、エスリンが戦闘を継続するのは困難だろう。
 これではルーザーを振り切れないと考えたクエラは、自らが光の刃で斬りかかろうとする。だが、ルーザーは斬撃を受けながらも、容赦のない連撃をクエラに浴びせていく。それを自身の周りに展開した壁で防いでいたクエラだが、ついに壁が壊れてダメージを受けてしまった。膝をつくクエラにルーザーが止めとばかりに拳を構えるが、その時、後方からの銃撃がルーザーを襲った。振り向いた先にいたのは、パワードスーツだった。
 どうやら、この戦闘の音で誘い出してしまったらしい。当然ながらパワードスーツには勢力争いなど無関係のようで、銃口はクエラにも向けられ戦闘不能に追い込む。
 いざとなればパワードスーツとの戦闘も辞さない考えのルーザーではあったが、その身に負った怪我が不利であることを悟らせたため、撤退することにした。
 
 天津 恭司は恩義を感じているネトヘス義賊団に報いるため、建物の制圧に意気込みを強くしていた。ネトヘス義賊団突撃隊長という肩書まで得られたからには、部下たちとともに善戦したいという思いもあり、それを受け3名ほどの部下が招集に応じたのだが、小惑星がいつジャンプするかもわからず、存在自体も不気味だということで部下たちは及び腰だった。
 これでは戦力として不安だったが、ともあれ恭司は部下たちを引き連れ、ミーラル・フォータムとともに建物の制圧に乗り出した。
「平穏を求めてるのに、自分から襲ってる……不思議な感じですわ。
 何かが眠っているなら調べてみたいですわ、私がきっちりと中心部まで案内しますわ!」
 探索の要となるのはミーラルで、ちびドロイドを飛ばして先行させながら、自身は探検家としての知識と照らし合わせて周囲に罠がないか探っていく。そしてちびドロイドから得た情報とも照合させながら、重要区域に至る道筋を進みだしていた。
「小惑星グレイブ……近地球圏から流れ着いた箱庭。何の為に、いえ、“誰”の為に存在するのでしょうか?」
 その頃、邑垣 舞花もまた、小惑星の主人に会おうと探索していた。
 所属する組織を持たない舞花は、個人の力だけで目的を達成しなければならない。そのためには建物内にある守りを攻略することが不可欠だと考えた舞花は、ウェアラブルコンピューターを操作して防衛設備へのハッキングを試みる。それを敵対行動と見なしたか、舞花の居場所を探るようにレーザーが動きを活発にする。
 だが、舞花は電脳士としての知識をかき集めながらアクセラレータで思考速度を加速させ、レーザーの攻撃よりも早くシステムの支配権を握った。それによりレーザーは一時的な機能停止状態となった。舞花は安堵しながらちびドロイドを飛ばすと、自身でも周囲の調査を入念に始める。
 そうして順調に探索を進めていたところで、舞花は恭司とミーラルたちと遭遇することになった。
 最初に動いたのは舞花で、レーザーが再起動するのに合わせて避難する。戦闘技能を持たないミーラルはレーザーの回避だけに集中すると後ろに下がり、
「野郎ども! 俺が突っ込むから援護してくれ!」
 入れ替わるように前に出た恭司は肉体をスライムのような見た目に変異させると、部下たちに援護を命じる。だが、部下たちの行動は精彩に欠けており、援護をしようとする先からレーザーに狙われて倒れてしまった。
 しかし、恭司がそれで戦闘を諦めることはなく、シールドコートでレーザーを防ぎ、そこに自己治癒を加えながら舞花へ向かって行く。舞花はそれに対しパワードスーツも呼び寄せて応戦しようと考えるが、そこまでの権限を掌握できなかったため混戦状態となる。
 また侵入者を排除しようとするレーザーの動きも激しくなり、被弾した舞花はその場に倒れ込んだ。恭司はまずはパワードスーツを退けようと、拳から連撃を放ちながら、腹部を変異させた触手を硬質化して切りつけていく。その間にもレーザーが飛び交い恭司を襲うが、後方のミーラルがそれを癒そうと駆け出してきた。するとレーザーはミーラルに標的を切り替え撃ち始めるが、その度に回避を試み凌ごうとする。しかし、反応が遅れた瞬間を衝かれてレーザーを浴びてしまい、ミーラルも倒れてしまった。
 動ける仲間を失ってしまった恭司には撤退以外の選択肢はなく、パワードスーツを強引に振り切るとミーラルを抱えて逃げ出した。
「さぁ、楽しい楽しい強盗のお時間ですよーっと」
 キョウ・イアハートの整備を受けた武器を手に、柊 恭也はフロートバイクにまたがったまま、中央に見える建物を眺めている。
 その裏で【タイニィプリンセス】の立場を盤石にするためには、建物を制圧したという実績、あるいはまだ小惑星に眠っているかもしれないロステクなどを手に入れておきたいと恭也は考えいた。
 目的を速やかに達成するため偵察役に名乗り出たミシャ・ルメイは、ちびドロイドを利用した探索で他勢力の動きや役に立ちそうな遮蔽物がないか確認していく。建物周辺にはいざという時隠れられそうな遮蔽物は見つけられなかったが、今なら他勢力と突入前に遭遇することもないとの予測が立っていた。
 それを仲間に伝えたミシャは、伊勢 日向のエアカーに同乗して建物を目指す。その後ろから【タイニィプリンセス】のメンバーが続いていき、いよいよ探索は本格化した。
 建物の入り口に差し掛かるとパワードスーツが見張りのように待ち受けており、恭也は乗っていたバイクを突っ込ませるとスラスターの力を得て宙に上がる。そこから地上に向けるようにして連続射撃をすると、パワードスーツが足止めされた状態になる。
 その間にミシャはちびドロイドで外の様子を捕捉すると、車窓から体内に仕込んでいた機銃で乱射を仕掛けた。
「私達は大義の元にグレイブをファミリーとして迎え入れます。各員奮起なさいませ!」
 また、松永 焔子も恭也を援護する形でブラックホール・バースターでの牽制を行い、パワードスーツの反撃を封じ込めようと企む。
 だが、その勢いを削ぐように、建物周辺からレーザーが放たれていく。
「キョウ君! レーザーが来るよ! システム掌握宜しく!」
 戦いの様子を俯瞰していた紫月 幸人はそれに気づくと、キョウにレーザーの無効化を依頼した。キョウは頷くとすぐにウェアラブルコンピューターを操作して制御権を奪いにかかる。その時間を稼ごうと、恭也と焔子はレーザーの狙いを固定させないよう縦横に動き回るが、パワードスーツの攻撃にも対応しなければならないため、完璧に回避するのは困難な様子だ。
 そのバックアップとして、叉沙羅儀 ユウがフィールドに恭也と焔子を包み込み、治療に取りかかる。ユウにも治療の補助として数名の部下がついて来ていたが、未知の小惑星に対する警戒心の方が上回っているのか、万全の力を発揮できていないようだ。それでもこの局面は乗り越えてみせようと戦線の意地に努めていると、システムに働きかけていたキョウから合図があり、同時にレーザーの攻撃が次々に止まった。
 しかし、動きを抑えられる時間はわずかということらしい。日向はそこでミシャをエアカーから降ろすと、パワードスーツを引き付ける囮役になることにした。恭也と焔子を付け狙うパワードスーツの前にエアカーで割り込むと、それで注意が逸れている間に建物に入るよう促す。
 入口自体にはロックがかかっておらず、再びシステムと格闘する必要はないようだ。恭也は日向と頷き合うと、仲間を連れて侵入を果たすのだった。
 建物内部にも防衛設備が待ち受けているようだが、入り口付近を見る限りそれほど複雑な構造でもないようだ。
「いやぁ、随分大胆な歓迎だったね。とは言え、ああまでするなら明確な理由や目的があるんだろう」
 今度は鴨 希一がちびドロイドと入念な探査で周辺のマッピングを行い、いくつか調査の役に立ちそうな部屋を見繕っていく。レーザーに勘付かれる前に部屋のひとつに潜り込んだ幸人は、システムに干渉できそうなコンピューターを見繕ってキョウに伝える。キョウがそれを確認してパネルを操作しだすと、その隣で焔生 たまもウェアラブルコンピューターを介して空いている端末を使い始めた。
「シノギに繋がりそうな場所ではないですが、政治家としては歴史に関わりそうな情報はなるべく把握しておきたいものです」
 たまが求めているのは、小惑星の真実。なぜ小惑星がこの宙域に移動してきたのか、旅の目的は何かを知りたいと考える内に、墓と名付けられた惑星は故郷で眠りたいのではという仮説を思いついていた。そこで小惑星の主人の出身を洗い出そうとするが、目ぼしい情報は見当たらないようだ。そこでアプローチを変えて、アレイダ宙域で起こった戦いから帰還したという話を聞かない著名人をピックアップし、その中から小惑星の主人になり得そうな人物の見当をつけようとしてみるが、そこにも核心に迫れそうな情報はなかった。
 そうしている内に部屋のドアが自動的に開かれ、外からパワードスーツが現れる。
「ちょっとキョウ君ー! どうなってんのー!?」
「いや、こいつは随分強力だぜ、全く……太刀打ちするのは難しそうだ」
 幸人は進捗を聞こうとキョウを見るが、キョウは無念そうに首を振る。どうやら、建物の外と比べてセキュリティが強いらしく、権限を奪った先から取り返されてしまうようだ。パワードスーツの登場と同じく攻撃を始めたレーザーも、わずかなタイムラグを感じはするが攻撃を止めようとする様子はない。
 恭也はレーザーに向かって火炎放射を放ちかく乱しようとするが、それをすり抜けた攻撃にミシャが倒れる。さらに、これまでシステムに干渉し続けてきたため危険度が高いとみなされたか、キョウも集中狙いされ膝をつく。それをユウが部下に命じて避難させるが、部下たちにできる仕事はこれで手いっぱいのようだ。
 なおも攻撃を繰り出すレーザーに、たまがプラズマを集中させた攻撃を放って損害を与えていく。恭也もそれに続いて壁を蹴り上げながらレーザーに迫ると、拳でレーザーを砕いた。
 レーザーの援護を失ったパワードスーツへは、鴨 柚子がすぐさま反撃に移る。オプトコンバットスーツのカモフラージュで姿を隠蔽していた柚子は、ウェアラブルコンピューターでパワードスーツの射程や仲間との距離を計算すると、最も狙撃に適した位置へと回り込む。そしてアンチシールドレーザーから、狙いを済ませた射撃に入った。
 柚子のレーザー銃で肩を貫かれたパワードスーツは、狙撃の方向をすぐに特定して射撃を返す。一方の柚子は同じ場所から何度も狙撃を行うつもりはなかったようで、既に回避行動に移って難を逃れていた。それを追いかけようとするパワードスーツを、冷気が包み込んでいく。希一の熱量操作で足元が凍り付いたパワードスーツは、その場で希一を狙い撃とうとするが、幻覚に認識を阻害されたために狙いを外してしまう。その隙にたまと希一はプラズマスフィアで集中攻撃を駆けようとするが、一瞬早く凍結から逃れたパワードスーツに回避され、たまは無防備になったところを狙い撃たれ倒された。希一もまた手傷を追っていたが、焔子が希一から狙いを逸らすように攪乱したおかげで後退できたようで、その間にハイヒーリングで自身の治癒を施し耐えたようだ。
 しかし、一つの部屋に長くとどまりすぎていたためか、新たなレーザー攻撃が始まり追い詰めようとする。
 ユウは未来予知で恭也に警告を与え、恭也もまた回避を成功させるが、それを狙っていたかのようなパワードスーツの追撃に遭って気絶した。焔子はパワードスーツが攻撃している隙を見てブラックホール・バースターで狙撃してみせるが、パワードスーツは破損しながらもなお反撃に出ようとする。その体当たりに吹き飛ばされた焔子を、ユウが治療術で持ちこたえさせようとするが、起き上がろうとしたところをレーザーに襲われ焔子も倒れた。
 これまでの戦況を見ていた幸人は、味方の損害が著しいことから撤退するべきと判断する。そこで部屋に入った時に見つけていた操作盤でシャッターを下ろして急場を凌ぐと、戦闘不能になった仲間を担ぐように声をかけ、ユウ、柚子、希一とともに離脱するのだった。
 
 (『我々は、ただ平穏を望む』ですか……)
 綾瀬 智也はその言葉を思い出しながら、小惑星内部へと踏み込んだ。あの言葉は逆説的に平穏ではない場所からやってきていて、それがキャバリアーしかり、オートマタしかり、そして建物内に配置された防衛設備に通じているのだろうか。もしくは自身こそを平穏を破りかねない存在と捉えているか。
 工作員と探偵、二つの職能の真価を存分に発揮しながら、智也がエレナ・フォックスとともに向かおうとするのは、建物の中でもサーバールームと呼ばれる場所。
 何組かの探索者たちとすれ違いかける局面もあったが、それを視力や聴力を研ぎ澄ませ察知することでやり過ごしたり、レーザーやパワードスーツの類にも、オプトコンバットスーツの迷彩機能で姿を隠すことで戦闘を回避していた。
 そうして辿り着いた建物の入り口では、当然のことながら外よりも厳重な守りが敷かれているようだ。レーザーやパワードスーツの挙動をつぶさに観察した智也はSRを静かに構えると、パワードスーツが自分たちのいる方を向いていないタイミングを見計らって、侵入者を検知すると思われる装置やレーザーの発射口に狙いをつけて弾丸を放った。
 智也の狙撃でレーザーは攻撃する間もなく沈黙し、パワードスーツは狙撃音のした方向をすぐさま振り向くも、智也とエレナは後ろを回り込むようにして内部に潜入するのだった。
 内部は一部何らかの要因で壊れている設備もあるようだが、智也はそうした状態にない部屋を見つけて入り込むと、まずはエレナの調査を見守ることにした。
 エレナは部屋の端末をざっと見渡しコネクタを探し出すと、WCとARDを端末に接続してハッキングを始める。まず知りたいのは小惑星の真実だが、権限の関係かそれらしき情報には行きあたらない。そのため同じく重要な施設のマップと警備システムに関する情報を洗い出してみるが、通りがかりに機能していたい設備があったことを鑑みるに、得られた情報も絶対の保証はないようだ。それでも探索する分には役立てられそうなのでWCに保存すると、今度はセキュリティに関する情報の書き換えに移行する。
 そうしてハッキングを続けた結果、この先に続くドアのロックは解除可能になったが、レーザーやパワードスーツの排除対象から智也とエレナを除外する内容に書き換えることはできなかった。
 この部屋で粘り続けても時間の浪費になるだけだと考えたエレナは、得られた情報を智也と共有し、二人はさらに奥へと進むことにした。
 建物内でもいくつか戦闘行為の音が聞こえはしたが、智也とエレナはそれを避けるようなルートを辿り、レーザーの破壊も必要最低限にとどめるようにしてひたすら先を目指していく。

「――また人が来たのですね」

 そしてようやく見つけた管理施設には、少女セイクリッドが佇んでいた。おそらくはグレイブの最後の住人と考えられる人物を前に、智也は考える。
「この小惑星で平穏を叶えるのは難しいでしょう。
 ですが、ここを放棄できるならその願い叶えられるかもしれません」
 その考えから、少女に小惑星からの脱出を促す。

「それは、出来ません。
 皆様の様子も見させて頂いております。
 この星が行っている事が正しいのかどうかそれも分かりません。
 ――しかし」

 少女は何かを振り切れないでいるようにそれを拒んだ。そして少女は智也とエレナに告げる――これまで犠牲になった人たちの意思を継ぐべきかどうかに答えを出せないままでは、ここを脱出しても後悔するだけなのではと。
 それにかける答えを智也が探していると、エレナが警告を発する。どうやら、一連のやり取りをパワードスーツに勘付かれてしまったようだ。本人にその意志がない以上、ともに脱出することに意味はないと判断した智也は、エレナと二人だけで部屋を去っていった。
 
「残念だけど、望んだだけで得られるなら今頃、皆心健やかに過ごせてる……いや、意外とそうでもないですかね
 皆して色々企む人が多いですから、ここ」
 小山田 小太郎は工作員として数多くの困難を乗り越えてきた経験や知識で、素早く建物に潜入していた。
 装備の迷彩を活用しながら、周辺の音や景色から異変を探り出し、危険を感じたら即座に離れて別の道を探る。その結果、多少の回り道になったとしても、戦闘を重ねるよりは余程ロスが少ないと考え小太郎は進んでいく。
 その甲斐あってか、他勢力と遭遇することもその戦闘に巻き込まれることもなく、管理施設へと迫っていた。
 だが、重要施設に近づくほどに守りは強固になるもの。さすがの熟達した工作員といえど隠密行動をしきれるものではなく、今さら回避して別の道を探す余裕もなかった。
 やむなく小太郎は、パワードスーツとの戦闘態勢に入ろうと暗器を構える。ヴァルハラ・ライザーで自身の肉体を常時強化状態にし、そこから放たれた暗器はパワードスーツの関節部分を狙いすましたかのように切り裂いた。だが、パワードスーツの攻撃がそれで止むことはなく、小太郎に向けられた銃口から弾丸が降り注いでいく。
 小太郎はそれを後方へ飛び退きながら回避しつつ、壁を走るようにパワードスーツの側面に回り込んで暗器を投げつけようとしたが、レーザーに阻まれてしまう。
 パワードスーツだけが相手なら、あるいは破壊まで追い込まなくても処理できる術があったかもしれないが、現状は分が悪すぎた。せめて土産になる話や物でも見つけたいところだったと思いながらも、小太郎は探索を断念することにした。
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