クリエイティブRPG

新クレギオン

亡霊の守る場所

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亡霊の守る場所
【!】このシナリオは同世界以外の装備が制限されたシナリオです。
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 邂逅・1
 
 入口の確保に向かってくれた仲間のおかげで、先へ向かうルートは開かれた。
 解放された入り口というのは、ある者にとっては仲間の戦果であり、またある者にとっては偶然にも他勢力が切り開いてくれた結果だった。
 そうした入口の一つから、レイン・クリスティが内部に向かって走り去っていく。
 それから少し遅れて、月見里 迦耶がフロートバイクを操縦しながら現れる。辺りをきょろきょろ見渡しながら進むうちに建物を見つけた迦耶は、バイクをその場に停めるとその内部へ足を踏み入れようとした。
 すると、迦耶を排除しようとパワードスーツが出現し攻撃を始める。
 先へ進むには避けて通れないと考えた迦耶は、幼い顔に凄みを湛えると、パワードスーツをひと睨みする。
 その威圧感でパワードスーツはわずか動きを止めたように感じられ、そこを縫って突破しようと動き出す迦耶だったが、その体に灼けるような痛みが襲いかかった。 痛みにもがく迦耶が見たのは、再び動き出したパワードスーツ。その背後、天井辺りからレーザーの光が見えたのを最後に、迦耶の意識は途絶えた。
 
 その頃、別の入り口からは響月 鈴華が入っていた。
「ともだち、100人できるかなぁー!」
 緊張感を全く見せない様子で建物を目指せば、鈴華もまたパワードスーツと出会ってしまった。しかし鈴華はそれでも緊張や警戒といった色を見せずに、
「友達になってくださいなー」
 胴体へ向けて拳を振るう。鈴華の鋭い強打を受けてパワードスーツは鈍い音を響かせたが、すぐさま鈴華への反撃を始めた。
 鈴華もそれで本格的に戦闘態勢に入ろうとしたが、それから間もなく戦闘不能に追いやられてしまった。
 その戦闘に紛れるようにして、ノル・マンディが先を急ごうとしていたが、戦闘を終えたパワードスーツに見咎められてしまう。
 ただ、ノルの出で立ちに戦闘の意思を感じられないからか、直ちに排除しようという様子ではなさそうだ。ノルもそれを感じ取り、試しにスタメナポーチを取り外して武装解除の意思をアピールする。
「ねえ、貴方達の望む『平穏』、とはどういう状態なの……?」
 そうしながらパワードスーツに向けて、望んでいる平穏とはどういう状態か、この宙域でどういう事がしたいのかなど、互いの落としどころを見出せるようにと質問を重ねていく。
 ノルが質問する間、パワードスーツは傾聴しているように思われたが、どこかから戦闘で発生したらしき爆発音がした。途端にパワードスーツは警戒を強めると、音のした方向へと走り去る。
 ノルもそれに続こうと走り出そうとしたが、その足元を建物に備わっているレーザーが射抜いた。
 どうやらノルもまた仲間だと考えたのか、自由にさせるつもりはないらしい。戦う手段を碌に持ち合わせていないノルは、大人しくその場に留まらざるを得なかった。
 
「何とか出入口は確保しているか、さすがだ」
 クリオス・フィンクスは仲間の功績を称えると、FPS82-リトルドールを操り建物を目指していく。
「おい、この閉鎖環境で生態系を維持してるのか‥‥こっちのほうがやばくねーか!」
 途中で見かけた、閉鎖空間内に出来上がったとは思えない程に豊かな自然に驚きを覚えながらも、しかし今回の目的はそこにはないとして建物へとまっすぐ辿り着いた。
 そしてそこには、まさしくクリオスが狙っていたものが待ち構えていた。建物で待ち構えていたパワードスーツが銃口を向けるのと同時に、クリオスも短銃身PSライフルを構える。
 両機は同時に掃射を行ったが、航宙機動スラスターの機動力の分だけクリオスに軍配が上がった。連射の間隙をついて撃ち込まれた銃弾にパワードスーツが浮足立ち、そこをさらに攻め込んでいけば決着はあっという間だった。
 クリオスは機能停止したワードスーツの外見をざっと見渡し、破損状況を確認する。
 それで持ち帰って再利用できそうだと判断すると、いよいよ確保に動こうとしたが、その時、もう1体のパワードスーツが現れて攻撃を仕掛けてきた。
 それに合わせるようにレーザーも飛び交い、クリオスを仕留めようとする。クリオスはレーザーの性能を落とすために水蒸気を起こそうと水源を探してみるが、周囲には見つけることができなかった。
 その間にもレーザーが狙い続け、ついにパワードスーツが追い付いてしまった。クリオスはそれで瞬時に決断を下すと、先ほど倒したパワードスーツの部品をいくつか手にすると建物から離脱した。
 
 どうやら、既に戦闘が始まっている場所があるらしい。
 このタイミングこそ、自分たちが行動するのにちょうど良いと考えたのは、組織に所属することなく活動する【祈りの亡霊】。
 壬生 杏樹は、小惑星内に意思疎通のできる相手がいないか探るため、探検家としての知識を紐解いていく。
「防衛機構システムに、味方と思わせられれば……危険は一つなくなるね。
  それを探すには、人が絡むであろう場所、生活痕なり古い足跡なりを探すべきか」
 そこで足跡に注目した杏樹は、とりわけ古そうなものがないが入念に探っていく。新しい足跡は自分たちと同時期に侵入した誰かのものである可能性が高いだろうという推測からそうしていたところ、小惑星の中心付近に時折見える建物に向かって足跡が続いていくのが確認できた。
 しかもそのルートは誰も見つけていない公算が高かったため、杏樹は同行する仲間たちに可能な限り気配を殺すように告げながら先行していく。
 杏樹の見つけた足跡はやはり建物へと続いていたもので、そこまでの道のりでどの勢力とも出会うことなく到達できた。
 しかし、パワードスーツの守り自体は及んでいたようで、無人の機体は杏樹たちを見つけ即座に銃を撃った。
 それをシルヴィア・ベルンシュタインは一瞬前に予知していたため、同時に展開していたフィールドに銃弾は防がれた。
 杏樹はシルヴィアの張ったフィールド越しにパワードスーツの弱点を探り出すと、関節のような脆い部分に狙いを定めてスーベニアの弾丸を放つ。杏樹の撃った弾はパワードスーツに命中したが、それだけでは動きを止めるには至らないようだ。
 今度は接近し攻撃を繰り出そうとするのを、シルヴィアが再びフィールドで受け止める。
 だが、突進の威力に力負けしたか、シルヴィアのダメージが入ってしまった。それを闇医者が即座に治療し、シルヴィアとともにパワードスーツから遠ざかる。そして二人が離脱した瞬間を狙い、杏樹がクォレルで斬り込めば、パワードスーツは一時的に動きを止めた。
「わたしたちは、個の星で平穏に暮らす為住民登録がしたいのです。
  端末の利用方法やこの惑星の成り立ちなど、教えてくれませんか」
 その場を引き取るように進み出たのは、御子柴 瑞稀。三大勢力のスタンスと根本的に価値観が合致しない瑞稀としては、そうした組織の思惑などより小惑星の主人なる者の意思を汲み取りたいという思いがあった。
 そのための交渉事をスムーズに進めようと人心に訴えかけることを考えていたが、無人のパワードスーツに対しては効果がないようだ。
 それでも瑞稀は、この小惑星の住民になることは可能か、惑星の成り立ちや現時点でどんな命令が下されているか、この建物がどういう理由で存在するかなど、自分たちは敵対者ではないという気持ちを込めて優しく聞き出そうとする。
 しかし、直前の敵対行動に瑞稀も加担しているとみなされたためか、パワードスーツが再び動き出し攻撃を始める。それを予知していたシルヴィアは仲間に注意を呼びかけるが、最も近くにいた瑞稀は回避が間に合わなかった。杏樹は瑞稀がさらにダメージを負う前に威嚇射撃で注意を引き付けると、シルヴィアに瑞稀の治療を任せる。そうして瑞稀が動けるようになったのを見計らうと、全員でその場から撤退した。
 
 戦闘の隙を伺い行動を起こしていた者は他にもいた。
 デュオ・フォーリーもまた中心に位置する建物まで迫ると、折よく発見した端末から建物に関する資料を集めようとする。しかし、そこで得られた情報に目ぼしいものは見つからなかったため、より重要と思われる区画を探して踏み込んだ。
 だが、その動きに建物内のレーザーが反応し、デュオを狙い撃とうとする。デュオはそれを躱しながらレーザーを動かしているシステムに干渉しようとするが、その場にパワードスーツまで出現した。
 それらを一人でまとめて相手取るのは難しいと考えたデュオは目的の達成を諦めると、安全な区域を探すように退避を図った。
 
 建物内に配備されている無人のパワードスーツ。それと正面から鉢合わせしないようにやり過ごすと、李 冷龍は己の思考に集中する。冷龍は、その存在にまず疑問を感じていた。
 本来パワードスーツというものは人が扱うことを前提としているはずで、無人で良いならオートマタを配備すれば済む話だ。それがどうして無人のパワードスーツという中途半端な存在に建物を守らせる状況になっているのかと考えたら、冷龍の中で自ずと答えが出た。
 最初から無人でパワードスーツを動かしていたわけではなく、動かすための人がいなくなったために無人化したのだと。
 こうする事にした目的に関しては、現在この小惑星を支配下に置いている存在と接触することができればわかるかもしれない。
 そこで、たった今通り過ぎたパワードスーツに奇襲をかけて制御を奪うと、パワードスーツを介して小惑星グレイブの意思たる存在との接触を試みた。
「自分はアンタらに敵対するもんじゃない。アンタらは平穏を望むっちゅーけど、どうしたいんや?
  自分らになんかできることはあるやろか」
 機体を通じて自身が敵対者でない事を訴えると、小惑星がどのような方針を取りたいか、冷龍自身にできる事はないかを聞き出そうとする。
 自分の意思が伝わるまで根気強く語りかけていると、ふと、声が聞こえたような気がした。それは少女の声に聞こえ、声は冷龍を建物の奥深くへと誘っていく。
 それに導かれるまま進んだ場所で冷龍が見たのは、ひとりの少女だった。そこで再び聞いた声が、先ほどのものと同じだったため、冷龍はこの少女こそが小惑星の意思――主人であるのだとわかった。
 彼女は自分の名をセイクリッドと名乗りそして、話をつづけた。

「あなた方が外から来たこと――そしてここまで行った事も見ていました。
 この星に多く者人が殺到し、そして戦っている。
 それは忌むべきことですが、
 ですが、私にはわからないのです」

 少女は冷龍に悩みを伝える、自分はグレイブと共にこのまま旅を続けるべきが否かと。
 グレイブに居住する人間はいまや彼女のみ。
 かつて戦乱の中で、周囲の全ての人間に不信を抱き、既知の宇宙の外に脱しようとした試みはここで終わらせるべきなのかと。
「そりゃあ……」
 ふいの問い冷龍自身に明確な答えを提案することはできなかった。

「私こそ急な問いかけで、すみません。
 ここは危険です。離れてください」

 少女はそれがわかると、冷龍をパワードスーツで戦闘から外れた区域へと引き離すのだった。

■□■


 【中央突破】、それを結束の合言葉として探索をする者たちがいた。
「このグレイブからペンタクラン・ファミリーの皆様を必ず無事に帰還させて見せます。ですので、その報酬として、私の分もロステクを取って来て下さい」
 自身が戦闘に向かないことを誰より理解している川上 一夫は、束の間、小惑星の様子を見渡すと、この先の探索を仲間に委ねて宇宙船内へと引き返す。というのも、小惑星がジャンプする際にすぐに仲間が退避できる手はずを整える必要があったからだ。
 仲間たちもそれをわかっているからだろう、一夫を引き留める事はせずに先を行く。
 移動の最中、猫井 又吉は自身の所属する組織、ペンタクラン・ファミリーに連絡を取っていた。その目的は、この小惑星を確保するための人員を派遣してもらうこと。組織の窓口を通して兵士を派遣してもらうことで、他勢力への牽制も図ろうとする目論見もあった。
 又吉はそのために交渉を続けていたのだが、結果としてそれは失敗に終わった。
 又吉の交渉に乗る余地が全くなかったというわけではないが、小惑星に滞在できる時間が限られていること、 そして派遣できる人員を集める時間が足りないことに加え、小惑星のジャンプは数日以内に起こるのはわかっているが、具体的にいつ起こるかわからない事から、派遣のリスクが見合わないと判断されたためだった。
 又吉の交渉は失敗に終わってしまったが、それ以外に何の策もないわけではない。仲間たちは慎重に建物まで近寄ると、烏丸 秀が持てる知識を活用して建物内のパワードスーツの配置を推察するのに合わせて突入の準備をする。
「ボクのロステクがあれば、レーザーは無効化できるかな。試してみる価値はありそうだ
 PSや地形の解析はボクに任せてくれ」
 秀が導き出した情報はARデバイスでユラ・ガラにも共有されており、ユラの方では事前にパワードスーツの形状から類推される弱点が仲間に周知されていた。
 仲間内の情報共有を万全にして侵入を果たしてみると、早速レーザーによる防衛機能が動き出す。それを秀が展開したレインボーバリア・ベアで防ぎきると、国頭 武尊は建物の内部から外に向けてFPW-ヴェノムグレネードを射出して毒ガスを振り撒いていく。これを新たに建物内に入り込もうとする者への足止めにすると、武尊はその場に留まり仲間を先へと向かわせる。そして自身は接近しつつあるパワードスーツへ迫っていくと、FPW5-トールハンマーの電撃を仕掛けていった。
 それを受けて先を急ぐことに決めた仲間たちは、ユラの先導で中央を目指していく。ユラは周囲の窓の有無や設備の様子から自分たちの現在地を類推していくと、ほとんど迷いを見せずに移動する。
 しかし、その先にはパワードスーツが待ち構えており、その周囲で他勢力らしき者が交戦している気配はあるが、パワードスーツの標的を切り替えさせるには遠すぎるようだ。やむなく秀とユラは手持ちの装備でパワードスーツと応戦し、その間にも秀は突破口を見出そうと策を巡らせていく。ユラもFPW5-トールハンマーで電撃を放ってパワードスーツを牽制していき、それと同時に秀が突破口を見出し指示を出そうとしたが、後方から武尊が姿を現したことで時間稼ぎが終わったことを悟る。
「これ以上は無理だ、後退する」
 そうだとしたら、これ以上の無理はできないだろうと、秀は作戦を変更して脱出を決める。そしてユラと協力して最短の経路を見出すと、武尊を連れて外へ出るのだった。
 
 一瞬先の未来に危険を予知したため、クロウ・クルーナッハは素早く物陰に身を潜ませた。その直後、建物の中央部に迫ろうとする何者かが目前を走り抜け、それを追うようにレーザーが迸った。
 そうして降りかかりそうになる危険を避けながら、クロウは建物内の破損個所や防衛設備の様子から、重要度の高そうな区画を割り出し進んでいく。
(これだけの防御設備があるなら、何かに襲われる事を想定していたのか……?)
 その答えを、小惑星の主人という人物は持っているだろうか。そうした期待も持ち合わせながら、クロウは中央に位置する管理施設近くまで来ていた。
「“主人”が人であるならば。三大組織が好き勝手にするのはちょっと癪だな」
 
 その頃、同じく管理施設の近くまで迫っている者がいた。
「平穏を望む願いを放つモノを連れて脱出! 人助けが最優先だ、佳宵!」
「ええ、ヒーローを追い求めて、助けを求める人を蔑ろにするのは本末転倒ですからね!」
 鋭敏な五感で周囲を警戒しながら、弥久 ウォークス弥久 佳宵を連れて小惑星の探査に乗り出していた。時に自らの視覚や聴覚を研ぎ澄ますことで得られた破壊音や銃撃音などで、より大規模な戦闘が行われている場所を割り出すと、佳宵のレーザー銃による援護を受けながら建物への突入を果たす。
 そこで遭遇したパワードスーツに対して、ウォークスは航宙機動スラスターを用いた立体的な動きで翻弄を見せると、正宗で斬りつけていく。佳宵もウォークスをサポートしようと、パワードスーツの弱点をめがけた狙撃で応戦していった。
 そうしてパワードスーツが撤退の動きを見せると、ウォークスは引き続き他勢力やレーザー攻撃への対処に乗り出し、佳宵はその間にウェアラブルコンピューターで施設のデータを探っていく。
 そうして探り当てた情報を元に、ウォークスと佳宵は建物内を進んでいく。途中には既に壊れた設備がいくつかあったり、データ上では存在しているはずのものがなかったりと、現状と食い違う箇所が見受けられたために望んだ情報を全て入手できたわけではなかったようだが、ウォークスと佳宵は確実に管理施設へ近づいていた。
 だが、そこでウォークスと佳宵は、クロウと出会ってしまった。
 クロウは即座に衝撃波を放って、ウォークスと佳宵を引き離そうとするが、佳宵は高速移動しながらクロウへと迫っていく。それを光の壁で弾いたクロウは、加速装置で迫ってきたウォークスの攻撃を、今度は予知能力で回避する。
 しかし、2対1という不利がクロウを次第に追い詰めていく。蓄積したダメージを強力な治癒能力で治したクロウは、またも衝撃波を放っていく。それと合わせるようにプラズマスフィアからの攻撃をウォークスたちに向けると、それまで戦闘をほぼ一手に引き受けていたためか、ウォークスが膝をついた。そこへクロウが攻撃を畳みかけるとウォークスは倒れ、残るは佳宵だけとなる。
 クロウはこのまま一気に攻め込もうとプラズマスフィアを構えるが、佳宵は盾貫き丸から正確に狙いを定めレーザーを放ち、クロウを倒してみせた。
 だが、この先にまだ戦闘の可能性が残されていることを考えると、ウォークスを連れていくことも置いていくことも、どちらにもリスクがあるように思われた。佳宵は悩んだ末にウォークスを抱きかかえると、一時撤退を決めた。

 小惑星には十分な酸素と水があり、しかも建物の外には自然が再現されていた……とあれば。
 マックス・アトラスは、もしかしたら建物のどこかに空調や水道に関する制御機関があるのではと考え、そうしたものを供給するためのルートが裏にあるのではと探し始める。その発想を探検家として培ってきた経験や知識が助けたか、マックスの予想した通りに、裏道ともいえるようなルートを見つけることができた。
 その道をマックス、エリア・スミスアドラスティア・ヴァルトフォーゲルは慎重に進み始めるが、
「三人寄ればなんとやら、だが、パパとか言うな」
「私はティアのママ、らしいわね……まったく、可愛い娘が出来たものだわ」
 アドラスティア目線でマックスをパパ、エリアをママと見なしているらしい状況について、マックスが苦笑いで答えるような余裕は失われてはいないようだ。
 そんな和やかさを残しながらも、アドラスティアがウェアラブルコンピューターRRで大まかなマップを描き出す。それから建物を守る設備の解析を試みる傍らで、エリアもその助けとなるように進路上に罠が設置されている形跡がないか探っていく。
 【グレイブピクニック】というのどかな名前とは裏腹に、マックス、エリア、アドラスティアは手堅く探索をこなしていた。
 だが、やはり裏ルートと言えど簡単に進めるものではないようだ。罠の類や他勢力との遭遇こそなかったものの、人目につきづらいルートだとしても防御設備が全くないということでもないようだ。あるいは、人目につかないからこその警戒ともいえるだろうか。
 ただ、これに関しては【グレイブピクニック】のメンバーたちにも大方の予想はついていたようで、レーザーの照射に気づいたアドラスティアが、思い起こせるだけの知識をかき集めてレーザーシステムへの働きかけを試みていく。
 その対応が迅速だったためか、レーザー照射システムの動作が不安定になり、反撃の機会を生み出した。そこでマックスが軍用ガベッジブラスターで周囲に転がっていた鉄くずを投擲してレーザーの向きを変えると、エリアが素早く暗器を投げ付け破壊した。
 戦闘が終わるとアドラスティアがマックスとエリアの負傷を手当てし、再び探索に戻る。だが、進む先で繰り返し発生するレーザー照射装置との戦闘に、3人の疲労が溜まっていく。
 裏道を利用することでパワードスーツとの戦闘も回避できていたが、建物のシステム上にあえて書き込んでいない分岐もあったようで、大幅な近道とまではならなかったようだ。
 そのために複数回の戦闘を重ねた結果、ついにパワードスーツに動きを察知されてしまった。
 アドラスティアはここでもパワードスーツの制御継投に干渉し動きを封じようとするが、マックスとエリアの攻撃が決定打に届かない内に制御を取り返されてしまう。
 できれば三大勢力に制圧されてしまう前に、小惑星の主人とアドラスティアを対面させてやりたかったとマックスは思ったが、これ以上の無理を通すべきではないと判断した。
 エリアとアドラスティアに撤退を提案する。それに二人は同意を示すと、エリアの指示に従って撤退を進めることにした。

■□■


 こうして様々な立場に身を置く者たちが探索や戦闘を繰り広げていた頃、建物の外でも一つの動きが始まっていた。
 【ディープシーカー】の龍造寺 八玖斗は、これからこの場所で戦いを始める仲間たちのため、装備の調整に当たっていた。フォーチュン・マキシマ社に所属する者が多い【ディープシーカー】の中で、八玖斗は特定の組織に身を置かない立場を取っている。しかし、曲がりなりにもフォーチュン・マキシマ社の嘱託整備技師の肩書を得ている以上は、多少なりとも組織に協力してみようというのが、この探索に参加した動機だった。
 その近くでは、サトリ・エッシェンバッハが建物内に突入する予定の仲間たちを支援するため、建物周辺での偵察や戦闘についての作戦を練っていた。
 そこで偵察要員として白羽の矢が立ったのが、皇后崎 皐月だった。
 皐月はそれを承諾すると、一足先に八玖斗の整備を受けたPSオートライフルとアンチシールドレーザーを提げて偵察に乗り出す。それに続くようにしてマッドプロフェッサーサイコエージェントが周囲の警戒と索敵をし、伊佐坂 八兵衛コイシ・エッシェンバッハも追従する。
「皐月お嬢様の粋な計らいで、探偵事務所を持たせてもらったまでは良かったんだが、なんだか妙なことに巻き込まれて気が付いたらここにいたってわけさ。
 まあ、拾って命助けてもらった恩があるからしっかりきっちり働かねえとな」
 
 小惑星の空間内は草原や川が自然の様子を再現しているという話だったが、険しい山や切り立つ崖のような危険というものは気にしなくても良さそうだ。
 他勢力からの妨害さえなければ、建物へ向かうこと自体は容易であると判断した皐月たちは、一旦引き上げることにしてサトリの元へ偵察結果を伝えた。サトリはその報告に感謝を伝えると、今度はミューレリア・ラングウェイリリア・リルバーン泉 真理桑子・浅間も率いて建物へ向かうことを決める。
 そこには緊急での修理に対応するために八玖斗も加わっていた。
「皇后崎グループ総帥の依頼を、平社員の私が断れるわけないでしょ!?それに、うまくいったらご褒美に私にも自前の商船が与えられたりして。ウフ、ウフフフ・・・」
「なにか言ったか?」
「いいえっ! 何も!」
 桑子の独り言は八玖斗以外には聞こえなかったようだった。
 道中は八兵衛とリリアのちびドロイドが周囲の偵察をしていたが、建物内に入るまで余計な戦闘は控えたいと考えている者が多いためか、他勢力との衝突はほとんどないまま入口まで到達する。しかし、そこまで近づいた途端に防衛設備が反応し、レーザー攻撃が始まった。それを鋭敏な視覚で見切った八兵衛は仲間にも警戒を促すと、自らはコイシのサポートに回る。
 コイシは八兵衛の警告を受けレーザーを回避しきると、建物から現れたパワードスーツの相手をしようと単分子刀を構える。そして八兵衛がヴォルカニックアクセルの加速装置を利用し、パワードスーツの死角から回り込み強打を放とうとするのに合わせ、刀を振り下ろしていく。
 その後方からはリリアの展開したフィールドに守られるようにして、ミューレリアのDW04-パワーショットとサトリの対装甲ロケットランチャーが援護をする。通常より火薬を多くしたミューレリアの弾丸は、パワードスーツの脇腹を深くえぐり、サトリも闇市の特別品からリロードなしの2連射でパワードスーツにダメージを与えていく。リリアも大気中の熱を操作することでパワードスーツを凍結させようとし、その攻撃でパワードスーツの動きが鈍くなった。
 だが、パワードスーツに集中する隙をついてレーザーが放たれ、リリアのフィールドを破壊しようとする。
「皆、後ろ! 後ろ!!」
 それに気づいた皐月は鋭く叫ぶと、PSオートライフルでレーザーの動きを妨害する。そこに真理と浅間も駆けつけ、3人は一丸となってレーザーの相手を引き受ける。
「皐月さんとかに戦闘させられていますが、本来の私は戦闘向きではないんです……昔ピアノを弾いていた繊細な手が違う感じになってきている気がします」
 真理はため息をつきながらそう言うが、ガベッジブラスターを扱う手つきは本人が思うよりもずっと手慣れた印象である。浅間も遮蔽物を利用しながらレーザーに応戦を図るが、戦闘に苦手意識のある真理を庇おうとした結果、自身が被弾してしまった。皐月はそれに気づくと浅間を抱えて後退し、それを援護するため真理とリリアが弾幕を張る。そして八玖斗が待機していた比較的安全なポイントまで退避した皐月は、自身の武器の修理を託すとともに浅間の治療に取りかかるのだった。
 その間にレーザーに対応していた真理とリリアは、サトリの指示でレーザーの射線に入らないように移動しながら攻撃を続け、ついにレーザーの破壊に成功した。これでひとまずの脅威はパワードスーツだけとなったが、無防備になっている皐月たちを支えるために、真理とリリアも一時的に後退した。
 そのパワードスーツを相手に、八兵衛とコイシが引き続いて接近戦を仕掛けていた。レーザーが破壊された今、パワードスーツだけに集中できるのがせめてもの救いではあるが、パワードスーツはダメージを負いながらも退き下がる様子はない。しかし、サトリのロケットランチャーが効いているのか、機能の低下が見え始めていた。
 そこで八兵衛は、もう一度死角となるスペースに潜り込み拳を見舞おうとする。一撃の際にミュータントとしての力も解放したためか、パワードスーツはバランスを失ってよろけた。続いてコイシが接近し、単分子刀を振りかざすとパワードスーツの片腕は千切れ、今度こそ破壊へ追い込むことができた。
 周辺に敵対する者がいないことを確認したサトリは、いよいよ建物内へ突入するチームを呼び寄せて先へ向かわせる。
「進路は確保してやるぜ! 突っ込め!」
 それと同時に建物に近づこうとする他勢力の者を見つけたミューレリアは、DW14-マルチミサイルを射出して行く手を阻んでいく。そして入り口付近に陣取ると、周囲の警戒を始めた。
 その頃、後方ではスコルーガコーヒーを片手にした八玖斗が整備に追われている状況だったが、負傷した仲間の治療は順調なようだった。
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