クリエイティブRPG

新クレギオン

亡霊の守る場所

リアクション公開中!

亡霊の守る場所
【!】このシナリオは同世界以外の装備が制限されたシナリオです。
リアクション
First Prev  7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17  Next Last


・内部を探索する者たち 2


 他の無所属の面々も、思い思いに小惑星グレイブ内部に潜入し、調査に当たっていた。
 そのうちの一人である土方 伊織は、キャバリアーやパワードスーツに関する資料に絞って探している。

「手に入るならスッゴクありがたいのですが、どこにあるのでしょうか~?」

 きょろきょろ、うろうろ。
 あっちこっちへ行ったり来たりする伊織は、努めて小惑星グレイブの外側で現在進行で起こっているであろう戦いの数々については考えないようにしていた。

「ただの技師に戦闘技術を求めないでほしいのですよ~」

 非戦闘が本来の用途とはいえ、FPS82-リトルドールとPSオートライフルで武装し、ある程度の戦闘にも対応できるようにしているとはいえ、危険がないに越したことはない。
 とはいえこのあたりは平和なものだ。
 中央の建物でも激戦がくり広げられているに違いない。
 建物に近づけば、そのうち戦闘音が聞こえてくるだろう。建物を守るパワードスーツなんかも徘徊しているかもしれない。君子危うきに近寄らず。
 本当にパワードスーツがあるのなら、調べてみたい気がしないが、やっぱり安全優先である。

「……まだここに誰か残っている人がいるとしたら、その人の許可を取らないでこんなことをしているのはまずいのかもしれませんけど~」

 あえていそうな中央の建物を避けているため、許可がほしいことを伝える手段がない。
 一応建物を探索する無所属の者に伝言を託しておいたものの、果たして伝えられるかどうか。
 ……もっとも、伊織は許可が下りなかったところで行動を変えるつもりはなく、資料探しを続行する気満々だったが。

「お? おお?」

 見つけたコンソールに手をかざした伊織は、それが放ったことでまだ機能が生きていることに気づいた。
 俄然、期待が伊織の内で膨れあがる。

「なんの情報が手に入りますかね……こ、これは!?」

 伊織はコンソールに齧りついた。
 表示されたのは、パワードスーツについてのデータだ。
 しかも形から見て、どうも中央建物の防衛に使われているもののようである。
 このパワードスーツは搭乗者のパワーをアシストするいわゆる有人パワードスーツではなく、完全に無人で動くいわゆる自動機械に近い作りをしている。
 夢中になって、伊織は表示されたデータを書き写していった。
 一方、西村 由梨はロストテクノロジーの産物そのものというより、それを作りだした知識の獲得に重きを置いて動いていた。

「形あるモノはいつかなくなってしまうもの。でも得た知識は死なない限り永遠に残るわ」

 フリーランスとして組織の保護を受けずに生きていく以上、力が必要だ。
 そして力を生むものは知識だと、由梨は常々考えている。
 何故なら、その力の象徴たるロストテクノロジーを生んだのもまた、知識に他ならないからだ。
 つまり、知識というものは力の源泉である。

「あったあった。……これは大丈夫そうね」

 由梨が探していたのはコンソールだ。
 まだ動くことを確認して、ウェアラブルコンピューターを取りだす。
 目当ての情報は、小惑星グレイブについての環境情報である。

「食物製造設備は……最低限か。でも、自給自足はできそうね。動物もいるみたい」

 興味を引くのは、キャバリアーについてのデータだ。
 特に、ファントムについてのデータが欲しい。
 とはいえ、見つけたのは基本性能について書かれているものや、マニュアルのみだった。
 その当時のキャヴァリアーとしては標準的な物だったようだ。それにしても現代であれば超兵器である。
 しかし、一機だけで運用されていたことなどを考えるとそれは明らかに異常だ。
 グレイブが母性を旅立った頃、相当な混乱に見舞われていたようだ。
 他の場所には、同じく無所属の火屋守 壱星薬研 心乃ガレット・マクレガーの三人組がいた。
 エアカーに乗っているので移動は快適だ。

「見た感じの年代的には、近地球大戦のころのものか?」
「そうですね……戦火を逃れてきたのでしょうね」

 運転する壱星と、後部座席の心乃は景色を見ながら会話をかわしている。
 それを視界内に入れつつ、助手席のガレットは警戒を解かず敵の襲撃に備え注意を払っていた。

「話の最中にすまんが、外に出たあとも自分の手が届く範囲にいてくれよ」
「ああ、分かってる。せっかく雇ったんだしな」

 ふり返り、壱星がガレットへ頷いた。
 あちこちに目を向けるのは心乃だ。

「怪我人はあまり見かけませんね……よいことなのですけれど」

 先ほどから何度か人とすれ違っているが、そのすべては目的を同じくして内部に入りこんだ同業者たち。
 幸いロステクを前に鉢合わせたなどということもなく、今のところは順調に行き来している。
 激戦になっているであろう中央部から外れているので、やはり戦闘らしい戦闘は起きていないようだ。
 あったとしても、繁殖して野生化している現地生物との戦闘ぐらいだろう。
 それらも元々は食料やグレイブ内での動植物の食物連鎖を循環させるものとして放されていたもののようで、大した脅威ではない。

「……ふむ。上空から偵察してみるか」

 助手席の窓を開けたガレットが、ちびドロイドを放した。
 上昇したちびドロイドは、先行して眼下の映像をガレットに送ってくる。
 それには、動物たちが映っていた。

「喜べ。人間はいなくても、動物ならいるようだ」
「草食動物ですね。美味しそうに草を食べてます。……ふふ、かわいいです」
「あれは……馬か? 牛にも見えるが……」

 草食動物の群れが草を食む光景を見ながら、壱星は高機能スマートデバイスを操作して作りかけの地図を切りかえて動物図鑑を呼びだす。

「……これは、どれにも一致しないな」

 正確にいえば、所々同じ特徴があるのだが、全体で見れば差異がある。
 まるで動物同士が合成されでもしたか、やりすぎた品種改良でもされたかのようだ。

「捕獲したい。手伝ってくれ」
「分かりました」
「雇い主の頼みとあらば」

 急停止したエアカーから、運転席の壱星と助手席のガレットが同時に飛びでてくる。
 ワンテンポ遅れて、後部座席から心乃が降りた。
 近づいても、動物たちは呑気にしている。

「……警戒心がなさすぎるな」

 呆れたように、ガレットが眉をひそめる。

「まるで、人間自体を見たことがないみたいですね」

 試しに心乃が、動物たちが食べていたのと同じ草を摘んで差しだすと、さすがにしばらく躊躇する様子を見せたものの、食欲のほうが勝ったのか結局普通に手から食べた。

「下手に攻撃して警戒心を植えつけても、かえってやりにくくなるな。どうする」
「うーん……手持ちで手懐けられそうなものはないでしょうか?」

 ガレットの問いかけに心乃がスタメナポーチを漁るものの、出てくるのは怪我人の治療に使う消毒液や包帯、あとは痛み止めといった薬ばかりである。

「あっ……」

 なにかに気づいた様子で、群れの一角に心乃が走っていく。
 その急な動きに、危機感をなくしていた様子が嘘のように、動物たちが身を引いた。
 だが、一匹だけ、動きが頼りなく出遅れている。

「やっぱり、この子怪我しています……」

 しゃがみこんだ心乃が見つめる動物は、後ろ足を片方引きずっており、噛みつかれた痕跡があった。
 肉食獣にでもやられたのだろうか。
 治療を始める心乃を見て、壱星が苦笑する。

「やれやれ……いくらお人好しでも、動物の治療までしなくてもいいんだぜ?」
「敵でも味方でも怪我人は怪我人であるのと同じく、動物だってその範疇です。助けられる命は助けたいですよ」

 最後に包帯を巻き、治療を終える。

「よく我慢しましたね。もう大丈夫ですよ」

 怖がらせないように一歩引いてほほえむ心乃へ、包帯をつけた動物は自ら近づいて鼻を寄せた。


First Prev  7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17  Next Last