■プロローグ■
――“からくり御殿”修祓隊突入の数日前。
「返事がない。……静か過ぎる」
先に“交渉”に向かった役人が戻ってこない。
万が一三角 円方がからくりを利用して抵抗を試みた時に備え、上谷の警官隊は屋敷の前で待機していた。
一時間経っても出て来なかったら、突入せよ。
そう命じられ、時間が来てしまった。
警官隊は屋敷の敷地内に踏み込み、中庭に広がる。
「おやおや、御前様たち、そんな大所帯でどうしたんだい?」
声は屋根の上から聞こえた。
そこにいたのは、狐面を被り、黒い着物を着た小柄な影であった。
「子供? いや……違う。あの体、からくりか。何者だ!?」
「三角様の屋敷に我が物顔でいる。なら、答えは分かるんじゃあないのかな?」
警官は身体の自由が利かなくなっている事に気づいた。
目の前の影が糸を手繰り寄せた糸を切るような仕種を見せると、周囲の警官たちがばたばたと倒れていった。
「安心したまえ。君たちまで戻らないとなったら、次は六明館学苑の番だ。
君たちには演者(キャスト)として、彼らの相手をしてもらうとしよう」
誰かに伝えねば。
だがそれは叶わず、彼の意識は奪われた。
■目次■
プロローグ・目次
【2】警官隊を救え1
【2】警官隊を救え2
【2】警官隊を救え3
【2】警官隊を救え4
【2】警官隊を救え5
【2】警官隊を救え6
【2】警官隊を救え7
【2】警官隊を救え8
【2】警官隊を救え9
【3】付喪神たちとの攻防1
【3】付喪神たちとの攻防2
【3】付喪神たちとの攻防3
【3】付喪神たちとの攻防4
【3】付喪神たちとの攻防5
【3】付喪神たちとの攻防6
【1】久重元内の「作品」たち
【1】最奥への鍵
【1】嗤う男
【1】禍々しき身体
【1】「三角円方」を成していたもの
エピローグ