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アバターに慣れる訓練R

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アバターに慣れる訓練R
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アーキタイプ ~地形を制する者は戦場を制す~


 アーキタイプフィールド。
 遺跡を彷彿とさせるフィールドでは、文明の守護者ザフィーアが特異者たちを待ち構えていた。
 ザフィーアに乗るは、叶 勝利とマイアとリーゼロッテだ。対神ブレードキャノンで武装したザフィーアと相対するは、アーキタイプのアバターで挑む特異者。そして、アーキタイプのフェロー。彼ら彼女らはマスターとディサイプルとに分かれ、巨大なる守護者に挑もうとしていた。
 レイダーのマスターである信道 正義は、幾許かの感慨を抱いた。
(シヴァとの決戦に向けての訓練、か。世界を救う為にずっと戦い続けてきた俺の経験が、少しでも活かせるなら助力を惜しまない。
 それに、アーキタイプは他の世界と比べて思い入れがある場所だ。ホライゾンアカデミーのアーキタイプ校では先輩を務めたこともある。折角の機会だ、もう一回くらい先輩らしいことやってみようじゃないか)
 信道のディサイプルである桐原 巧狐塚 雪もまた、各々の思惑を抱いて今回の訓練に参加する身だ。
(ワールドホライゾンの総力戦……か。相手が何をしてくるかわからない以上、自分たちの実力を最大限に上げておかなければならないだろう。どんな状況でも戦える様に、例えば自分より巨大な敵に生身で挑む事もあるかもしれない。今回の訓練は、そんな状況を仮定して守護者と戦おう)
(様々な世界での動き方、その世界の特徴に合わせた立ち回り。傭兵として、永久の狩人としての業を磨き続けるために、新しい力を。そのために、今回は信道さんに教わりながら、その力を糧に前に進むわ……)
 シヴァとの決戦は近い。クロノス・リシリアはレイダーのガンナーレディに対し、アバターの解説を行った。
「今からアバターのスキル説明をするよ。
 レイダー。ウィップソードの技術や遺跡の踏破術がほとんど、高い回避能力をどう活かすか。
 スカラー。ハッキング技術や解読復元と古代魔法を駆使するアバター、今回の訓練では遺跡を操作して援護するのも手かも。
 パラサイト。寄生虫を利用した技を駆使する、飛行、水中での活動も一人でできるよ。
 シャーマン。儀式や精霊を利用した魔法が得意、スカラーと違って回復や強化といった仲間を支援する魔法もある。
 アクリャ。守護者運用で欠かせない存在、その為守護者のサポート技も多い。
 ディスカバラー。リアリティクロークや前提アバターの技術から派生した技が多い、なお禁じ手とされる技もいくつかある。
 オマケ。リアリティ。クロークとして纏うことでその小世界の力を借りることができる」
 クロノスはザフィーアを見上げ、守護者の説明をした。
「今回はツインアクリャリアクターを搭載した守護者が相手。
 アクリャはサブパイロットでも守護者の一部機能を自分自身で操作できるスキルがあるよ、だから敵は一体じゃなくて三人と認識しよう」
 クロノスの言う通り、守護者は巨大であり、かつ、特殊なシステムを搭載している。本来ならば守護者で相手をするのが望ましいのだろうが、強敵相手の立ち回りということなら良い経験になるだろう。
 そう感じた信道は、訓練の開始を告げた。
「始めるぞ。勝利、準備はいいか?」
「ああ、よろしくな!」
「よろしくーっ!」
「よろしくお願いしますわ」
 勝利とマイアとリーゼロッテが答え、ザフィーアが動き出す。
 訓練が始まった。まずはマスター側が手本を示す番だ。ヘマタイトガーブを装着する信道は甲身で身を固め、ハンドランチャーの引き金を引く。発射されたグレネード弾がザフィーアに命中する。しかし、ザフィーアのフォースコーティングの作用によって、致命打にはならなかったようだ。
「こっちだって、負けてられないんだからねっ!」
 ザフィーアに乗るリーゼロッテは、スーパーナチュラルミサイルを発射した。
 光の矢が雨あられと降り注ぐ。信道はコンセントレーションを以て、一方のクロノスはレイダースウェイを以て光の矢を回避していく。
 信道はサイコプレッシャーを放った。プレッシャーを受けた勝利だが、マイアがリプレイスメントを使用し、勝利にプレッシャーを跳ね除けさせる。
「やるな!」
 勝利はアークスフューリーを発動した。呪術の炎が対神ブレードキャノンに纏い、ザフィーアが舞うように斬撃を繰り出す。
 アヴァロン【ガーディアンバスター】をウィップソードとして操る信道は、アヴァロンを遺跡の柱に巻き付かせ、ワイヤーアクションじみた動きで斬撃を回避していく。その最中、信道は自身のトラップディスカバードが作動したことを察知した。
 遺跡をも破壊しかねないザフィーアの一撃によって、天井が崩落し始めたのだ。
「あらゆる手を使えば、格上だろうと覆せるものがある……!」
 インテュイションを発動した信道は、崩落しかかった天井にグレネード弾を発射した。同時に、クロノスが霊剣テスカトルを以て刃を転写。天井に向けて刃を放つ。
 ハンドランチャーから発射されたグレネード弾と霊剣テスカトルが天井を破壊し、粉砕した。
 ザフィーアの上から瓦礫が次々と降り注ぐ。勝利は焦った。
「まずい!」
「勝利さん、回避を……」
 マイアが進言するも、回避は不可能だった。なぜなら、回避行動を取ろうと試みるザフィーアをドレッシングチェーンで束縛する者がいたからだ。ドレッシングチェーンを放った者、それはクロノスである。
「基本的に今回のような戦闘において間合いや攻撃範囲の差を考慮すると近接戦は厳しいよ。だから突っ込む時は慎重に。
 それとディスカバラーには相手の動きを読んで先回りする技があるから注意だね」
 そう言い、リシリアはリアリティスパークを放つ。本当は関節を狙いところだが、角度的に届かず、ザフィーアの装甲を穿つ程度に留まった。
「……と、こんな形だ」
 マスターである信道とクロノスは、地形を利用して見事にザフィーアを瓦礫の山に埋もれさせた。
 今度はディサイプルの番だ。信道はディサイプルに自身の考えを伝えた。
「隙が無い相手は存在しない。一見無いように見える時は、自分の手札で隙を作り出すんだ。生身と守護者じゃ、サイズ差から有効打が望めなく思えるかもしれない。だが巨体故に、関節部や駆動部ってのがどうしても存在する。そこを突ければ……十分なダメージを与えられるからな」
「はい、了解しました……」
 信道に師事する狐塚 雪は、クールに返答した。
 守護者のような巨大かつ、ロボットじみた相手と戦うのは、雪自身まだ慣れていない。そのため、雪は今回の訓練は絶好の機会と捉えていた。
 桐原と雪は、ワイドビューを用いて罠の類を確認した。ざっと見たところ、転がる鉄球が奥にあるようだ。天井の崩落で床に影響が出たのか、落とし穴も垣間見えている。
 マイアはサブコントロールを発動し、ザフィーアを立ち上がらせた。二回戦の始まりだ。
 翼盾を装備する雪は、ウエストアンカー【ウエストアンカー】とセカンドステップを組み合わせ、変則的な移動を行う。桐原はPHプラズマライフルの引き金を引きながら、落とし穴の近くに接近していく。トウカ・クオンズリーフは桐原の近くでサポートを行う。
 桐原と雪、二人は共に罠を利用した行動だ。対するザフィーア側は、マイアがフォースコーティングを発動。特殊な力場を以てザフィーアの機動力と防御面を高め、リーゼロッテがスパークリングマインを繰り出す。
 接触すると大爆発を起こす雷球がばら撒かれ、機動力を活かした戦法を封じる。この戦法で主に被害を受けることになったのは、雪だった。ウエストアンカーを用いた機動の先に雷球を設置される形となり、雪はそれに触れてしまう。途端、大爆発が起こり、雪は一時的に吹き飛ばされた。
 一方、ザフィーア本体はPHプラズマライフルを撃つ桐原に目標を定めし、高機動力を活かして接近。対神ブレードキャノンでアウトオブブレイクを繰り出す。
(やられる……!)
 一撃を被ることを意識した桐原の脳裏に、自身の命を奪うであろう光の線が浮かぶ。すんでのところで回避を行い、PHプラズマライフルが破壊される程度に留まった。
 ガンナーレディが銃撃を行う。だが、ガンナーレディの銃弾はザフィーアの装甲に弾かれた。ザフィーアが着地するや、ガンナーレディは衝撃でフィールドの外に押し出された。
「あっ、しまった!」
 勝利が操縦するザフィーアは着地するや否や、落とし穴に嵌まった。前に出すぎて、落とし穴の存在に気づかなかったのだ。
「勝利!? 何やってるの!?」
「つい、うっかり……ごめん」
 マイアがサブコントロールでザフィーアを立て直し、落とし穴から脱出させる。
 桐原は武器をウィップソードランスに持ち替えた。ライフルをやられた以上、相手を罠にかけてショートレンジショットで怯ませるという戦法が封じられたことになる。
 しかし、今回の訓練は一緒に参加する仲間がいる。桐原と共に弟子をしている雪は雷球をかわしていくと、牡丹一華【ベノムストリングウィップ】を放った。
 牡丹一華がザフィーアの脚部に巻き付き、酸で装甲を溶かしていく。ザフィーアのすぐ近くにまで接近した雪はインテュイションを発動すると、牡丹一華を巻き取って斬撃を繰り出した。
 雪は生身だ。生身である為、火力と防御力はどうしても劣る。しかし、生身であるが故に、小回りと機動力、サイズの差による狙いにくさがある。
 それを前面に押し出して、相手の攻撃を受けずに攻撃を積み重ねれば、あるいは。
(水滴穿石。例え小さな攻撃だろうと、積み重ねたそれは確かな力になるのだから)
 脚部関節狙いの斬撃は、ザフィーアの膝を屈するに至った。
(僕は一人で訓練に参加しているんじゃない……!)
 今は仲間がいる。桐原はディスラプトラッシュを発動した。ロボットの急所と言える関節を狙い、ウィップソードランスで集中的な攻撃を繰り出す。
 桐原と一緒に攻撃を繰り出す雪は、次第に、同じ弟子たる桐原と呼吸が合っていく様を感じた。
 滅多に感じない体験だった。雪はインデュイションの赴くまま、ひたすらに斬撃を繰り返していく。
(全ての前提として、先輩の教えを喰らい糧とし、確実に私の力として。
 それがあるからこそ、より効果的に、更に強くなるための業と成る。
 だからこそ、先輩と共に、その業と在り方に敬意を。
 私は白の傭兵として、今の私に出来る事を全力で成して見せるわ……)
 雪と桐原が繰り出す攻撃の末、ザフィーアの脚部が損傷する。不利を悟ったリーゼロッテは反撃を繰り出した。
「やられっ放しは良くないわよ。ロケットパンチ!」
「あっ、リーゼロッテさん、いけません。それは……」
 ザフィーアの腕が強制的にパージされ、射出される。桐原と雪は直撃こそ免れたものの、風圧で吹き飛ばされ、浅からぬ傷を負ってしまう、
「うう、こんなはずじゃ」
「当てる方が難しいって! それより、来るぞ!」
 勝利の言う通り、雪と桐原は同時に一撃を繰り出す最中にあった。
「息を合わせて……」
「行くぞ!」
 ウィップソードランスと牡丹一華がザフィーアの関節部を穿つ。今までに受けた損傷もあり、ザフィーアはフィールドから押し出された。
 それなりに予想外の出来事は起きたが、特異者たちはなんとか勝利たちに勝利することができた。ザフィーアから乗り出した勝利は、信道たちの前に降り立った。
「ありがとう、俺たちのコンビネーションはまだまだだ。これは俺たちが克服するべき課題だな。
 シヴァとの決戦は近いらしい。絶対に勝とうぜ!」
「ああ」
 勝利の言葉に信道が頷く。
 もうじきシヴァとの決戦が始まる。訓練を終えた信道、クロノス、桐原、雪の四人は、勝利たちに挨拶を告げると、帰途に就いた。

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