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アバターリミット3

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アバターリミット3
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伝説のチャンピオン



 サルマティアにある巨大円形闘技場“タンゴコロシアム”。
 かつてサルマティアグランプリの会場となったこの場所に池田 蘭はいた。
 フィールドギミックのない決勝戦のステージ。
 蘭……RWOではセリスという名のレベルデザイナーは、グランプリ本選には参加していない。しかし、ここが決戦の、彼女にとっては試練の舞台であることが理解できた。
 金色の鎧に身を包んだチャンピオンが目の前にいる。

「バウアーさん、ですか」

 バウアーはレプリカントではなく、元々の姿をしていた。とはいえ、レプリカントだろうとチャンピオンだろうと、強大な力を持っていることに変わりはない。
 バウアーはすっ、と剣を抜き、そのまま持ち上げた。
 そのポーズは、彼の戦い方を知る者にはお馴染みの技――“湯切り”の構えである。
 振り下ろされた一撃は、闘技場のステージを一撃で崩壊させた。
 本来、ステージは破壊不能オブジェクトのはずだが……どうやらこの実験施設では適用されていないらしい。
 しかしセリスには関係ない。ブロックドラゴンUによって巨大化したトラモントに騎乗し、飛翔したからである。

「RWO世界に認めて貰う為に……私とトラモントともお相手お願いしますですよっ!」

 崩壊し、隆起した瓦礫の上に立ったバウアーへと、セリスは挨拶代わりとトラモントを突進させた。
 バウアーが剣を構え、受け止める。ピクリとも動かないあたりに、バウアーのステータスの高さが窺える。
 一見すると、バウアーは飛行能力を持たないように見える。とはいえ、飛翔して距離を取れば安全とは限らない。
 トラモントが爪で剣と打ち合うが、バウアーの斬撃が鉤爪ごと足を切断した。
 一旦距離を取る。セリスはモンスターの粘液を素材に、アルケミアから粘着弾を放った。ダメージ判定自体は大きくはない。しかし粘液の性質により、速度低下が発生する。
 とはいえ、アルキミアの攻撃は同じ素材でも都度威力が変わり、効果もまちまちだ。
 動き鈍っている間に、今度は虹色秋刀魚を装填する。
 そこから放たれるのは、貫通弾だ。高い防御力を誇ろうと、一定の威力を与えることができる。
 バウアーが剣を腰より下に構えた。刃が光を帯びる。
 降り抜かれたそれは巨大な光の刃となり、貫通弾を飲み込み空にいるセリスにまで届いた。

「トラモント、ブロックブレスバースト! ですっ!」

 ならば、と光刃を埋めるようにトラモントにブロックブレスバーストを撃たせた。

「色んな素材を弾に変えて敵を撃ち、ブロックを使ってマグマを生み出し敵を焼いていく。
 これが私の錬金術――なのですよっ!」

 ブロックの炎が瓦礫ごとバウアーを飲み込み、衝撃で瓦礫が打ち上がった。
 それが自分に当たらない、ようエレボスボムによる突風で流していく。
 ここはゲームの世界。その成り立ちは少し複雑だが、様々な世界と繋がっている。
 仲間との繋がりをより強く感じ、困難にも共に立ち向かえたのも、ある意味この世界の特異性のおかげなのだろう。
 皆と冒険する楽しさを改めて知り、これからも続けていく。
 トラモントと一緒に強敵と渡り合り、『皆を守る為の勇気の証』として――ドラゴンに乗る錬金術師見習いの薬師としてRWO世界に認めてもらうために。
 セリスはこの試練に挑んだのだ。 
 それも、終わりに近づいている。そう感じられた。
 ……そこで違和感に気づいた。あまりにも瓦礫が多く飛散しすぎている。

「……っ!!」

 それはバウアーが瓦礫に対し湯切りを発動し、打ち上げたからであった。
 バウアーは宙に浮く瓦礫を渡りながら、セリスとトラモントよりもさらに上空へと跳躍した。
 これも何らかの高等移動スキルがなせるものか。バランスを崩させるべく、セリスは空めがけてエレボスボムを放つ。
 しかしバウアーは大きく剣を振りかぶっており……大気を揺さぶり、セリスとトラモントを叩き落とした。
 空中で放たれた湯切り。それはまさに空を落とす秘技、天空落――。

 セリス――蘭が気がつくと、そこはもうRWOの世界ではなかった。
 バウアーの必殺技を食らい敗れた。しかし、彼女の手には試練を乗り越えた者の証が握られていた。
 敗北はしたが、彼女の力と意志は確かに、RWOに伝わっていたのである。



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