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アバターリミット3

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アバターリミット3
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神多品学園都市のビジョン


 ナイツオブアポカリプスの“裏”を見る事が出来た乙町 空は、シャドウが人にとって代わった殺伐とした世界のビジョンを感じ取った。

「今のが、裏世界のビジョン……強いシャドウの力を感じますが、こちらのシャドウとは別物なのは確かですね」

 シャドウの存在を今まで以上に感じることが出来た空は用心する。
 シャドウの存在感は精神をかき乱してくる。
 界域が深くなるほどに存在感は増大していく。
 空は火廣金・天を触媒に双召現で槍を2つ手にすると、真・召現で鈿女を降臨させ真の力を引き出した。

「私は、私なりの正道を貫くだけです」

 『自分より力無き者を護り、他者には慈しみと礼節をもって誠実に接し、危機にあっても狼狽えず、過ちは責めず。それらを成す為に心身を鍛え、ほんの少しの勇気を胸に。そして信念を持ってそれらを行う事』

 この神多品において騎士道十戒に触れ、共感して以降、それを胸に三千界を渡って行く中で培われた彼女なりの目標を定めることで揺るぎない精神の軸となりシャドウたちが放つ圧を跳ね飛ばす。
 無高校制服の上に学校指定ダッフルコートを羽織り、ポケットにはヴァルナの護符をしまっている。
 この姿こそ、神多品での空のスタイルそのものであった。
 この場所には自分とパートナーの七草 鈴以外にもいることを確かめ、鶴翼の構えを取る。

「私個人としては正直興味があるとは言えないけれど……まあ、空に協力して、やれるだけやってみる事にする」

 そう言う鈴も楯無高校制服に血染めの学ランを羽織り、その袖に黙示録のボタンを、首元にはフルムーンチャームが身につけられている。
 鶴翼の構えを取った空の背中を護るように位置取り、不退転の闘氣を放つ。
 その頼もしい姿はコトミヤ・フォーゼルランドソッソルト・モードックをも勇気づけてくれた。

「うん。味方がいるのは頼もしいな。裏とコンタクトを取ることによってどうなるかはわからんが、こちらの三千界を守るためにも何としても力を得たいね。もしかしたら裏に対して出来ることも見えてくるかもしれんし。掴めるなら何かを掴みに行くよ」
「やれやれ、裏の世界まで気に掛ける辺り一種の職業病よね、臣下? いいでしょう、この甘ちゃんの補佐はこの曹孟徳が引き受けた!」

 コトミヤは無心無想で精神を安定させ、ソッソルトは【栄具】孤高の王で誘惑に惑わされず正しい姿で認識できるように対策を立てる。
 そんなこちらの準備が整うのを待っていたかのように、シャドウは咆哮を上げ、ひとつの集合体と化し降臨した。
 その集合体こそ、倒すべき相手。
 口角が上がったような気がした空は何か仕掛けてくると身構えれば、集合体を中心に疫病が広がっていく。
 アポカリプスを操作できるからこそ引き起こされた局地的疫病。
 毒素をばら撒くことで動きを鈍くさせ、自らの身体の一部を地面に突き立てれば、影を捕まえ動きを封じてくる。

「……っ喰らいなさい!」

 鈴は獣煌無塵で黒い猫科の獣を宿らせるとプラズマキックを放つ。
 複数人をまとめて拘束しようとすればその拘束は甘くなるのか、辛うじて鈴はキック動作に入ることが出来た。
 プラズマを纏ったキックで地面に突き刺していた部分が外れれば、影の拘束も解かれる。
 黙示録のボタンで火力を乗せた徒手での戦いを始めれば、コトミヤも黙示録のネクタイピン【黙示録のボタン】で火力を上げるとエデンで得たゾディアックのジェミニの力を振るい始めた。
 ジェミニのアビリティシェアはエデンのように万全の力を与えてはくれなかったが、それでもソッソルトが持つエデンの力を使うことが出来る。
 相手がどんな存在であろうと拳で語るだけ。
 アポカリプスの真の力を開放した無比の一撃であってもコトミヤは恐れない。

「どんなに力があろうと私の心は折れたりしない!」

 大音声でそう誓いアビリティシェアでトラッシュノイズを使う。
 魂の叫びによる声量が乗せられたトラッシュノイズは異世界スキルであっても上乗せした分が合わさればそれなりの効果にはなる。
 無比の一撃をカウンターで相殺すれば、ソッソルトがロイヤルセイバーで覇天【ネックリーパー】の鋭い突きを繰り出す。

「この“ソッソルト”が背を預けるなんて今のところ貴方くらいよ? 光栄に思いなさい、臣下!」
「やるぞ王様、私たちのコンビネーション、裏三千界に見せてやろう!」
「もちろんよ! 我が覇道のためならば裏だろうがなんだろうが見てやろうじゃない!」

 不良のアバター、そしてエデンのゾディアックシリーズのジェミニは味方を鼓舞し、味方に鼓舞されて真価を発揮するタイプ。
 仲間には頼もしい同じアバターの者もいる。
 そのような状況で誰が心を折らせるというか。

 いくら影である身体を操ろうと空の鶴翼の構えの前には届かない。
 究極のカウンター技で対応し、シャドウが背後を狙おうと、残心がある鈴がそれを許さない。
 コトミヤとソッソルトが持ち込んだロリポップキャンディとスターシリアルを分け与えることで長時間の戦いを可能とする。
 アポカリプスの力が集まっていくのを察知すれば、アビリティシェアしたコトミヤが空創庭園を展開させ、幻影風景で錯覚を起こし空撃ちさせる。
 背中を預け合う空と鈴。
 攻防を対にさせることで互いに補佐し合うコトミヤとソッソルト。

 一瞬

 攻撃が止まった無の時間

 集合体は言葉なき声を上げ、局地的に災厄をもたらした

 地震・落雷・火事・吹雪と多発的に発生させる姿はあの12の災厄をばら撒いたあの伝説のよう

 それでも災厄の後には今の学園都市が想像された。
 ここで膝を着くような者は誰もいない。
 裏三千界へと続く境界面に辿り着く。
 裏側を観測するまでは決して倒れたりしない。

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