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アバターリミット3

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アバターリミット3
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ユーラメリカのビジョン 1


 佐藤 一はユーラメリカで出会ったかつては敵だった女性を嫁に迎えていた。
 様々な出来事が一とその嫁……佐藤花の周辺で発生し、巻き込まれてはそれを解決していく。
 そして、その大切な彼女が石にされてしまってから三ヶ月が経つ。
 その解決策は未だに見つかっていない。

 この三ヶ月間の最初の一月は、空虚感に襲われていた。
 次の一月は、悲しみに耐えていた。
 ……そして今は、動きのない状況に憤っている状況だった。

 裏の世界に、現状を変えるものがあるかは分からない。
 只、待つだけの日々はもう沢山だった。
 何かしらの行動をしている方が、いらない事を考えずに済む。
 極端に言えば、一にとって「裏三千界」など、その程度の価値しかない。
 そもそも、行動を捻じ曲げられた末に自分がいる、伴侶のいないこちらの世界こそが「裏」なのだから。

「なんでもいい……彼女の現状を改善できる策があるのなら。裏三千界なんぞ、策があれば利用できるきっかけでしかない。裏だ表だ、そんなことは関係ない。花の為になるのなら、俺はどんな場所にだっていくさ」
『ヨメを元に戻す(リバース)為に、裏(リバース)三千界に挑むって……ハジメ。アンタの勘違いもここまで来ると、いっそ清々しいわ』

 【サーヴァント・マキシマイザー】に憑依したナナミ・ヤマノハは呆れを通り越して清々しい気持ちでこの場に存在する。
 ウエポンプロフェッサーは秘密基地による通信手段の確保、及び異空間での出来事をモニタリング・情報収集に努めるために着いて来ている。
 少しでもデータを集め、花の石化を解く。
 それだけの為に一はこのミッションに参加したのだから。

 コンポージャーで平常心を保ち、懐にはユーラメリカエッセンスが仕舞われている。
 それがきっと障害を突破する際に多用する技能を補えるかもしれないから。
 そして指には結婚指輪がはめられている。
 結婚指輪こそ一の道標。
 認めたくはないこちら(表)の世界だが、それでも帰らなければならないのは「石にされた嫁のいるユーラメリカ」だ。

『さて、覚悟も決まったようだし、ほら、お出ましよ。さっさと倒して境界面を目指しましょう』

 視野外感知でナナミが感知したのは負のオーラが形作られた表と裏の狭間に存在する界霊。
 なんの対策もなしに対峙すれば、一目見ただけで精神は飲み込まれてしまうだろう。
 一とナナミは療養のお香を嗅ぐことで精神を保たせ、精神がかき乱されることなく武器を向けることが出来る。
 界霊の指揮下に下っている形なき影が迫ってくれば、一はフォーミュラーアーマーの飛行能力・推力を活用し、突破せんとする。
 フラッシュインパルスの立ち回りを意識し、【サーヴァント・マキシマイザー】を振るっていく。
 数を減らしながらも、司令塔である界霊に近づくことが出来ればすかさずシャングリラレイヴを叩きこむ。
 世界に認められた時の試練でも一は思ったが……本来の三千界にしろ、これから向かう裏側にしても、「世界」にとっては特異者たちは異物でしかない。
 それも、相当面倒な存在として。
 それを排除しようとするのは、自然な事だろう。
 余所者にデカい面されて、いい気分になる奴はいない。

「……それでも、俺の『世界』を取り戻す為に、辿り着かなきゃならないんだよ!」

 余所者がいきなり来て「助けて!」と言ってきても、「いいよっ!」と、あっさり受け入れてもらえる筈もないだろうから。
 多少力押しになるが……許して欲しいと思うのはユーラメリカにて“たった一人の為の救世主”として戦った一だからだろうか。
 そんな一を誰よりもそばで見てきたのはナナミである。
 誰も見ていない所で本来のサルバトーレのアバターの力を発揮させ、周りを巻き込みたくないからと、一人であるかも分からない物を探そうとしている。
 非合理的にも程があるが、それでも何の目的もないまま挑むよりはいい。
 だからこそ、自分は手を離してはダメなんだ。
 下っ端の攻撃から一を守るためにプロテクションを発動させ、素早い界霊にはスパークプラズマで迎撃せんとする。
 界霊は本来実体を持たない存在。
 ならばこのまじかるましん☆ファングが牙となろう。
 一が傷つけば、セルフメディカルを行う。
 使えるものは全て使わないと異界に飲み込まれてしまう。
 その負荷軽減にも汎用アシストユニットが役に立つ。
 一の隣に立ち続けるには必要なものだから。
 一より先に戦線離脱なんかしない。
 自分が消えてしまえば、本当に一は独りになってしまう。
 石化した大切な人を残して、パートナーも失った一が独りで立ち続けるのはとてもじゃないが心が耐えられない。

 ひとりで戦う一だが、もし見えている所で力を振るえば、もう少し評価も違っていたかもしれない。
 ヨメの花に対しても、ヒーロー協会に対しても。
 でも、一は頑ななまでにそうしなかった。
 今もそう。

(だから……アタシだけはついて、見ていてあげる)

 最悪の結末になる事だけは阻止する。
 もうオーナーがいなくなるのはイヤだから。
 こんな不器用で、嫁の尻に自ら敷かれにいくような奴でも……。

『今のアタシは……佐藤一の、『たった一人の為のサルバトーレ』のサーヴァントだから』
「彼に続け! 誰かがオレをビジネス・オーダーと呼ぶ限り、屈するわけにはいかん! この背中は強く、希望をみせるためにあるのだからッ!」

 夏輝……ビジネス・オーダーはアルマースメイル【オリエンタルアーマー】で肉体を強化、そして絶対救世主空間を展開することで異界の重圧を跳ね返す。
 それでもじわじわと精神を汚染してくる異質さからは逃れられない。
 砲剣オルトロスに憑依している春那もAM装甲【装甲γ】で魔法防御を高め、ヴァルナの護符を展開しているが、このヴァルナの護符も精神を護るものではない。
 属性耐性だけでどこまでいけるか……迷ってはいられない。
 ここで得た結果が希望となるのであれば、サルバトーレの裏側を垣間見た者として、微力を尽くしたい。
 世界と世界との摩擦で生じる圧力、その間に巣食う界霊、それが如何ほどのものかは分からない。
 正直、不確定要素が尽きない。
 故にビジネス・オーダーは自己を強く保つ努力こそが重要なのだと考えた。
 特に精神的な部分を。
 互いを信じ、強く想うことでヒトは困難に立ち向かうもの。
 ならば自分は春那を肯定し、春那が自分を肯定する。
 紡ぎ合わせた強固な絆と共に戦う仲間の存在を支えに挑んでみせる。

「その為の力がオレにはある! エンゼル・ケープ!」

 ユーラメリカの特徴であるスーパーパワー『エンゼル・ケープ』は今回の探査実験用にビジネス・オーダーが編み出した、異空間活動特化型スーパーパワーである。
 絶対救世主空間で属性耐性を引き上げ、『エンゼル・ケープ』の平常心を保つための酸素が含まれた結界に身を包むことで、「普段と同じ環境」で「変わらないパフォーマンス」を発揮できるように場を作り替えた。

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