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終極のエデン アフター

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終極のエデン アフター
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■3-2.ライズ・アワー・フラッグ

 巨人の出現。それは調査隊全体に衝撃を与えていた。異質で強力な存在に対して協議した特異者やユニスらは、当初の予定を急ピッチで進め、巨人の排除に備えることを決定したのだった。

 すなわち後を見据えた前線基地の確保、そして本題である都市周辺の怪物の排除。これを進めてから、安全を確保した後に巨人と対決する――という話である。

 幸いにして第一調査隊のもたらしたものは有益なものばかりである。前線基地の位置を周囲を監視しやすい小高い丘の上に定め、第二調査隊がその場所の確保と設営を担当するのであった。

 そこでまず先陣を切ったのが、

「あははーっ、カィレィ狩りをどんどんやっていくのー」

「空ってのは風を制したものが勝つもんさね。つまり、わたしたちが勝つってことじゃん?」

 私 叫マルコ・ショーテストのコンビであった。彼らは制空権の獲得を主張していち早く飛び立ち、空を回遊する怪物たちに狙いを定めていた。怪物たちはその敵意に当てられ早々に騒ぎ出すが、そんなものはどこ吹く風と叫はふらふらと空を漂っている。

『騒ぎ始めたじゃん? それじゃ、テキトーに捌いてやろうじゃないのさ』

「捌いたら食べるのは僕なのー」

 同調者として一心同体となった二人は攻防一体。地上から、空から、同時に撒き散らされるエネルギーの波をフィールドによって受け止めると、叫はほのぼのとした仕草で指を揺らした。

「アウェイクン『UNLEASH』フォールボルト ファイア」

 すると雷が空を跳ね、奔るようにして空の怪物を叩き落としていく。その様はもはや爆撃機というのもなまっちょろい、空中要塞とも言えるようなプレッシャーを放っていた。

 だがこんな光景も、叫からすれば散歩とでも言いたげだ。今、この付近には例の巨人の姿はない。指揮する怪物が居ない以上、散発的に攻撃を仕掛けてくる烏合の衆でしかない。……と、いうことだろうか。

 徹底した力押し。魔力の消耗を鑑みない全力の攻撃で次々と敵を薙ぎ倒すその様は、彼のおだやかな姿とは裏腹にひどく殺伐としていた。高い防御に身を任せての全力攻撃は次々と叫を傷つけていったが、マルコの力である防御フィールドによって生半可な攻撃だけで彼を傷つけることはできなかった。

「うーん、こんなものかな?」

『綺麗になりゃそれでいいっしょ。わたしたちもとりあえず空を満喫すればそれでオッケーだし?』

 いざとなれば、地上では黒い歴史の生産者が控え、一帯に泥濘を生み地上からやってくる怪物たちを足止めする領域を作っていた。前線基地というにはあまりにも心もとないが、ほんのひととき休む程度であれば行えるだろうか。

 わが道をいくかのように雷を落とした彼らは、トドメとばかりに暴風を放つ。空を制するのは己たちだと誇示しながら丘上の空を闊歩するのであった。

「ふははは! なかなかどうして、オレ様達よりも派手に暴れる奴らがいるじゃねぇか」

 その堂々たる有様を見て、負けじとばかりに大笑しながら地上を歩く男が一人。自身の屈強な肉体を見せびらかすように現れたのはマーキュリー・アストレグスだ。

「お陰様で上から変なもんが降り注ぐ心配はいらないってことだ。存分にやろうぜ、マーキュリー」

 並び立つように、彼のパートナーであるSAM0031919#飛鷹 シン}が言う。手に提げた大槍をぐるりと回すと肩に載せ、そのままマーキュリーの背後をかばうように立った。

「ハッ! 噂の巨人が食えねえのは残念だが、このオレ様がここにいる奴らを全員平らげてやるよ!」

 それは激しい敵意だ。しかしあまりにも潔いその態度は正とも負とも言い難い意志の発露であるとも言える。それでもなお誘蛾灯に惹かれるがごとくその首を起こしたのは、男の強烈な圧力を感じただろうか。

 彼らに群がるようにして怪物たちは殺到する。ひしめき合うそれらはまるで雀蜂を蒸し殺さんとする蜜蜂のような様相であった。

「まだだ、まだまだ! そんなものじゃあ倒れてはやれねえなあ……!」

 二人の意図は陽動という意味を大きく孕んでいる。敵意・殺意に反応するという怪物たちの特性を利用し、設営予定地から引き離す目論見を含んでいる。シンは己の身体を癒やしながら、マーキュリーはその鋼鉄の肉体で攻撃を受け止め、無理やりに引き離している。

 いくら傷つこうとも彼らが足を緩める素振りはない。身体の屈強さに自信のある彼らが、互いに急所をかばい合う連携を見せるからこその芸当であった。

 しかし、攻めに転じなければいずれ勝機も尽きる。彼らは覆いかぶさる怪物の中で反撃の機会を伺っていたが、

「さて。……俺たちもそろそろ狙い時だな、ロビン」

「ああ。ワイルドな彼らの邪魔にならないよう、頑張ろうじゃないか」

 同様に、彼らを支援しようと動き出す特異者の動きもあった。信道 正義ロビン・シャーウッド、二人の射手である。彼らはシンやマーキュリーらは陽動し引き剥がした怪物たちの排除を行い、少しでも彼らの負担を軽くしようという算段であった。

 緩やかな深呼吸。呼吸とともに少しだけ世界が緩やかになったような錯覚を得た正義は、両手に二挺の拳銃を構えて息を吐いた。

「……行くぞ!」

 二人は重力から解き放たれたかのように大地を蹴った。蜜蜂の山を挟み込むように回り込んだ二人は、両サイドから、山をこそぎ落とすように弾丸を放つ。絶え間なく繰り出される怪物の攻撃は、中の二人を確実に圧迫している。ならばこれを引き離し、或いは気を引くことで攻撃のための間隙を作り出す。

 特に効果的であったのは、彼の持つラーストリガーによる爆発だ。シン達ごと吹き飛ばさないように注意を払う必要はあるものの、それでもこれだけ怪物たちが殺到しているとなればお釣りが来る。

 そうして出来た隙間にねじ込むようにして、ロビンが曲刀を突きこんだ。新たな闖入者に怪物たちは“誰を優先すべきか”逡巡が生まれる。遠くから憤怒の力を発散する正義か、それとも混乱をもたらしたロビンか。あるいは未だなお強い意志を発しながらこちらの攻撃に耐えるシンたちか。

 それは単なる、怪物たちの一瞬のロジックエラーに過ぎなかったが、それをこそ待っていたのがシンたちであった。シンの持つ偉能力はその一瞬の隙を一気に引き伸ばしていく。

「力を解放する……諸共に、吹き飛べ!」

「なまっちょろい攻撃を繰り返してんじゃねえぞ、ボンクラどもがァッ!」

 そして生まれたのは、爆発だった。感情の爆発であり、打撃の爆発であり、偉能力の爆発でもあった。

 蜜蜂の如き山を吹き飛ばし、あたりにビリビリとした振動が響き渡る。シンもメルクリオも身体はボロボロもいいところで、加えて、シンは自らをも火種にした自爆を敢行していた。

 散り散りになる怪物たち。最大の一撃を叩き込んでなお、全てが倒れるわけではない。しかしその隙間を縫うようにしてロビンが正義の元へと飛び込むと、

「さあ、僕たちも負けてはいられないな」

「ああ。絶好の機会、無駄にはできない」

 そういって手を組み合った。彼らは互いで触れ合うことでその偉能力を増幅しあい、正義の頭上にずらりと銃器が並ぶ。拡大し、増幅した偉能力。それによって放たれた紅蓮の弾丸が生き残った怪物たちへと一斉に放たれるのであった。

 巻き起こる爆発は規模こそシンのものに劣るものの、散り散りになった怪物たちを各個に撃破していく。互いに隙の大きい必殺の流れ、それらの空白を二組のコンビは埋め合っていたのだった。

 消耗は激しいが、それでも戦えないわけではない。彼らは次の波に備えるべく傷を癒やしながら、高々と腕を突き出した。

 ――当然その爆発は、前線基地を設営せんとしている残りの特異者たちにも伝わるものだ。

『おお、おお。やっておるわ。あちらの陽動は順調じゃな。餌を見つけた獣のように惹きつけられたか』

 焔生 たまの持つ鎌――蘇 妲己がけらけらと笑う。あらゆる障害を越え全てを見通す妲己の感覚は、シンたちの一見捨て鉢にも見える戦いもそれに踊らされる怪物たちの姿も手に取るように把握していた。

 たまと妲己の歩む道には炎がゆらめき、まるで道の如く焦土が生まれていた。あらゆる障害物も怪物も焼き払い、都市からここまで“道”を作ってきたのが彼女たちだ。

 焦げた空気を吸い込みながら、たまはコートの襟を撫でる。外気の毒を警戒して着込んできたものだが、今の処そこまでの毒性は大気に感じられない。

「長らく放棄されてきた外の土地。思ったほど荒れてはいないようじゃが……さて、都市の中で育った者たちが、偉人の力も抜きにここを生きた大地にできるものやら」

「どうでしょうか。まあ、ミツキもアルマも去ったこの世界にたまはそれほど思い入れを感じないのですが……」

 妲己の物言いにもさしたる感想も無いように大きく息を吐き、妲己、すなわち真紅の大鎌を構えてみせる。

「きっちりと仕事は果たしましょう。行きますよ、妲己」

 鎌の刃先から生まれた炎が人型を取り、まるで葬列のように奔った。妲己と深く同調した彼女は、はるか遠く、物陰をうろつく怪物さえ見て取れる。怪物たちは彼女の“殺気”に反応してこちらへ向かおうとするものの、この状況ならばたまが一方的に先手を取れる。

 遮蔽越しに怪物たちを焼き尽くしながら彼女はゆっくりと歩みを進めた。この丘へ近付こうとする怪物たちを透視し、先手を打って焼き尽くす。それが彼女の考えた戦法であり、安全圏から一方的に攻撃する理不尽の如き炎であった。

 そうしてシンたちの真逆を行き、彼らに引っかからなかった怪物たちをあぶり出すように潰していく。怪物たちの生存圏を押し戻すかのように、荒野に炎が舞い散った。

「まるで陣取りのようじゃな。……そうだ、いっそわらわたちで国を作ってみるのも一興ではないかの?」

「面白そうではありますが、今は特にこの場所への執着は感じませんね」

 明らかな軽口の応酬をするほどの余裕。丘の周辺、その安全は概ね確保されたといっていい。ならば後は具体的に敷設を始めるだけであった。

 こうして彼女たちが切り開いた焦土の道を追うようにして、他の特異者たちも丘の確保に続いていた。拠点敷設のための資材を輸送する隊の護衛を担当している草薙 大和ら三人と、羽村 空の計四人がそれに当たった。

 先陣を切っているのは空である。彼女は積極的に敵意を撒き散らし、周囲の怪物たちをひきつけては畳み掛けるようにして怪物たちを切り裂いていく。

「細かいことはよくわかんないけど、もともと一体でも多く倒すのが任務だし、ね!」

 この護衛の面倒なところは、そもそも、怪物たちは負の感情を抱かない限り無害な存在であるということである。明確な敵意はいわずもがな、緊張や不安といった感情ですらも引っかかる可能性がある。

 そのため護衛対象とつきっきりになるのも危険だが、護衛対象が孤立することも許されない。だからこそ彼女は率先して道を進んでいく。結果として、丘周辺の怪物たちを確実に排除していくのであった。

「十……十一……十二!」

 彼女は自分ひとりだけで怪物を捌くことが難しいことを理解している。しかしそれでも、まるで孤立するかのようにがむしゃらな戦いを続けていた。己の命をベットするかのような捨て身の戦法によって、彼女は限界を越えていた。

「むちゃくちゃするな……でも、ある意味それが正解ともいえる、のか」

 それを遠くから見つめていた大和は彼女の戦いをそう評価した。深界霊は人の感情に反応するもの。つまり捨て身で戦って倒れたとしても、周囲に深界霊さえ居なければそのまま倒れてしまっても追撃を受けることはないのだ。

「大和さん、そろそろわたしたちも攻撃を引き受けたほうがいいですよね? わたし、がんばるですよ」

「そうだな、頼む」

 そして今はチームプレイでもある。草薙 コロナは“憤怒”の性質を持つラーストリガーが深界霊たちを惹きつけるのに適しているように感じており、意気込むようにして銃口を向ける。

「奥方様。おそらくあの方は現状の敵そのものは排除できるかと。狙うならば一○時方向から来る一団かと愚考する次第であります」

 集積される情報を整理した碓氷 命がコロナの横で随時進言し、おおよその方針を決定していく。コロナはその都度に狙いを修正し、うまく立ち回ってきた。

「わかったです。……では、はじめるですよ!」

 ラーストリガーの銃口が赤熱し、いくつもの火球が吐き出される。こちらの攻撃に気づいた怪物たちは一斉にこちらへ走り来て、それを確認した大和と命は目を合わせるとそれぞれに行動を開始した。

「本当ならば統率個体に試したかったところでありますが、まずはこちらで実験させていただくであります!」

 命の放つ偽りの炎が怪物たちを焼き払う。見たところ意志など無いようにも思えるが――しかし、絶叫めいた響きが怪物たちの口からは吐き出された。この手応えに命は手を握りしめながら、意識を集中させる。

「ひとまず、統率個体に指揮されていない深界霊には効果アリ……しかし、幻惑や足止めの効果はなさそうでありますね」

 声は上げているものの、こちらの敵意を彼らは鋭敏に察知している。そのためか足を止めることなく真っ直ぐにこちらへ向かってきているのだ。

 とはいえ元々、足止めの効果は期待していなかった。だからこそ大和がその動きに合わせるようにして怪物たちとぶつかりあったのである。自らに加速をかけた今の大和の速度を持ってすれば、どのようなタイミングであれ余裕をもって割り込める。そうしてぶつかりあった先で、大和はきわめて冷静に敵を観察していた。

「怪物――深界霊と一緒くたに扱ってはいるが、暗い影の奥にはそれぞれ別の姿がある。急所、といってもみんないっしょというわけではないか……」

 高速の太刀筋でもって彼はひとつひとつ急所を検分していく。その感覚で大凡分かるのは、姿のベースとなった生物、あるいはモンスターから大枠、急所といえるべき場所が変わっているわけではないという点である。

 極端な話、獣型の深界霊が居たとして耳にあたる場所に心臓があるようなことは無いということだ。……中には既存の存在に囚われない奇妙な姿のものも居たが、こういった手合の急所を探り出すのはまた別の苦労があることだろう。

「……このあたりですね、大和さん! 代わります!」

「そうだな……任せる!」

 ひとしきり怪物たちの調査を終えたところで、コロナは援護射撃の手を止める。大和はコロナとスイッチする形で立ち位置を入れ替え、自身は仲間を護ることに専念した。その間、コロナが時間をかせぐ中で、大和と命と手をつなぎ合った。

 その後、増幅された偉能力によって一気に周囲を薙ぎ払った彼らは、傷ついた仲間たちと合流しつつ後続の輸送部隊を丘へと誘導するのであった。かくして彼らの前線基地、今後の希望につながる最初の旗が打ち立てられるのであった。

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