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終極のエデン アフター

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終極のエデン アフター
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【1】平和を願って



 ――セクターE。
 レオを継いだロウレス・ストレガは、前任者である獅子 サイガのもとを訪れていた。
 サイガが忙しくしていることは察しがついていたため、差し入れに療養のお香を渡すと、サイガはそれを有り難く受け取った。
「俺にもできることがあればいいのだがな……必要とあらば、手を貸すくらいはする」
 ロウレスの申し出にサイガは、「気にすることは無い」と答える。
「お主らには十分、世話になっているからの」

 ロウレスはドーウィン流交渉術虎の巻で得た知識を参考にしつつ、会話を続ける。
「……異端者に戻ったように思えん以上、サイガ嬢もまた同調者かそれ以外の力を得ているのか?」
 その推測にサイガは頷き、
「わしは今、ユニスの手を借りて“敗者の同調者”としての力を得ている」
 と答える。ロウレスは嘘感知によってサイガの様子を観察していたが、特に嘘を吐いているような節も無さそうだ。
「できればサイガ嬢の前任……俺にすれば先々代だろうか? その人についても話をきければ、と思っている……」
 そうロウレスが言うとサイガは、「わしをそのままジジイにしたような感じ、といえばわかりやすかろ」とあっさりとした答えを返す。
 前任者の人物像から、レオとしての指針を見出せれば……と考えての事だったが、サイガの話を聞く限り、サイガ自身とのやり取りから感じられることとそう大きな違いは無さそうだ。



「ごめんください」
 サイガがロウレスとの話し合いを終えた頃。サイガ邸を、ロイド・ベンサムがたずねてきた。
「私ロイド・ベンサムと申しまして、先だって命を救って頂きありがとうございます。
本日はそのお礼にと参上致しました」
 月夜の礼服にエデン市民章を付け、令嬢の嗜みをもった立ち居振る舞いで、ロイドがワンホールパンプキンパイを差し出す。
「よく土産を貰う日じゃな……」
 とつぶやきつつ、サイガはそれを受け取った。

 立ち話もどうかということで、サイガが室内へ招く。
 ロイドは持参していた高級ティーセットを献上し、しばらくサイガと会話を重ねた。お茶は、先のパンプキンパイとも良く合うだろう。
「……サイガ様に、お願いがあるのですが」
 途中、ロイドはそう控えめに切り出した。サイガは「とりあえず聞こう」とそれに耳を傾けた。
「これから本格的な壁外調査が始まりますし、サイガ様に代わり留守や陣頭指揮を執る方も必要な筈です。
私に協力させて頂けないでしょうか?」
 サイガはそれに、一呼吸だけ考える間を置いて答える。
「よほど大掛かりな事でない限りは、好きにするがよい。
手があって困ることはないからの」



 サイガがロイドを見送り外へ出ると、各セクターの様子を見て回ろうとしていたクロノス・リシリアが通りかかった。
 クロノスはこのセクターEからスタートして、時計回りに外周セクターを巡ろうとしていたところだった。
 せっかくの機会だから十二星にも会えればと思っていたが、サイガ曰くここの現役の十二星は既に去った後のようだ。
 サイガにも、セクターの現状など聞いてみたいことは色々あるが……クロノスはまず、
「フェイタル・ゲームを総括して、どうだった?」
 という問いを投げかけた。
「確かにフェイタル・ゲームは落ち着いたが、むしろここからがわしらにとっては本番、じゃな」
 そう言ってからサイガは、フェイタル・ゲームでのことを振り返り付け加える。
「あれはあれで、いい経験になった者も多かろう。わしも学ぶことが沢山あったわ」

 フェイタル・ゲームを介してこの世界が救えるか、とこれまで動いてきたことが、果たして本当にこの世界に住む人々のためになっていたのか……そんなことを考えてクロノスは、セクター内の様子を見て回っていた。
 今この世界は、どのセクターも変革の時を迎えつつある。
 長い戦いを終えたばかりではあるが、住民たちにとってはサイガの言う通り“ここからが本番”なのかもしれない。



 ――サイガがロウレスたちと代わるがわる交流をしていた頃。
 セクターEの街中には、ちょっとした人だかりができていた。
 その中心にいたのは、住民たちを励まそうと外周セクターを巡っていた津久見 弥恵だった。
 弥恵の傍らには、TRIALバギーを走らせ移動を手伝っていたヴィクトリア・オードの姿もある。
 市民と決闘者の間にある温度差を感じていた弥恵は、今日はあえて偉能力を使わずにできることをしようと考えていた。
 小道具とお化粧セットでメイクをして、バンキッシュゴシックドレスを纏うとパフォーマンスを開始する。

 オンステージの心構えでパワーオブラブによる歌声を披露し、通りかかる住民たちに笑顔を振りまいていく。
 加えて華麗なる円舞を踊り始めると、周囲には随分と客が集まってきた。
 髪をなびかせ、自慢の美脚でリズムに乗ったステップを魅せていく。客が盛り上がってくると、弥恵はさらに場を盛り上げようと二枚葉によって衣装をチェンジする。
 と、思っていたのと少し違う妙な歓声があって、弥恵は自分の服を確認してみる。
「ちょっとー!? なんでよりによってこの服を!!?」
 弥恵が着ていたのは、溶けやすいため長時間の使用には不向きなチョコ巫女装束だった。
 とはいえ、盛り上がっているのに今更引っ込むわけにもいかない。さらに困ったことには、着替えをしようにも荷物を乗せたバギーが近くに見当たらないのだ。
 どうやらヴィクトリアに謀られたらしい。
(一曲だけ……溶ける前に一曲だけ披露して着替えましょう!)
 そう決意し弥恵は、チョコ巫女装束を纏ったまま踊りを再開する。

「せいぜい楽しませるが良い、まぁ、余は慈悲深いから、この程度で済ませるのだがのー」
 移動だけのために駆り出されたことにやや不満げな様子のヴィクトリアは、いざとなったらすぐにバギーを元の位置に戻せるよう、少し離れたところから弥恵の様子を見守っていた。
 何だかんだと踊ってのける弥恵の姿に、果たして本気で嫌がっているのだろうかと疑問を抱きつつ……。
 チョコ巫女装束を仕込んだのも他でもない、ヴィクトリアだったようだ。



 セクターGのライブラ邸では、京・ハワードとアダム=ライブラが顔を合わせていた。ウィリアム・ウォレスも身辺警護を兼ねて京に同行しており、二人の会話に耳を傾けている。
「セクターGの近況ですが、アダム様のおかげか、秩序も保たれているみたいですね」
 挨拶もそこそこに、京は話を本題に移す。「ああ」とアダムは、外の様子に視線を向ける。
「私なりに、成すべきことは徹底してやっているつもりだ。だが――」
「目下の課題は、決闘者や市民の温度差問題ですね」
 全ての市民が強い力や意思、目的を持っているわけではない。むしろそういう者たちにこそ、京たちの支えが必要だ。
 京とアダム、ウィリアムは三人で話し合い、策を講じた。
「目的意識をひとつに向ける必要がある」
 ウィリアムも自身の経験則から、助言を行っていく。
「所謂プロパガンダ――、一種の宣伝のような物だが、意外と効果は高い。
力を持たない市民もいるが、そういった者は常に指導者を求めるものだ」
 その意見を参考に、誰かがその“指導者”の役割を務めて市民たちを導くべきだろう、という方向性に話がまとまった。
 白羽の矢が立ったのは、ライブラを継ぐ者でありウィリアムの目から見て愛想も良い京だ。アダムもライブラ家として、それに協力する姿勢を見せる。そして――。

「エデンに生きる皆様、私の声が聞こえますか。
私は十二星リーブラの京・ハワードです」
 セクターG内を中心として、ライブラ家の協力で届けられる限りの範囲に、京の声が響き渡った。
 世界の厳しさを目の当たりにしている住民たちに、手を差し伸べられるように――。京たちがとった策は、彼らをより良い方向へ導くための演説を行う、というものだった。

「真実の開示により多くの人々に混乱を招いた事でしょう、
現在は落ち着きを見せると同時に不安を抱えている者もいます。

壁の外へ都市外調査へ赴く決闘者と戦う術を持たない市民との温度差――
けれど世界を取り戻す為の思いは一つだと信じています。

市民の皆様がいるから私達は安心して調査へ乗り出す事ができ、
帰るべき場所として生を強く実感できます

あの料理が食べたい、あの人に会いたい、理由は様々です。

エデンに住む人々が、同じ大地に暮らす家族である事を忘れないで下さい」


 この日、京の演説を聞いていた者の多くは、考えを少し改めることができたようだ。
 特に力を持たない市民たちは、彼らの生活に寄り添ったその演説内容と京という指導者の存在に、安堵を覚えていた。



 ――再興したセクターDの、とある街の片隅。
「……どうやら無事なようだな」
 キャンサーを受け継いだ天津 恭司は、恭司にその力を渡した張本人である少年のもとをたずねた。
「おかげさまで」
 と答える少年が日々を過ごすのは、他のセクターにあるような邸宅ではなく、旧来の敗者たちが共に暮らす住まいだ。
「情報が開示されて、壁の外側の敵を倒すとかいろいろと動いているみたいだが……、
俺はお前に聞きたい。
お前は何処まで守りたかったんだ? 何を望んでいるんだ?」
 恭司がそう問いかけると、「僕の望み、か」と少年が思案する。
 一呼吸置き、恭司は言葉を続けた。
「力を受け継いだ時、明確に危機は目の前にあった……俺もエデンを守りたいと思った。
だからこそあの時できる全力を尽くしたつもりだ」
 それに少年は、その時のことを思い浮かべながら頷く。恭司が全力で臨んでくれていたことは、少年も理解していた。さらに、恭司が述べる。
「今はそうではない……無用に壁の外側を刺激して新たな災厄をもたらすかもしれない。俺は他のゾディアックとは違う。立場は今までと変わらない。
為ればこそ他のゾディアックとは違う選択肢を取ることもできる……いや、皆がエデンを守りたいのは同じだと思っているがな……」
 決してセクターDの指揮を執っているわけではない少年も、エデンという世界に巻き起こっているおおよその状況については把握していた。
「俺はエデンを守りたい」
 と恭司が言うと、何かを考えながら話を聞いていた少年は、はたと顔を上げて恭司を見た。
「だがらこそお前が望むエデンとは何かを知りたい。俺はお前の力と責任を引き継ぐと誓ったからな」
 その言葉を聞いた少年は、どこか安心したような表情を浮かべて、先の問いかけへの答えを返す。
「このエデンという都市から、争いがなくなってほしい。
僕が望んでいたのは、ただそれだけだ」
 少年の答えに、「そうか」と恭司が返す。
「必ず約束は果たすと誓おう。お前の望みを……いや、お前というのは何か違うな。
名前はなんというんだ? 教えてくれ」
 恭司が聞くと少年は、「今は“ジョーイ”って名乗ってるよ」と教えてくれた。
 彼も彼なりに、変わりゆくエデンという世界の中で、新しい一歩を踏み出すことができているようだ。



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