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終極のエデン アフター

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終極のエデン アフター
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【1】振り返り、見つめる世界



 とあるセクター内の街の様子を、セレネ・フィロソフォスは傍らのセティ・カレイジャスと共に、しみじみと見つめている。
 エデンでの長い闘いに大きな区切りがついた今、二人はこれまでの戦いや世界のこれからに思い馳せながら、束の間の余暇を過ごしていた。
「わたし達、少しは役立ったでしょうか……?」
 ぽつりとつぶやかれたセレネの言葉に、セティは自分のこれまでの動きを思い返し、「僕はまだまだみたいだ」と答えたものの、その表情は決して悲観的なものではなかった。
「目立つことがすべてじゃない……でも、もっと成長しなくちゃいけないね」
 成長するということは、できることが増えるということだ。セティもセレネと共に旅をするうち、自然と技術や知識を身につけ、それは確かに何かの役に立ってきた。
 新しい世界や人々との出会いは、楽しみでもあるが不安でもある。しかし今は、共に旅をする仲間がいるという事実が心強く、どちらかといえば前向きに目標へ向かっていけそうだ。

 ふと、他愛のない会話を続けていたセレネの目に、不安げな市民たちの姿がうつる。
「この世界も、平穏になってくれればいいんですけど……」
 今現在、付近で大きな混乱が起きている様子こそないものの、ピリピリしている者や下を向いている者が多数いることは見るに明らかだ。
「きっと、この世界も良くなるさ」
 セレネを安心させるように、セティは言う。確かにこの世界は今変革の時にあるが、決して未来は暗いものとは限らない。セティの言葉に、「そうですよね」とセレネは頷き、
「次の世界では、何が待っているんでしょうか……?」
 と話題を次へと前進させた。二人で色々と考えてはみるものの、今はまだ推測の域を得ない。だがそこで何か問題が起こっている以上、その地へ足を運ぶ意味がある。
「面白いことが、たくさん起こるといいね」
 セレネの意見に耳を傾けていたセティは、そう言って自分も次の世界へと思考を巡らせた。



 ――セクターB。

「こんにちは!」
 と元十二星であるザック=トーラスに声をかけたのは、タウルスの立場を受け継いだ燈音 春奈だった。隣には、春奈のパートナーである永澄 怜磨の姿もある。
「こうして直接ゆっくり顔を合わせるのは初めてでしたっけ」
 春奈の問いにザックが、「ああ、そうだな。よく来てくれた」と答える。セクターBで行われたフェイタル・ゲームでは、確かにあまりザックと話せるようなタイミングが無かったのだ。
「どうですか? 最近のセクター内の状況は」
 セクターBのその後について、簡潔な情報程度は知らされていたが、春奈はまだその実態を確認できていなかった。
「無論、市民が危険な目に遭わないようにはしている」
 淡々としたザックの回答に、「市民の皆さんを守れるような体制は、敷かれているんでしょうか?」と春奈が付け加える。
「ああ、どうにか形になってる。勝者が敗者に虐げられることがないようにするのが大変だったが、今は互いに補い合う形でおさめている。……オレが招いた事だ。けじめはつけたさ」
 とザックは、窓の外を見やった。セクター内の様子を見るその表情はかたいが、以前と比べればずっと丸くなったように見える。
 その背に、春奈が新たな問いをぶつける。
「身体検査は、今でもやってますか?」
 問われてザックが振り返り、春奈が言葉を続ける。
「体を鍛えるのは良いけど、できればもう少し、魔法にも目を向けてほしくて」
 ザックは少し考えて、「身体検査は今はしていないが、再開は検討している」と答えた。一瞬不安を覚えるような返答だったが、すぐにその誤解は解けた。
「だが、再開しても勝者と敗者を分けるつもりはない。
その提案についても、考えておこう。体を鍛えるだけではどうにもならないこともあると、オレ自身実感している」
 春奈の横では怜磨が、大きく頷きながらザックの見解を聞いていた。
 人助けにあちこち駆け回る相棒についていくには、並大抵の体力では足りないのだ。体を鍛えることの大切さ自体は、身に染みているらしい。
「壁の外にも向かうなら、強靭な肉体だけでも、自在な魔法だけでも足りねえ」
 との怜磨の見解に、春奈も同意した。ザックも特に否定する意思はないようだ。
 これからは、個人で両方を備えるか、片方を得意とする者同士が助け合って動く必要がある。

 方針についての話し合いが落ち着くと、怜磨はザックと契約している女性の偉人とも会話を交わした。
「そもそも、ザックってどんな人なんだ? ゲームの時は暴走してたようなもんだし、あれが本来の姿じゃねえだろ?」
 怜磨の問いに、偉人が答える。
「豪快で、頼れる人。この人がいれば安心できる、って思えるくらいに」
 その言葉からは、二人の関係も良い方向に変わりつつあることが感じられた。その後もしばらく、二人は二人だけで会話を続けた。バイタリティーに満ち溢れたパートナーを持つ者同士、積もる話もあるものだ。
「そういえば」
 と怜磨がもうひとつ、疑問を投げかける。
「あんたの元になった偉人って誰なんだ?」
 気が向かないようであれば無理に聞かないつもりだったが、彼女はすんなりと、言葉を返してくれた。
「“エイレーネー”……」
 そう言って偉人は、柔らかい表情でどこか遠くを――以前よりも平和になったセクターBを見つめた。


「ここの管理は、オレが仕切っていてお前は構わないのか」
 一方で、春奈とザックも二人で話を続けていた。ザックの問いに、春奈は頷く。
「本当は私がやるべきなんだろうけど、特異者として幾つもの世界に関わってるから常駐は難しいし、それに――」
 と言いかけて、春奈は言葉を止めた。「何だ?」とザックが聞く。
「……管理の経験や手腕があるザックさんたちの力を、どうしても借りたいんです」
 それも春奈の本心ではあるが、本当は別のことも考えていた。
 ザックたちの過去の行いを気にしている市民もいるだろうが、だからこそ、セクターの管理をする中で人々と向き合っていってほしいと、春奈は感じていたのだ。
 それから春奈は、先輩にあたるザックからセクターについての話を聞いたりと、会話を重ねていった。
 今日の様子を見る限りきっと、あえて言葉にしなくともザックは、市民たちとも春奈とも、向き合っていってくれるだろう。



 セクターBの状況に目を向けている人物が、他にも。
 黄泉ヶ丘 蔵人は行動を共にしている三人の仲間たちと共に、セクターBの様子を見て回っていた。
 本音を言えば、今後を思えば壁外調査の方が気になるところではあるのだが……保智 ユリカに半ば強引に連れてこられたのだった。
 特にラース・トレデキムは、もっと試合らしい試合に臨んでひと暴れしたかったらしく、不満げな表情だ。一方シジマ アキナは、周囲の市民たちのことを心配そうに見ている。
「お前ら、今日は休暇だからな。蔵人は難しいことを考えるの禁止。ラースは暴れるの禁止。アキナも、偶然出くわした怪我人の手当ぐらいならいいが、積極的に探しに行くのは禁止だ」
 そうユリカが釘をさすと、蔵人が言う。
「休暇ならば、各々好きに過ごすべきではないのか? わざわざ4人揃って行動する意味が分からんのだが……」
「『休暇だから好きに過ごせ』なんて言ったら、お前ら休まないだろ? だから今日はあたしにつきあえ!」
 とユリカが言った傍から、アキナが何かに気づき、ある市民のもとへと駆け寄っていった。
 以前の混乱によってか、怪我を負っている市民の姿が目に入ったのだ。目に入ってしまった以上、ユリカも止める気はないようだ。アキナはライトオブライフを発動させて市民を癒し、治療術をもってできる限りの治療を施していく――。


 幸い大事に至ってはいなかった市民たちは、アキナのサポートもあって大分元気を取り戻したようだ。
 セクター内の観察と最低限の治療を済ませた一行は、一旦それらを中断して腰を落ち着け、わかった情報を整理しようとしていた。
 蔵人の敗者知識とアキナの勝者知識とを活かしながら、総合的に街で見てきた状況を判断していく。そしてそれをアキナが、デフラグメンテーションで素早く整理していった。
「あたしたちが……いや、あたしたち4人だけじゃなく、多くの特異者が守った結果がこれだ。どうだ? なにか感じたか?」
 共有された情報を把握し終えたユリカが、そう言って三人に話を振る。
「あたしらが関わってきたこのセクターを見て、どう思ったか、そして今後あたしらがどうすべきか……それをしっかりと決めようじゃないか」
 今日の目的は、ただ休みを取ることだけではない。一度頭を冷やして、今後の方針を固めようと、ユリカは今回の事を提案していたのだ。
「『守らなければならない』という考えも、傲慢なのかもしれんな。それはこの世界を侮っているとも言える」
 最初に意見したのは、蔵人だった。
 偉能力に関する知識や分析力を持つ蔵人には、この街の人々が元来持っている可能性も見えていたのだろう。もちろん、その情報は仲間たちにも共有されている。
「助けを求められれば助ける。しかし、望まれてもいない善意の押し付けはすべきではない。俺たちに求められているのがどこまでなのか……改めて、よく考えてみよう」
 フェイタル・ゲームも終了した今、セクター内のサポートを一から十まで行っていくことは、確かに正しいとは言い切れなかった。これからは外への調査も始まるし、いつかはこの世界も自立していくことになる。
 現時点でも、以前と比べれば市民たちは平穏に過ごしているのだろう。
「このエデンに限らず、三千界で特異者として活動する以上……常に考えねばならぬことだ」
 そんな蔵人の意見にじっと、アキナは耳を傾けていた。先ほども真っ先に市民の助けに入ったアキナには、思うところがあるのだろう。
「たとえ本人は望んでいなくても、善意の押しつけと言われても、それでも」
 と、アキナが口を開く。
「……私は、目の前で失われる命を見捨てたくはありません」
 それを蔵人は、否定したりせずに聞いている。
「これは私の我儘です。それが憎まれることに繋がるとしても、私は……」
 そこまで言ってアキナは口を噤んだ。何から何まで助けるわけにはいかないとはいえ、アキナの言うことも最もだ。
「己の我儘であると自覚しているのなら、それは押しつけではない……と、俺は思うがな」
 蔵人が言うと、アキナがはっとして顔を上げる。ただ目の前の相手を救いたいという気持ちは、きっとこれからも、未来を正しい方向へと導いていくだろう。
 アキナたちが真面目な話し合いを終え、会話に区切りがつくと、「話は終わりか? 聞いておるだけというのは、そろそろ苦痛なのじゃが?」とラースが口を挟んだ。
「儂はただ暴れるのみよ。その力を向ける先を貴様らが示せばそれに従うが、そもそも暴れないというのは儂の性に合わん」
 ……と主張しているので、アキナたちの方針がしっかりと固まった以上問題はないのだが、今日はすっかりご立腹の様子だ。
「ゆ・え・に! 暴れずに大人しくするのは今回限りじゃ! 二度はないと思え!」



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