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ワールドホライゾン

全てがチョコになる日

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全てがチョコになる日
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 Love Feeling



 バレンタイン。通常ならば愛し合う者、誰かを愛している者にとっては特別な一日。
だがそうじゃない者、愛を伝えることが叶わなかった者、愛を伝えたが報われなかった者にはどうなのだろうか。

『……ワタシハ、ワタシハ……』

 燻る想いをミリアムの糖類補完計画に掬われたユキノ・北河は意識の深いところまでをチョコレート色に侵食されていた。
雲散霧消で死角を取り、スロウアデプトの動作で触手を投げかけ、舞風を使いチョコへと叩き込む。

(ナニヲシテイル……アァ、持テル全テノ力デ全テヲチョコ二……。
何ノタメ……? 愛シアウモノガ妬マシク……。……ドウシテ? ワタシは、私は……思い出した……)

 ミリアムに勧められた時、一瞬は怪しげだと思った。
だが、それでも良かった。自分の好いている相手の為に色々試してみたい欲求に駆られ、その欲求を抑えられないままにチョコを口にしたのだ。

(……アァ、マタ一人、引摺リ込ンデシマッタ……ダメです。このままでは、不幸な人間が増えてしまう……。
……告白は届かないのかもしれない。ですが私の絶望に他人は巻き込んではいけない……どうにかしないと……どうしたら良い……助けて……タスケテ……)

 チョコレートの塊に取り込まれるだけでなく、既にその一部としてユキノは特異者をチョコレートの塊へと取り込む。
特異者を取り込んでしまうことに申し訳無さを思いつつ、ユキノは助けを求める。
甘い香りとチョコレート色の思考の中で好意を持っているとある人の姿だけを追い求めて……――





 ジョニーから話を聞いた藤原 経衡はチョコレートの塊に囚われている特異者を助ける為に解体を行うことを決めた。

「お願いします。助けてください」

 一人では無謀だと思った経衡はそうミサキ・ウツミに協力を求めた。

「義を見てせざるは勇無きなり、だ。お願いされるまでもない、協力する」

 ジョニーからの連絡で大体の話を聞いていたミサキは経衡にそう返すと市庁舎前へと向かった。


☆☆☆―――――――――――――――――――★★★


「ありがとうございます。助かりました」

「気にしなくていい」

 市庁舎前で合流を果たした経衡とミサキは短く言葉を交わす。

「それで、どうするつもりだ」

「チョコレートの塊に囚われている人たちを助けたいと思います。解体を行いたいので前衛をお願いできますか?」

「了解した」

 ミサキが前衛に、経衡が後衛の位置取りを取る。
経衡が純白の魔銃を撃って援護に周りつつ、生命感知で既に取り込まれている特異者の位置を特定し、ミサキと共に解体を進める。

 チョコレートの塊の解体を進めつつ、経衡はバレンタインの花束を贈る代わりにバレンタインヒムの歌で気持ちを届ける。
経衡の歌の効果でミサキの動きがより俊敏に、より正確さを増してチョコレートの塊を解体する。

「この気持ちは誰にも負けない!」

 経衡は自分の想いはミリアムのチョコの想いに勝ると信じて、その想いをバレンタインハーツに託し、特異者を取り込もうとするチョコにぶつけた。
その効果は確かにあったようでチョコレートの塊から人らしき形をしたものを引き離すことに成功した。
 目に見えた効果に経衡がちらりとミサキの方を見て、反応を伺う。

「君は私の戦友だ」

 経衡の気持ちを知らないわけではない。ただミサキから返す言葉は今はそれしかなかった。

 二人はその後も囚われた特異者たちを数名助け出した。その中にはユキノの姿もあったとか……。





 パートナーが取り込まれてしまったものの幸いにもチョコを食べていなかった葦原 瑞穂もまたパートナーや特異者を助け出そうとチョコレートの塊の解体を行おうとしていた。
その為の協力者として瑞穂はMiss.キラーを呼んでもらうようジョニーに頼んだ。

 一足先に市庁舎前に着いた瑞穂は瑞穂式星導刀で邪魔する触手を薙ぎ払いつつ、塊本体をギアスラッシュで削り斬っていた。

「ここがデルタシティと繋がる世界の一つ……って、なんじゃこりゃ!?」

 遅れて市庁舎前に着たMiss.キラーが呆れ声で言い放った。

「あのチョコレートの塊の中にみんなが囚われていると聞いています」

 瑞穂は説明をしながら、攻撃の手を緩めない。
そんな瑞穂を見てMiss.キラーも瑞穂の少し後方から援護を行う。

「極光帝国製ではないのはもちろんのこと、ダイナソアブロイラー・エンジェルハイロウ・児雷一門に該当するENEMYDATAはねぇな。大方メイプルキングダムあたりか?」

「メイプルキングダム……あながち間違いではありませんね。敵を軽視していると痛い目を見ます。綺羅も気をつけて」

 Miss.キラーを親愛を込め綺羅と呼ぶ瑞穂が注意を促す。
今まさにMiss.キラーへ襲いかかろうとしていた触手を瑞穂が薙ぎ払ったのだ。

「悪ぃな。ま、仮はちゃんと返すぜ」

 舞踏しながら武闘する瑞穂の動きに合わせて、Miss.キラーの援護射撃がチョコレートの塊を削る。
多少、手間のかかる作業ではあったが二人はチョコレートの解体を続けながらパートナーと他数名の特異者の救出に成功したのだった。





 市庁舎前のハート形のチョコレートの塊の話はジョニーから特異者たちへ、そして他の特異者やパートナーたちにも伝えられていった。

「な、何あのチョコの塊!? ミリアムの暴走!? ……暇だったら出撃しろ? ああ、そういう」

 連絡を受けたリーゼ・アインは面倒とばかりにその役割をパートナーに押し付けようとした。だが……

「アーモリーで武姫の指導に行ってて帰ってきてない!? うっそぉぉぉ! 私しかいないじゃん!」

 押し付けに失敗したリーゼは仕方なしにイーグルデザートRverで出撃するのだった。



 リーゼは【小隊陣形】デコイアサルトでチョコの塊に挑むことにした。
ダッシュローラー装備のイーグルデザートRverで高速移動を行い、前衛で注意を引きながらビームバズーカでチョコ塊本体を撃ちまくる。
ハイサイフォストリオの皆に射撃攻撃を安全な位置から行わせる。

 大きさ的にリーゼに不利はないが、懸念事項があるとするならば稼働時間だろうか。
そんな予感を読み取るかの如くイーグルデザートRverの動きが鈍くなる。

「やっぱり……!」

 体勢を立て直す前に伸びてきた触手に絡め取られそうになる。
そこへキリュウ・ヤスハラがラプタープラスで救援にやってきた。
直ぐ様、リーゼの窮地に気づくと触手を撃ち抜き、救出を行った。

「おー、キリュウ君、助けに来てくれたの!」

「ジョニーさんから連絡を貰ったんです。助けられてよかった」

 そのまま二人は共闘してチョコの塊と戦うことにした。

「ホワイトデーにもワールドホライゾンにおいで! 生き残って、一緒にMEC話しーまーしょ!」

 共闘しながらリーゼはせっかくだからとそう誘う。
バレンタインに一緒に戦えたことだし、せっかくの縁だということでホワイトデーに前から話したかったMEC話をしようと思ったのだ。

「時間があれば是非お話したいです」

 共闘しながらそう約束し合う。リーゼは騒動が終わったら改めてちゃんとホワイトデーの誘いをしようと騒動の収束へ懸命に動くのだった。





 救出などとは違った視線でエーデル・アバルトを呼びしたスレイ・スプレイグ
以前に特異者に勝つ為のMEC開発をエーデルが考えていることを思い出し、実際の戦闘っぷりを見て貰おうと思ったのだ。

「少しでも参考になるといいのですが……」

 騒ぎが見渡せる位置でスレイはエーデルを護衛しつつ、そう呟く。

「本当に色んな戦い方があるのね。興味深いわ」

 エーデルのその言葉にスレイは誘ってよかったと思った。
何処かの世界で観察を行うのもいいが、ワールドホライゾンでの戦いならより色んな世界の戦い方を見てもらえると考えたのは間違いではなかったようだ。

 だが悠長に観察ばかりを行えるわけがない。
戦線から離れた市庁舎前を見渡せる場所にいると言ってもMECに乗っていれば嫌でも目立つ。
 最初こそ数体の触手だったために戦場把握で敵意を探り当て迎撃することも出来たが、その触手の数はどんどん増え始めていた。

 本格的な迎撃戦になる前に、とスレイはエーデルを後方に下がらせ、アイアンヴェールを使用した。
他の特異者の力を観察させることも目的だが、スレイ自身もまた異世界の力の一端を見せられれば……とも思っていたのだ。

 そんなスレイの視界にギリアムと仮面エロの姿が入る。
触手ならばエーデルに観察を続けてもらい、スレイが迎撃で事を終わらせることも出来るだろうが、あの二人を相手しつつとなると分が悪いところの話ではない。
うっすらと自身がチョコになりそうな気配を感じたスレイは

「すみません、エーデルさん。退避してもらった方がいいかもしれないです」

「手伝えそうなら手伝うわよ? 実際に戦って分かることもあるかもしれないし……」

 負ければチョコレートに取り込まれてしまうと分かっていながらエーデルがそう返すのは、やはり研究熱心なところがあるからだろう。
その申し出を無碍に断ることも出来ず

「では、本当に危なくなるまでは助けてもらってもいいですか?」

 本当に危なくなった時は何が何でもエーデルだけは退避させようと心に決め、スレイがそう告げると

「わかったわ」

 とエーデルは答えると、指揮官に与えられるマドファジェズルを構え、コマンダーの魔法で応戦する。
そうだった。彼女は優秀なゼネラルであり、高レベルのコマンダーの攻撃魔法はお手の物である。

「そうそう。今回は中途半端になってしまいましたが、ホワイトデーにもお誘いしますね」

「ありがとう。期待しないでおくから、あなたも気張らないようにね」

 バレンタインだと言うのに戦いという無粋な思い出しか残らなさそうなので、せめてスレイはホワイトデーには別の思い出を……とそう約束を交わすのだった。





 メルティ・シュガーの影響は即座に効くものではない。
その甘さに、その香りに、ゆっくりと、チョコレートが溶けるようにゆっくりと、思考を溶かし、染め上げていくのだ。

「ヤバい……まさかお茶会のチョコにメルティ・シュガーなんて代物が盛られているなんて……」

 幾嶋 衛司の思考もまたチョコへの欲求がじわじわと広がっていた。

「エージくん、大丈夫? しっかりして!!」

 事態の収集に駆けつけたブリギットは直ぐに衛司の様子がおかしいことに気付いた。

「ふふふ……甘いモノへの誘惑も俺の愛は侵せない。耐えて見せるさ」

 平気そうに衛司は振る舞っているようだがブリギットには衛司の状態が良くないことはわかっていた。

(ここはあたしが戦ってエージくんを助けないと……!
いつもはエージくんがあたしの為に色々用意してくれるけど、今日はあたしがエージくんの為に戦うんだ!)

 今日こそは、と気合を入れるブリギット。

「俺がアシストするから一緒に戦ってくれるかい?」

「うん、任せて。エージくん!」

 既にメルティ・シュガーの影響を受けている衛司がチョコの塊に近づくのは危険なため、主な解体作業をブリギットに任せて衛司はそれを援護することにする。
ブリギットのチョコの塊を解体作業を衛司はシューティング☆クッキーを投げて援護する。

「触手にも気をつけて、ブリギットちゃん」

「わっ……と。うん、ありがとう、エージくん!」

 衛司の言葉に即座に反応するブリギット。
今までの経験や二人で乗り越えた困難のぶん、絆が深まっていることを実感する。

 ただ、やはり衛司は本調子ではないようで時折、何かを頭から追い払うように首を振る。

「ブリギットちゃんが戦ってるんだ。俺がここで誘惑に屈するわけには……いかないよね……」

 左手の薬指に嵌まる結婚指輪を見て、ブリギットへの想いを何度も何度も噛みしめる。

 ブリギットも戦いは続けつつも衛司の様子を気にかけていた。
心配な気持ちと早く倒してしまいたい気持ち、それと同時に慎重にいかないと自分も取り込まれてしまう危険性に注意する気持ち。

(それにしてもこのチョコ、美味しそう……ダメダメ! コレを食べたらエージくんと同じ状態になっちゃう)

 だが、チョコの塊から近い場所にいるブリギットは当然メルティ・シュガーの甘い香りも嗅いでいるわけで……。

「とても甘く芳醇なチョコ。どうぞお一つ。さあ、食べて」

「え?」

 そんなブリギットの隙を見つけた謎のエロ仮面がブリギットの腰に手を回す。
キスしてしまいそうな程の至近距離で、ずずいとチョコを口元へと運ばれて、思わずブリギットは口を開けてしまいそうになる。

「俺がいる状況でブリギットちゃんに手を出そうなんて、いい度胸だね」

 衛司の放ったシューティング☆クッキーが差し出されていたチョコを弾き落とす。
メルティ・シュガーの影響でブリギットのピンチに気付くのが遅れた自分にも怒りを感じるが、それ以上に衛司の中の嫉妬の炎がチョコレート色の思考を溶かし尽くすほどにメラメラと燃え上がる。

「メルティ・シュガーを使えるのがそっちだけとか限らないよ。因果応報……キミも溶けて混ざってしまうといい!」

 手段を選んではいられないとばかりに衛司はメルティ・シュガーを仕込んだシューティング・クッキーを矢継ぎ早に投げつける。

「残念だ」

 投げつけられたクッキーをひらりと躱しつつ、エロ仮面は二人から距離を取り、いつの間にかチョコの塊に紛れて見えなくなった。

「大丈夫かい? ブリギットちゃん」

「う、うん……。ごめんね、エージくん」

 互いの無事を確認し合う。一旦、チョコの塊から距離を置いたとはいえ、まだ騒動は終わっていない。

「…………」

「ブリギットちゃん?」

 何か考え込むようなブリギットの表情に、衛司が首をかしげる。

(そうだ! 後の楽しみを用意しておけば誘惑にも負けない……かも)

「ねぇ、エージくん。この戦いが終わったら、甘いモノをお腹いっぱい食べたいな。勿論、二人でデートしながら」

 突然のブリギットの提案に衛司は驚いた表情をしたすぐあとに笑顔になった。

「はは、俺がそれを断るわけが無いじゃないか。勿論OKだよ♪」

「ふふ、エージくんならそう言うと思ってた。あたし、頑張るからね!」

 ブリギットの提案はチョコの誘惑に打ち勝つためのものだったが、その約束は二人にとって相乗効果以上のものがありそうだった。
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