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共同開発部隊兵器開発意見会

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共同開発部隊兵器開発意見会
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■プロローグ■


 ――学術都市ブレンダム、グランディレクタ共和国領事館近郊、エーデル私邸

 “女好きの掃除屋”ロメオに呼ばれたワールドホライゾンの特異者たちは、彼に案内されて領事館近くにあるエーデル・アバルトの私邸へと歩いていた。

「エーデルさんって、領事館の近くに住んでいるんですね」
「おうよ。なにかあればすぐに駆け付けられるようにな」
「一人で住まれているの?」
「うんにゃ。流石にエーデル・シンジケートの面子と一緒に暮らしているぜい」

 道すがら、天津 恭司今井 亜莉沙の質問にロメオが応えてゆく。
 するとエーデルの私邸が見えてきた。

「大きいな。一人で住むには広すぎる」
「元々はラディア王国の貴族の別荘だったんだが、エーデル様が買い取ったんだぜい」

 綾瀬 智也の感想に、ロメオはそう説明した。
 豪邸、とまではいかないが、智也たち現代日本人の視点から見ると、十分大きな「お屋敷」だ。
 わざわざ「買い取った」と言うあたり、接収したのではなく、きちんと購入した、ブレンダムの人々に無茶なことはさせていないのだといいたいのかもしれない。

「メタルキャヴァルリィ!? しかも見たことのないタイプだよ!」
「こっちにはエアロシップの砲身があるな。こちらも造りかけのようだが」
「メタルキャヴァルリィはどのタイプにも属しませんね。強いて言うとスクラマサクスっぽいですが。砲身は大口径の主砲のようですね」
「エーデル様の趣味の、ハンドメイドのメタルキャヴァルリィと、エアロシップの主砲の強化案だな。ある意味ここは、エーデル様の趣味全開の場所でもあるんだぜい」

 安藤 ツバメが、庭で膝をついた状態で鎮座しているメタルキャヴァルリィを見ながら、瞳を輝かせて言う。
 彼女の傍らでは、飛鷹 シンが大口径の主砲の砲身を見つけていた。
 スレイ・スプレイグはそれぞれ見るが、彼の持つ【兵器知識(テルス)】でも、このタイプは見たことがなかった。
 そんな三人に、ロメオはそう説明したのだった。

(メタルキャヴァルリィやエアロシップの砲塔までハンドメイドしてしまうなんて、エーデルさんは本当に趣味の人なんですね。そう言えば、スクラマサクスはケヴィン・ヤスハラさんとカスミ・ヤスハラさんのご夫妻が中心となって開発されたと聞いています。キリュウ君と同姓ですが、もしかしたら知り合いかもしれませんね)

 スレイがそんなことを考えていると、メイド服を着たデルタ・エーデルが私邸の入り口で待っており、ロメオから彼らを引き継ぐ形で私邸の中へ案内してゆく。

「『エーデル様の趣味全開の場所』、という意味が分かりましたよ」

 朔日 睦月は苦笑を浮かべていた。
 私邸の中は、本来あってしかるべき調度品の類がほとんどなく、綺麗に片付けられているものの、そこかしこにメタルキャヴァルリィやエアロシップの部品らしきものが代わりに置かれていた。
 ロメオの言葉の通り、エーデルの趣味の場所、私的な場所と言えるだろう。

(こういうのに縁があるんだろうな。また開発の会議に招集されるたぁな。次は学者のセンセイ、お題は次世代、ね。やるだけやってみますか)

 『ラディア連合王国軍兵器開発意見会』にも参加したライオネル・バンダービルトは、その光景を見て気を引き締めていた。
 前回は特異者に理解があるとはいえ、メタルキャヴァルリィよりはエアロシップに明るいゼネラルのナティスだったが、今回は自らメタルキャヴァルリィやエアロシップの砲塔を開発してしまうだけの才女である。
 難易度は格段に高くなっているといえよう。

「こちらでエーデル様がお待ちです」

 デルタに案内されたのは、貴族同士の会食ができるような煌びやかなダイニングだった。
 そこにはグランディレクタ共和国軍の女子制服を纏い、髪を下ろしたエーデルの姿があった。

「連合王国がトリプルフォースキャノンを実用化しているとはね……やはりエアロシップの技術の関しては連合王国の方に一日の長があるわね。こっちもハイパーメガフォースキャノンの試作とトランジッション・フォースキャノンの開発を進める必要があるわね」

 エーデルは紅茶を飲みながら、片手に持ったタブレットに目を通していた。

(エーデルさんとお話しするのは平和交渉以来二度目ね。髪を降ろした姿も素敵だわ。私も歴史の勉強はしているの。一発逆転の超兵器や一騎当千の英雄譚に縋るのは負け戦の軍隊のする事。ここは一つ、艦隊の為の船を提案させて頂きましょう)

 宵街 美夜は、『オルタナティブウォー・アフター』の時のような険が取れ、どこか艶っぽいエーデルに、内心吐息を吐いていた。
 生き生きとしているのだ。こっちが地のエーデルなのかもしれない。

「今回は兵器開発の意見会に参加できて光栄だ。ここでの意見会で造られた兵器が、今後のテルスの戦いを左右するかもしれない。そう思うと武者震いするよ。これからの戦いもメタルキャヴァルリィとエアロシップの連携が重要で、双方の新兵器が求められていると思っている。熱く語り、エーデル女史の琴線に触れられるよう頑張るよ。そうそう、折角だし、お土産にお菓子を持ってきた。ブッシュ・ド・ノエルだが、クリスマスにはまだ早いけれども、テルスじゃ多分ポピュラーじゃあないと思うし、美味しいから口に合うといいな」
「ありがとう。後程デルタに茶請けとして出させるわ。あなたたち“プリテンダー”の傭兵は、変わった食べ物を食べているとロメオやデルタから聞いているけど、このケーキもそのようね」

 島津 正紀がブッシュ・ド・ノエルを差し出すと、傍らに控えていたデルタが受け取って中身を確認する。
 その後エーデルに渡して中身を確認した。

「好きな席に座って。早速始めましょうか。ただし、意見は聞くけど、必ずしも採用するわけではないので、その点については期待しないで頂戴」

 エーデルは居住まいを正すと、正紀たちに席に着くよう促したのだった。
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