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≪ワールド・ピース≫穢夷の鬼神 詠

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【2】百足の言葉



 黒崎 大地はマシラの草履で強化された脚力で、屋根の上に飛び乗った。
 高いところから町全体を見渡して、百足の位置を探っていく。妖魔の発生場所や霧がかかった場所を把握し、百足らしき人物の居場所に目星をつけると、その脚力と忍びの歩法とを駆使して、一気に目的地へと接近していく。
 それを妨害するように妖魔が襲い掛かって来るが、今は百足の方が最優先だ。可能な限り早さを活かして切り抜けるが、それでも食らいついてくる妖魔が数体。
 そのうちの一体が攻撃を繰り出してくると、大地はやむを得ず足を止めた。雲散霧消で敵に隙を作り、それを突くようにしてアームディフェンスで応戦する。
 そして月光刀を振りかざし、反射させた光で周囲の妖魔たちの目をくらませると、再び百足のもとへと急ぐ。



 千変万化の忍装束に身を包んだ弥久 ウォークスは、周囲の風景と同化することで身を隠しながら、靄が濃い方、妖魔が多い方へと向かって百足を探す。
 姿を隠してはいるものの、誤魔化せるのは見た目だけだ。嗅覚の鋭い妖魔などはこちらの気配に気が付くようで、全てを回避できるわけではなかった。
 しかしウォークスはそれも承知の上だ。パンくわえダッシュで走り、驚くべき速さで接敵を避け進んでいった。



 青島 想那は、アゼリア・フィシスローレル・D・エヴァーラストと共に百足の確保に動いていた。
 ローレルは、式神使役によって式符・夕星から金獅子を呼び出す。さらに気高く小さきものと同化することで霊力を底上げし、この先の道中における戦闘や作戦の遂行に備えた。
 自分たちよりも捕捉されやすい位置で偵察を行う想那のため、アゼリアが九十九の幸を掛ける。
 想那は力をより発揮できるよう天狗の勾玉を身につけ、鏡花水月によって姿を隠した。そして天狗の空走で空を駆け、空中から浄眼を光らせ町中を見渡していく。
 地形や道、霊力の性質と粗密を見極め、百足が通った経路と現在の居場所を予測しようと試みる。
 想那が観察して得た情報は随時、アゼリアとローレルに共有される。
 アゼリアは妖力探知によって周囲の妖魔の位置や様子を探りながら、ローレルと共に情報を整理・分析していく。
 ローレルの方では六壬式盤を用いた式占術を行い、平和泉の動向を占おうとも試みたが、二者間の問題として括りづらいためにあまり成果は得られなかった。

 しばらく順調に歩を進めていた一行だったが、あと少しで目標地点まで辿り着ける、というところで妖魔による妨害を受けることとなった。
 複数体の妖魔が道を塞いでいる。百足が目前まで迫っているだけに、迂回路を進むこともできない状況だ。
 あまり混戦になって時間をとられるのは避けたいところだ。幸いまだ、向こうはこちらに気づいていない。なるべく気づかれないように、気づかれてもすぐに避けられるように、想那たちは遠距離攻撃を主に妖魔たちに対処する。
 ローレルは戦闘を呼び出しておいた金獅子に任せて、自身は神楽舞を踊ることで周囲の魔を祓い、浄めていく。
 想那の要請を受けた休戦場の作り手もこれに助力し、ローレルの舞いの隙を埋めるようにして破魔の光雨を降らせ、全体を援護していく。
 想那はAAによる炎を放って、妖魔たちの穢れのみを焼き尽くす。
 想那やローレルが攻撃を当てやすいように、アゼリアはマシラの草履を履いた足で駆け抜け、素早く動いて敵を攪乱している。
 大方の妖魔は片付いたものの、このまま戦闘を続けていては百足の追跡に後れをとってしまいそうだ。

 そこに何者かが割って入り、滅魔の太刀を食らわせて妖魔を跳ね返す――如月 歩が、百足を追跡する特異者たちを手助けするべく駆け付けたのだった。
「ここは構わず先に行け! 追跡は任せた!」
 そう言って歩は、神器化した雪桜を構え直す。はじめに飛び込んできた妖魔は、穢魔滅を施してある刀による一撃を受け、既に無力化されていた。想那たちは歩にこの場を任せて、先を急ぐ。
 歩は想那たちが追跡する時間を稼げるように、残りの妖魔たちと対峙した。
 妖魔たちは反撃しようとすぐに歩に襲い掛かってきたが、方違えによってその攻撃は遮断された。歩への正面からの攻撃は通用しないようだ。
 歩は敵を死なせずに無力化できるよう、急所を避けて行動を阻害するような攻撃を主に行っていく。雪桜が纏う冷気をもって敵の足元を狙い、その動きを止めようと試みる。
 が、敵の数がやや多く、このまま対処しきるのは至難の業だ。しかしまだ時間稼ぎには不十分だろう。もう少し粘って敵を足止めする必要がある。
 歩は神木の篭手に宿る霊力を解放し、一時的に戦闘力を向上させると改めて妖魔たちに斬りかかった。次々と妖魔の足元を凍らせていく。
 一通りその場の妖魔の足元を凍らせると、歩はすぐに戦線から離脱した。
 最大の目的は、仲間を逃がすことだ。足止めが済んだならこれ以上時間を割く必要はない。他所で困っている仲間を手助けするべく、また次の場所へと急ぐ。



 一番に百足の姿を発見したのは、想那たちだった。
 百足は自分を追いかけてくる想那たちに気づくと、すぐに逃げ出そうと駆け出したが、ローレルが竹槍召喚を行ってその進路を塞いだ。
 直後、ウォークスも百足を発見しこの場に駆け込んでくる。
 敵が増えたのを見ると百足は、靄を発生させ妖魔に相手をさせようと試みる。しかしその妖魔たちは、百足に迫ることもなければ特異者たちを攻撃することもなかった。
 そうなる前に、想那が雷落としで妖魔たちを牽制すると共に、百足を足止めしたのだ。
 アゼリアも百足を捕らえるべく、決壊妖気を纏って妖力を解放する。一回り大きくなったアゼリアは皆が足止めをしている隙に素早く百足に接近する
 アゼリアの捕手術によって百足は捕らえられ、ウォークスが百足を抱えて、一行は一旦妖魔のいるこの場所から離脱した。

 百足を運びながらウォークスが、
「俺からの質問は一つだ」
 と問いかける。
「お前が行った行為での影響で、幸せになるモノと不幸せになるモノはどっちが多い?」
 それに百足は、
「幸せ、不幸せという考え方が、私は好きではありません」
 と無表情に答える。派手に抵抗する気は無いようだが、目的への強い志は持ったままのようだ。
 すぐ近くまで追いついて来ていた大地に気づくとウォークスはその場所まで百足を運び、万が一にも抵抗されないよう、町で見つけてきた縄で百足の手足を縛った。

「目的は何だ」
 とまず聞いたのは大地だった。
「私の目的は、毘沙門様にご助力することです」
「お前達は何者だ? 仲間は何人いる」
「何者か? 見ていただいた通りです。仲間……志を同じくする者という意味では毘沙門様のみです」
 続いて想那が、ドーウィン式交渉術虎の巻も参考にしつつ、百足から情報を聞き出していく。
「先ほどから名前が挙がっている毘沙門様の、容姿特徴や予想される思惑、次の主な行動を教えてください」
「毘沙門様は私よりは大きいですが、巨体というほどでもありません。
思惑や行動について、私は仔細存じ上げませんが……毘沙門様はある方の思惑を引き継いで行動なさっています」
 毘沙門様、の一点張りで、これ以上百足から詳細を聞くのは難しそうだ。大地が話題を変え、
「その術はどうやって身に付けた」
 と聞くと、動じる様子もなく百足は答える。
「それはあなたたちの方が詳しいのでは? なにしろこの力は……。
 いえ、やはりこれに答えるのはやめましょう。答えたくないからではありませんよ? ちょっとしたいたずら心です。
 なにしろ答えはとうの昔、“お遊戯”の時にお伝えしているのですから」

 尋問を行っていた面々は、意味深な回答に顔を見合わせる。重ねて想那が問う。
「妖魔へと変えている手段は何でしょうか。それは応用が効きますか?」
「穢れを用いてですか。応用、という点ではそうですね、妖魔をより精密に操ることができるようにできました」
「既に新たな手段を作られていますか?」
 その問いに百足が答えようとした、次の瞬間――。



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