三千界のアバター

≪ワールド・ピース≫穢夷の鬼神 序

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≪ワールド・ピース≫穢夷の鬼神 序
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【穢れた動物たち】


 穢夷へやってきた特異者たち。調査はもちろんだが、穢れによって妖魔となってしまった動物たちがいる。しかも、その動物たちは普通の動物ではなく、北関の人たちが妖魔と戦うための相棒。そして、知性や霊力を持ち合わせていた。
 そんな北関の人々から「清獣」と呼ばれる動物たちの浄化を集落を散策しつつ、そうではなくそれが目的な者たちもいた。
 焔生 たまは気紛れに北関の集落を回りつつ自身の知見を広めようとしていた。
「――何もないのはやはり面白くはないですね」
 いくつか集落を回ってみたものの、こちらを怪しんでいる素振りはあるが特に何かをしてこようというつもりはないようだ。そして、話に聞いていた妖魔とは――。
「あれ……ですかね」
 集落から少しだけ離れた林の中。そこで妖魔を見付けた彼女はゆっくりと歩きながら近づいていく。そして、妖魔はこちらを見付けると戦闘態勢に入った。
「遊びたいのなら、遊んであげます」
 そう言ってたまも構えるとお互いに攻防を繰り広げていく。
 やはり知識や霊力が備わっていた清獣と呼ばれる動物だった存在だからか、弱い妖魔のようにすぐに片が付かない。好敵手を探していた彼女は、動物相手でもここまでの戦いができることに楽しさを感じ始めていた。
「少しだけ本気を出してあげます」
 そう言うと妖魔使役を使って、目の前にいる妖魔を使役しようと試みる。通常の妖魔であればこれで使役できる可能性があるのだが――やはり、それはできないようだ。
「清獣としての力が残っているのか、それとも……。それでも抗う力があるのなら、“鬼”に浄化されてください」
 ここまでの戦いで妖魔にはダメージを与え弱ってきていた。この状態であれば狐火で浄化することが可能だろう。そして、気絶させるまえに至った、たまは狐火で浄化をさせる。すると、元の姿に戻っていく動物の姿が見えた。それを見届けるとたまはすぐに次の場所へと歩き始める。

 動物を浄化するために動き回る3人組がいた。その先頭に立ち大和の土地鑑を持った雪神 白羽が案内するような形で動き回る。
 妖魔が村を襲うことも考えられるが、やはり潜んでいるのであれば森の中や林の中だろう。村などが襲われたという情報が入れば急行したいところではあるが、現在ではそういった話は聞いていない。
「む……」
「あそこにいるな」
 白羽と同じく妖魔の姿に気付いた草薙 大和がそう呟いた。
 相手の数はこの距離では把握しきれないが、目視で1匹以上は確実にいるだろう。大和の声で草薙 コロナも身構えているが、すぐに突っ込むようなことはしない。しっかりと、3人で呼吸を合わせてことに当たる必要がある。
 大和は言葉を口から出さずコロナへと手の動きだけで合図を送る。まずは2人が動物たちの動きを止め、その後に巫女である白羽が動物たちを浄化させる作戦だ。
 可能であれば気付かれないまま近付きたいところだが、2人は隠密行動ができるわけではない。それに加えて妖魔ではあるが清獣という知力や霊力が備わっている動物。近づけばすぐに気付かれてしまう。
 そこで大和が出した合図は1つ。気付かれたら一気に間合いを詰めることだ。
「野生の勘っていうのは流石だな」
 そう言って納刀している状態から通常の抜き付けとは違う動きで抜刀術を行う。そこから放たれるのは衝撃波であり、妖魔へ向かって一直線に飛んでいく。
 しかし、こちらに気付いていた妖魔はその衝撃波を回避。そして、別の妖魔がこちらへと走ってくる様子が見て取れた。
「やっぱり1匹だけじゃなかったってことですね!」
 大和の裂空に合わせて虎走りを使って前傾姿勢で3人が目視できた妖魔へと走っていたので、通常であれば目標を変えることは難しい。しかし、敵はこちらへと真っ直ぐに来ることで目的を変えずにその妖魔へと攻撃することが可能だ。
 ウサギのような姿をしている妖魔はそのままコロナへと飛び掛かろうとしてくるが、それを先読みして中腰からスライディングをする形で回避。脚斬を使って天照での一撃で、機動力を削ごうと試みる。
 通常の動物でこれほど殺傷能力がある攻撃をすれば殺してしまう可能性が出てくる。しかし、この妖魔たちは知性を持ち霊力を持っていた動物。本気で戦わなければ殺さずとも戦闘不能にするのは難しいだろう。
 大和の裂空による牽制とコロナの複数を相手にする虎走りでの接近と一撃で、あれから1体増え合計3体を相手にしていた。それによってコロナだけでは対処が難しくなってきた為、大和も前へ出て動物たちを相手にする。
 2人が前に出てくれているお陰で白羽も神懸りを使える時間ができていた。
「大和殿、ころな殿!」
 白羽の言葉に反応した2人は敵へと攻撃方法を変えていく。
 ここまでで敵の機動力を削ぎダメージを与えることで弱らせることに成功しており、ここからは妖魔を戦闘不能にしていく攻撃が必要だ。それは峰打ち。峰打ちを頭へすることによって気絶をさせていく。
 上手く1匹目を気絶させることに成功すると、白羽は構えていた鹿児弓から破魔の矢を放った。浄化の力を宿した矢は気絶させられた妖魔へと撃ちこまれると、動物が浄化していくのが分かる。
 このまま大和とコロナは残り2匹を相手にして、こちらも気絶に成功させる。白羽の神懸りの効果が切れる前に動物たちの浄化が終わった。
 やはりこれだけの戦いを続けていくのは難しく、1度休憩してから次へと進むことにする3人。しかし、妖魔になってしまった清獣はまだまだいる。これからも3人は多くの動物を浄化していくことになるだろう。

 穢夷を回りながら自身の土地鑑を掴みながら集落へとたどり着いたのは遠近 千羽矢だった。ここまででもう1つの集落に寄ってはいたのだが、やはりよそ者に良い顔はしてもらえず会話という会話をすることはなかった。
 ここで1度集落を調べて何かがないかを聞きたいところではあるが、ここでもよそ者ということで会話ができるとは思えない。しかし、その時だった。妖魔が人を襲っているという言葉を聞いて千羽矢は急いでそこへと向かう。
「……離れててくれ。俺が、相手を。する」
 そう言って村を襲っている妖魔を見る。相手は空を飛ぶ鷹のような姿をしており、それを見ながら心配そうな表情をしている男性がいた。きっとその妖魔は元々その男性の清獣だったのだろう。
 殺すことなく浄化をしなければいけないのだが、まずは動きを止める必要がある。弓であるので飛ぶ相手でも攻撃をすることができるが、矢を直撃させて怪我をさせることだけは避けたい。
「……あれは。……君の、相棒か?」
「そうだ……あんな姿に……」
 やはり元々はこの男性の相棒だったようだ。すぐに千羽矢は観察を行って動きを確認しつつ、雷神の怒りを使って動きを止めようと試みる。
 観察眼を用いて動きを見て雷を落とす。雷と言っても雷神の怒りは殺傷能力はない。当てることで動きを止め、一気に距離を詰めることで神威で浄化させることができるだろう。
 急所を外しつつ矢で誘導。そして、こちらへと滑空して攻撃してくるところを見極めて敵を感電させる。それによって飛べなくなった妖魔へと近付き浄化させると、男性もまたこちらへと駆け寄ってくる。
「……教えてくれ。……一体。何が、あったのか」
 妖魔を浄化したことで信頼を得たのか男性は知っていることを話してくれた。
 動物を浄化しようと村の人たちも懸命に戦っていたようだが、こうして千羽矢が来るまでは苦戦をしていたようだ。それに加え他の集落では襲われた人々もまた正気を失っているとのこと。
 黒幕を見付けることは難しいかもしれないが、そういった人たちを助けることはできるかもしれない。そう考えた千羽矢は礼を言うとまた別の集落がないかを聞くとそちらへと向かうのだった。

 元々相棒だった清獣が妖魔になってしまったことで飼い主や別の人々を襲うようになってしまう。どうにか自分たちで浄化を試みるが、普通の動物たちとは違ったものを相手にするのは非常に難しい。
 そんな場所へやってきていた御霊 史華もまた助けるために戦っていた。
 ここまでの戦いで愛の言霊を使うことで浄化ができないかを試みようとしていたが、なかなか難しい。同じく前衛として戦ってくれているウリエッタ・オルトワートレイン・クリスティと一緒に動物の鎮静化をまずは狙うことにした。
「殺さないようにしながら気絶をさせる、というのも難しいわね」
「本気で戦わなければこちらが負けるから、上手くその辺はやっていかないと」
 後方から集落の人たちが援護をしてくれている。
 最初は2人に対して複雑そうな表情をしていたが、この様に一緒に戦ってくれていることでよそ者である2人を信用し始めてくれているのかもしれない。
 史華は煽華繚乱を使って突風を起こすと、空中を飛び回る鳥へと向けて上手く飛べないようにしていく。そして、それに合わせるようにウリエッタは地上からやってくるクマの姿をしている妖魔を相手にしていく。
 婆娑羅である史華は踊るように。そして、戦神であるウリエッタは力強く戦っていく。
 動きを止めた動物へと向けて愛の言霊を使用してみる史華。穢れに対して強い耐性を持たせることで魔が差すことを防ぐものだが――。
「やっぱり浄化は出来ないみたいね」
 耐性を持たせるだけであって浄化する力はないので、上手く行かない様子。そして、ウリエッタは彼女が浄化をしようとしていた動物と相手にしていたクマが入り込むようにして森羅万象の結界を張る。
 森羅万象は穢れから生まれた妖魔などを存在できなくする結界なのだが――。
「浄化、とはいかない……わね」
 動きを止めることはできるが、やはり浄化とは至らない。こうなると神威を使うことでの浄化を使うしかない、
 史華は愛の言霊を戦っている人たちへ向けることで襲われたことで正気を無くさないようにさせつつ、ウリエッタは動きを止めることができた妖魔たちを浄化させる方向へと転換。
 しかし、ここで妖魔の数が増えることとなる。それを見た2人はどうしたものかと一瞬考えたときだった。
「目をつぶれ!」
 その声からしばらくすると突然強い光と音が鳴る。動物はこういったものが苦手であったりするが、清獣だった妖魔に効果があるのかは分からないが、怯ませるには十分だった。
 その声の主は如月 歩。彼女もまた動物を浄化させるために動いていたのだが、戦闘している様子を見て加勢に入った。
 キツネや鹿といった妖魔が増えたが、歩がそちらを担当することで2人の負担を今まで通りとし、ウリエッタの神威が使える隙を作っていく。
 史華も突風を使って援護をし、歩は近くにあった柵へと掛けていくとそれを使って雪桜を振りかぶる。
「悪いが大人しくしてもらおう」
 逆落としでの一撃を食らわせようとするが、鹿やキツネの素早さによって回避させられてしまう。やはり、自分たちのスピードを把握しており、歩の攻撃を回避できると分かっていたのだろう。しかし、彼女は1人で戦っているわけではない。村の人たちや史華とウリエッタもいる。
 動きを止めるのであればと数が多いこの状況で使うしかない。そう考えた歩は雪桜を神器化させると、冷気の力を持ったその刀を完全開放。間合いを詰めて攻撃――ではなく、触れることを目的とした動きをする。
 神器化したことで刀が触れた場所を凍りつかせる能力を持っているので、短い時間動きを鈍らせることが可能だろう。しかし、冷気の力を持っていることに妖魔たちも気付き防御ではなく、回避をメインにしてくるだろう。
「――そのためのこれだ」
 攻撃モーションをして回避されるのは分かっているので、左手に浄化符を持ちそれを投げつける。そして、それを爆発させることによって浄化を狙う作戦だ。
 爆発と言っても炎が上がるものではなく、浄化の力が拡散するもの。直撃すれば妖魔を浄化させることが可能だ。
 3人の働きによって集落に襲い掛かってきた妖魔たちの浄化に成功。動物たちは気絶させることとなってしまったが、元通りに戻すことができた。
 終わったと史華、ウリエッタ、歩は安心すると、村人が近寄ってきてお礼を言ってくる。中には妖魔の中に相棒だった動物がいたという者も。
 そういった人たちを助けるためにも皆は動物たちを浄化させようと戦い続ける。
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