三千界のアバター

剣の頂に立つ者

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剣の頂に立つ者
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【1】右回りで攻略する―1

 千国の小世界『巌流島』。
 その奥地に居る宮本武蔵と戦う為に、挑戦者達は無数に設置された罠の突破を図る。

 右回りのルートには海岸線が続いており、足場の悪い岩山や砂浜が広がっている。

 九曜 すばるは戦場の足法を使い、悪路も気にせず進む。
 砂浜を歩いていると、ふいに足元に違和感を感じた。
 罠を踏み抜いたと理解し、回避しようとするも時既に遅い。足元の砂が崩れ、すばるは宙へ放り出される。
 底には無数の刀が逆さに突き立てられ、落とし穴にかかった者の命を奪おうと刃を煌かせていた。
 すばるは落下し始めるとすぐに持っていた剣を突き出す。剣は穴の側面に深く突き刺さり、すばるは剣にぶら下がる形となる。
 落下の止まったすばるは足元へ目を向ける。穴の底でこちらに刃を向けている刀はどれも鋭く、もし落ちれば怪我では済まないだろう。
「あれに刺さるのだけは、何が何でも回避しないとな……」
 二本の剣を砂壁に突き刺しつつ、すばるは穴の上まで上りきる。
 再び歩き始めるが、その後も何度か落とし穴を踏み抜いてしまう。
 先程と同じように対処し、底まで落下するのを防ぐ。
 しかし数度目に嵌まった落とし穴は底が浅く、剣を突き立てる間がなかった。咄嗟に【レイス】シュラの4腕で底の刃を掴む。
「ぐうっ……!」
 刃を掴んで留まった事で、身体を刀が突き抜ける事態は防ぐことが出来た。しかし、代わりに刃を掴んだ手が切り裂かれ大量に出血している。
 痛みを堪えながら、すばるはどうにか穴から這い上がる。
 しかし手に大怪我を負った状態ではこの先、罠の対処も剣豪との戦いも不可能だ。すばるは島の奥へ向かうのを諦め、帰還する。


「む……!」
 リーゼロッテ・ベルンハルトは身の危険を感じ、後方へ飛び退く。
 直後、どこからか飛来した刀がリーゼロッテの目前を通り過ぎていった。
「まったく、どこもかしこも罠だらけじゃのう」
 こういった罠に遭遇したのは一度や二度ではない。所によっては足の踏み場もないほどに、罠の起点となる石や仕掛けが設置されていた。
 罠を探すリーゼロッテの後を黒瀬 心美リシア・ハーヴィがついていく。
「リズ、大丈夫?」
「大丈夫じゃ。じゃが、こうも多いと体力が持たんな……」
 剣豪と戦いたい二人を送り届けるため、危機回避能力を持つリーゼロッテが先行して罠の発見と対処を担当していた。
 本能的に、嫌な予感がする場所は避けて通っているが、それでも全ての罠を見つけるまでは到らない。
 巧妙に隠された起点に時折触れてしまい、罠が発動する。
「うぉぅ!?」
 岩山の隙間から刀が飛び出してきた。咄嗟に跳び退って避けたものの、行く手を刃に遮られる事になった。
 今いる場所は岩山と岩山の間。道は細く、刃を迂回する事は不可能だ。
 リーゼロッテは刃の方を向くと、口から氣の塊を吐き出した。龍罰咆哮。一時的に武装をナマクラ化させる技だ。
 気に触れた刃が全てナマクラと化す。
「道作りは任せろ」
 リシアは旋風の太刀でナマクラ化した刃物を跳ね飛ばしながら進む。
「よし、これで……」
 だが、その行動が別の罠を起動させていた。高速で飛来する刀がリシアに迫る。
 即座に心美が間に割って入り、虹鋼の騎士剣で受け流しの構えを取る。飛んできた刀は騎士剣の刀身に弾かれ、離れた地面に落ちた。
「助かった、心美」
「気をつけて。この島、想像していたよりも避け辛い罠が多いみたいだ」
 三人は警戒を強め、先へ進む。
「ぐっ、またか!」
 砂利道を歩いていると、急に地面から刀が突き出してきた。リーゼロッテは咄嗟に身を捻るが、その脇を刃が掠める。
「リズ!!」
 怪我をしたリーゼロッテに心美が駆け寄ろうとした瞬間。ブンと風を切る音と共に、横合いから刀が飛来する。
 しかも、今回は複数の刀が両側から迫っていた。
 リーゼロッテは龍罰咆哮で片側の飛来物をナマクラ化し、切れ味をなくさせる。
 反対側は心美が受け流しを試みる。だが高速で飛来する刀複数を、剣一本でいなしきるのは不可能だった。
「っ……!」
 頭や心臓は庇ったが、それ以外……腕や足、胴体に向かう刃は素通しとなり、心美は深手を負う。
「心美、しっかりするのじゃ!!」
 リーゼロッテが倒れた心美を助けおこす。彼女もまた傷を負っていたが、痛みを我慢して心美を助けるために行動する。
 利宇古宇を取り出して心美に食べさせるリーゼロッテ。
 幸い部位の欠損は無かった。徐々に心美の傷は癒えていき、すぐに全快する。
「間に合ったか……まったく、心配をかけるでない」
「ゴメン、助かったよ。ありがと、リズ」
 地面から突き出た刃をリーゼロッテがナマクラ化し、それをリシアが慎重に排除して先へ進む。
 その先に広がっていたのは広い砂浜だった。
 砂浜では先程までと同様、地面から刀が飛び出してくる罠に加え、到るところに落とし穴が隠されていた。
 目視ではどこに罠があるか分からず、リーゼロッテは常に身の危険を感じていた。龍罰咆哮も砂の中に隠れた刃には届かない。
「ぐぅっ……!」
 やがてリーゼロッテは落とし穴にかかってしまい、底に仕掛けられた刀に身体を切り刻まれた。
 心美とリシアが必死に引っ張り上げ、重傷のリーゼロッテを二人で抱えながら撤退する。
 
 
 エステル・ノーディン・露木は岩山を歩いていた。
 開けた場所は通らず、なるべく岩と岩の間など道とは呼べないような細い箇所を通っていく。
 こうする事で、落とし穴含む大掛かりな罠が設置されている箇所を避けていた。
「おっと……危ない」
 足元に転がっている小石を踏みそうになり、慌てて足を動かす。
 エステルは念の為、罠の起点となりそうな小さな石や気になる箇所は全て避け、何も無い場所だけを踏みしめながら歩いていた。
 そうして暫く歩いていると、やがて岩山地帯を過ぎ目の前が開ける。
 そこには広い砂浜が広がっていた。
「他に道は無いようですね……仕方ありません、手伝って貰いましょうか」
 エステルは亡霊兵を召喚する。そして、召喚した亡霊兵達を雷同の踏み台にして高く跳躍した。
 そうして、一人では決して届かない距離を一気に飛び越える。
 だが砂浜は広く、その端から端までは届かなかった。
 砂浜に着地するエステル。その足元が崩れ、地面が大きく口を開く。
「しまった……!」
 落とし穴に落ちたエステルは底に並ぶ刀に身体を切り刻まれた。
 その後、彼女は他の挑戦者に救助され、重傷を負っていたものの命は助かった。
 
 
「どの罠も刀、刀、刀……剣豪宮本武蔵らしい並々ならぬ拘りが見受けられるね~」
 発動済みの罠を確認し、愚者 行進はそう呟いた。
 前方で刃が弾かれる音。愚者はそちらへ眼を向ける。
 他の挑戦者達が罠を発動させたらしく、その対処に当たっていた。
 彼らが無事先へ進むと、愚者はその後を追うように、まったく同じルートを通っていく。
 これで一度きりの罠は気にせずに済み、何度も発動する罠だとしても先ほどの挑戦者達の対処法を真似してうまく回避できた。
 しかし前を行く挑戦者が全ての罠を発動させていた訳ではなかった。
 愚者は岩山の脇を通り抜ける際、つま先で小さな石を蹴り転がす。それが引き金となり、岩山の上から刀が降ってきた。
 刀を避ける為に愚者は駆ける。しかし刀の落下地点を過ぎた所に、また別の罠が仕掛けられていた。
「痛っ……」
 地面から突き出した刀が愚者のわき腹を貫く。
 後ずさり、腹から刀を抜く。すぐに傷口から血が溢れ出した。両手で傷口を押さえるが大した効果は無く、赤い染みが段々と服に広がっていく。
 無視して先へ進める程傷は浅くない。愚者は武蔵への挑戦を断念し、治療の為に帰還する。
 
 
「なあ、この辺の地面に空洞あったりせんか?」
 アルヤ モドキは岩山に生えた草花に声を掛けていた。
 問いかけに対し、草花から返ってきた答えは「いいえ」。
「よっし、進んでも大丈夫そうやな」
 地面に空洞が無いという事はつまり、この辺りに落とし穴は設置されていないという事。
 勿論、それ以外の罠がある可能性はあるが、それは他の仲間の担当だ。
 周囲を警戒する灰崎 聖はいち早く罠の発動を察知した。
「シュナ、左!」
 岩山の合間から数本の刀が飛んでくる。
 シュナトゥ・ヴェルセリオスはヴェンティスを使った。彼女を中心とした広範囲に突風が巻き起こり、飛んできた刀が風で吹き飛ばされる。
 先へ進むと、似たような罠が幾つも仕掛けられていた。
 ヴェンティスで刀を吹き飛ばすシュナトゥ。しかし今度の罠は連続で刀が飛んできた。突風が収まった後、別の方角から再び刀が飛来する。
 シュナトゥは静寂のカツガを振るう。その刃にはここに来るまでに音を喰わせてあった。
 音の塊が衝撃波となって飛び、飛んできていた刀を弾き飛ばす。
「まだだ」
 後列にいたアルヤァーガ・アベリアが刀を抜く。
 神速の抜き打ちにより、刃から空気の刃が放たれる。それは空から落ちてくる刀を纏めて吹き飛ばした。
「左右から飛来する刀に気を取られたところに、高く打ち上げられた刀が落下してくる……成程、良く考えられているな」
 アルヤァーガは吹き飛ばした刀を観察する。幾つかは地面に転がっているが、残りはしっかりと土に突き刺さっていた。
 どの刃もしっかりと研がれているようで、軽く触れただけでも斬れそうな鋭さがある。
「宮本武蔵……どうやら本気のようだな。
 恐らく、この罠郡は選別の為の道具。自分が戦うに値する者かどうか、挑戦者の実力を測っているのだろう。
 相応の実力が無い者は最悪、ここで命を落とす事もあるだろうな」
「だったら、わたし達も全力で立ち向かわないとね。武蔵さんに認めて貰うために!」
 テスラ・プレンティスはそう言ってぐっと拳を握る。
 今回、武蔵の下へ辿り着けた時は彼女がその相手をする事になっていた。他の四人は彼女を武蔵の所へ送り届けるのが役目だ。
 モドキが植物の声を聞きながら先頭を行き、最後尾には聖がつく。
 今この島には武蔵以外にも剣豪が来ているという。故に、襲撃を受ける可能性はあった。聖は仲間の後方から強襲者を警戒する。
 が、今もこれまでも誰かが襲ってくる事は無かった。他の挑戦者達とは距離が開いているようで、近くに人の気配はまったく感じられない。
 そうして進んでいると、ふいに彼女らの視界が開ける。
「これはあかんな……」
 足を止めるモドキ。その前方には砂浜が広がっていた。
 広い砂浜には草一本生えておらず、植物の声を聞く事はできない。これでは落とし穴の有無を確認できなかった。
 目視で見破れないかと目を凝らしてみるが、多少砂利や石が転がっている以外、目立つものは無い。
「とりあえず石ころは避けていった方が良さそうやな。ここに来るまでにあったように、石踏んだ途端刀が飛んできたりするやろ、多分」
 無論、それだけでは無いだろう。恐らくは至る所に落とし穴やその他の罠が仕掛けられているはずだ。
 モドキは足元を警戒しながら、慎重に進む。
 だが、場所も内容も分からないのでは、いくら警戒していても回避しきる事は出来なかった。
 モドキが踏んだ地面が急に沈み込む。まずい、と思った時には既に遅く、モドキは砂と共に穴の底へ落下する。
「アドキ!!」
 アルヤァーガが駆け寄り、穴の底を覗き込む。
「ぐ……っ」
 底には刀が突きたてられており、モドキは全身を刃で切り裂かれていた。何本か、身体を貫いている物もある。
 元素結界が守ってくれたようだが、それでもかなりの重傷だ。
 引き上げようにも、深さがある為このままでは手が届かない。底のモドキに砂がかからない様気をつけながら側面の砂を掘り、アルヤァーガ達は協力してモドキを引き上げる。
 すぐにシュナトゥがモドキを抱き起こし、アルトルークの霊水を口に含ませる。
「いや~助かったわ。ありがとな、シュナ」
「ん……治って、よかった」
「かなーり痛かったけどな! まあ、命が助かっただけマシってもんやね」
 しかし、薬はもう無い。
 今まで以上に慎重に足を進めるが、やはり落とし穴への対処法が無い為進むのは困難だった。
「うわっ!?」
 急に地面から刀が飛び出してきた。飛び退いて避けたモドキだったが、避けた先に落とし穴があり底に落ちてしまう。
 引き上げたモドキを安全な場所まで運び、残りの四人は先へ進む。
 だが、その後も次々と脱落者が出た。
「しまっ……!」
 アルヤァーガが落とし穴を踏み、咄嗟に縁に掴まるが砂で出来ている壁は容易く崩れ、底に落ちたアルヤァーガは大怪我を負う。
「あっ……」
「シュナ!」
 アルヤァーガを引き上げた後、今度はシュナトゥが罠にかかった。落ちそうになる彼女の腕を聖が掴むが、足元の砂が崩れ結局二人とも穴に落ちてしまう。
 唯一、BSUで低空飛行が可能なテスラは落とし穴に落ちることなく、仲間達よりも先を避けれず怪我を負ってしまう。
 傷つきながらも先へ進むが、すぐに飛んできた刀が身体に突き刺さって重傷を負う。動けなくなった彼女はその後、他の挑戦者に救助され島から脱出した。
 
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