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≪RWO≫氷の魔宮探索

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≪RWO≫氷の魔宮探索
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難関を超えるために


 負傷者に声をかけてまわっているのはディミトリだけではなかった。
「ここは俺たちのクランの知名度UPのためにも頑張るか」
 このエリアの参加者に向けてオープンチャットで大々的に呼びかけている者たちがいた。
『我々【デザイアシンジケート】は、情報・素材・癒し・宿泊所、ありとあらゆる物を提供いたします』

 仲間とクラン【デザイアシンジケート】を立ち上げた大和はダメージを受けた人達を守りながらメンバーが作ったベースキャンプまでご案内する。
 クラフターのしえるんがオートマッピングを使い、出来る限り見晴らしのよく広い平地の場所を探してその場所にテントの宿を設営した。
 ディミトリとの違いはワールドホライゾンの特異者でもそうでなくても関係なく救助することだった。そして規模が大きく安全性に十分配慮されていることだった。
 辻ヒールならぬ辻タンクと自称する大和が負傷者を保護して自分たちのベースキャンプまで護衛し、その間も周辺に敵の接近がないか見張っている。
 もう一人のタンクとして護衛をするアリスが情報を集め仲間に供給する。
 常に誰かを護り癒す為戦ってきたアリスにとって例えゲームの中であってもその信条は曲げずに貫く意思だった。
(情報は……戦場において……戦う人達の命を左右します。
クラン【デザイアシンジーケート】に所属し……情報を集め供給する。
これが私の……この世界での……護る戦いですっ!)
 アリスはベースキャンプを利用する人と交渉して必要な情報を得て、それを周囲にも知らせる。今回は特に最優先でアイスパンサーの目撃情報を集めていた。
 どこで遭遇したかとか、襲撃の時の様子を聞き取ってまとめることで狩りへの成功度を高めることに利用できた。
 また荒野の宿屋に同行してもらい、テントの宿を提供してもらっていた。宿屋にはアイスパンサーへの警戒でトラップクラフトでテントの周囲を凍った柱などで囲ってもらった。
 そのアリスの手伝いをするのがリリーと名乗るクラフターで、のんびりとした口調で周囲の空気を和ませながら情報収集の手伝いをする。
 リリーはソードスミスとして武器の修繕を行い、その対価を受け取るようにした。
「こっちも頼むよ。早くしてくれ!」
 ふいに、横柄な態度で壊れかけた武器の弓を押し付けるようにリリーに渡す男がいた。
「RWOでは見かけないクランだが、腕は確かなんだろうなあ?」
 男は値踏みするような目つきでリリーを眺める。
 いろんな世界からプレイヤーが集まって来ているので中には信用できないタイプの人もいるかもしれない。
 アリスが不安そうな視線をリリーに向ける。だが、リリーは「心配ない」といった目つきでアリスに応えた。
「私達……【デザイアシンジケート】は……信じあえる市場を目指し……詐欺の撲滅にも……尽力したいと思っているよー?」
 リリーは相手から目を逸らさずそう伝えると、バタメントで武器の修復をする。
 そうして修繕した武器を渡すと、男は「ふんっ」と手に持って眺め、いろいろと構え直す。
 リリーも緊張した面持ちで男の反応を見る。
「助かったぜ。これでもうひと狩り行ける」
 男は満足してきちんと代金を支払う。それと、武器が壊れた時のアイスパンサーとの戦いでの動きの話も詳しく話していってくれた。
 ルイーザが安心したように息を吐く。
「あの人、すごく真剣に狩りのことを考えているだけな感じだったから、怖くなかったよ」
 リリーはコールドリーディングである程度の相手の人なりを感じ取っていたのだ。

 そして、リリーとは逆の意味で場を和ませているのはヴィオレルと名乗るアタッカーだった。
「ふははは、我が闇の力が最も働きやすい世界と言われるわね!!」
 中二的にキャッチーな物言いでそれなりに聞く者の注意を引きつけた。
『此処は憩いの場、デザイアシンジケートのベースキャンプよ!
氷の猛獣<アイスパンサー>を討伐せんとする者は集まるがいいわ!あなたの戦いに必要な物がきっとある!
安心なさい!此処には守護天使<タンク>も戦いの女神<アタッカー>も居る、戦力十分安全よ!』
 今の時点ではまだ仲間の間でチャットのシステムは整っていなかったが、全体チャットでの広い呼びかけはすることができた。
 ヴィオレルによって広報的な連絡が行えることを確認し、大和も大々的に宣伝する。
『今回の提供するのはベースキャンプと治療、そして癒し…こんな寒いステージだとゲームだとしても疲れると思い、当クランが誇る美少女達がクエストで疲れた皆様を癒しと共に治療して差し上げます。興味のある方は是非デザイアシンジゲートのベースキャンプをご利用くださいませ。』
「適度な緊張は良いですが……し過ぎはいけませんよ。
大丈夫……仲間を信じ……自信を持って臨めば……必ず勝てる相手です」
 それは時には商売の範疇を超えていたが、アリスの心使いは利用者にもう一度狩りに出る力を与えた。情報を得ると同時にアリスは利用者が求めるものについても聞き取り、今後の商売に役立てられるようにしていた。内容としてはやはり緊急時の治療体制や食事に関する要望が多かった。
 そしてもう一人、シュネーと名乗る胸の大きい癒し系お嬢様ヒーラーの存在だった。
『デザイアシンジケート」の癒し系として~シュネーがお客さんを身体も心もいっぱい癒すの~♪』
 シュネーが甘く囁くような声で全体チャットで宣伝した後、「……こ、こんな感じでいいのでしょうか……?」と顔を赤らめて自信なさげに大和たちを振り返る。
 大和もしえるんもぐっと親指を立てる。
 そうなるとシュネーも「頑張るの~♪」と【デザイアシンジケート】のメンバーとして初仕事を張り切る。
 怪我の手当てのヒールの時も手を握り、疲労している人には眠りの笛を奏でる。
 献身的な姿勢と「令嬢の嗜み」での接客は評判になり、軽い凍傷でも立ち寄るプレイヤーがいた。
 もちろん、中には冒険者としての意識が高い人や女性の冒険者は治療を申し出ても頑なに拒否する者もいた。
 そういう時は大和が【レイス】犬狼で生えている狼耳と尻尾をぴこぴこ振ってみせる。
「ベースキャンプで好きなだけモフモフさせてあげますよ」
 やはり中にはシュネーの気遣いを誤解したり、大和の耳と尻尾以外もモフモフしたがる危険な特異者もいないわけではなかったが、そういう場合は丁重にヴィオレルがブラックマジシャンとして洗礼し追い払っていた。
 大和の宣伝は話題性とともにかなり広くプレイヤーに伝えることができた。

 中継地点と言える場所で堅実に【デザイアシンジケート】が救護的な意味でも情報発信の場としてもキャンプを設営したことで氷獣の牙集めは効率を上げていった。
 それぞれが自分たちの狩りを終えてテントで休息を取る。
 初めての依頼であったためか、休息や回復の手段を準備した者が多く、氷の魔宮という難関を乗り越えることができたと言えた。

「今日はこれくらいかな……」
 スアマたちはテントに戻ると、アイスパンサーの加工に取り掛かる。
 その間ミカンは無意識に自分の尻尾をアナフィアともふもふして遊ぶ。
 それが済んでからスアマはアクアマリンを探しにいく。
「アクアマリンさーん」
 セレスティアで空を飛んでいたスアマが、自分たちが集めた牙を届ける。スアマのすぐ側にはアナフィアも付いてきていてアクアマリンにぺこりと頭を下げる。
「……アクアマリンさんの大ファンなんです! 役立ててください」
「また依頼に呼んでね!」
 率直なスアマたちの言葉にアクアマリンも嬉しそうに微笑む。
 クラン【豹狩り隊】のスレイも、今回の依頼に集まったプレイヤーたちと一通り挨拶を交わし、アクアマリンにも礼儀正しく言葉をかける。
「お疲れ様です。機会があればまたパーティーを組みましょう」
 スレイが示す感謝と慰労の気持ちは本心のものだった。厳しい依頼になればその気持ちは重要なものとなるだろう。
「ふふ、どうもありがとう^^」
 そうしてアクアマリンの元に集められた牙の数を確認し、20本を超えたところで一際大きく『ミッションクリアー!』のエフェクトが輝いたのだった。
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