三千界のアバター

≪RWO≫氷の魔宮探索

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クランで挑め


 臨時のクランを結成して氷のエリアを探索している【一期一会】は慎重に氷の魔宮の内部を進んでいた。
(支援には無限の可能性がある事を私は知っている……。
さぁ……早く速く……視野を広げ的確な高速支援で世界を越えます!)
 白亜のローブを纏ったヒーラーのフローレンスは、気分的にテンションが高まるのを抑えながら氷の壁に触れないよう進む。
 フローレンスがパーティーのやや後ろから視界を広く使い敵の位置を自身の立ち位置で前衛に伝える。
 コヱアはフォージで自分の武器を強化してから戦闘に挑む。
「ズィルバーシュヴェルトについては少し不安だけど、貰い物とか、試し切り、とか言っておけばたぶんだいじょぶだろう。たぶん」
 異世界の武器を持ち込むことに不安があったが、今回のイベントを通じていろいろ模索できれば良いと考えていた。
「ノウハウだとかできることだとかやっていいことだとかさっぱりわからん、が……。
他世界の力はあんま使わんほうがいいんだろう? その辺の手探りもせにゃならんなあ。ゲームの敵、ってのも按配わからんが要領は変わらんだろう」
 コヱアは思い切ってアイスパンサーの正面に出ると、その敵の目を見つめ、瞬刻の見切りでまずは相手の一撃を見る。
 ギリギリで躱したつもりだがそれでもパキパキとコヱアの胸元が凍りつき、痛みが走る。
 アイスパンサーは壁を蹴り反転して再度向かってくる。
 コヱアはズィルバーシュヴェルトを構え、サウザンドレイヴを放つ。
「落ち着いて、ヒールをかけるタイミングを間違えないようにしなくちゃ……!」
 フローレンスがファストレポートで鼓舞し、一瞬アイスパンサーの意識を自分に向けさせる。
 ホワイトスタッフのアームディフェンスで防御する。
(氷なら水……弱点は風……雷でしょうか……)
 琥珀のブレスレットで雷弾を放って迎撃する。
 ダメージを受けて動きが止まったアイスパンサーにコヱアが再度サウザンドレイヴを撃ち込んで完全に倒した。
 若干他の個体より強いモンスターと遭遇したという感触だった。
 仕留めた氷獣はコヱアともう一人のクラフター、メガネ少女のユウとで加工する。
 ユウはベースキャンプの用意もしていた。
 片裁鋏で倒した氷豹を解体、オーダーの『牙』を得る。
 肉をキャンプで簡易調理で調理する。
「うーん、体が温まってホッとする」
 初めてのゲーム世界の冒険は苦労する部分もあったが、概ねコヱア達は楽しんでいた。
「慌てることなく自分たちのペースで事をこなしていこう。あくまで、手札の確認が本命だし」


 他方 優らのクラン【デモブレイクズ】も互いにハンドサインで連絡を取り合い、周囲に警戒しながら迷路のような氷の魔宮の奥へと進んでいた。
 ゲートを使って肉体的に移動したので、従来と特に感覚的には変わらなかった。
 ただ、随所で「ゲームを操作する」感覚が必要になることもあり、そういったものに慣れていく必要があった。
 プレイガジェットVRはそういう部分では直感的に動作を行うのに便利だった。

「武器を見せて、ソードスミスの私が見立てて最適化してあげる」
 到着後すぐさまウリエッタ・オルトワートはフォージのスキルを使い仲間の武器を強化しておいた。
 アタッカーとしてフューラ・フローレンティアが音を立てない様にして索敵する。
「……」
 言葉なく、氷豹を見つけたフューラからクランメンバーにハンドサインで方向と数が伝えられる。
 まずはフューラがゴブリンハントでの遠距離攻撃を行う。
「おにさんこーちらっ……あ、豹だった」
 弓矢の連撃を受けてアイスパンサーがフューラ目掛けて駆けてくる。
「あとよろしくっ」
「とりえず、こっちに引き寄せる」
 それをシィルヴィアがタンクとしてガーナーライトで引き寄せる。ガードスタンスでまずは体当たりのようなアイスパンサーの最初の一撃を耐える。
 フューラが同行させたシールドマジシャンもタンクとしてアイスパンサーの狙いを分散させるよう立ち回る。
 優自身、アタッカーとしても調べたいことがあった。それは攻撃の仕方で与えるダメージに差が出るかどうかだった。
 まずは投擲術による冒険者の剣を投げつける。ただ小振りな剣とは言え相手は非常に動きが素早い。
 スキルと合わせてプレイガジェットVRで操作性を向上して命中させる。
 だが一度で与えられるダメージは限定的で、負傷しながらもアイスパンサーの動きは止まらなかった。
「こっちはどうだ?」
 ゼアルの火炎魔法を放つ。
 一度で大きなダメージにならないことは同じだが、剣を投げつけるよりは相手を術の範囲に捉えることが容易であり、それなりに大きな効果が得られるようだった。
 後はダメージを回復される前に攻撃を続けられるかどうかだろう。
 その時だった。
「なんかくるっ」
 シィルヴィアが騎士の誇りで新たなモンスターの接近を察知した。しかも複数だった。
「やっば沢山来てる!? めーでーめーでー!!」
 フューラが遠距離攻撃で威嚇し、それぞれの役割でアイスパンサーを一体ずつ仕留めていく。
 テントの宿とバタメントで仲間の消耗を回復させるのがウリエッタの役割だった。
 鳴はヒーラーとして相手の攻撃力を見て消耗具合から戦闘中仲間をヒールで回復させる。
「ラインは維持してくださいね……!」
 元より、優たちは出来る限り多くの氷獣の牙を集めるつもりだった。それだけ他の人の負担が軽くなるだろうし、「規定量より多く狩って、氷豹の牙で装備作るわよ!」というウリエッタのクラフターとしての目的もあった。
 鳴ができるだけ無駄のない効率がいいヒールのタイミングをかける意識と、ウリエッタが適度にテントの宿でバタメントで仲間の武器の点検を行い、クランとして着実に数を稼いでいった。


 ノナメもパートナー達とクラン【ノノノファミリー】を組んで氷豹の牙を集める。
「この世界で初めてのお仕事。しっかり成功させて最先のいいスタートを切りたいところですね」
 絆のエンブレムで互いに連携しやすくする。
 アイスパンサーを見つけたらまずはアノニメがゴブリンハントで攻撃しておびき寄せる。
「ゲームの世界とは他の世界とやっぱり違いがあるんだろうか? 実際やってみればわかるか……」
 すぐさまビーテの後方に下がり、ビーテがウッドシールドを叩いて挑発し騎士道十戒で名乗りをあげる。
「わたくしの名はビーテ・フィール。その牙に誇りがあるのなら、わたくしに示してご覧なさい!」
 当然ながらアイスパンサーが言葉に反応をするわけではないが、響き渡る声にビーテを攻撃目標として捉えて襲いかかってくる。
 その目前に突如エスカッションで盾を展開する。驚いたアイスパンサーが動きを一瞬止める。
 そこを更にウォールアタックでの体当たり攻撃で押し戻す。
 ビーテが敵を受け止めたのを見計らい、アノニメも後衛から遠距離攻撃で支援を担当する。
 ゴブリンハントの特性とファストアタックの組み合わせで連射で攻撃する。矢にはポイズンアローでの毒の付与もしてあり、矢を受けたアイスパンサーの動きが鈍る。
(うーん、やはり弓だとなかなか快感は得られないな。銃欲しい……。)
 さすがに後退しようとしたアイスパンサーに向けてノナメがゼアルの炎と紅玉の指輪から炎のダブル炎攻撃を撃ち込んで仕留めた。
 ただノナメ達の中にクラフターはいないので、牙を回収するための加工をしてくれる人を探す。それはバックアップの体制が整っているクラン【一期一会】が引き受けてくれた。
「ジョブらしいこととしてパンサーを使ってなんか作ってみるか……。
牙は必要素材だから確保するとして、皮や、壁を走る際に体を支えてた爪なんかも有用性がありそうなんだがな」
【一期一会】のコヱアはクラフターとしてじっくりアイスパンサーを観察する。
 そしてコヱア以上にクラフターとしていろいろと思考を巡らすのはユウだった。
「ところで……身体全体が冷たいこのモンスターの『皮』……何か秘密、というか……利用価値がありそうな気がするんですよね……。
この環境に耐えられるだけの防寒性か、あるいは体表まで冷やすだけの冷却能力とか。
調べられるだけの環境があれば、素材としての特性が分かるかもしれませんし、可能ならこの『皮』、同様の理由で『爪』も持って帰りましょう。
身体全体が冷たいなら、『血液』にも秘密がありそうな気がするけれど、流石に今回は血液採取の用意が無いかなぁ……?」
 ユウは大型の鳥類のダッチを連れてきていて、アイスパンサーを加工したものを運搬させた。

 アノニメはそれとなくアクアマリンの様子を伺うが、アクアマリンは移動中でも戦闘中でも積極的に周囲を声を掛け合い、厳しい場面やクリアできた場面で表情が大きく変わり、ムードメーカーとして振舞っていた。
(アクアマリンがマリナらしいけれど違うキャラに見える……。今度リアルでマリナに会ったときに話を聞いてみたいな。)


「いやあ、助かった。どうもありがとう」
「どういたしまして。……それにしても、クエストで賑わっていますねぇ。辻ヒーラーとしても、中々にやりがいのある現場です」
 安全な物陰でアイスパンサーとの戦いで負傷したアタッカーの男を、通りすがりのヒーラーが手当てをしていた。
 ディミトリと名乗ったヒーラーは顔の右半分を仮面で隠した白髪オールバックの青年だった。
 男は魔力も使い果たしていたのでディミトリはプレアーでの魔力回復もかける。男はいたく感謝した。
「お礼といってはなんだが……」
 男がこの世界での貨幣を取り出す。ディミトリは「いえ、お礼は……」と辞退しかけるが、男が強く申し出たのでディミトリも少し考えてそれを素直に受け取ることにする。
 アタッカーの男は仲間とはぐれた様子だったのですぐに探しに出ようとする。
 その時、ふとディミトリの傍に置かれている大鎌に目を向ける。
「それにしてもすごい武器だな。あんた、本当にヒーラーなのか?」
「いえ、これはほんのお守りのようなものです」
「そうか、まあ、また機会があったらお願いする」
 ディミトリはその武器——デスサイズを抱えて男と別れる。
 男は冒険者街でアリサ姫から今回の依頼を聞かされてやってきたプレイヤーで、ワールドホライゾンの特異者ではなかった。
 ディミトリはそういった者——ワールドホライゾンの特異者以外のプレイヤーのみを回復してまわっていた。
 ただ、自ら名乗るか特殊なアイテムを使わないかぎり特異者かどうかを厳密に見分けられるわけではないため、あくまでディミトリが「そう感じる者」ではあったが。
 理由は、ワールドホライゾンの者の味方と思われたくなかったから。
 一度自分のベースキャンプとして荒野の宿屋が用意してくれているに戻り休憩する。
 今回あえて他世界の魔器であるデスサイズを持ち歩いてアンチボディが発生するかどうか試していたのだ。
 ふと、視界の端を素早く動くものの気配があった。
(——なんだ、アイスパンサーか……)
 だが、その敵はアンチボディではなかったが、他の個体より明らかに大柄だった。
(ふむ、やはり他世界のものはそれなりに異物として強く反応するのでしょうか……)
 まだこの世界のシステムは不明なところが多い。
 デスサイズを振り回すが、アイスパンサーの動きが勝り、思わず手放して投げつけるかたちになった。
 アイスパンサーは鋭い牙と頑丈な顎でそのデスサイズを咥えて走り去っていった。
(ふう、一応は助かったのでしょうか……)
 少なくともこのエリアから人がいなくなるまで活動をするつもりでいた。
 どこかでアイスパンサーの咆哮と人の悲鳴が聞こえた。
「やれやれ……ヒーラーというのはどこに行っても忙しいものですねぇ」
 ディミトリは腰を上げると再び冷ややかな迷宮の奥へと出向いて行った。
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