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≪RWO≫氷の魔宮探索

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≪RWO≫氷の魔宮探索
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凍てつく回廊(1)


 氷の迷宮はその名の通り複雑に通路が入り組み、しかも白く色彩のない変化の乏しい景観であるため同じ場所に出る可能性もあった。
 順次到着する特異者とで手分けして探す必要があった。

 ミシェルはスレイとそれぞれのパートナーのロゼ、ユエと共にクラン【豹狩り隊】を組みこの地にやってきた。
 ユエはスレイのパートナーとなって初めての依頼とあってかなり張り切っていた。
「ゲームってテルスではやった事無かったけど凄く楽しいわ♪
今回はクエストで迷宮に潜るんでしょう?
危ない事はして欲しくないけどスレイちゃんやそのお友達のミシェルちゃん達の回復はワタシがやるから安心してね!」

 そのミシェルは24時間騎士団に強い興味を持っていた。
 レプリカントの出没と失踪者の増加というRWOの中で起きている事件についてミシェルもその件が強く気にかかっていた。
(24時間騎士団に所属していれば真相に近づくのは早いはず。
今回の依頼で活躍して、スレイさん達と一緒にスカウトしてもらえるよう認めてもらわなきゃね。)
 そのためにもできれば24時間騎士団に所属しているアクアマリンと共に行動したかった。

 すでにアクアマリンの周囲には何人もの特異者が同行を申し出ていた。
 誰もがRWOという不慣れな世界に関して少しでも多くの情報を得たいと考え、アクアマリンからいろいろ話を聞きたがっていた。
「俺も同行させてもらっていいだろうか」
 永見も生真面目そうな神妙な面持ちでアクアマリンに申し出る。
 救出に向かうメンバーの為にも確実な撃退が必要だと思い、アタッカーとして氷豹の牙の入手に向かうことにしたのだ。
 永見にとって今回の依頼はRWOのプレイヤーとしてだけではなく、ワールドホライゾンの特異者としても初めての経験となる。
 氷豹の牙から生産される武器に興味があったが、自分はクラフターではないため今回は諦めた。
 あわよくば手に入れられるならそうしたい処であるが、まだ今はとにかく確実に任務を遂行して報酬を得ることが先だった。
(俺にだってやれるはずなんだ……特異者なんだから……)

「もちろんです。皆さん、今回はよろしくお願いしますね」
 アクアマリンはそんなプレイヤー達に対しふわりとした笑顔で応える。特定のチームには入らず、必要な時に支援を行うようにしているようだった。
 だが、多くのプレイヤーの気配に反応したのか、氷の魔宮のエリアに足を踏み入れたプレイヤー達の前に早々に数体のアイスパンサーが現れる。
「アクアマリンさん、私の後ろへ!」
 全身鎧と大盾で身を固めた騎士の姿であるスレイがアクアマリンの護衛として出る。突撃してくるアイスパンサーをガードスタンスで防ぐ。
 そのままガーナーライトでアイスパンサーを引き付けつつアクアマリンから離れる。ロゼがネヴァームーブを使ってアイスパンサーの動きを鈍らせる。
 ミシェル自身は眼鏡をかけた女魔導師——ブラックマジシャンのアタッカーとして動く。
 アイスパンサーの襲撃に備えて予め魔力充填で十分威力を高め、ゼアルを放つ。
 火炎魔法を受けたアイスパンサーの体から白い水蒸気が爆発するように飛び散る。だが一撃では仕留められない。
 煙を上げながらも魔宮内を走り回るうちにアイスパンサーの傷が回復していくのがわかる。
 永見も必死に前に出る。ファストアタックでなんとかアイスパンサーの速度に攻撃を追いつかせようとする。
 ふいに別方向からアイスパンサーが襲いかかってくる。
「うわっ」
 驚いて攻撃を避けた永見は迷宮の壁に触れてしまう。瞬時にナイフで切られるような冷たさが触れた箇所に走った。
 すぐさまスレイが高熱の盾でのウォールアタックでアイスパンサーを薙ぎ払い、ミシェルが回復の時間を与えないようゼアルを浴びせる。
「私の炎を存分に味合わせてあげるわ!」
 アイスパンサーは危機を感じたのか手負いながらそこから離れて回復を行おうとする。それを逃さまいとミッシェルらが追う。

「追跡や戦闘に夢中になりすぎるのは危険よ」
 安全な場所でアクアマリンから手当てを受けて、ようやく永見も落ち着きを取り戻す。
「やっぱり氷のフィールドだけあって、周囲に気をつけないとですね」
「ふむふむ、なるほど」
 アクアマリンが永見にアドバイスするのをいつの間にか近くに接近していた京が頷いて聞いていて永見がぎょっとする。
 京が鮮やかな模様の晴れ着姿だったのと、動きを制限しないよう足と肩が大胆に露出しているデザインだったからだ。
 真面目な永見は視線のやり場に困ってそそくさと離れていった。
「とても素敵ですけど、寒くないんですか?」
 アクアマリンが尋ねると「こう見えて、温かいんですよ」と京は特異げに振袖を振る。
 京は特異者としてはかなりの経験を積んでいるが、このRWOというゲームの世界に対し操作や感覚において若干の不安を持っていた。
(壁に触れたり突っ込み過ぎないように気をつけましょう……)
 アイスパンサーは今はまだ数体ずつでしか姿を現していないが、もしも群れを呼ばれたりしたら厄介である。
 確実に見つけ次第倒す必要がある。
 ふいに氷の岩壁の上からアイスパンサーが飛びかかってきた。京が咄嗟に避けるが、着物の端を爪で引き裂かれていた。
「え、やだっ」
「もしかしたら、見慣れない華やかな着物の色に反応したのかもしれないですねっ」
 京とアクアマリンは必死で走って逃げる。
 アイスパンサーはぐるりと周囲を回ると助走をつけて飛びかかってきた。
 だが、アタッカーである京はくるりと向きを変えて双剣士として【姉妹剣「双花」】を構える。
「かかってきなさいーーっ!」
 ブロウクンポイントで急所を見極め、引きつけて無影突・改での連続攻撃を放つ。
 アイスパンサーの体が吹き飛んで氷の壁に叩きつけられると、一瞬体の周囲に光が放たれた後に青みがかっていた毛並みが白くなってしおれる。
「これが完全に倒したという印よ」
 アクアマリンが説明する。
 その後京と共にアクアマリンは他のプレイヤーの様子を見に行く。永見も後方を警戒しながら必死にその後についていった。


 アイスパンサーを追跡していたミシェルは弱点察知を使い倒すのに効果的な体の位置を探る。
 スレイもガーナーライトで自分にヘイトを集め、追い詰められたアイスパンサーの反撃に対しガードスタンスで構える。
「ナイトの誇りに懸けて私の後ろには通しません」
 狼牙棒でアイスパンサーが他の者への攻撃を仕掛けないよう威嚇する。
 ミシェルもマジックポーションで回復しながらのゼアルの攻撃を繰り返し、ようやく二体のアイスパンサーは動かなくなった。
 獲物を抱えて戻ると、アクアマリンが「すごいですね! さすがです!」と率直に感心する。
「失踪者の謎を解くには人手はいくらあっても足りないはずだわ。
協力が必要なときはいつでも言ってちょうだいね。必ず駆けつけるから」
 ミシェルが眼鏡の位置を指先で直してそう伝えると、「ありがとうございます!」とアクアマリンも笑顔を見せた。
 スレイはアクアマリンには戦闘時の連携の確認やアイスパンサーの情報等について尋ねたかったが、スレイより先にユエがアクアマリンに駆け寄りヒーラーとしてのコツをいろいろと尋ねる。
 アクアマリンは実践で感覚を掴み取っていくしかないことだけど、と前置きしながらもアドバイスをしてくれた。
「味方が倒れないように、常に味方の状態に気を配ること。回復する順番を間違えないこと」
「回復する順番……、ですね。ヒーラーとして、アクアマリンちゃんと被らないよう気をつけるね!」
 ただ、実際戦闘の最中で複数の味方の体力や負傷の度合いを見極めることはかなり難しかった。
 同じ攻撃でも受ける側の防御力によってダメージが違うので、激しい攻撃を受けたように見えても軽傷であったり、かすり傷だと思っていても意外と深刻だったりした。
 戦いに集中していて当人が気づいていない体調をヒーラーは正確に把握しなければならなかった。回復が手遅れになったらお終いなのだ。
 ミッシェル達はロゼが「こんなこともあろうかと。感謝してくださいませね?」と用意したテントで体力の回復を行うと新たな狩りへと向かった。
 現場でのヒールはユエがアクアマリンのアドバイスに従って仲間の体力を維持する。
 ロゼがクレッセントシックルできっちりと氷豹の牙を回収し、また怪我の回復や予備のマジックポーションを用意していることでミッシェルらは安心して狩りに専念することができた。


「ありゃ、クランの募集に出遅れちゃったねぇ……仕方ない、今回はソロで皆の討伐の補佐に回るとするかねぇ。
さて、ゲームは楽しまないと、だねぇ♪」
 健司はRWOにログインすると、すぐさまアクアマリンの姿を探してさりげなくその一行に紛れ込んだ。
 アイスパンサーの襲撃に備えてアクアマリンの周囲の人が多くなっていた。
「やぁやぁアクアマリンさん、お隣良いかねぇ?」
「はい、よろしくお願いします」
 健司がにこやかな笑顔で頭を下げると、アクアマリンもふわりとした笑顔で応える。
【黒猫の面影】の付け耳をつけているが種族は人間のままで、ヒートプルーフウェアを着込み【黒猫印のマフラー】をぐるぐる巻きにしている健司の姿に警戒心は持たなかったようだった。
「ちょうど良かった。クラフターなら仕留めたアイスパンサーを加工してください」
 京が永見に手伝ってもらって倒した2体目のアイスパンサーを抱えて戻ってきた。
「オッケー、後でこっちも手伝ってくれ」
 こういった役割を分担してモンスターを倒すのが主流のゲームではソロで動くことはやはりそれなりにリスクを伴う。
 迷宮の氷に覆われた通路は広い場所もあるが長い時間風雪によって作り出されたのだろうか、天井や壁から不規則に突き出した岩もあり、少しも気が抜けない。
「アクアマリンちゃん、ちょこっと先に行ってるね」
 健司は永見と京に手招きする感じで共に移動する。
 健司はアクアマリンが向かう先に一足先に移動し、周囲の岩の様子などを探る。
 ペグハンマーを使い、トラップクラフトの技術でごく簡単な落とし穴を数カ所つくる。
「さあて、うまいこと引っかかるかねえ」

「モンスターを追い込む役をやりましょうか?」
 京が申し出て、健司が頷く。
「そのほうがいいかねえ」
 すると、迷宮の奥から悲鳴がして白い煙を立ち上げながらアイスパンサーから必死で逃げているプレイヤーの姿があった。
「丁度良いおとりがいたねえ」
「ちょっとー! シッシッ! 来ないでええっ!」
 弥恵だった。
 ガーナーライトで敵を引きつけようとしたところ持ち前の巻き込まれ体質でまとまった群れを呼び込んでしまったようだった。
「おお、いいねえ。それでこそタンク」
 健司は面白そうに眺めていたが、真面目な表情に戻すと弥恵に走る方向を指示した。
「そこでジャンプして、横の岩まで行って!」
「え? こ、こうですか?」
 ナイトハルバードを地面に突き刺して身軽に舞うようにして高く岩場を飛び越える弥だった。
「おっしゃっ」
 健司はその弥恵を追っていたアイスパンサーの足元にネヴァームーブを投げつける。
 一時的に速度が落ちたアイスパンサーの数体の足元が崩れて隙間に落ち込んだ。

 ログイン早々に迷い込んでアイスパンサーに追いかけられて散々だった弥恵だったが、アクアマリンを見つけて駆け寄ってきた。
 息を切らしながらもアクアマリンにぺこりと頭を下げる。
「すみません、まり……コホン、アクアマリン様、ちょっと慣れるまでご一緒させてください。
い、一応、タンクとして基本的な事はしますし目立つのは得意ですから……」
「はい、十分目立ってました」
 アクアマリンは笑顔で応える。
 ゲームの世界で出会った相手は、たとえ現実の世界で知り合いだったとしてもそのことを出さないのがマナーであることは弥恵も理解している。
 ただ、相手が自分の背後——別の世界の姿を知っているかどうかは気になるところであり、一応聞いてみた。
「あの〜、パイ被り姫とか変な噂、伝わって無いですよね……ね?」
「……ぱい? なんのことかな?」
 アクアマリンがニコニコして首を傾げる。
「そ、それならいいです!」
 どうやらそういった心配は杞憂のようだった。もっとも、こういうゲームでは例え背後について知っていても知らないふりをするものではあるが。
「それよりも群れをなんとかしないと!」
 健司の罠は一時的にアイスパンサーの足止めをしただけですぐさま駆け上がって接近してきていた。
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