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アーキタイプ

【覚醒のアーキタイプ】文明の衝突トーナメント―決勝戦、その前に!―

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【覚醒のアーキタイプ】文明の衝突トーナメント―決勝戦、その前に!―
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3.吸憶器官を破壊せよ

 斉天大聖とその分身の足止めがされている間に風間 瑛心は生身での吸億器官の装置への到着を目指していた。
「……時間の制約があるからな……破壊に専念するしかない」
 幸い、食い止める側の特異者の働きが十分あり、瑛心に対し直接的な妨害を向けられることはなかった。
 それでも守護者との激しい戦闘が繰り広げられている中を無事に通り抜けるのは簡単ではない。ヘマタイトガーブを装着し、生身の身軽さとデッドオアアライブによる回避を生かして装置への移動を行う。
 ただ、装置に関して位置や形状、強度など不明な点が多く難航することが予測された。
 ウエストアンカーとドレッシングホイールを生かした高速移動で吸億器官の装置を捜索、到達を目指す。
「……あれか」
 瑛心の前に半分地面に埋まった巨大な卵のような形状の装置があった。地面や天井から大小の何重ものダクトが張り巡らされている。
 表面の数か所が連動して光り、脈打っているように見えた。太陽の一つのシステムを頑強な筐体で何重にも囲っているようだった。
 瑛心が最後のひと蹴りで高速移動の勢いそのままにガーディアンバスターを構え、一閃する。
 返す刀でディスラプトラッシュの連続斬撃を時間いっぱい叩き込み続ける。
「硬いな……」
 火花が散り、ダメージを受けた部分が高熱を帯びる。だが予測以上に強度があった。
「……頼む……壊れてくれ!」
 時間切れで“安全装置”で自動的に引き戻されるのであれば、それまでの間、力尽きるまでディスラプトラッシュを放つ。
 そこに内名もたどり着いた。やはり瑛心と同じように激しい戦闘の中をくぐり抜け、途中斉天大聖に見つかって追いかけられただけにすでに疲労が相当あった。
 瑛心と共に霊剣テスカトルを放つ。
「むん……この一瞬、この一閃に全てを……私の記憶、経験は限界も……光も……神すらも越えて見せます!」
 複数の剣が一気に吸億器官に向かうが、ほとんどが跳ね返される。
 まだ物理的な攻撃が足りないようだった。

 そんな中で白森 涼姫が文明の守護者トパースに搭乗し、最後尾について戦闘には参加せずジローと滅亡者から悟られ辛くした状態で装置に辿り着く。
 アクリャのウェンディ・スキピオによって隠形術で気配を断ち、もう一人のアクリャのミラ・ヴァンスによってミラージュアーマーの光学迷彩を施すことで極力目立たないように移動していた。
 ただ、涼姫の目的は装置の破壊ではなかった。
 若干うっとりした眼差しで目の前の巨大なシステムの筐体を見つめる。
「折角太陽と言うこの世界の中枢システムに乗り込めたんですし……滅びを超えた筈の文明が何故滅びデータと化したのか、気になってたので教えてもらいましょうか」
 早速データーベースへのアクセスを試す。モノリスハッキングとセキュリティブレイクを駆使し、大型のタブレット【green garden】で吸憶器官をハッキングし始めた。
(情報を吸いだし記録しているという事は記録装置への経路は開いているという事、成らばやりようによってはそこを経由してやりようによっては此方もアクセスして情報を吸い出す事も可能な筈)
「始めましょうか、滅びを超えた先に有る更なる滅び。それを超える為の手がかりを掴む為の悪足掻きを」
 ミラがハッキングワンド【FA1】でハッキングの手伝いを行い、二人がハッキングを開始する。その間ウェンディが守護者の操縦をする。
「まだなの?」
「待って、もう少し……!」
「来たわ!」
 アクセスに成功し情報が流れ込み始めたのを確認し、「八大文明」で検索する。それらしい情報や画像を見つけ、精査は後回しにして兎に角片っ端からデータをコピーし守護者の記憶機関や今回の為に増設した記録装置に移していく。
 ミラもナレッジスフィアへの記録を開始する。せっかく収集した情報を破壊された時の保険とするためだった。
 だがすぐにデータが途絶えた。涼姫は焦るがその先へのシステムの突破に時間がかかっていた。刻一刻と時間は過ぎていく。
 ふいに、ジローからの声が届く。
「無駄なことをしているなぁ……お前らが相手をしているのはアーキタイプのシステムそのものなんだぜ?」
 膨大な障壁を手元のタブレットのみで“吸億”するシステムに逆らって乗り越えることは不可能に近い。
「無意味な行為だと嗤うなら嗤いなさい。無駄な悪足掻きになるのは百も承知。
ですがね……見苦しくとも足掻いた先にしか明日は無く、だからこそ最後まで足掻かせてもらいましょうか!」
「ま、好きにするさ」
 ジローの言う通りまるで底なしの沼に沈むようにどこまで潜入しても目的のシステムにたどり着けない。その代わりなにか別の膨大なデータが送り込まれてきた。
【green garden】が処理中を示すカーソルの回転だけが延々と続き、やがて火花を放ちショートする。逆に防御システムに入り込まれて内部から破壊されたのだ。同様にナレッジスフィアも亀裂が入り、データの破壊を示した。
 その影響なのか、トパースの操縦の一部が麻痺する。ウェンディがガーディアンリペアで修復を試みるがそれすら受け付けない。
「スーパーナチュラルミサイルも撃てません……!」
「く……」
 斉天大聖が他の特異者との戦闘を行いながらじりじりと接近してくる。涼姫もここまでと判断する。
 後は両腕に装備したエネルギーシールドで身を守りながらセカンドスラスターでその場から離脱した後に緊急脱出装置で逃げるしかなかった。
 
「……まだ破壊はできないのか」
 ヘルグリューンのメインパイロット席で平松 揚羽が焦りの色を滲ませる。
 橄欖の浮玉をセットし飛行形態となった空の守護者ヘルグリューンが斉天大聖に警戒しつつ装置に近づく。ミラージュアーマーによる光学迷彩で潜伏しながら装置の周辺まで移動してきたのだった。
「捕らわれたというクロニカさんが心配だな」
「ワタシ達でどこまでやれるか分からないけれど……揚羽さん、出来る限りのことをして頑張ってこようね」
 テレサ・ファルシエが揚羽に言葉をかける。情報はやはり最大の武器となる。それを奪われるのを防ぎたい。
 斉天大聖が接近した時に備えて揚羽がIF用レーザーライフルを構える。
 テレサ自身はアクリャとして搭乗し、射程距離に入るまでなんとか吸億器官に近づく。
 そしてアナリティクスで吸億器官の動きや様子を解析する。
 テレサは記憶の奔流を放ってクロニカからの情報の吸出しを妨害することを試した。既にアーキタイプのシステムが保有している情報を流し込むことで無駄な情報で溢れかえらせようとしたのだ。だが、吸億器官そのものがアーキタイプのシステムの一部でありクロニカの記憶の処理に問題なく溶け込むだけで無駄なようだった。
「やっぱりダメですか……」
 斉天大聖の姿が見えて、スーパーナチュラルミサイルで牽制する。揚羽もバレッジによる弾幕を張る。
「轟け! ??天砕く神音!!」
 テレサは隙を見て遠距離から天砕く神音で吸億器官を破壊しようとした。だが斉天大聖に対抗しながらでは正確に当てることは難しかった。IF用レーザーライフルでバレ
 ッジをして弾幕を張り、斉天大聖の接近を阻みながら退避する。
「装置は……目の前なんだが」
 揚羽は歯噛みをする。正面からぶつかって勝てる相手ではなかった。
 ヘルグリューンへ如意棒からの攻撃が放たれるのを、強化されたエネルギーシールドで防ぎながら進む機体があった。

「クロニカさんは私たちの良心とも言える存在……それを拉致するとはやってくれるわね」
 西村 由梨は文明の守護者ザフィーアの操縦席で温度のない表情で呟く。斉天大聖はすぐさま離れるが由梨のザフィーアは距離をとらせまいとすぐに接近する。敵の伸縮自在の棒を好きに扱わせないためだった。
「しかも、このタイミングとは空気読めなすぎ」
「うむ。知識は奪うものではない。
知的好奇心は人を導く力……それは交流によって生まれるものだ」
 高天原 壱与が由梨を防御面でフォローする。
 接近しているとは言え、そうなると斉天大聖は素早い動きで蹴りや爪による攻撃を仕掛けてくる。それを壱与がバリアアップデートで強化したエネルギーシールドやアームディフェンスで受け流す。
(ジローがそうそう隙を見せるとは思えないが、だからこそやりがいがあるというものだ。
そして、隙がないのなら、創りだせばいい。)
 その隙を戦闘の中でどうやって作り出すか。
「彼我の戦闘力の差は大きいが、力を補う知恵というものを示してみようじゃないか」

「相手は強大ですが、私は私がすべきことを果たすのみです。
由梨様のお手伝いをさせていただきます!」
 リーゼロッテ・エーベルハルトが常に冷静にいられるようにフルムーンチャームを身につけ、療養のお香も用意する。
 すでに機体に幾つかの破損を受けていたがガーディアンリペアによる回復を行う。
 アナリティクスで相手の攻撃パターンを分析する。ただなかなか斉天大聖の弱点と言えるべき点は見当たらない。

 由梨のザフィーアと連携した動きをするのは黒杉 優のコンキスタドールだった。
「アーキタイプのシステムは外の事を知りたいみたいですが、実力行使ですか。
力だけで事をなすシステムが作る世界なんて碌な世界になりません。
これを破壊しましょう」
 アイリス・フェリオが同乗し優のサポートをする。
 彷徨える仔羊の羅針盤が指し示す方向を参考にしてこれからの自分が動くべき方向を決め、斉天大聖の背面に回り込む。
 目まぐるしく動く斉天大聖を追うだけでもかなりの労力が必要だった。だが、その機会は訪れる。
 パーフェクトリードで由梨のザフィーアと優のコンキスタドールで斉天大聖を挟むようにして位置する。斉天大聖が身構える。
 リーゼロッテの密かな合図、そしてブレインディストラクトの音波攻撃を放った。
「うっ」
 ジローが小さく呻く。周囲の特異者の気配を探っていただけにまともに脳に響いたようだった。
 由梨がアウトオブブレイクで斉天大聖の手の如意棒を破壊する。だが同時に【双華刀・凰呀】も破壊される。
「そんなに情報がほしいのなら私がプレゼントして差し上げますわ」
 リーゼロッテが斉天大聖に対し記憶の奔流を叩き込む。だがやはりアーキタイプのシステム側である斉天大聖には効果がなかった。
 続けて優が斉天大聖に挑むように見せかけてコンキスタドールのミサイルをフルバーストし、続いてドレッシングサンダーで範囲攻撃を仕掛ける。
 斉天大聖が足元を金色に光らせて避ける。
 だが、次の瞬間それらの攻撃は斉天大聖ではなく吸憶器官に向けられた。衝撃音と共に青白い稲妻に包まれて吸憶器官の一部に亀裂が入る。
「ちぃっ」
 ジローが初めて苦々しく口元を歪める。

 優はリアリティスパークも放ち、吸憶器官を破壊する。装置の他の部分もショートしたように火花を散らす。
 ただ、やはり斉天大聖との戦闘の中での不意打ちであったため、正確さを欠いて装置の機能を全て停止するまでの破壊には至っていない。
 霊剣テスカトルの転写した無数の剣と共にラストミステリーを使って器官に止めを刺そうとする。
 だがそれは斉天大聖が器官の防衛に回り防ぐ。斉天大聖の手には新たに棍が握られていた。
「さすがに、簡単にはいきませんね」
 同様な作戦は二度は通じないだろう。斉天大聖は疲労がないかのように、その速度を上げた攻撃に由梨と優らも限界が近くなる。

 だが、そのジローの前に新たな機影が現れる。
 ウリエッタ・オルトワートの文明の守護者ザフィーアだった。
「顕聖二郎真君が誘拐? 認めない! そこに親和性があるとは思えない……ブッツブス!」
 やや興奮気味なのは理由があった。
 ウリエッタにとって、図書館で読んだ物語として親しんだ正義の大英雄である顕聖二郎真君が誘拐をするなどと認めたくなかったからだ。
 たとえそれがアバターにすぎないとしても。
「品性下劣な誘拐行為、それを中華の大英雄がやるのですか?」
(私は認めない、図書館で読んだあの正義の大英雄がこの所業?アバターだからとしても……)
 正義の為の全力の戦いを挑む。
 パートナーのアリエル・ロートレックに二枚の盾で防御面でサポートするよう指示を出す。
「私は防御に徹する指示? らしくないわ。私の知ってるウリエッタは猪突猛進……」
 アリエルはウリエッタの意図を理解し、ゴールデンルールで守護者の性能を上げ、フォースコーティングを発動して機動力と防御力を上げる。
「守備はするけど、私の力はそんなもんじゃない! 黄金の本気をだすときね」
 雪結晶の盾による冷気を放出する。
「さて、指示を受けた仕事をして一人前。
一流のアクリャとしてはそれ以上をしないといけませんわね」
 青空 光もまたウリエッタからの指示を超える動きを見せる。
「変化は無視!分身は見える先から遠いものから撃ち落とす!」
 リアリティソナーを放ち、本体を見分けて向かおうとする。だがはっきりした違和感は感じ取れず、目の前の敵に向かうしかなかった。
 天砕く神音を放ちジローの接近を牽制するがジローは怯むことはなかった。
 試しにガーディアンスレイヴを仕掛けてみる。
「WLで援助したものの名を持つ滅亡者よ、言霊において動きを止めよ!」
「あぁ? なんだそれは。よくわからんな」
 大守護者級の滅亡者である斉天大聖には効果がなかった。
 ウリエッタは相手の攻撃を両手の双鞭によるウィップサイクロンで弾き、ディスラプトラッシュを浴びせて踏み込む。
 ジローは少しばかり相手をすることでウリエッタが前回手合わせした相手だと思い出した。
「ああ、なんか身の程知らずなヤツがいたな」
 僅かな隙を逃さず光がブレインディストラクトを放つ。続けて真珠のラリエットの光弾を斉天大聖の顔面に目掛けて放つとさすがに斉天大聖も一瞬怯んだ表情を見せた。
「アリエル……いい行くわよ!、ダブル【スパークリングマイン】」
 反撃のタイミングとばかりにアリエルと光もありったけの魔力で浮遊する雷球を撃ちだす。
「意味ねぇなぁ!」
 雷球を如意棒で振り払う斉天大聖に再度ウィップサイクロンで弾きに行く。
「まだ動ける人たちでジローの動きを抑え込んで!」
 斉天大聖もウリエッタらの激しい抵抗に自由に動くわけにはいかないようだった。
 その間に優が装置の破壊を続ける。守護者と滅亡者の戦闘の間退避していた瑛心と内名ももどって亀裂が入った箇所を更に攻撃する。

 特異者らは斉天大聖との戦闘の中で、吸憶器官への攻撃も必死で続けた。
 斉天大聖との戦いは十分その動きを封じることができた。一気に殲滅させられる恐れもあったのだ。
 だが吸憶器官の破壊に時間がかかったことで、斉天大聖との戦闘がまだ続く中、防衛システムが一部作動する中で“牢獄での”クロニカ救出が進められなければならなかった。
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