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【覚醒のアーキタイプ】文明の衝突トーナメント―決勝戦、その前に!―

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【覚醒のアーキタイプ】文明の衝突トーナメント―決勝戦、その前に!―
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●ケチュアとの特訓


「さあ、遠慮は要らないよ。これはあたしの為の特訓でもある。ふざけてると命に関わるから、本気でかかってきな」
 ケチュア会長の特訓を申し出た特異者達は多数。だがその気に圧されてなかなか足を踏み出すことが出来ない。
 その中で最初に名乗り出たのは柊 紫緒莉だった。
「お願いするね、ケチュアおばあちゃん! この際だから、やれるだけのことをやってケチュアおばあちゃんの強さのヒントを少しでも教えてもらうからね!」
 紫緒莉には特に作戦があるわけではなかった。
 細かいことなど考えず、手数で一気に叩くことで、ケチュアと真正面からぶつかって、その強さを図ろうとしたのだ。
 【トライアルブーツ】のローラーを展開すると、平面を滑りながら一気に間を詰める。
「さあ、行くよ!」
【霊剣テスカトル】を宙に転写展開する。
「ほう、あたしにそんなものが通用すると思っているのかね?」
「思ってないよ」
 【霊剣テスカトル】はあくまで牽制の為だ。
 紫緒莉は【パーフェクトリード】でつぶさにケチュアを観察して隙を探す。
(ディスカバラーの奥義をこの機会に見極めなくちゃ。きっとリアリティに関連した能力のはず。異世界の法則を世界に適応させる能力と世界から生き残るために作られた技術ということから考えると、自分の体の周りのみならず、周囲一帯にリアリティの影響を与える能力じゃないかな……)
「何をぼうっとしている。余計なことを考えていると、特訓にすらならないよ」
「んっ……!」
 隙を突かれたのは紫緒莉のほうだった。
 転写された剣の合間を縫うように強烈な蹴りが放たれる。
「ま、まだまだ!」
 紫緒莉は観察した動きを元に反撃を試みる。
 もう一度テスカトルの剣を転写複製すると、ドレッシングサンダーをまとわせて一斉に放つ。
「なかなかいい攻撃だ。だけどまだまだ」
 渾身の一撃を放ったはずだが、それもうまくかわされてしまう。
「相手の力量を見極めるのはいい考えだ。だが戦いでは一瞬の判断を求められることもある。そのことをよく心にとどめておくんだね」


 続けてケチュアに特訓を申し込んだのは焔生 たまだった。
「アーキタイプでは守護者の力に頼るところが多いので、根源的なリアリティクロークの扱いを鍛えたいです。この方がケチュアさんの実力を肌で感じやすいですしね」
 たまは【ドレッシングフレイム】を纏うとケチュア会長に向けて打撃で挑む。
「私を焼くつもりか。だけど当たらなければ意味がないよ」
「当てるつもりですよ」
 たまが地面を踏みしめると、そこから纏った炎を迸らせる。
 ケチュアはそれを避けようとするが、【リアリティソナー】で拡大したオーラの領域で相手の予備動作を掴んでいたたまは、その先で炎を炸裂させた。
「やるね」
「炎こそ文明の象徴。生死を、興亡を司る叡智と破滅の赤色。そういえば会長のもつフェニックス、不死鳥も火と親しい逸話をいくつも耳にしたことがりますねぇ」
 反撃を試みるケチュアに、噴射する炎で回避を試みたら距離を取り、【ダークグリフ】と【緋色の刻紋】を刻んだ腕から炎を放つ。
 確かに当たり、相手の体は炎上した……はずだった。
「焼き尽くしたところで灰から甦られては流石の私もお手上げですね……」
 ある意味、予想どおりなのだろう、動じはしていないが、たまは嘆息した。
「このリアリティを見つけるために東奔西走していた頃が懐かしいです。これだけ変なリアリティで溢れているのですから、在ると信じていればどんな世界でも見つけられるのではないでしょうか。煉獄界とかそんなリアリティもあるかも知れませんね。もし知っているなら、教えてくれませんか? 落ち着いたら探しに行こうかと考えているので」
「無駄話はここまでだよ」
 ぴたりと、たまの喉元で拳が止まる。
 訓練はここまでだが、たまの目的は達していた。
「緋色の刻紋とドレッシングフレイムの炎を用いた炎の使い方……まだまだありそうですね」


「会長。その特訓、自分も参加してよろしいでしょうか?」
 小山田 小太郎は傍観しているだけであったが、訓練の様子を見て名乗りあげた。
 小太郎はトーナメントに出続けるか悩んでいた。文明が敗北し、そして消滅する様を見ていたくないからだ。
「だけど……ここで目を背け投げ出すのは、やはり違いますこのトーナメントに参加する時に抱いた想いそれは嘘偽りない本心だと、自信をもって言えるから……だからやれる事をやっておきたいんですその時になって……後悔しないように!」
 ケチュアの眼前に立つと、小太郎は構える。
「胸を借りる思いです……全力で挑みます…!」
 【正覚念珠】で己が肉体と法力を高めると、小太郎は拳を振るう。
「無の極致にて……己が活路を拓きます」
【無心無想】で己を律し【無我の境地】にて己を悟る。
 ケチュアの気と、その心に触れるべく目を瞑り、想念を読み、拳を交えながら決定的な一打を受けないように立ち回りながら、その瞬間を待つ。
「その秘奥を抉じ開ける……己が全霊、受けてください…!」
 小太郎は機を掴んだ。
【パーフェクトリード】の極限の集中にて先を往きそれすら利用した【バリツ】による最高最大の一撃を会長へ打ち込んだ。
「いい拳だ……」
 拳をその身で受けたケチュアは笑った。
「ドレッシングフェニックスがなければ、倒れたかも知れないね。その心、失わないように精進しな」
 誰かを助けられる可能性……僅かだが、小太郎にはそれが見えた気がした。


「ケチュア会長、よろしくお願い致しますわ! 今の私に足りないもの…此度の特訓でご教授くださいませ!」
 松永 焔子は今回の特訓で自分自身を見つめ直す為に守護者を使わず、己が身で特訓に臨む。
「会長、いきますわ!」
 焔子は先手とばかりに【キラースカラベ】の群れを放つ。
「面白い攻撃だね。あたしがこんなものに動じるとでも?」
 煩わしいのか、ケチュアは蟲を拳で払う。焔子の狙いはその一瞬にあった。
 ケチュアにとって一瞬、死角になる方向から、【ドレッシングフレイム】で加速して突撃を行ない、一気に間を狭めた。
「今の私の全身全霊の一撃…受けてくださいませ!」
「小太郎といい、元気がいいやつが多いね。おいで!」
 至近の間合いに到達すると、 エリキシルで身体能力を向上させ、【暴走】でパラサイトに体を任せることで、普段ではありえない力を引き出す。
 体内の蟲の力を極限まで高めた状態で【百足撃】を放つと、流石のケチュアも顔をしかめた。
「そんな攻撃、いつまでも持つはずがないよ」
「でしょうね。ですが特訓ならこのくらい力を出さないと意味がないですわ」
 焔子は【ドレッシングフレイム】の加速と、【暴走】して放つ【百足撃】の連撃。
 ケチュアからの反撃は焔子自ら避けることはなく、キラースカラベの殻を盾代わりにして防ぐのみだ。
「はあ……はあ……」
 やがて指摘通り、焔子の限界は訪れた。
「捨て身の攻撃。それじゃダメ……と言いたいところだが、確かに死にものぐるいで捨て身の攻撃をしてくる相手もいる。充分、訓練になったよ」
 ケチュアはそう焔子に謝意の言葉を残した。


 獅堂 泰雅少しでもレベルアップを図るべく、ケチュアに挑む。
「俺じゃ実力差がありすぎるかも知れないが、全力でいくよ!」
 初手で【ヒールドロップ】で思い切り踵を振り上げると、その反動を利用して振り下ろす。
「鋭く的確な攻撃だ。だがそんな大ぶりでは隙をさらすよ?」
 ケチュアは掌打で反撃してくる。
 それを【見切一閃】でカウンターを狙うが、ケチュア反応して防ぐ仕草を見せる。
「これならどうだ!?」
【ドレッシングチェーン】を利用してケチュアの体を引き寄せ、防御の体勢を崩し、カウンター気味に当てる。
 波状の攻撃は相手の虚をつくものだったが、流石というべきか、ケチュアはそれでも直撃は避けてみせた。
 そこに泰雅は再び踵落とし、しかも攻撃目的ではなく、脚を相手の首に巻きつけるようにして、関節技を狙う。
 飛び付くようにすることで体重を全て相手の首にかける……が、ケチュアはこれさえも耐えてみせた。
「悪くない。もっと経験さえあれば、きっといいディスカバラーに成長するだろう」
 そう笑うと、付け焼き刃など通じないとばかりに、泰雅の攻撃を振り切った。
「ヒールドロップはケチュア会長の得意技、それを本人があえて変形で使うことで、相手にほんの僅かでも知らない技だと思わせる…というのは浅はかな考えか。残念」
「やり方次第さ。あとは使い込んで必殺の攻撃に昇華するよう鍛錬を積みな」
 泰雅とケチュアの戦闘を固唾の呑みながら観戦していたフェレーナ・エッカートアリアネ・クロンティリスは、緊張の糸が切れた瞬間、泰雅に駆け寄った。
「すごい、よく頑張ってたね! 始まる前に言っていたよりも、善戦してたよ!」
 フェレーナの言葉に、泰雅は少しばつが悪そうにする。
「いや、予想通り、完全に見切られてたよ」
「そんなことないよ! ボクは泰雅くんよりさらに弱いから、充分通用していたように見えたかな。あ、でもさ、少し狙いすぎていたかもね。こう……踵落としのあとになんかするぞって見えたから。だから振り上げる大きなモーションをもっと速くしたら、そこからの変則攻撃も生きてくるんじゃないかな?」
 それまでの特異者達と違い、泰雅にはアドバイスをしてくれる仲間が見てくれていたことが幸いだ。
 フェレーナは訓練の中で気になった部分をどんどん指摘してくれる。
「それにしてもケチュア会長綺麗だよねー、元女王さまの肩書きは伊達じゃないってやつ?」
「ん? あたしかい?」
 フェレーナに突然話を振られて、ケチュアは戦闘のときよりも、よほど驚いた顔をした。
「王位継ぐまでは街にお出かけとかしょっちゅうしてそうなイメージあるなー。本当に綺麗だよね-」
「……ありがとうね。特訓中に綺麗とかどうとか、関係ないが……」
 そう言いつつもまんざらでもなさそうだ。
「そうですね、お綺麗です。ケチュア会長もトーナメントの最中とは言え、もっと他のことにも目を向けたほうがいいかも知れませんね」
 続いてのアリアネの言葉に照れてしまったのか、ケチュアは黙る。
「ふふふ。ところでケチュア会長。ついでというわけではないですが、教えてもらいたいことがあるんです。私にとって特訓なんて滅相もないし、そういう機体も持っていないので……せめて知識を蓄えさせてもらえたら」
「……あたしに答えられることだったらね」
 アリアネの話題転換は渡りに船だったのだろう、ケチュアは頷いた。
「クリスタルスカル……水晶ドクロですかー。地球では、発掘品と言ってたけれど実は違ったって話もありますし、特異者の方々が来る前に作ったものだったりしませんか?  ……前にも訊かれたこともあろうかとは思いますが」
「あたしが……かい?」
「そうです」
 ケチュアは少し考えるような素振りをするが、首を横に振る。
「地球の水晶ドクロのことなんざ知らんよ。あたしの守護者に乗っているクリスタルスカル……あれは水晶のドクロの形はしているが、アクリャなんだよ」
「そうだったんですね」
 アリアネは思わぬ答えに驚く。だが、他にも聞きたいことがあったのだ。
「私、思うのです。出土品守護者にも、もっととんでもない性能あってもいいんじゃないでしょうかー。烙印を消す命が歴史を巻き戻すような」
「あったとしても、そのようなものの在処を知ってどうするんだい?」
「それは……」
「まあそうした物が眠っている可能性はある。広大なアーキタイプにはね。だが、それがどんなものだろうと、それは結局のところ“勝てなかった”産物だ。それにその手のトンデモは、システム側の――滅亡者の力かもしれないよ」
 ケチュアはそれだけ言うと、次の相手に向き合った。
 
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