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【覚醒のアーキタイプ】文明の衝突トーナメント―決勝戦、その前に!―

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【覚醒のアーキタイプ】文明の衝突トーナメント―決勝戦、その前に!―
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 温泉界には純粋に温泉に浸かる者が多くいる一方、まだ見つかっていない秘湯を探そうとする物好きな者達もまた、多く集まっていた。
 体を休める為の場所なのに、冒険心をくすぐられるということだろうか。
 瑞浪 しず九鬼 苺炎もその冒険者達の中にいた。
「何かとんでもないくだらない温泉とか見つけたいですよね!」
 しずの言葉に苺炎は頷いた。
「そもそも休息する場所の全貌が湯煙で見えないって怖いもんねー」
「パラサイトなら素手でも戦えるし、大丈夫でしょ。きっと」
 浪漫を追っているのか、それともいつもの戦いに比べて余裕があるのか、しずの装備は桶にタオルに温泉セットという、武装と呼ぶには躊躇うほどだ。
 対する苺炎は【ドレッシングフォーチュン】を身につけ、アクリャの知識をもって挑む。
「あ、そこにある温泉はどうかな? 入るとさんぜんねこになる湯とか、入ると全能神顔になる湯とか、そういうのだったら楽しいわね……って、見つけるだけで入りたいとは思わないけどね」
 お気楽なしずだが、がさりと何か物事を聞いた瞬間に言葉を止めた。
 苺炎は不安そうな顔でしずのほうを向く。
「しずさん……今の……」
「ひ、人がいるのかな? 守護者がうろついているかもとは聞くけど、温泉入るのにそんなのとやりあいたくはないわね。出会ったら一目散に逃げることにするわ……って、出た~!」
 ふたりが言っている側から姿を現す守護者。
 突然現れた敵に、軽装で探索をしようとしていたしずは、すぐに後悔の念を抱く。
「お、恐るるに足らず! 湯気で見づらいのは向こうもこっちも同じでしょ!」
 雲払で一太刀浴びせて湯気を払い、先制の攻撃で隙を作ろうとするしずだが、敵もこちらを予め察知していたのか、なんなくかわされる。
 無論、桶やタオルで挑むほど、しずは愚かではない。
 速やかに逃げようとするが、苺炎のほうには事態打破の考えがあるようだ。
「待ってしずさん。何か様子がおかしい……えっと、お背中流しましょうか?」
 その言葉に守護者は動きを止め……なんと背中を見せた。
「お湯加減はいかが? あなたも温泉に入りたいだけなんだよね?」
 巨大な守護者の背中を【トライアルクリーナー】でごしごしと擦る。
「あ、もうちょっと熱い方がいいかな じゃ、【金剛石の花杖】で追焚きしとくね」
 素直に従う守護者に、しずは呆れ顔だ。
「嘘でしょ……危ないわ……」
「大丈夫だよ-。【プレディクショントレース】で、危険があるなら、きちんと回避するから。それよりもせっかくだし、しずさんも一緒に入ろう」
「あ、うん……まあ、守護者が集まる温泉って言うのもある意味レアね……」
 不思議そうな顔をしながらも、薄着でそろそろ肌寒く感じ始めていたしずは、守護者や苺炎と共に温泉に浸かるのだった。


 有間 時雨も珍しい温泉を求めて付近を探索していた。
「確か守護者も目撃されているんだっけな。視界も悪いところが多い、と。だったら湯気に紛れてしまえばいいじゃないか」
 霧化で時雨自身は霧に変化して湯気に紛れて行動をする。
 途中で湯気の薄いところがあれば、操風術で湯気を操作して向かう方向の湯気を濃くしていきながら、潜伏を続けた。
「さて、と。付近にはどんな温泉があるか。楽しみだ」
 【位置感覚】で余念なく場所を把握しつつ進むと、目の前にひとつの温泉が現れた。
「さて、なるべく面白い温泉だといいけど。役に立たない温泉でも話のネタになるけど、どうせなら、ね」
 とんでもない効能の温泉である可能性もある為、慎重に温泉に触れようとする。
 すると、指が触れた瞬間に、まるで蒸発するように一気に温泉が霧化していく。
「これは面白いな。まるで砂漠のオアシスだ」
 触れるたびに蒸発していく温泉など、聞いたこともない。
 蒸発してしまう為に浸かることは出来ないが、時雨は満足そうな顔をしていた。
「自分の目的は温泉を見つけることだからな。これで充分だ。さて次は動物のように生きている温泉とか見つからないかな」
 ひとしきり温泉を調べて記録を取ると、時雨は別の温泉を求めてその場を去った。


 八上 ひかりは驚愕していた。
 温泉につかって日頃の疲れを洗い流そうとし、脱衣場に足を踏み入れたところで、ケチュア会長の脱衣シーンを目撃したのだ。
 会長のバストサイズが自分よりも若干大きい、という事実に大きな衝撃を受けたひかりは急遽、当初の計画を変更し、温泉探しの旅に出る事を決断した。
「ああうん……きちんと図らなくてもわかるもの。目測だけど……うん、間違いない」
 気にしないようにしても心の声がこう語りかけてくる。
『同年代の女性特異者にバストサイズで負けるのはまだしも……ケチュア会長に負けるのだけは絶対にイヤ。そんな屈辱には耐えられない……』
『どーせ、あたしは貧乳よ! つるぺたよ! 幼児体型よ! 同年代の女子には勿論、白髪頭のお婆ちゃんにもサイズで負けてるわよ、チクショー!!』
 やけくそのように【ドレッシングストーム】で、温泉の湯気を吹き飛ばしていく。
 視界が開けると【ダウジングペンダント】で【ダウジング】を行って、地面の下に眠る温泉を捜索。
「ここ、なにかあるよね」
『ウィップソードドリル』を使用して、地面を掘削し、泉脈を掘り当てようと試みるも、当てが外れる。
「いーわよ、とことん探してやる!【探検隊バックパック】で見つかるまで探してやるんだから! だからせめて胸が大きくなる温泉がありますように……!」
 怒りに満ちた少女は止まらない。
 【リトルガーディアン】を起動させ、【ドレッシングウィンド】でかカマイタチを作り上げ、【ドレッシングストーム】で阻む者をなぎ倒しながら突き進む。
 その先にひかりが求める温泉があるかどうかは定かではない。


 別の場所では西村 瑠莉の助けを借りながら、何人かの特異者達が更に深くまで探索を行なっていた。
 迅雷 敦也もその一人だ。
「手伝ってくれてありがたいぜ。だけど瑠莉殿も珍しいな人だな。自分は温泉を探さず、人を手伝いたいなんてな」
 敦也の言葉に瑠莉は微笑む。
「皆さん色々な想いがあって、それを見送って、導いていく人がいてもいいと思うんよ。【令嬢の嗜み】とメイドの心得を忘れずに、常に誠意を尽くして全力でメイドとして、皆さんの目的を果たす手助けをさせて頂きます」
 瑠莉は皆さん色々な想いがあって、それぞれの目的の元どこに向かうかがあると思います。
 【ハチドリの護符】を使うと、敦也を先導していく。
「櫻狐、黒狐、皆さんを望みの場所に連れて行くんよ! よう言うことを聞いて、ちゃんと会いたい人に会えるように案内してな!」
 【生命感知】で行き先の場所を把握すると、【癒し系ナビゲート】の優しい声で、敦也達のナビ役を務める。
「さんきゅー! 助かるぜ! んじゃ。秘湯巡りに出発だぜ!レッツ、オンセンハンティング! 暗い場所はティンカー・べ・リングを光源にして探索だぜ!」
 敦也は迅雷 火夜をおんぶすると、【空中戦闘】を使って飛びながら瑠莉のあとをついて行った。
「お兄ちゃんにおんぶされて探検、探検っ。ん?! いい景色だよ?! 絶景♪ 絶景♪」
 上機嫌の火夜は敦也の背中で、リアリティソナーで辺りをを探索していく。
「お兄ちゃん、任せてねっ。お兄ちゃんが見逃しても、ちゃんと違うところも見てるから! そ~れっ、視界よくなれ~!」
 火夜は邪魔な湯気を操風術で吹き飛ばしながら、楽しそうに探索にあたる。
 飛ぶ敦也や瑠莉のあとを徒歩でついていくものだから、ナナ・ムサルフは大変だ。
「はあ……はあ……置いて行かれないようにしないと……せめて探索に役立つスキルがあればいいんですが……守護者無しでついて行くのはしんどいですね……ところでこの葉っぱで作ったような露出の激しい水着、なんとかなりませんかね……」
 ナナだけではない。
 敦也も火夜も、探索の時点から既に水着姿で、新しい温泉が見つかり次第に飛び込む気、満々だ。
「ふふ、そんなに慌てんといても、ちゃんと案内しますよ。安全に行かんと、怪我をしてもしゃーないからね」
 瑠莉は精霊の声と運命の導きを紐解く為、『霊導の杖』で、まだ見ぬ新たな温泉の地にたどり着く為の進むべき方向を示していく。
 【長の貫録】を見せるほどの落ち着いた佇まいや貫禄は、敦也達の未知に対する恐怖感や不安感を取り除くには充分なものだ。
「さ、みなさん頑張って。安心して進めばええからね!」
 流石、シャーマンメイド長と言ったところか。
 温泉に辿り着くまでの道程は、難なく進むことが出来た。
「ん。何かあるみたいだねー。カラータブレットでここがどこか検索してみるね。あ、もちろん記録も忘れないから安心してね、お兄ちゃん!」
 火夜は位置感覚で場所を把握しながら、目の前に広がる温泉を調べる。
 どうやら、まだ誰も見たことがない深層にある温泉まで辿り着くことが出来たようだ。
 だがそこで瑠莉は声を潜めて敦也達を制止する。
「……気をつけて。何かいるみたい」
 噂の守護者らしき影が、温泉の前を守るように徘徊している。
 だがここまでに気分上々となっている敦也達が、温泉を前にして躊躇するはずもない。
「守護者だろうが未知の植物だろうが、このガーディアンバスター二刀流で粉々にしてやるぜ!」
 敦也は空を飛びながら、遠慮の無い動きで、二本のガーディアンバスターを振るう。
 死角からの突然の攻撃に、守護者はあっという間に防戦になる。
「ようやく役に立つときが来ましたね。ほんっとにもう、歩き疲れました!」
 ナナもスーパーナチュラルミサイルとスパークリングマインで、敦也と連携して波状攻撃を仕掛ける。
「火夜ちゃんだって【操風術】くらい使えるよ! それー、かまいたちー!」
 身構える前に、立て続けに攻撃を食らえば守護者といえどたまらない。
 反撃をすることすらなく、守護者は地面へと倒れ込み、大地を振るわせた。
「ひゃっほ~!」
 敦也達は勝利の余韻などに浸るつもりなど、微塵もない。
 相手が倒れるのを確認するや否や、待ってましたとばかりに温泉へと飛び込む。
「火夜ちゃん温泉大好き! お兄ちゃん、ナナちゃん、そ~れ~~!」
 火夜はバシャバシャと湯面を叩くと、仲間達に向けて笑いながら湯をぶつける。
「こんなところまで歩いてきて甲斐がありました。温泉に入りながら飲み物を飲んでみたかったんですよ」
 ナナは野菜ジュースをごくごくと呑むと、うっとりとした表情で、ほうっと息を吐く。
「ああ、至福のひとときです♪ 次は空猫ビールを飲みましょう……ああ、美味しい……なんという幸福なんでしょう。幸せすぎて、敦也さんがふたりに見えます。……ふふふふ……別に酔ってなんかないですよー……ふふふふ」
「ああ~、ナナちゃん酔っ払い~! あはははは! 火夜ちゃんも黄金バナナ食べる~! もっと遊ぶぞ~!」
 新たに見つけた温泉地で、敦也達の楽しそうな声がこだまする。
 案内をした瑠莉は満足そうにその様子を、ずっと見ていた。

 最奥の秘湯を求めて湯煙の中に足を踏み入れているのはジェノ・サリスだった。
「不死の湯、若返りの湯……『異性化の湯』『動物化の湯』なんて古典的な温泉もあったりしてな。それぞれをリアリティクロークで纏えれば面白い事になりそうなものだ」
【増設用ブースター】を装備した【アルト・シュトラール】に搭乗したジェノは、【ドレッシングウィンド】を機体に纏わせながら【インテュイション】で警戒しつつ未開の地を突き進む。
「こんなに蒸し蒸ししていると、のぼせちまう奴が続出だな。まあ、この機体には最低限の操縦環境維持機能もある。クーラー程度だが大丈夫だろう」
 【ドレッシングウィンド】を纏った機体はかまいたちを発生させながら、湯気と熱気を吹き飛ばしていく。
「……まあ、そう簡単には進ませてくれないだろうな」
 事前に聞いていた守護者の影が数体目視で確認出来た。
「生憎、目的はお前達を倒すことじゃない」
 ジェノは止まることなく、【ウイップソードドリル】を回転させながら行く手を阻む守護者の胸部を破壊すると、そのまま加速して残りの守護者を振り切っていく。
【ネイティブの気骨】を持つジェノは、どんな障害にも怯まない。
「さあ、見せてもらおうか……最奥に存在する秘湯の湯の正体を! その先にあるロマンを!」
 ジェノは誰も到達しえない温泉を求めて、更に速度を上げていった。


 ある温泉地では、山内 リンドウは【聖なる魚群スイミー】にデザナを探させていた。
「デザナ様、わたくし、他のシャーマンと話がしてみたかったんです。一度ゆっくり……精霊でさえも気持ちよく感じるような温泉地で、ゆっくり湯に浸かりながらどうですか?」
「うむ、いいぞ。カホキア文明圏を守れず口惜しかったが……今はそれを忘れて癒そうぞ」
 デサナは特異者たちの見えない所で、ハイパーボリア文明圏に敗北していたのだった。
 そしてその言葉に反応したのは言葉を向けられたデザナだけではなかった。
「ちょうどよかった! 私もシャーマンですし、相棒の雲霓や精霊さんと一緒につかりたいので、精霊さんが好みそうな温泉を探そおうとしていたところなんです」
 こうして真毬 雨海も精霊の温泉探しに名乗りをあげて、三人で向かうことになった。
 雨海は相棒の黒曜の狐「雲霓」に乗ると、【感応】を浸かって外部からの刺激に敏感になれるように備える。
 敵が出てきた時、空気の変化や温泉の湯気などを感知できるからだ。
 そして【精霊たちの囁き】に耳を澄ませる
「あなたたちが好きな温泉は近くにないですか? 浸かって気持ちのいい温泉……癒やされる名湯……教えて欲しいんです。……雲霓、あなたも好みの温泉を教えてください。精霊だけでなく、あなたにも気持ちよく浸かってほしいんです。何なら、このままあなたがそこに案内してくれてもいいんですよ?」
 雲霓は嬉しいのか、急ぐように走り始める。
 だが、すぐに足を止め、うなり声を草むらに向けて放った。
「……どうやら敵がいるようですね」
 雨海とリンドウは守護者と相対する。
「この人数だけで戦うのは危険です。突破して逃げましょう!
 雨海は玉壺氷之盾で身を守る。
「砂塵の槍を受けなさい! 【サウザンドレイヴ 】!」
 槍から繰り出される必殺技を相手に向けたあと、更に攻撃を仕掛ける。
「おまけに【魚群の嵐】でもどうぞ!」
 それらの攻撃は倒すことよりも動けなくして、その間に突破するのが目的のものだった。
 その目論見どおり、守護者に隙が生まれる。
「ふたりとも、今のうちに!」
 リンドウと雨海はデザナを庇うように死地を切り抜ける。
 そしてその先の緑に囲まれた地に、ひとつの温泉を見つけた。
「どうやらここが目的の場所のようですわ。さ、デザナ様。入りましょう?」
「ようやく落ち着けそうよの」
 リンドウの促しでデザナも裸になって湯船に浸かる。
「聖なる魚群スイミーも、黒曜の狐ローゼも気持ちよく感じてくれているでしょうか?
 ……あ、『精長の宝額冠』は温泉につけて大丈夫かしら?」
「ふふふ、大丈夫そうですよ。精霊の喜ぶ温泉みたいですし、私の精霊達も喜んでくれています」
 心配するリンドウに、雨海は笑って答える。
「さあ、折角なのでデザナ様に質問ですわ。わたくしが精霊たちに無体を強いているということはあるのでしょうか? もしそうなら教えていただきたいですわ」
 デザナは優しく微笑むと、そんなことはない、精霊達はリンドウに懐いていると語った。
「そうなんですか? よかった……嬉しいですわ。あ、そうそう、重魂のことも聞いてみたかったんです。試練を担当する精霊というのは、いったいどこに行ったら会えるのかーー」
 精霊達と、精霊使い達のささやかな休息の時間は過ぎていく。
 ……一度覗き見をした輩が【大精霊の憤怒】でリンドウに制裁を受けた以外は、その時間はとても安らかで優しいものだった。

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