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エルベ砂漠の戦い

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エルベ砂漠の戦い
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【マリィを探せ 2】


 こうしてウォークスや大和、智也たちが時間を稼いでくれている間に、捜索作業も懸命に行われていた。

「さてと……
 妾達の救いの手をマリィ隊は今にも待って居られる筈じゃ……
 救護任務とて兵は神速を尊ぶ……
 飛空艦・静波号発進!」


 その中で大がかりな捜索を行っていたのはSacred Forceのメンバーだ。

 まず、飛空艦《静波号》ことライトクルーザー級エアロシップを操縦しているのは六道 凛音である。
 静波号には凛音と共にやってきた忌ノ宮 刀華アヤメ・アルモシュタラ、同じくSacred Forceのメンバーである水瀬 悠気フィン・フィリッシュが一緒に乗っているようだ。

「アヤメ、西側砂漠の探索を頼む……
 刀華は東側の森をグリフォン隊と空から探索じゃ……
 夏輝先輩、水瀬殿は遺跡周辺の探索をお願いしますじゃ……」

 凛音は静波号を停泊後、悠気や同じくSacred Forceのメンバーである夏輝・リドホルムと共に手分けして捜索を開始した。

「マリィ隊の人達が干物に成る前に
 必ず見つけるですよぅ~」

「マリィ嬢を救うべく、尽力しよう」

「砂漠で長時間隠れるのは大変そうだ。
 早めに隊員を見つけよう」

 凛音はロートルデバイスを使いながら、【土地鑑(スフィア)】を活かしつつ、【デフラグメンテーション】で情報整理し、捜索範囲を指示していた。

 そんな中、遺跡から少し離れた所で、味方らしきメタルキャヴァルリィを悠気が発見する。フィンと共にそれぞれファントムRVer、サイフォス先行型に搭乗し、【僚機】オオカミ乗りの協力も得ながら、急ぎ捜索している最中のことであった。
 きっと先ほど智也たちが見かけたメタルキャヴァルリィだろう。
 ちょうど新たな敵に阻まれ、必死に振り切ろうとしていた。

「私が前に出ます!」

 まずはフィンが近づきながら【アイアンマニュファクチュア】で鉄塊を放ち、味方メタルキャヴァルリィから敵ファントムの注意を逸らさせる。

 その注意がそれた隙に、悠気が【エイムショット】で狙い撃つ。
 何とか味方メタルキャヴァルリィから注意を逸らすことには成功したものの、敵は盾の陣で小隊を組んでいる。
 互いに補い合うように守り合っており、なかなか崩すことができない。

 しかし、そこに無線で連絡を受けた凛音が現れる。


「スカイライダー隊、迎撃準備
 目標……敵、ファントム隊
 お客様方に丁寧に“おもてなし”するのじゃぞぃ……」


 先頭のファントム目がけて【僚機】スカイライダーRVerと共に【小隊陣形】十字砲火で挟み撃ちにする。

 敵の1機が倒れた隙にフィンがもう1機に飛び込んで、【ギアシールド】で防御しつつ、バーンソードで斬りつけていく。

 しかし、その間にもう1機がメタルキャヴァルリィに【ヤブサメ】で攻撃を仕掛けてきたのだ。

「護衛は護衛対象と自分も守って一人前ってね!」

 それを間に割り込む形で悠気が【大盾のルーン】で防御し、ヘリオライトカービンことホライゾンカービンで応戦する。

 挟み込む形で【僚機】オオカミ乗りにも背後から攻撃を仕掛けてもらい、隙を作ると、至近距離で【エイムショット】を見舞い、敵ファントムを倒し切る。

 同じくフィンも凛音の援護を受けながら倒し終えたようだ。

 しかしながら、メタルキャヴァルリィに乗ったマリィ隊はまだ悠気たちを警戒しているようだ。

「すみません、マリィ隊の方ですか?」

 それを感じ取ったのか安心させるように悠気がコクピットから身を乗り出し、ラディア王国軍軍服の姿を見せる。

「……援軍の方ですか?」

 力が抜けたのか、マリィ隊の隊員はがくりと膝をつく。

「大丈夫ですか、これを飲んで落ち着いて……」

 敵に注意しながら、コクピットを開けてもらい、【治療術】で応急処置を施し、フィンはラディアポーションを手渡す。

 メタルキャヴァルリィは軽く損傷こそしているものの、トルーパーの体力がわずかでも回復したのは撤退に向け、大きいと言えるだろう。

 悠気は遺跡にもかなり興味があったようだが、隊員から撤退で精一杯である旨を聞き、その探求はまたの機会にと持ち越すことにしたようだ。

 マリィの逃げたであろう場所の心当たりを隊員から聞き出し、凛音が敵に情報が漏れないよう細心の注意を払いながらメンバーに通達する。

 そう、通常のエアロシップやキャヴァルリィの無線では敵の妨害や盗聴の恐れがあるのだ。重要な伝達では闇雲に使う訳にはいかなかった。

 そこで一役かったのは夏輝と共にやってきた妹尾 春那である。

「春那殿、頼んだのじゃ……」

「任せて。バックアップ専門たる所以……見せてあげるわ」

 まず春那がスロートワイヤレスで連絡を取った際に、凛音の通信宝珠で最低限の情報を伝達する。

 さらに夏輝はA班“散光の銀閃”、B班“散光の銀閃”、C班“散光の銀閃”に分かれて協力を仰いでいた。A班は確実な口頭での伝達係、B・C班は捜索係として。

 春那は凛音から得た情報を【ステガノグラフィー】の技術を応用して、仲間にしか分からないようにA班に伝達、そこから夏輝、B班、C班へと重要事項が確実に伝わっていったのだ。

「いつだって勝者は、情報を制する者だ――頼むぞ、春那」

 春那は情報の送受信を繰り返し、集まった情報を元に【全方位索敵】でマリィの位置を絞りながら、伝令の中心として動いていった。

「夏輝が一番近いわ。遺跡から少し北上して」

 こうして見つけたマリィ。しかし、敵もそう簡単に救出させてはくれない。

 敵に見つかってこそいないものの、マリィの隠れる付近上空にはかなりの敵が集まっていたのだ。

 そこにこっそりと近づいていったのが夏輝である。

 事前にA~C班に手伝ってもらい、空挺戦車に【迷彩塗装】を施していたらしく、砂漠の悪路を敵にバレずに【旧時代技術】でいち早く走破したようだ。太陽や山、遺跡を使った【位置把握】で現在地を割り出し、【戦況分析】で敵部隊の動きを把握した上で最適なルートを算出しながら。

 そして、隠れていたマリィにそっと声をかける。

「マリィ譲、乗ってくれ」

「援軍……?」

 切迫した状況。初対面の特異者たちを援軍と信じて良いのか、もしかしたら迷ったかもしれない。
 けれども真剣に頷く夏輝に、マリィは賭けたようだ。

「……助かった。よろしく頼むわ」

「もちろんだ。
 それから先に謝罪をさせてくれ、マリィ嬢。
 すまないが貴官の船を脱出のため、利用させてもらいたい」

「利用? どういうこと?」

 実は夏輝はここに来る前、遺跡付近に墜落したマリィのエアロシップを確認していた。そこにホライゾンボンブを撒き、大きな爆発を起こすことで、敵の注意をそちらに向かせ、撤退の隙を作ろうと考えていたのだ。

 事情を聴いたマリィは神妙な顔つきで頷く。

「撤退のためならば仕方ないわね……
 でも、今はこの通り戦争の真っただ中。
 爆破してしまえばラディア軍の戦力は大きく落ちてしまうわ」

 それを聞き、夏輝も考える。

「……マリィ譲の気持ちはわかった。
 ならば最終手段に使わせてもらおう」

 エアロシップとマリィならば確実にマリィの方がラディア軍にとっては重要だ。しかし、マリィの気持ちも無視はできない。本来ならば30分のタイマーにして使う予定であったが、夏輝は撤退時の様子をみて、手動での爆発に作戦を切り替えたようだ。

 こうして隙を見て、空挺戦車を発車させたのだが、いくら【迷彩塗装】を施していても、これだけ敵がいれば、やはり気づかれてしまうというもの。

 スカイライダーの小隊が襲い掛かって来る――……。

「空中戦はこっちだって、得意ですぅ!」

 と、スライダーが夏輝たちに襲い掛かるより前に、真横から攻撃を仕掛けたのは刀華であった。
 凜音から指示を受け、捜索範囲を切り替え、こちらへとやってきたのだ。

 娑伽羅ことリンドヴルムに乗りながら、 【僚機】グリフォンリッターと【小隊陣形】シュツルムアタックにて素早い連続攻撃を見舞う。

 それにより、敵の盾の陣を崩すことに成功する。

 さらにそこに目がけて【ヴァルハラストライク】でかまいたちを起こし、敵の飛行を大きく乱して機動力を削ぐ。

「凛音様、アヤメ主銃座に着きました。
 ご命令を……」

 そこに追い打ちをかけるように、駆けつけた凛音のエアロシップも援護体制に入る。

 攻撃するのはアヤメだ。先ほどのメタルキャヴァルリィを保護したとの知らせを聞き、オペレーターとして何か出来ることはないかと一度エアロシップに戻り、出来うる限りのことを施したようだ。

 そして今、戦闘に加わろうとしている。

「アヤメ、撃つのじゃ……」

 凛音の号令と共に、アヤメが銃座タスラムこと固定銃座で敵を撃ちつける。


 このアヤメと刀華の援護により、マリィたちは何とかこの敵の密集地を脱したようだ。それにより、エアロシップも爆破せずに済んだ。

 そして、凛音たちもまた、敵をある程度撒き散らした所で、深追いはせず、マリィたちを追いかける。

「他の隊のメンバーにも撤退指示を出したいわ。
 味方の隠れるエアロシップの元まで連れて行ってほしいの」

 マリィが仲間の身を案じていたように、きっと隊のメンバーも隊長であるマリィの無事を信じ、指示を待っていることだろう。

 夏輝と凛音は保護したマリィとメタルキャバルリィを連れ、味方のマリィ隊エアロシップを目指す。

 全員で無事に撤退するために――……。







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