【空腹は最高の調味料】
六合 春虎は、自ら進んで避難民たちの最後尾を歩いていた。
さらに後方にはアヒルのエア・クッション型揚陸艇がいるのだが、歩いて進んでいる避難民は身近にいる春虎を頼っている。
怪我をして歩くのが遅くなってしまった避難民を見ては簡易手当を施し、励ましの歌を口ずさみながらついていっている春虎は残された子供たちにも慕われている。
「ほら、お前たち前の大人についていけって! 俺の近くにいたら危ないかも知んねぇぞ?」
「だいじょうぶ。はるとら強いから!」
「……まぁ、お前たちっよか強いけどよ……」
結局、その後は大きな問題もなく、避難民たちは無事に輸送用のエアロシップへと到着した。
そこではあらかじめ先回りしていた
柊 エセルに
カリュー・ノーウッド、
気分屋の料理人と
気分屋の料理人、そして
羽村 空に
山内 リンドウも手伝い、食事を用意して待っていた。
「皆さーん、ご飯ですよー、美味しーですから食べたら元気が出ますよー!」
空の言葉を皮切りに、疲弊しきっていた避難民たちは、我先にと食事が並べられた場所へと殺到する。
「うわぁ! ご飯だ!」
「こんなおいしいご飯はいつぶりかしら……」
「生きててよかった……」
「人数分ちゃんとありますから、落ち着いて一列に並んで下さーい」
カリューの誘導によって避難民たちは順番に食事を受け取り、口へと運んでいくのだった。
「おいしいですか?」
エセルは食事を配給した後も感応を用いて何か悩んでいる避難民を見つけると話かけて回っていた。
そして避難民達の話をしっかりと聞くと「もう大丈夫です」と抱きしめるなどして励ましている。
中にはエセルに抱きしめてもらうため、落ち込んだ顔をしている男性もいたようだが、そこはしっかりと見極められ、願望がかなえられることはなかったようだ。
同じくカリューも率先して避難民たちをコミュニケーションを図り、あらかじめ争いを食い止めているようだった
さらにエセルはある程度食事が落ち着くと浮遊鍵盤を取りだすと、空と共に明るい曲を口ずさみ始める。
「あ、このうたしってるよ!」
「わたしもー!」
中でも子供たちはエセル達の歌によって元気を取り戻したようだ。
「では、そろそろラディア領へと出発します!」
食事を終えた避難民たちが輸送用のエアロシップへと乗り込んでいく。